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偽りの降伏、偽りの幸せ

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●ダークセイヴァー
 夜と闇に覆われ、異端の神々が跋扈する世界。
 人類は100年ほど前に甦ったヴァンパイアに敗北し、彼らの支配下にある。

●孤児院『安らぎの里』
 この孤児院では、頻繁に子供がいなくなっていた。
 しかも、いなくなっているのは、問題児ばかり。
 一応、表向きは家族が恋しくなって、孤児院を脱走した事になっているのだが、頻繁に子供達がいなくなっているため、この事を問題視している職員も少なくない。
 だが、そういった職員に限って、急に来なくなってしまったり、不慮の事故で命を落としたりしていたため、最近では誰もこの話題には触れようとしないようである。
 おそらく、この孤児院には、何かある。
 みんな、そう思ってはいるものの、ヴァンパイアの圧政が敷かれるこの地域で、何不自由なく暮らす事が出来るのは、ここくらい。
 その生活を手放したくないため、職員達の大半は真実から目を背け、事務的に仕事をこなしていた。

●ガジルからの依頼
「何だか妙な事件が起こっているみたい」
 ガジル・コリアンダー(キマイラのスカイダンサー・f00907)が不安げな表情を浮かべ、今回の依頼を説明した。
 孤児院『安らぎの里』で、頻繁に子供がいなくなっているらしい。
 しかも、この事を問題視した職員が行方不明になったり、命を落としたりしているため、みんなこの話題に関してはタブーになっているようだ。
 その上、この孤児院の院長は何故か、その事を問題視しておらず、よくある事として片づけているらしい。
 そういった意味では、この孤児院には何か裏があるため、調査をして欲しいと言う事だった。


ゆうきつかさ
 現時点で分かっている事は、ほとんどありません。
 基本的にリプレイはプレイングで作り上げていくものだと言う考えなので、あえてオープニングでは多くの情報を出しません。
 その分、面白ければどんどん採用してくれので、色々なプレイングを掛けてみてください。
 ノリと勢いで何とかなったり、キャラクター的に動かしやすかった場合は、例え無茶なプレイングであっても何とかなったりします。
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第1章 冒険 『遺された花の数』

POW   :    孤児たちに話を聞く

SPD   :    内部に忍び込み手がかりを探す

WIZ   :    施設の職員に話を聞く

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヴェル・ラルフ
孤児院、か…僕もダークセイヴァーの孤児院出身なんだよね。
問題児ばっかり、危ぶむ職員も姿を消す…
案外、この孤児院の背後になにかいるのかも?僕ら孤児は、労働力か生け贄にされるか…ってことが多いからね。

僕もそうだったけど、孤児には孤児の結束があるからね。まずは身なりを目立たぬように、孤児に見えるようにして外で子どもたちに接触を図ろう。

僕もあの頃に戻るなぁ。
大人が信じられなくなることもあったけど、孤児院の仲間たちは兄弟姉妹、家族、なんだよね…

絶対救いだそう。
僕らは、血は繋がっていなくても、家族になれるんだから。


九重・伽耶
SPD 内部に忍び込み手掛かりを探す

絡み歓迎

職員に聞こうにも警戒してるし、孤児達になにかあっても後味が悪いしな…
ここはひとつ、忍び込むとしますか。

とりあえず警備に引っ掛からないように慎重に行動しつつ怪しそうな場所は確認かね?
虱潰しではなく、部屋内を確認してから怪しそうなら調査。
証拠をある程度集めたら警備が強化される前に離脱、他の猟兵とも情報をすり合わせる


ナハト・ダァト
◆孤児たちのけがや病気を治療する医師として活動させて貰おウ

子供たちの事は子供たちニ、だヨ。

◆病気、怪我に関しては問題なイ
【世界知識】【医術】を掛け合わせた最適ナ治療を処方しよウ
子供たちの話は中には理解が難しイものだってあるだろうかラ
【情報収集】【世界知識】デ読解してみせよう
重要なのハ
・消えた子供たちの【共通点】ヲ
行動、性格、容姿から探るヨ
後は、よく話していた【人物】かナ


◆職員たち
子供たちとセするうちニ、話をする機会があるかもしれなイ
居なくなった子供の特徴ヤ、施設での子供たちの様子、流行り病や生活での困った事など
当たり障りない会話をしながら怪しい職員の目星をつけるべきだろうネ


クラウン・メリー
こんな沢山、孤児達がいなくなったり、職員が命を落としてるのに問題にならないなんて可笑しいよ!

俺はPOWで行動するよ。

とりあえず、何でも良いから
最近、どんな出来事があったか孤児達に話を聞く必要があるね!

外の人と喋るのはきっと緊張しちゃうだろうからまずは、ほぐしてあげないと!
ボールを4つお手玉のようにポイポイっと投げて、皆を驚かせよう♪

少しずつ俺の存在に慣れてきたら話を聞こう!

話を聞かせてくれたら、
ありがとうって言わないとね!
【光のウェーブ】で、孤児達を包んで祈るよ。これ以上いなくならないでほしい。俺が皆を守って見せるよ。


舞塚・バサラ
・SPD
まあ露骨に怪しいで御座るな。
しかし隠蔽が雑なのは…誘い込んでるか、それで問題ないと思ってるかの二択に御座るか
いずれにせよ虎穴に入らずんば…孤児を…(意図せずしてオヤジギャグ言ったことに気づき、誤魔化すように)やる事をやるで御座る!!!

【【忍び足】や【早業】【技巧:空渡り】を駆使して空いている窓や扉から孤児院内部に潜入。】【孤児がどういう理由で行方不明になったかが不明なので、孤児絡みの書類や、あるかもしれない隠し扉等に絞って探索を行う。】【見つかりそうになる前に、【逃げ足】【忍び足】【早業】【技巧:空渡り】某社製巻き付き式フックロープ等を活用して脱出する】
さて、某が何処まで探れるか…


栗花落・澪
いくら被害者が問題児ばかりだからって
放っておいていい理由にはならないよね

裏口や高所の窓など
空いてそうな場所からこっそり潜入を試みる
極力揉め事は起こしたくないからね…
なるべく少人数の職員さんを見つけて接触

「大丈夫、何もしないよ
僕は貴方達を助けに来たんだ」

満面の笑顔で声掛け
【優しさ、祈り、破魔】の力で心を開いてもらおうと…
え、【誘惑、催眠】?あはは、何のことかな
…まぁ、あんまりにも話してくれないようならちょっとした誘導はするかもね

この孤児院と院長について知ってる事
話せる限りでいいから教えてください
貴方達を助けるのに必要な情報なんです

話してくれたらお礼に飴をあげる
気持ち、少しは落ち着くと思うから


天星・零
『(明らかに行方不明者の出方がおかしすぎる‥)』


内部に忍び込み手がかりを探す
その間、自分はあたりに情報がないか【第六感・追跡】の技能を用いつつ探索を試みる
また、【第六感】で危険を察知した場合は【逃げ足】技能で危機回避を試みる

