平野に浮かぶ丸く大きな月は、奇妙な色をしていた。
いつもは白銀の光放つ月が、今は薄紅色に染まっている。その様はこの世のものとは思えぬ程美しく、しかし恐ろしささえも感じさせるものであった。
そんな平野に、無数の人影が走る。
彼らは全身を鎧に包み、鋭いハルバードを携えていた。その統率は高く、一糸乱れずに足並みを揃えている。
彼らを後方から追いかけるのは一人の若侍。おそらく、彼がその一隊を指揮している大将である。
青年は薄紅の月を見上げ、そっと呟く。
「姫……今、お迎えに上がります」
彼らの向かう先には、小さな村があった。
●グリモアベースにて
ざわめくグリモアベースに、一人のケットシーがやってくる。
彼は羽織を靡かせその場にあった椅子にぴょんと飛び乗ると、目前に集まった猟兵達へ説明を始めた。
「皆の衆、よく集まってくれた。それがしはケットシーの剣豪、久遠寺・篠だ。早速だが、皆の衆には急ぎサムライエンパイア世界に向かってもらい、村を襲撃しようとしているオブリビオンの一隊を止めて欲しイ」
篠はそう説明しながら、高い木もない開けた平野と、その中を抜けている街道の風景画、さらにその先にある村の絵を提示する。
「村は街道の通り道で、物流を司ることで生計を立てている小さな村だ。そこまでオブリビオンが到達してしまえば、被害は甚大。そこで、皆の衆には街道の途中で敵を迎撃してもらいたい」
さらに提示するのは、前進を鎧に包んだ武士と、死神を背負う侍の姿絵。
「村への襲撃を企てているのは伝来の異教を信仰する武者達と、その指揮を完全に取っている『雷切丸』という人斬りだ。この雷切丸、どうも生前恋慕していた亡き姫の復活を望み、悪事と承知の上で人を殺しているようだ」
篠は話しながら、僅かに髭を下げた。
「その一途な想いには感ずるところもないではないが、無論放っておくわけにはいかない」
そこで一度言葉を切ると、白木で組まれた東屋の絵を載せる。それは通常の東屋よりも大きく、床は高く板張りになっているようだ。
「これは村にある月見堂だ。村には、この月見堂で月に酔いながら想いを語り明かすという風習がある。ここで語ったことは、その想いがより強固になると信じられているようだ。せっかくの妙なる満月の夜。戦いが無事に片付いた暁には、向かってみるのも良いかもしれぬな」
篠は広げていた資料を全て回収すると、それらをまとめて文にし、表に『依頼状』と認める。
「どのような想いを抱えた者だろうが、人に仇なす者を放っておくわけにはいかない。皆の衆、頼んだぞ」
三橋成
皆様こんにちは、三橋成(みはし・せい)です。
今回は夜の平原を通る街道で、オブリビオンの武者の群れを迎撃していただく依頼になります。
戦場も平原、付近に守るものもない純戦になりますが、オープニングにもありましたように切ない思いの敵になりますので、少々しっとりした雰囲気になるかと思います。
第3章は村の月見堂で月を眺めながら思い思いの一時を過ごしていただけますが、俺は群れないぜ……という方は平野での描写も可能ですので想いの独白などでも結構です。
皆様と共に格好良い物語を紡いで参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『切支丹武者』
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POW : 騎馬突撃
自身の身長の2倍の【軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
SPD : 後方支援
【切支丹女武者】の霊を召喚する。これは【鉄砲による援護射撃】や【一斉掃射】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 主の裁き
【ハルバード】を向けた対象に、【天からの雷】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:森乃ゴリラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大崎・玉恵
【WIZ】
想いのために骸の海から這い出てくるとは……少々、羨ましくもあるのう。
言うてやりたい事はそれなりにあるが、まずはこやつらを片付けねばな。
雷の落ちる場所を【野生の勘】で読み致命打を避けつつ、【式陣・朱天照】で奴等を【範囲攻撃】し鎧ごと焼き払う。鉄は熱を持つじゃろう、古来より武者に熱は大敵じゃ。
直接切り込まれたら薙刀で相手をする。街道じゃし左右から回り込みづらい地形を探せば一人でもある程度は集団でかかられても攻撃を弾けるじゃろう。【2回攻撃】すれば二人まで弾けるかのう。
弾きつつ隙を見て炎を向けよう。
お主らの前にいるのは神となりし大妖狐じゃ、明日の朝日は拝めぬと知れ。
鈴木・志乃
あんたの姫様は本当にこんなこと望んだのか?