道中、施設の職員に遭遇できれば【変幻自在の影の住人】を職員の誰かに化けさせて、情報を聞き出そうと。
このとき可能なら、院長が今どこにいるかも聞いておく。

話さない場合はユーベルコードの影の刃を使い脅しをかける。

その間、自分はあたりに情報がないか【第六感・追跡】の技能を用いつつ探索を試みる

話させる場合、影の住人の口調はお任せ
キャラの口調はステシ参照


三原・凛花
施設の院長に直接会って聞き出したいけど、いきなり近付くのは無理だろうね。
わたしも孤児だと偽って、この施設に入り込んでみよう。
で、問題児ばかりが狙われるということだから、何か問題を起こしてみるかな。

例えば施設の職員と、ふしだらな関係になるとか……

まあ実際にしなくても、噂になるだけで充分でしょう。
そうなれば院長だって、わたしを黙って見ているわけにはいかなくなるだろうし。

で、向こうから近付いてきたら、この体でも何でも使って情報を引き出してみよう。
折角【コミュ力】と【恥ずかしさ耐性】があるわけだし。

ま、最後まではヤらせないけどね。
餌はチラつかせる程度に抑えておいた方が効果的だから。


リック・シックハント
【心情】
権力と一緒に責任もあるはずの院長さんが、このことを問題視してないのは怪しいよね。
この地域もヴァンパイアが支配してるみたいだし、問題児を彼らへの生贄に?
……ううん、怪しむ前に、まずは院長を調べてみよう。

【行動】
ボク自身はどこかしらに隠れて、【血霧の獣】を鼠の形にして院長を追跡させよう。
追っているのがバレないように、物陰から物陰へ、声や姿が見えるギリギリの距離を保つよ。
他の人との会話を聞いたり、隠してる物を見つけるのが主な目的だけど、他に院長を追いかけている人がいたら、手助けや陽動を買って出るね。



●孤児院『安らぎの里』
「……孤児院、か。実は僕もダークセイヴァーの孤児院出身なんだよね。問題児ばっかり、危ぶむ職員も姿を消す……。案外、この孤児院の背後に何かいるのかも? それに、僕ら孤児は労働力か、生け贄にされるか…ってことが多いからね」
 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は仲間達を引き連れ、事件が起こった孤児院にやってきた。
 孤児院のまわりは森で囲まれているものの、魔獣やヴァンパイアに襲われる事も無く、平和そのもののようである。
 そのため、安全面などの理由から、子供達が孤児院に預けられる事もあるらしい。
 しかし、子供が増えていくたび、行方不明になっている子供も増えており、常に一定の人数で保たれているようだ。
 この時点で『何かある』事は間違いないのだが、その話題に職員達が触れる事はない。
「こんな沢山、孤児達がいなくなったり、職員が命を落としてるのに問題にならないなんて可笑しいよ!」
 クラウン・メリー(オラトリオのピエロ・f03642)が、信じられない様子で口を開く。
 もしかすると、職員達は諦めているのかも知れない。
 迂闊な事をすれば、確実に命を落とすと分かっていたため、子供達を犠牲にしたのだろう。
「まあ、露骨に怪しいで御座るな。しかし、隠蔽が雑なのは……誘い込んでるか、それで問題ないと思ってるかの二択に御座るか。いずれにせよ虎穴に入らずんば……孤児を……ゲフン! と、とにかく、やる事をやるで御座る!!!」
 舞塚・バサラ(多面巨影・f00034)が意図せずしてオヤジギャグを言った事に気づき、激しく咳き込みながら何となく誤魔化した。
 そのおかげで、誰にも気づかれていないようだが、これは罠ッ!
 おそらく、黒幕的な誰かが仕掛けた最初のトラップ!
 そう思えてしまう程、作為的なモノを感じたが、あえて口にはしなかった。
「ねーねー、こんなトコロで何をしているの~?」
 そんな中、興味津々な様子で、子供達がワラワラと駆け寄ってきた。
 みんな孤児院を抜け出して、森の中を探検していたのか、身体には泥や葉っぱがついていた。
「ちょっと聞きたい事があるけど……いいかな?」
 ヴェルが新しい入った孤児のような雰囲気を漂わせ、まわりに集まってきた子供達に話しかけた。
「……ん? ひょっとして、新入りか?」
 ガキ大将タイプの子供が、不思議そうに首を傾げた。
 そのくらいしか、ここに来る理由が浮かばかったのだろう。
 まわりにいた子供達も、同じような結論に至ったのか、誰もヴェルを怪しんでいない。
「まあ、そんなところだね」
 ヴェルも子供達に話を合わせて、苦笑いを浮かべた。
「だったら、何でも聞いてくれ! 俺の名はガイラ! まあ、コイツらのリーダーみたいなモンだ!」
 ガイラがニカッと笑い、えっへんと言わんばかりに胸を張る。
 まわりの子供達は何やら不満げな様子であったものの、ガイラはまったく気にしていない。
「それじゃ、最近あった事を教えてくれるかい? その代わりイイモノを見せてあげるからさ」
 クラウンが何処からかボールを取り出し、まるでお手玉の如くポイポイと投げ始めた。
 それだけで子供達のワクワクは、止まらない。
 あったはずのボールが消え、意外な所から現れ、増えていく様は、まるで魔法のようだった。
「ピエロの兄ちゃん、すげえな! 俺も練習したら……って、そうじゃねえな。最近あった事だっけ? 特に何もなかったと思うけど……。まあ、俺達と同じくらいの奴が里親に貰われていったり、よく面倒を見てくれたオッサンが、いきなり辞めたりしたけど、ここじゃよくある話だしなぁ……」
 ガイラが何も知らない様子で、不思議そうに首を傾げた。
「教えてくれて、ありがとう」
 祖い言ってクラウンが、【光のウェーブ】で子供達を包む。
 『これ以上、いなくならないでほしい。俺が皆を守って見せるよ』と祈りを込めて……。

●孤児院の広間
「大丈夫、怖くなイ、怖くないヨ」
 一方、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は医師として、孤児院の広間で子供達の健康診断をしていた。
「「「「「「怖いッ!」」」」」」
 だが、子供達は色々な意味で、警戒ムード。
 『心を許したら駄目だ、絶対に殺られる!』と言わんばかりな様子で、ナハトを睨みつけていた。
「ハッハッハッハッ! 随分と苦戦しているようだが、大丈夫か」
 それに気づいた職員サージが、ナハトの様子を見にやって来た。
 何やら冴えない感じがするものの、子供達には信頼されているのか、ワラワラと後ろに隠れて、こちらを覗き込んでいた。
「まだ何もしていないのですガ。……難しいですネ」
 ナハトが困った様子で、ションボリと肩を落とす。
 別に何も悪い事はしていない。
 それ以前に、触れてさえいない。
 しかし、子供達はガタブル状態。
 まるで怖いモノでも見たような怯えっぷり。
 確かに、怪しい感じはするものの、見た目だけであって、中身は至ってクリーンである。
「まあ、仕方ないさ。最近、色々とあったからな」
 サージが苦笑いを浮かべて、子供達の頭を撫でた。
「子供達が行方不明になった件ですカ……? それとモ……いえ、何でもありませン」
 ナハトがサージの鋭い視線に気づき、途中で言葉を飲み込んだ。
 何やら冴えない感じがしていたものの、それは単なる勘違いだったのかも知れない。
「何やら妙な噂が流れているようだが、子供達は里親に貰われていったんだ。それを行方不明扱いするなんて……。子供達が不安になるから止めてくれ」
 サージが『それ以上、何も言うな!』と言わんばかりに、ナハトをジロリと睨みつけた。
 この様子では、何かを知っているのかも知れない。
 その上で、ナハトに釘を刺しているような印象を受けた。

●院長室
「まったく信じられんな。まだ来たばかりの孤児に手を出すとは……!」
 院長ルクセンバイルにとって、それは頭の痛い問題だった。
 職員のゼプーが、まだ孤児院に来たばかりの三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)を食糧庫に連れ込み、如何わしい事をしようとしたらしい。
 そのため、彼女の身体には、あちこち擦り傷が出来ていた。
 幸い、騒ぎを聞きつけた職員サージによって、凛花は助け出されたものの、もう少し遅ければ、どうなっていたのか分からないほど、酷い状況だったようである。
「そ、それは誤解です! この子が僕を誘惑しただけで! 僕は何も……していません!」
 ゼプーが真剣な表情を浮かべ、自らの無実を訴えた。
 実際にゼプーは、何もしていない。
 いや、正確には凛花を欲望の赴くまま、押し倒しただけである。
 その重みと勢いで、あちこち怪我してしまったものの、別に何もされていなかった。
 しかも、そのキッカケを作ったのが、こちら側なのだから、ある意味でゼプーは被害者。
 それが分かっていながら、凛花は自分を助けに来た職員に嘘をついた。
 『ゼプーに襲われ、穢れてしまった』と……。
 どうやら、ゼプーには前科があったらしく、彼が無実を訴えても、サージは信じようとしなかった。
「言い訳など聞きたくない! 私は言ったはずだ。二度とチャンスはない、と……! やはり、あの時に『処分』しておくべきだったな」
 ルクセンバイルが、ゼプーをジロリと睨みつけた。
「あれはサラが抵抗したから……! 悪いのは、あの子だ! 絶対に僕は悪くない……!」
 それでも、ゼプーは自らの非を認めず、自分が被害者である事を強調した。
「それ以上、喋るな。……お前には、失望した」
 そう言ってルクセンバイルが、ゼプーをドカッと殴りつけた。
「うぐっ!」
 その一撃を食らったゼプーが、間の抜けた声を上げ、床にグッタリと突っ伏した。
 そして、凛花も後頭部に激しい痛みを感じ、そのまま深い眠りにつくのであった。

●夜の孤児院
「……職員に話を聞こうにも警戒してるし、孤児達に何かあっても後味が悪いしな……。見つかったらシャレにならないが、やるしかないか」
 九重・伽耶(キマイラのブラスターガンナー・f00278)は自分自身に気合を入れ、子供達の就寝を狙って仲間達と孤児院に忍び込んだ。
 一応、定期的に職員が見回りをしているようだが、ほとんど形だけであったため、やり過ごすのは容易であった。
「それに、いくら被害者が問題児ばかりだからって、放っておいていい理由にはならないしね。極力、揉め事は起こしたくないけど……」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が辺りの様子を窺いつつ、複雑な気持ちになった。
 なるべくならば戦いたくはないものの、最悪の場合は戦わなければならないだろう。
 例え、それが人間であったとしても……。
「場合によっては、職員もグルって事もありますしね」
 天星・零(多重人格者の探索者・f02413)が第六感を駆使しながら、院長室を目指して進んでいく。
 職員の大半は既に就寝しているのか、部屋から出てくる様子はない。
 だが、何か……嫌な予感がする。
 まるで誰かに見られているような感覚……。
 それは院長室が近づくにつれ、次第に強くなっていた。
 もしかすると、罠かも知れないと思ったが、相手が職員であれば蹴散らしてしまえばいいだけの話である。
「その可能性は高そうでござるな。一応、里親に貰われていったと言う話になっているようでござるが、何やら口裏を合わせているような感じでござるし……」
 バサラも仲間達と合流し、警戒心をあらわにした。
 少なくとも、今まで調べた部屋に、そういった書類はない。
 居なくなった職員に至っては、まるで最初から存在していないような扱いであった。
 あと残っているのは、院長室だけ。
 だが、その扉には鍵が掛かっていた。
「とりあえず、壊すか」
 伽耶が、なるべく音を立てないようにしながら、院長室の扉を壊そうとした。
「そこで何をしているッ!」
 その途端、サージがランタンを掲げ、猟兵達の前に現れた。
 おそらく、後をつけてきたのだろう。
 それがいつからなのか分からないが……。
「コイツらが院長室のまわりをウロついていたから、捕まえたんだ!」
 すぐさま、零が【変幻自在の影の住人】を使い、見回りの職員に化けて事情を説明した。
 まさに間一髪と言う状況ではあったものの、上手く誤魔化す事が出来たようだ。
「……そうか。だったら、この事を院長に……いや、止めておくか」
 サージが猟兵達を照らした後、何やら考え事をし始めた。
「何か困った事があるなら力になるよ。僕達は貴方達を助けに来たんだから……」
 そんな空気を察した澪が、サージに駆け寄り、その手をギュッと握り締めた。
「いや、別に……そう言う訳じゃ……」
 サージが動揺した様子で、激しく目を泳がせた。
 何やら言いたい事があるような感じではあるものの、零の事が気になっているのか、何も言えないようである。
「何か事情を知っているようですね。良かったら、僕達に話してくれますか?」
 零が色々と察した様子で、元の姿に戻る。
「……って、誰だ。お前! ま、まあ、いいか。お前達が凄い力を持っているって言うのは理解した。だったら、まあ……話してもいいか。し、信用してもいいんだよな?」
 その事で緊張の糸が解れたのか、サージが念を押すようにして猟兵達に確認した。
「もちろん」
 澪に迷いはなかった。
 やはりサージは、何か知っている。
 それだけは間違いないのだから……。
「この様子じゃ、ある程度分かっているようだな。昼間の奴も何か知っているようだったが……。まあ、俺もお前達の監視を頼まれていたからな。だって、そうだろ。いきなり見知らぬ連中がゾロゾロと現れたんだから、警戒しない方がおかしいってモンさ。とにかく、お前等こっちに来い。詳しい話はそれからだ」
 サージが苦笑いを浮かべて、隣の部屋に猟兵達を誘う。
 そこは物置のようになっており、行方不明になった職員の私物と思しきモノもあった。
「ところで、話とは……」
 バサラが警戒した様子で、サージに視線を送る。
 ……これは罠かもしれない。
 そんな気持ちが脳裏を過る。
「ずっと、この時を待っていた。お前達のような奴らが来るのを、ずっとな。もう分かっていると思うが、俺達は身の安全を保障してもらう代わり、奴の言いなりになっていた。俺も含めて、個々の職員はみんな訳アリ。だから、そうするしか選択肢が無かったんだ。まあ、今となっては、綺麗事でしかないが……。結局は自分の命が惜しくて、見て見ぬフリをしていたんだからな。だから、お前達がヘマをしても、恨む事はねぇ……。むしろ、これは俺の罪滅ぼし。いや、それも単なる自己満足か。とにかく、真実を知りたいんだったら、院長の部屋に行け。これが、そのカギだ!」
 そう言ってサージが猟兵達に向かって、院長の鍵を放り投げた。