愛した人を亡くした者として
あたしは絶対にあんたを止める!【祈り】
敵UCが厄介だな
UC【意志の花】でとにかく派手に、目眩ましのごとく攻撃して視線を【誘惑】する【衝撃波】
猟兵どころじゃないぐらいにね!
事前に砂も拾っておこう
鎖と一緒に【早業、投擲、念動力】で目潰しだ
風を巻き上げて土埃を起こし
無理矢理にでも敵を【なぎ払う】
個体の攻撃は【第六感】で【見切り】
【ダッシュ、スライディング】で回避
【オーラ防御】常時発動
ああ、もうなんでこういうことするかな
分かるよ
でもね、絶対望んでないよ彼女は
あんたが一番分かってるはずだ
……あたしが夢を見せてあげる
そこまで必ず辿り着く!
御鏡・十兵衛
亡き姫への恋慕故に、でござるかぁ。
すまぬが某にはわからぬ類いの気持ちでござるな。
まぁ、どちらにせよ悪事は悪事、どう取り繕っても人斬りは人斬りにござる。
刃を鈍らせる義理は、ありませぬな。
と、まずは前哨戦……切支丹の者にござるな。あれがはるばぁど、それにてつはうにござるか。
押さえ込まれて鴨撃ちにされては堪らぬな、まぁそうはならぬでござるが。
ゆーべるこーど発動にござる。
幻と現の境など曖昧なモノ……こうして斬れば、これこの通り。
既に貴殿らの姿は『写した』距離があろうと、隠れようと、もはや逃がれることは出来ぬ。
ではいざ――その首、頂戴する。
クー・フロスト
チーム:死神と機兵
配置:後衛
アドリブ◎
――
●心情
オブリビオンの一隊か、小さい村だけど
襲撃を事前に防げる事が出来るなら
猟兵として助けにいかない訳にはいかないな
ステラ殿、アルフォート殿
準備はいいかな?では、参ろうぞ
●儀式魔術の準備
死を導く者を死神という
お前達を討滅するのが私の役目だ
私の周囲に無数の魔法陣を広げて、大雪を降らせる
大魔術の為、隙が生まれてしまうので
その間、助太刀頼む(技能:力溜め)
●氷雪世界
貴様達に、氷の世界を魅せてやろう
――発現。氷雪世界フロスト・シュネーヴァイス
魔術の発現でUC発動(技能:一斉発射、属性攻撃=氷)
遠くまで光線を延ばし(スナイパー)
ビームを左から右に、振り敵をなぎ払う
ステラ・ハシュマール
チーム死神と機兵で参加。アドリブ歓迎
ポジション前衛。
小さい村ではあるけど、オブリビオンの拠点にするわけにはいかないね。当然助けにいかせてもらうよ。
ボクは大丈夫だよ二人とも。じゃあ行こうか。
ユーベルコード紅蓮烈火ノ大鮫を発動してフロストさんの隙を狙わせないように壁のごとく立ちふさがりながら攻撃するよ。巨体の鮫が暴れる姿は【敵に恐怖を与える】だろうし、いい援護になるはず。またイグニスさんを尾びれで空中に飛ばして攻撃力上昇の手助けをさせてもらおう。
「骨の髄まで燃やし尽くしてあげるよ!」
アルフォート・イグニス
チーム:死神と機兵
アドリブ可
【】内のは技能です
ポジション:前衛
よろしく頼む、二人共(今回の依頼仲間二人に声を掛け)
戦闘前に地面と同化して離れた場所にいる敵軍の人数、布陣、装備を【情報収集】を使い補助電脳も使ってデータとして纏め味方に共有。その後味方と自分の武具と同化して【武器防具改造】を行い強化。
そして味方UCの力を借りて上空を飛びあがり勢いをつけ自らのUCを敵の密集地帯めがけ発動【怪力、範囲攻撃、衝撃破】。
敵の死骸があればそれを全て同化吸収して自らの力に変えながら前衛で暴れ続ける。尚怪我を負っても同化するものさえあれば吸収して治そうとします。
彼女が同化吸収した物は全て結晶になり砕け散る感じで
吉備・狐珀
器を壊された兄の死を受け入れられず人形に魂を封じ込めた私が言うのも何ですが、一度死んだ人を生き返らせても幸せになんてなれません。
UC【青蓮蛍雪】使用。武者の足場を凍らせ軍馬ごと動きを封じる。女武者の援護は氷で壁を作り防ぐ。ハルバートを此方に向けられる前に兄上の炎で攻撃を仕掛けます。
もの言わぬ人形にしてまで生命を此の世に私は繋ぎ止めたかったのか…。あるのは疑問と後悔だけ…。
●決意