●院長室の地下
(「権力と一緒に責任もあるはずの院長さんが、このことを問題視してないのは怪しいと思っていたけど……」)
 そんな中、リック・シックハント(巡る旅人・f00522)は、【血霧の獣】を鼠の形にしてルクセンバイルの後を追跡させていた。
 ルクセンバイルは辺りに誰もいない事を確認した後、本棚の仕掛けを動かして、地下室に降りていった。
 そこでは何かの実験が行われているらしく、床を埋め尽くすほどの死体と流血が混じり合い、それが不気味にビクビクと動いていた。
「やはり駄目か。一体、何が間違っていると言うのだ! あの時と一体、何が……!」
 ルクセンバイルがイラついた様子で、足元の死体を見下ろした。
 死体だと思われていた『ソレ』は、異形の怪物と化した職員だった。
 かつて職員だった怪物には、幾つもの死体が繋ぎ合わされており、まるで呼吸をするようにして、身体に埋め込まれた子供の口から、大量の血が噴き出していた。
 よく見れば、まわりにあった死体も、同じような怪物で、院長の声に反応して、悲しそうに呻き声を上げていた。
「黙れ、失敗作共が!」
 それに気づいたルクセンバイルが、八つ当たり気味に、何度も怪物達を踏みつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『屍血流路』

POW   :    再び動き出さないよう、ひたすら破壊し燃やせばいいだろう。。

SPD   :    最奥にいる元凶を倒せばあるいはすべて解決できるだろう。

WIZ   :    再生の仕組みを解明すれば怪物を生み出せなくできるだろう

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

九重・伽耶
SPD
アドリブ歓迎、絡み歓迎

職員からもらったカギで院長室、そんでその奥の実験部屋へ。
地下まで来たなら、おやビックリ!
まるでフランケンシュタインの怪物でも作ってるみたいじゃないか!
まぁ、ここまで来てこんなもん見ちまったからには聞くしかないよな?
「へい、院長。何してるんだい? あの時って何のことだい?」

まぁ、こんな聞き方で答えてくれるかはわからないが、仲間が敵さんの仕組みを暴いてくれるまではのらりくらり話を続けさせてもらおうか?

院長が何かしら動きを見せたらクイックドロウで牽制、やばげだったら動かした場所を撃つなりで中断させてもらうぜ
ま、それで止まらないんだったら頭に一発、だな


三原・凛花
いたた……全く乱暴なことしてくれちゃって。
こっちは不老不死なだけのか弱い女の子なんだから、もう少し優しく扱って欲しいものだね。
まあ(色々な意味で)乱暴されるのには慣れてるから、別にいいけど。

ところでゼプーさん、生きてます?
生きてたらわたしに協力してくれません?
そうすればわたしを傷物にしたこと許してあげてもいいですよ?(本当はわたしから誘ったんだけど)

まあゼプーさんがどうなっていようと、やることは変わらないけどね。
一応核心には迫れているようだし、このまま調査を続けよう。

とりあえずここがどこで、今わたしがどうなっているかの確認だね。
【『聖霊』召喚】で、『聖霊』に周囲を探らせて情報収集するよ。


ナハト・ダァト
◆心情
あア。これハ…許せそうニ、無いなァ。
私が最も嫌う事ダ…。
未来を生きるものヲ…こんな形に、するのかイ…!?

◆行動
【WIZ】重視

【医術】【世界知識】【情報収集】を駆使して仕組みを探ろウ
任せたまエ。医療ハ私の得意分野。元が人体であるのなラ、解明できない仕組みなはないヨ。


手に入れた情報は皆と共有するヨ


◆UC
攻撃を受けそうになったら使用するヨ
関節の可動域、目、口、手の位置、それらを踏まえれば、死角の判別は容易サ。
回避には【残像】も使うヨ。液体らしく、流動的な素早さがこちらの利だからネ。
済まないガ、私には手の施しようがなイ…
だから、キミを理解するヨ。そんな醜悪な姿、二度と作らせるものカ


ヴェル・ラルフ
人体実験、なのかな。孤児の命なら使ってもいいとでも思ってるんだろうか。

とりあえず、死体とはいえこのままでは可哀想だし、利用されないとも限らないから、[目立たない][暗視][早業]で距離をつめて、ブレイズフレイムで燃やそう。

なるべく院長に見つかるのは遅れさせたいね。
確実に捕まえて、どういうことなのか説明してもらわなくっちゃ…

他のみんなが不意討ちするのなら、そのサポートを。
逃げるのを阻止するために後ろで控えていてもいいかなと思うよ。



●院長室の地下(?)
「いたた……全く乱暴なことしてくれちゃって。こっちは、か弱い女の子なんだから、もう少し優しく扱って欲しいものだね。まあ(色々な意味で)乱暴されるのには慣れてるから、別にいいけど……」
 三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)が目を覚ましたのは、何処かの地下室だった。
 一応、ベッドには寝かされていたものの、妙に……臭う。
 それは何かが腐ったようなニオイ。
 おそらく……死臭。
 ここでハッキリと断言する事は出来ないが、とにかく臭い。
 花がもげてしまうのではないかと錯覚してしまう程……臭い。
 そして、ベッドの傍には、ゼプーが立っていた。
 だが、ゼプーは何も喋らない。
 まるで置物、酔いどれ狸。
「ところでゼプーさん、生きてます? 生きてたら、わたしに協力してくれません? そうすれば、わたしを傷物にしたこと許してあげてもいいですよ?」
 凛花が思わせぶりな態度で、ゼプーにジリジリと迫っていく。
「うおおおおおおおおおおおお!」
 それに応えるようにして、ゼプーが全身からヘドロのような塊を垂れ流し、身体に浮かび上がった顔と言う顔から、大量の血を滝のように吐いた。
「……えっ?」
 それだけで、凛花はすべてを理解した。
 このままだとマズイ……。
 最悪、殺られてしまう、と……。
 とにかく、逃げねば……。
 そう思ってしまう程の大ピンチ!
 そのため、『聖霊』で周囲を探らせるのは、ここから逃げ出した後である。