薄紅の月が浮かぶ、平原を貫く街道。その上に、人影が一つ、また一つと増えていく。彼らは猟兵。背後の道の先にある村を守るための、防波堤だ。
「想いのために骸の海から這い出てくるとは……少々、羨ましくもあるのう」
大崎・玉恵は毛並み美しい狐の尻尾をふさりと揺らし、グリモアベースで聞いた敵の情報について想いを馳せた。
「亡き姫への恋慕故に、で、ござるかぁ」
その言葉に同じように想いを巡らせ、しかし、御鏡・十兵衛は緩やかに首を振る。
「すまぬが、某にはわからぬ類いの気持ちでござるな」
十兵衛の露わになっている右目は真っ直ぐに、ただ街道の先を見据える。そこからやって来る敵に備えるために。
「まぁ、どちらにせよ悪事は悪事、どう取り繕っても人斬りは人斬りにござる。刃を鈍らせる義理は、ありませぬな」
「そいつの姫様は、絶対に殺戮なんか望んじゃいないんだ」
十兵衛の隣に並び、鈴木・志乃は静かに、しかし強き口調で言い切った。
「同じく愛した人を亡くした者として、あたしは……それを止める」
志乃の決意に、吉備・狐珀もまた、呼応する。
「一度死んだ人を生き返らせても、幸せになんてなれません」
しかし彼女の視線の先には、自身の使う大型のからくり人形があった。その人形に封じ込めているのは、彼女の亡き兄の魂。
その言葉を言う資格が己にあるのかと、狐珀は自問する。それでも。
「……来たな」
街道の向こうに見えた影、風に乗って届いた足音と、甲冑の金属音にクー・フロストは藍の視線を上げた。
その群れの影は濃く、次第に近づいてくる。その蠢きようは、何か未曾有の大きさの生物かのように思われたが、近づくにつれ、異常に統率のとれた軍隊だということが分かる。
「オブリビオンの一隊か。ステラ殿、アルフォート殿。準備はいいかな?」
クーは、己の左右に立つ仲間へと視線を走らせる。
「村をオブリビオンの拠点にするわけにはいかないね。ボクは大丈夫だよ」
視線に応え、ステラ・ハシュマールが一歩前へと進み出る。
「私も万事用意は出来ている。よろしく頼む、二人共」
そこへ、アルフォート・イグニスも前へと出て並ぶ。それが、彼らの隊列だった。
冷気を纏う大鎌を振り上げ、クーの表情は凛と冴えていく。
「では、参ろうぞ」
●合戦
戦いは、街道を塞ぐよう並ぶ猟兵達の壁に、切支丹武者が、波が押し寄せるように当たっては砕けていく形で進行していった。
それだけ、統率の取れた彼らを個々に切り離すのは困難なことだったのだ。
武者の波に先が見えず、未だ大将の姿は見えない。
「言うてやりたい事はそれなりにあるが、まずはこやつらを片付けねばな」
玉恵は妖狐故の天性の勘で、降り注いだ雷を間一髪で避けながら、指に挟んだ霊符を放った。
「夜とて、昼と染めようぞ」
霊符は宙で分裂し、数多増えると一斉に燃え上がる。それは彼女の操る狐火。面で当たりに来る武者複数名を一度に焼いていく。
「鉄は熱を持つじゃろう、古来より武者に熱は大敵じゃ」
その言葉の通り、炎に巻かれた武者達の甲冑の隙間からは、苦しげな蒸気が上がっていた。
隙を逃さぬよう、玉恵は薙刀を構えると身軽に跳び、狐火に巻かれた武者を薙ぎ払っていく。
「お主らの前にいるのは神となりし大妖狐じゃ、明日の朝日は拝めぬと知れ」
太陽の熱を集めたかのような妖狐の緋色の瞳が、愉快そうに笑っていた。
まるで雨のようにあちこちに降り注ぐ雷の間を、志乃が駆け抜ける。
その手のひらに巻きつけているのは光の鎖。淡い輝きは、世界を照らし、人々の幸福の為にそこにある。
「ああ、もうなんでこういうことするかな」
しかし、志乃の裡に渦巻いているのは、この一隊の向こうにいるはずの、敵への鬱屈とした想い。
相対した敵へ向け、鎖を向けるとそこから眩い光の大花火を放つ。その光の清らかさは辺りの敵を飲み込み、炸裂させては彼らの存在そのものを消滅させていく。
「分かるよ……でもね、絶対望んでないよ、彼女は。本人が一番分かってるはずだ」
瞬間、倒れた敵の奥にいた武者が、志乃へハルバードを向けていた。あっと思う間もなく、落とされる雷。