●院長室の地下
「なんだ、これは……。まるでフランケンシュタインの怪物でも作ってるみたいじゃないか!」
 一方、九重・伽耶(キマイラのブラスターガンナー・f00278)はサージから受け取った鍵で院長室の扉を開け、仲間達と地下室にやって来た。
 そこに広がっていたのは、死体の山。
 しかも、ただの死体ではない。
 いくつもの身体を組み合わせて出来た不気味な死体の山であった。
「あア。これハ……許せそうニ、無いなァ。私が最も嫌う事ダ……。未来を生きるものヲ……こんな形に、するのかイ……!?」
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が信じられない様子で、足元の死体を見下ろした。
 それは子供達の身体を繋ぎ合わせたモノで、今にも消え去りそうな声で『助けて……怖いよ……』と繰り返し呟いていた。
 その上、こんな状態になっても痛覚が残っているらしく、少し触れただけでも『痛い、痛い』と言って大量の血を撒き散らした。
「まさか、孤児の命なら使ってもいいとでも思ってるんだろうか……」
 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)が複雑な気持ちになりながら、ブレイズフレイムで子供達の死体を燃やす。
 その途端、子供達の死体が『熱いよぉ~。誰か助けてぇ~』と言いながら、身体をグネグネと動かして、自らの肉体を再生させた。
 だが、その死体は先程と比べて不気味で、醜い姿になっていた。
「ガハハッ! そんなんじゃ、駄目だ。失敗作とは言え、どれもワシが造り出した作品……。この子達の生きたいと思う限り、肉体の再生は止まらないからな!」
 それに気づいたルクセンバイルが、奥の部屋から笑い声を上げて現れた。
 その途端、奥の部屋から扉を叩く音が聞こえてきたが、そこに誰がいるのか此処からでは分からない。
「まぁ、ここまで来てこんなもん見ちまったからには聞くしかないよな? 一体、何をしているんだい?」
 伽耶が攻撃を仕掛けるタイミングを窺いつつ、ルクセンバイルに視線を送る。
「そんなの、見ればわかるだろ。これは……実験だ。不老不死になるための実験。残念ながら失敗続きだか、例外もある。つまり、少しずつだが、成功に近づいているという訳だ。まぁ、そのためには、必要な犠牲ってヤツだな、これは……」
 ルクセンバイルがまったく悪びれた様子もなく、実験の成果を自慢げに語っていく。
 この死体の山を見る限り、一度や二度の失敗ではない。
 それこそ、沢山の命を犠牲にした結果が、コレである。
「だからと言っテ、何故こんな事ヲ……」
 ナハトには信じられない事ばかりであった。
 こうなったら、もう元には戻せない。
 これ以上、苦しませないようにするため、命を絶つのみである。
 しかし、それが本当に正しい事なのか、ナハトには分からない。
 こんな姿であっても、『生きたい』と思っているからこそ、肉体を再生しているのであれば、なおさらである。
「こんな事? お前等は、これが下らない事に思えるのか? だったら、何も分かっていない。ルールから外れた子供達を生かしておいたところで、ろくな大人にはならない。だったら、ワシが役立つ使い方をしてやろうという訳さ」
 ルクセンバイルが自らの歪んだ考えを、上機嫌な様子でペラペラと語っていく。
「とにかく、これは……捕まえた方が良さそうだね」
 ヴェルが色々な意味で危機感を覚え、ルクセンバイルに飛び掛かり、その動きを封じ混めようとした。
「クハハハハハッ! ワシが何も考えていないと思ったか。さあ、みんな! お外に行こう! 友達と一緒に遊ぼうじゃないか!」
 それに気づいたルクセンバイルが、興奮した様子で大声を上げる。
「お友達……アイタイ……アイタイ……アソビタイィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、死体の山がムクムクと起き上がり、呻き声を上げながら、部屋の外に飛び出す勢いで、ヴェル達に襲い掛かってきた。
「済まないガ、私には手の施しようがなイ……。だから、ここで終わらせるヨ」
 そう言ってナハトが怪物と化した死体に攻撃を仕掛けていく。
 だが、肉体の再生スピードが予想以上に早かったため、ここで食い止める事くらいしか出来なかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ナハト・ダァト
◆「真の姿」を使うヨ
ローブは薄灰色に、全身が白く発光する人影に
唯一顔と判別できる「目」らしきパーツも完全に消える
異界から召喚した触手で攻撃・防御を行う

◆UC、技能
【世界知識】【情報収集】で、あの子達の動きは把握しタ
【残像】【オーラ防御】を駆使して近づき叩きつけるヨ

最後は【祈り】を捧げるヨ
せめて安らかニ
キミ達の信ずるものとは違うが…祈れば叶う、というのは共通しているようだからネ

同じ場所にいる院長にも気を配るヨ
不意打ちとか、たまったものではないシ…
今回の首謀者である彼を
…私は、どうしてしまうか分からないからネ

連携をしてくれるものは、合わせてほしイ
今回私ハ、合わせようと気を配るのだけで精いっぱいだヨ


リック・シックハント
【心情】
オブリビオンは過去からやってくるもの。つまり、ヴァンパイアだって一度滅びた存在なんだよ。
本当の不老不死なんて、きっと何処にもないのに……
院長さんがしていることは、偽りの希望でしかないよ。

【行動】
【ライオンライド】で地下室に向かいながら、既に潜ませている【血霧の獣】で奥の部屋を確認してみるよ。部屋には院長も入っているはずだから、その痕跡を追跡させるなら原則には反していないし、霧の体なら少しの隙間があれば中に入れるはず。
もし誰か襲われているなら、【血霧の獣】の体当たりによる【目潰し】で時間を稼ぐよ。
部屋に到着したら【血霧の獣】で得た情報を大声で皆に伝えながら、そのまま奥の部屋に突っ込むよ。


ヴェル・ラルフ
う、燃やしても再生するのか…!
僕にできることは、他の仲間が仕組みの解明するのを待つ間、彼らを守りながら時間を稼ぐことぐらいかな。

子どもたちは可哀想だけど…そんな甘いこと言える世界に、生きてきてないし。
…冷たいって、言われても、いいよ。僕は、それでも、責任をもって命を断つ。

隙を見て、院長に近づけるなら背後に回って脅そう。元凶はこいつだもんね。
少し痛い目にあってもらいたいし…容赦はしない。

そして、ヴァンパイアの血を引く僕は、不老不死に関するある秘密を知っている…とカマをかけてみようかな。
興味を持ってくれたら、少しは解明の糸口になる情報を得られるかもしれないし、誰かが仕組みを解明してくれるかもだよね


三原・凛花
これはまずいね。
死ぬのは別にいいんだけど、このままだとただ殺られるより酷いことになりそう。
これ以上、死ぬより辛い目に合うのは流石に御免だよ。

とは言え普通に逃げても、足の遅いわたしじゃすぐ捕まるから。
【愛し子召喚】で、わたしの息子と娘達に足止めさせて貰うよ。
娘が強化したわたしの【呪詛】を、たっぷり息子に与えて強化させてね。
これで少なくとも逃げる時間位は稼げる筈。

「ゼプーさん、実を言うとわたし、あなたみたいに力づくで女の子を自分のモノにしようとする男って死ぬ程嫌いなの。だからちょっと荒っぽくなるけど、勘弁してね。いつかちゃんと成仏出来たら、そのサラって娘に謝ってきなよ」