頭上から、雷は確かに彼女に直撃した。音を聞いているだけでも鼓膜が破れそうな程の轟。
「……あたしが、夢を見せてあげる」
だが、志乃の闘志は決してくじけてはいなかった。
「そこまで必ず辿り着く!」
空になった甲冑を飛び越え、白き翼を羽ばたかせ再び駆け出す。その後を追う風に、砂埃が巻き上がっていた。
一方、新たに女武者が召喚され銃撃が飛び交う中、十兵衛はどこか呑気にかまえていた。
「あれがはるばぁど、それにてつはうにござるか。切支丹の者にござるな」
サムライエンパイアの者からすれば物珍しい敵の装備を観察する余裕さえある。
「このまま押さえ込まれては堪らぬな、まぁ、そうはならぬでござるが」
撃ちかけられた弾丸をその身に受けながら、しかし十兵衛は動ずることなくゆっくりと、右目を開いた。
その瞳の色を、何と形容すべきだろう。鏡を見て、何色だと断言できる者がいようか。その色がわかる時、それは写し込む世界が消滅した時に他ならない。
「夢幻を斬り、現に写すはミカガミの神髄なれば」
瞳に映った武者の姿。それは幻として彼女の目前に現れた。
「既に貴殿らの姿は『写した』。距離があろうと、隠れようと、もはや逃がれることは出来ぬ」
十兵衛は鞘から刀をゆっくりと引き抜く。その刃もまるで澄み渡る水面のように透き通り、眼前に居並ぶ幻の武者たちの姿を写し込み。
「ではいざ――その首、頂戴する」
刃は幻の群れへ向け、真横へと薙いだ。背後で彼女へ撃ちかけていた女武者諸共、武者達の首が飛んだ。
「死を導く者を死神という。お前達を討滅するのが私の役目だ」
大地に仁王立ちになり、クーは握った大鎌を自身の周囲へ振り回す。その先から描き出されるのは、暗き地に青白い光で浮かぶ魔法陣。
「踊る、踊るよ、雪の精霊! 雪よ! 雪よ降れ!」
彼女の呼びかけに応えるように、クーを中心として魔法陣の範囲が少しずつ広がっていく。その魔法陣の大きさが、構築する魔術の規模の大きさをそのまま反映していた。
そして魔力の集中と詠唱に専念する彼女を守るよう、ステラとアルフォートが立ち塞がる。
「我が肉体は地獄の業火、写す姿は我が本能! 顕現せよ、紅蓮を纏いし烈火の大鮫! 紅蓮烈火ノ大鮫!!」
その小柄な体から発されたものとは思えぬ程の大声を上げ、ステラは天へと腕を伸ばす。
変化は、その腕の先から現れた。
どこからともなく、体が燃える。否、燃えているのではなく、身そのものが焔へ変化しているのである。地獄の業火はうねり、膨張すると巨大な鮫の姿へと変わった。
「骨の髄まで燃やし尽くしてあげるよ!」
彼女の声は、まるで空間に木霊するように響く。
宙を泳ぐ焔の鮫は新たに出現した女武者が放つ一斉掃射に飛び込み、弾丸を己が身に負い防ぐ。再び身をくねらせれば、辺りの武者を薙ぎ払った。
「良き戦果が上がっているぞ、ハシュマール」
敵全体の動きを俯瞰するように観察し、アルフォートは金の瞳を瞬かせる。その美しき瞳は、しかし義眼である。
サイボーグである彼女の瞳は空間を、敵の群れを数値として捉え、膨大なデータを高性能な電脳で処理する。
敵を蹴散らすステラの働きに称賛を送りながら、アルフォートはデータの解析によって、敵の弱点とも呼べる密集地帯を割り出した。
「ハシュマール、力を貸せ」
アルフォートは駆け出しながらステラへ合図を促す。地を蹴り跳躍した瞬間、その下へと入ったステラが尾鰭でアルフォートを天高く跳ね上げた。
空を舞い、一回転。月光に輝く美しき灰の髪を靡かせ、アルフォートは落下速度をも運動エネルギーとして加えた超重の踵落としを炸裂させる。
その一撃を脳天に直撃された武者は勿論、地面は砕け周囲に密集していた武者達が砕け散った。
連携から生み出された迫力のありすぎる一撃に武者が僅かたじろぐ、が。瞬間響いたのは馬の嘶き。
馬自身も鎧を纏った軍馬に騎乗し、一列に並んだ武者達が、敵軍の只中に入ってしまったアルフォートめがけて突撃する。
「地を、凍てつかせ……」
蹄の音に混じり囁いたのは、狐珀。
彼女の伸ばした指先から放たれた青白き狐火は冷気を纏い、軍馬の足元へと絡みつくと地面ごとその足を凍てつかせる。
水気もない今の状態で、地面全体を凍らせることは困難だ。だがそれでも、軍馬の足を折る程度ならばできる。
前足を縫い留められた軍馬は猛烈な勢いで地面へと崩れ落ちていく。
その様を眺めながら、しかし狐珀の顔は冴えない。
敵の背後にあるものを聞いた時から、ずっと頭から疑問と後悔が離れないのだ。自身は、兄を。
「もの言わぬ人形にしてまで、此の世に繋ぎ止めたかったのか……」
人形の操り糸を絡めた指を、そっと握り込んだ。
その時、クーの声が響く。
「貴様達に、氷の世界を魅せてやろう――発現。氷雪世界フロスト・シュネーヴァイス」
魔法陣が眩い白の輝きを放ち、一瞬辺りが昼間になったかのような明るさになる。
仲間たちの稼いだ時間。その間に編み上げた魔術は、敵軍を薙ぎ払う氷のビームを放つ。
右から左へと掃射されたビームは戦いの総仕上げのように、向かってきていた全ての敵の動きを止めたのだった。
辺りは、雪原に変わっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『雷切丸』
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POW : 《白霧の侵略》分断戦術、対複数戦で有効でござる
【準備動作】で妖術を詠唱。その後、【両掌】から【広範囲放射】。視界を妨げ直感が鈍る【濃霧】を放ち、【一時撤退】する。人を大量虐殺した【幻覚】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 《雷切》これが拙者の我流抜刀術奥義。受けてみよ!
自身に【危機】が迫った瞬間。【死神のオーラ】をまとい、高速移動と【雷属性の斬撃】による高範囲の【衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 《我流戦闘術》我が名は雷切丸、いざ、尋常に勝負!
【敵の攻撃】を刀で防ぎ、反撃する。【刀】が命中した対象に対し、高威力高命中の【電撃】と見切り難い無数の【剣戟】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:nori
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「イヴ・クロノサージュ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
凍てついた大地。
雪像のように固まり命を失った武者たちの間を、抜けてくる者がある。背にちらつく死神を従え、男はようやく、猟兵達の前へと姿を現した。
「貴様らに何が分かろうか」
男の声は感情を抑えたように静かに響く。
男は鞘からゆっくりと刀を抜き、構えた。
「我が名は雷切丸、いざ、尋常に勝負」
鈴木・志乃
どうか、どうか、届きますように
UC発動【失せ物探し、祈り】
ゆっくりゆっくり集めておいで
あの人が失くした大切な想い
あの人自身に宿る姫さんの想い【誘惑】
……もう一度思い出してほしい
【優しい】記憶をね
【衝撃波】となって体の中まで染み渡れ
染み渡るまで鎖で応戦
【第六感から見切り武器受け、カウンターでなぎ払い】
【ダッシュ、スライディング】で懐まで潜り込んで、逃げ出してと縦横無尽に立ち回る
敵UCは……私のUCと
砂利系を念動力で巻き上げてぶつけて対抗
刀じゃ防ぎようないんじゃない?
後は遠くから【歌唱の衝撃波】でちまちま削る
御鏡・十兵衛
安心せよ、某は貴殿を理解する気などさらさらないでござるよ。
興味があるのは、ただ一つ。貴殿を斬って、剣の更なる高みへ至ることのみ。
おっと、御託は不要にござったな。では――いざ、尋常に。
って、妖術?刀は?いやまあ某はそれでも別に構わぬが……。
うひゃー、なんか霧が出てきたでござるな。
おっとと、何かに躓いて……うわ、辺り一面死体だらけ、まさに屍山血河でござるな。幻術?