●偽りの命を宿した怪物
「う、燃やしても再生するのか……!」
 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は押し寄せる怪物達を相手にしながら、その仕組みを解明するのでの時間を稼いでいた。
 怪物はいくら傷ついても、他の怪物と融合しながら復活し、再び襲い掛かってきた。
 おそらく、怪物達の目的は、子供達に会う事。
 ただ、それだけだった。
 だが、醜い姿になった彼らを、受け入れる者はいない。
 最悪の場合は怪物達が子供達を取り込む可能性もあるため、ここで足止めする以外に方法はなかった。
「ハハハッ! そんな事をやっても、無駄、無駄、無駄ァ! コイツらは、何度でも再生する! 例え、バラバラにされたとしても……!」
 院長ルクセンバイルが、勝ち誇った様子で高笑いを響かせた。
 その間も怪物達は再生を繰り返し、異形の姿に変化を遂げつつ、猟兵達に襲い掛かっていた。
「本当の不老不死なんて、何処にもないのに……。院長さんがしていることは、偽りの希望でしかないよ」
 リック・シックハント(巡る旅人・f00522)が黄金のライオンに騎乗し、悲しげな様子でルクセンバイルに視線を送る。
 その間も誰かが扉を叩いていたため、血霧の獣を使おうとしたものの、怪物達が邪魔をして、そこまでしている余裕はなかった。
「偽りの希望……違うな。真の希望だ! 彼らは、そのための犠牲なのだからなァ!」
 ルクセンバイルが猟兵達を見下した様子で、不気味な笑みを浮かべた。
 それに応えるようにして、怪物達も……笑った。
 だが、それは悲しく、寂しさすら感じる笑い……。
「さすがニ、これは許せないネ」
 次の瞬間、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が真の姿になって、ローブを薄灰色に変化させ、全身が白く発光する人影になった。
 しかも、唯一顔と判別できる『目』らしきパーツも完全に消え、異界から召喚した触手で、怪物達に攻撃を仕掛けていく。
「ウウ……ヤメテ……怖イ……怖イヨオオオオオオオオ!」
 そのため、怪物が悲鳴を上げても、容赦はしない。
 ここで攻撃を躊躇ったところで、怪物達の苦しみが長引くだけ。
 それは救いではなく、自己満足。
 すべての罪を背負う覚悟が出来たからこそ、ここで攻撃を止める訳には行かなかった。

●地下の通路
(「さすがにマズイ事になったわね。死ぬのは別にいいんだけど、このままだと、ただ殺られるより酷いことになりそうだし……。これ以上、死ぬより辛い目に合うのは流石に御免だよ」)
 一方、三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)は怪物と化したゼプーに追い詰められ、行き止まりの扉まで追い詰められていた。
 此処に行く途中、幾つも部屋はあったものの、すべて鍵が掛かっており、無駄に時間だけが費やしてしまった。
 そのせいで、ゼプーから逃げるタイミングを失ってしまい、このザマである。
 だからと言って、何もしない訳には行かない。
 何ともして、この場の危機を脱せねば、確実に……ヤラれてしまう。
 そんな考えが脳裏に過ぎっているせいか、凛花も必死ッ!
「ゼプーさん、実を言うとわたし、あなたみたいに力づくで女の子を自分のモノにしようとする男って死ぬ程嫌いなの。だからちょっと荒っぽくなるけど、勘弁してね。いつかちゃんと成仏出来たら、そのサラって娘に謝ってきなよ」
 すぐさま、愛し子召喚で息子の霊と、娘の霊を召喚した。
「ぶほおおおおおおおおおおおおおおお」
 それだけでゼプーは大興奮。
 色々なモノを昂らせ、ふたりの霊に抱き着こうとして……パァンと勢いよく弾け飛んだ。
「……えっ?」
 そのため、凛花は一瞬、何が起こったのか……分からなかった。
 ただひとつ理解できたのは、ゼプーが何らかの力によって、弾け飛んだ事くらい。
「呼んだ……?」
 そう言って黒衣の少女が全身血まみれになりながら、虚ろな表情を浮かべて、凛花に視線を送るのだった。

●偽りの命が尽きる時
「ドウシテ……ドウシテ……ドウシテェ……。痛イヨ……痛イヨ……助ケテヨ……」
 ナハトの度重なる攻撃で肉体を維持する事が出来なくなった怪物達は、スライム状になりながら、外に出ようと必死であった。
 それだけ、友達に会いたいのかも知れないが、異形と化した怪物に、かつての面影はない。
 だが……それでも『トモダチ』に……ただ一目でいいから、『友達』に会いたいと言う気持ちだけは伝わってきた。
「子ども達は可哀想だけど……そんな甘いこと言える世界に、生きてきてないし。…冷たいって、言われても、いいよ。僕は、それでも、責任をもって命を断つ。ただ、それだけだよ」
 ヴェルも覚悟を決めた様子で、怪物に攻撃を仕掛けていく。
 怪物はバラバラになったまま蠢いていたものの、再生能力が尽きていくのに合わせて、次第に動かなくなりドロドロに溶けて広がった。
「……せめて安らかニ。キミ達の信ずるものとは違うが……祈れば叶う、というのは共通しているようだからネ」
 そう言ってナハトが、怪物だったモノに祈りを捧げた。
「ち、畜生! お、覚えていろ! ワシには、まだやる事が……。不老不死の研究が完成するまで死ぬ訳には……。お、おい! ゼプー! コイツらを……あひっ!」
 そんな中、ルクセンバイルが捨て台詞を残して、後ろにあった扉の鍵を開ける。
 それと同時に、呪われた大鎌が振るわれ、ルクセンバイルの身体が真っ二つになって床に転がった。
 ルクセンバイルにとって、それは望まぬ最後であったが、それすらも理解する事が出来ない程の速さで瞬殺された。
「茶番は終わりよ、ルクセンバイル。やっぱり、貴方じゃ駄目ね。結局、器を用意できなかったんだから……。この子だって、いつまで持つか分からないのに、不老不死の研究って……。まさか、途中から私利私欲に走っていた訳? そんな事だから……って、もう死んでいるのね、残念……」
 黒衣の少女がルクセンバイルの死体を踏みつけ、皮肉混じりに呟いた。
「ひょっとして……、敵?」
 リックが警戒した様子で、少しずつ間合いを取っていく。
 今のところ敵か味方か分からないが、例えどちらであっても嫌な予感しかしなかった。
 それはまるで首元に刃物を当てられているような感覚。
 迂闊に動けば、死……あるのみ。
 そう実感してしまう程の威圧感。
「強いて言えば……敵ね。でも、勘違いしないで、不老不死に興味はない。私はただ器が欲しいだけ。それなのに、この人……勘違いをしてしまったようね。その上、妙な研究まで始めていたようだし……。まあ、あれよ。みんな悪いんだけど、死んでくれる? だって、ほら……どうせ生きていても、私の邪魔をするんでしょ? だったら、いらない。この子と違って、器にも相応しくないし……。だから死んで……邪魔だから……」
 そう言って黒衣の少女が凛花をぎゅっと抱き寄せ、猟兵達を見つめたまま、不気味な笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:花土竜

👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナハト・ダァト
◆引き続き「真の姿」

◆UC
【六ノ叡智・美麗】は深層心理も引き出ス
この孤児院で生活する子供達の希望…
事前に聞いてきた子供達の希望を仲間に伝えるヨ
共感したなラ…さあ、元凶を倒そうじゃないカ

【ブラッドガイスト】【一ノ叡智・王冠】
このUCで更に強化ダ

攻撃【滅悪の右手】も、真の姿では
触手から撃つヨ

◆心情
怒っているからこそ冷静なのサ
キミの様な罪悪感を持たない相手にはネ
私の猟兵としての目的は至極単純
美しいと感じる未来を創造する…生命を、尊ぶためだヨ
キミは美しくなイ、何故なら既に過去だからネ

◆事後
もう一度子供たちの診察へ向かおウ
まあ、怖がられるのは仕方なイ。慣れているからネ
私は、変わらずニ出来る事をするだけサ


三原・凛花
何でゼプーさんだけで、わたしは何もされなかったか気になってたけど。
わたしを器にする為、か。
まあそこは、一応お礼を言っておくね。

でも多分、あなたでも無理よ。
わたしから『聖霊』を追い出すのは。

けど折角だし、敢えて取り憑かれてみよう。
完全に乗っ取られる寸前、『聖霊』を『わたしの中』に召喚して、黒衣「本体」に直接ぶつけるよ。
わたしを巡って悪霊同士の憑依合戦…
全然嬉しくないけど。

もし『聖霊』に勝てたらあなたの器になるけど、負けたときは…
『聖霊』はとても執念深いから、わたしを奪おうとしたあなたを許さない。
報復として、あなたに不幸を齎すよ。
例えば『なぜか【眷属】が制御不能になって自分に攻撃してくる』とかね。


ヴェル・ラルフ
この少女が黒幕なのか…!いや、外身は利用されてしまった子なんだろうな。

しかし、凛花が捕らわれているから、下手に動くのは得策じゃないね。
彼女が抜け出すまでは時間を稼ぐか…凛花が抜け出すことに成功したら、すぐさま行動に移そう。

[ダッシュ][フェイント][2回攻撃]
陽炎空転脚でフェイントをかけてから2回目の攻撃で狙うよ。
彼女が僕に気をとられたら隙もできるだろう
その隙を狙って他の仲間たちが止めを刺してくれるかもしれないしね。

彼女が意図したことでなくても、自分の我儘が命を奪ったんだ。
腐った魂は、どんな器に入っても醜いよね。



●ゼラの死髪黒衣
「この少女が黒幕なのか……!」
 ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は黒衣の少女と対峙しつつ、警戒した様子で間合いを取った。
 おそらく、外身は器として利用されてしまった少女のモノ。
 既に少女の意識は消失しているのか、サラだった頃の人格を確認する事は出来ない。
 しかも、三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)が人質に捕らわれているため、下手に動くのは得策ではなかった。
 だからと言って、このまま動かなければ、呪われた大鎌によって、命を奪われてしまうのは確実である。
「黒幕……? ちょっと違うわね……。私は、私……。ただ、それだけよ……。
でも、あなた達が私にとっての『障害』である事は間違いないわ。だって、邪魔だもの。だから死んでほしいの。出来れば、自害して……。少しだけ待ってあげるから……。最後くらい潔く死んで……」
 黒衣の少女が、猟兵達に冷たい視線を送る。
 自分の手を汚すのが嫌なのか、猟兵達が自害する事を望んでいるようだ。
(「何でゼプーさんだけで、わたしは何もされなかったか気になってたけど、わたしを器にする為、か」)
 凛花が妙に納得した様子で、黒衣の少女に視線を送る。
 おそらく、黒衣の少女は気づいていない。
 それが不可能である事に……。
 気づいていないからこそ、彼女を殺さず、生かしたままにいているのだろう。
 もちろん、それがバレたところで、命を奪われるつもりはないのだが……。
「そんな事のためニ、子供達ヲ……」
 そんな中、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が【六ノ叡智・美麗】を使い、事前に聞いてきた子供達の希望を仲間に伝えた。
 その中には怪物と化した子供達の夢も……あった。
「別に……私が頼んだわけじゃないし……。私は、ただ器が欲しかっただけ……。私を受け入れるだけの力を持った器をね……。それなのに、ルクセンバイルが適当な子ばっかり連れてくるから、こんな事になっているんだし……」
 黒衣の少女がまったく悪びれた様子もなく、すべての責任をルクセンバイルに押しつけた。
 ふたりの間に、どんな約束があったのか分からないが、もしかすると彼女の知識と交換に取引を持ちかけたのかも知れない。
 だが、ルクセンバイルは、その知識を使いこなす事が出来ず、怪物ばかりを生み出してしまったのかも知れなかった。
「でも、あなたじゃ無理よ。わたしから『聖霊』を追い出すのは……」
 凛花が黒衣の少女を見つめたまま、躊躇う事なくキッパリと言い放つ。
「まさか、既に誰かが入っているって事……!? し、信じられない……。全然、気づかなかったわ……。だったら、いらないわ。そんな穢れた器。だって、私に相応しくないモノ。私に相応しいのは、綺麗な器……。私と同じで、清い存在じゃないと駄目だから……」
 黒衣の少女が興味を無くした様子で、凛花を突き飛ばした。
 彼女にとって、器以外は無価値なのだろう。
 もしかすると、過去にも似たような事があり、肉体を奪う事が出来ず、手痛い失敗をしたのかも知れない。
「……と言うか、腐った魂は、どんな器に入っても醜いと思うけど……。それなのに、綺麗な存在って……。本当に何も分かっていないんだね。自分がどんなに醜く、穢れた存在なのか、まったく理解していないんだから……」
 ヴェルが陽炎空転脚でフェイントをかけ、黒衣の少女の攻撃を仕掛けていく。
「私が……穢れている? この私が……」
 黒衣の少女が信じられない様子で体を震わせ、傷ついた肩を庇うようにして、猟兵達をジロリと睨みつけた。
 既に肉体が限界に達しているのか、身体のあちこちに無数のヒビが入っていた。
 おそらく、後もう少し……。
 もう少しで倒す事が出来る……はず。
「あア、キミは美しくなイ、何故なら既に過去だからネ。キミの様な罪悪感を持たない相手ハ、躊躇う事なく倒す事が出来る分、私にとっては都合がいいけド……」
 ナハトが静かな怒りを漂わせ、異界から召喚した触手で、黒衣の少女を攻撃した。
 この場所で散った子供達のためにも、ここでは退けない。
 ……退ける訳がない。
 例え、目には見えなくとも、彼らの想いが形となって、ナハト達の心に宿っているのだから……。
 まるで沢山の子供達に護られているような錯覚を受けつつ、ナハトが再び異界から召喚した触手で、黒衣の少女を攻撃しようとした。
「クッ……クハハハハッ! お前達は何も分かっていないようだなッ! まさか、怪物達がアレだけだと思っていたのか? 奥にまだいるんだよ、職員達を使って作った怪物達がなァ!」
 そう言って黒衣の少女が荒々しい口調で言葉を吐き捨て、パチッと指を鳴らして扉の鍵を解除すると、奥の部屋に待機していた怪物達を呼び出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九重・伽耶
アドリブ歓迎、絡み歓迎

真の姿を開放、ブラスターを持った右手を起点に回路状のレイラインが、体を走り発光する。
そしてアームドフォートを展開起動する。

【一斉発射】【野生の勘】を使用。

さて、出遅れちまったけど仕事をするか。
さぁ、嬢ちゃんおいたはおしまいでねんねの時間だぜ?
んでもって…いつまでも死者を貶してんじゃねぇよ、ノーバディ。

フルバースト・マキシマムで怪物どもを薙ぎ払うぜ。
怪物の始末が終わったら、黒衣の少女をブラスター銃込みでぶち抜かせてもらうぜ。
いい加減その体も持ち主も寝かせてやらないといけねぇからな。

ああ…もちろんお前のことじゃねえからな?ノーバディ?


ナハト・ダァト
◆真の姿を維持
[情報収集][医術][世界知識]デ構造は把握しタ
速やかに楽にできるヨ
最も彼らモ君に唆さレ、自業自得だったかもしれないガ

救える命とそうでない命、見極められなければ医者など名乗ってハいないヨ

先程は迷いで触手が鈍っタ
私もまだ未熟だネ

[傷口をえぐる][だまし討ち]デ
元凶の彼女と戦うヨ
死角、弱点を突いて彼女には散ってもらおウ

命の価値なド、キミの勝手な押し付けダ
本当は誰にも決められなイ。我々にもネ

不老不死など何も面白くなイ
変わらない営みに待っているのハ停滞サ
有限だからこソ命は美しイ

◆事後
再度孤児院の皆の診察をさせて貰おウ
何かされていないとも限らないようダ

…未来を築く命を救うのガ私の仕事だヨ


三原・凛花
興味を失くして解放してくれたのは有難いんだけど、何か複雑な気分……

まあそれはさておき、死ぬことすら出来ず再生を続ける怪物か。
他人とは思えないね。
わたしにとっても、『この子達』にとっても。

【水子召喚】で、『わたしの子供達と、そのお友達』を呼び出すよ。
この子達も、『生きたい』し、『遊びたい』し、『お友達に会いたい』の。

だから怪物さん。
あなたもこの子達に取り込まれて……新しい『お友達』になってあげてくれないかな?



●黒衣の少女
(「興味を失くして解放してくれたのは有難いんだけど、何か複雑な気分……まあそれはさておき、死ぬことすら出来ず再生を続ける怪物か。他人とは思えないね。わたしにとっても、『この子達』にとっても……」)
 三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)は何とも言えない気持ちになりながら、通路の奥を眺めていた。
 そこから現れたのは、不慮の死を遂げた職員や、行方不明になった職員で作った怪物達。
 怪物達は虚ろな表情を浮かべたまま、黒衣の少女の指示に従って、フラフラと頭を揺らしながら、猟兵達に襲い掛かってきた。
 どうやら、怪物達は自分達の意志が無いらしく、黒衣の少女には忠実なようである。
 それでも、わずかに職員達の意識が残っているのか、時折とても苦しそうな表情を浮かべていた。
「さて、出遅れちまったけど仕事をするか。さぁ、嬢ちゃんおいたは、おしまいでねんねの時間だぜ? んでもって……いつまでも死者を貶してんじゃねぇよ、ノーバディ」
 それを迎え撃つようにして、九重・伽耶(キマイラのブラスターガンナー・f00278)が真の姿を解放し、ブラスターを持った右手を起点に、回路状のレイラインが体を走って発光させて、アームドフォートを展開起動した。
 だが、怪物達は怯まない。
 それどころか、逆にその光に導かれるようにして、ワラワラとまわりに集まってきた。
「そうだ、その調子だ! まずはソイツから、ぶっ殺してやれ!」
 黒衣の少女が見た目からは想像が出来ない程、ドスの利いた声を響かせ、怪物達を煽って煽って煽りまくった。
 それに応えるようにして、怪物達も唸り声を響かせながら、伽耶に襲い掛かってきた。
「救える命と、そうでない命、見極められなければ医者など名乗ってハいないからネ。だかラ……みんな楽にしてあげるヨ」
 すぐさま、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が深淵から召喚した触腕で、怪物達を容赦なく攻撃した。
 残念ながら、怪物と化した彼らを救う術はない。
 場合によっては命を落としている可能性もあるため、例え救える手段があったとしても、既に手遅れであった。
 しかし、怪物達はいくら傷ついても、そのたび再生を繰り返し、原形を留めていないほど、異形の怪物と化していた。
 それが原因で黒衣の少女に近づく事さえ出来ず、まるで生きた壁を攻撃しているような錯覚に襲われた。
「まさか、自分は何もせずに高みの見物か? いい加減、その体も持ち主も寝かせてやらないといけねぇんじゃねえのか」
 伽耶が黒衣の少女に語り掛けながら、フルバースト・マキシマムで怪物達を薙ぎ払う。
 それでも、怪物達は残った身体を繋ぎ合わせるようにして、徐々に体を再生していった。
「アハハッ! 無駄、無駄、無駄! いくら壊したって、そいつらは再生するんだから! さっきの子供達とはケタ違いにね!」
 黒衣の少女が不気味な表情を浮かべ、怪物越しに猟兵達を挑発した。
「でも、みんな寂しそう。この子達も『生きたい』し、『遊びたい』し、『お友達に会いたい』の。だから怪物さん。あなたもこの子達に取り込まれて……新しい『お友達』になってあげてくれないかな?」
 凛花が水子召喚を使い、自分の子供達と、そのお友達を呼び出した。
 それに気づいた怪物達が、その子達を取り込むと、何を思ったのか踵を返し、黒衣の少女を見下ろした。
「ど、どうした!? 敵はあっちだ!」
 黒衣の少女が、動揺した様子で叫ぶ。
 だが、怪物達の心には届いておらず、まったく命令を聞こうとしない。
「ママァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!」
 次の瞬間、怪物達が甘えるようにして、黒衣の少女に飛び掛かり、互いに奪い合うようにして肉を引き千切り、食らいついたまま融合していき、ひとつの塊になった。
 その塊は黒い煙が上がったのと同時にドロドロと溶けていき、最後にはジュッと音を立てて蒸発した。
 そして、その後には何も残らなかった。
「きっト、みんな寂しかったんだヨ。さテ、再度孤児院の皆の診察をさせて貰おうカ。何かされていないとも限らないしネ。……未来を築く命を救うのガ、私の仕事だヨ」
 そう言ってナハトが、ゆっくりと階段を上っていく。
 この後、孤児院がどうなるか分からない。
 しかし、最後まで自分の役目を果たすつもりでいるようだ。
 その前に、何とかして子供達の信頼を得なければならないが、今ならきっと大丈夫。
 この身に宿った子供達の魂が、味方してくれる今ならば……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月03日


挿絵イラスト