……別にこれ見せられても某痛いところなーんにもないんでござるが。
しかし、単純に周りが見えぬのは面倒か。
ふうむ、では【水破】で回転斬りを放ち、全方位にズバッと水流を撒くでござる。当たれば御の字、当たらなくとも霧が揺らげば位置は掴めよう。
吉備・狐珀
愛する人とは違いますがわからなくもないでさよ。二度と名を呼んでもらえない、笑いかけてくれない、そう思ったら衝動的に体が動いていましたから…。
行いが間違っていると知っていても、それを貫く信念を持つ迷いのない者は強い。ただでさえ手練なのだから油断は出来ない。UC【稲荷大神秘文】使用。自身と猟兵の戦闘能力を上げて挑む。霧は熱風に弱い。兄上の炎で晴らす。
蘇ったとしてもそれは偽物。貴方の名を呼ばぬし、微笑みもしない。何より理を曲げる業を背負うものは幸せにはなれないのですよ。
大崎・玉恵
(WIZ)
わからぬと思っておる時点で、貴様の底は知れておる。
わかるぞ、貴様の執念の深さ。そして、今の貴様を見た姫とやらの感情が「悲しみ」であるともな!
奴は手練れじゃ、見ればわかる。
奴の土俵で戦ってやる義理はない、刀の間合いに入らぬよう【巫覡載霊の舞】で衝撃波を放ち間合いをとって戦うぞ。
反撃できぬ位置なら、いかな手練れと言えど踏み込むまで刀を当てることは出来ぬ。
【範囲攻撃】【2回攻撃】で高速移動も出来るだけさせぬようにの。
人を数多殺した幻覚?そんなものはいくらでも見ておる、今さら怯むものでもないのう。
真に想う者に会いたいと欲するならば、こんなところで迷わずに真っ直ぐ黄泉比良坂を抜けよ。
クー・フロスト
死神と機兵
アドリブ◎
―
●心情
かつての私は惑星の生命を喰らい、エネルギー得る事で生き延びる事が出来る存在だった
しかし――私は間違っていた
奪う事なく、人と共に生きる事ができると知ったからだ
貴殿は何故その刀を振るう?
死神として、何故…人を殺める?
何の為だ?
愛おしい者は貴殿に何を求めていたのか、はっきりと思いだすんだな
●戦闘
こちらは準備万端だ!いつでもいけるさ
アルフォード殿の突撃に合わせて、同時に動く
敵をよく観察し、撤退する隙があれば
雪の大魔術と同時に仕掛けていた良く滑る氷を動かし転倒を狙う
アイテム《ブービートラップ・キット》
バランスが崩れた所でUC発動だ
▽
雷切丸、隙有り…!
――ブレイクスクエアッ!!
アルフォート・イグニス
チーム:死神と機兵
アドリブ可
【】内は技能です。
死して尚自らの主に尽くそうとするその心意気…願わくば別の形で出会いたかった。しかし、今貴殿が行おうとしている行為を私は見過ごす事は出来ない。「貴様らに何が分かろうか」…こちらも聞こう「では貴様には何がわかるのか」と。……我が名はアルフォート・イグニス。いざ、尋常に勝負ッ
構えから自らの武具を【武器改造】で強化(手甲に結晶が纏う感じ)。UCを発動、膨大な気を纏いマッハ2という驚異的な速度で一気に突撃し接近。地面が罅割れ陥没する程の震脚を行い溜めこんだ力で八極拳の靠撃を相手の急所に放つ。【怪力、第六感、野生の勘、各種耐性技能】
「愛する人とは違いますが、わからなくもないですよ」
分かるはずもない、そう告げられた言葉を受け、猟兵たちは正面から立向かう。吉備・狐珀の顔が浮かべる感情は薄いが、そこに深い情があることを滲ませた。
「二度と名を呼んでもらえない、笑いかけてくれない、そう思ったら衝動的に体が動いていましたから……」
口をついて出るのは自身の体験。
「わからぬと思っておる時点で、貴様の底は知れておる」
悠久の時を見てきた大崎・玉恵もまた、言葉を重ねる。
「わかるぞ、貴様の執念の深さ。そして、今の貴様を見た姫とやらの感情が『悲しみ』であるともな!」
だが、雷切丸は応えることはなかった。最早対話は不要とでも言わんばかりに、左手指を唇へと触れさせると口の中で妖術を詠唱し、その手から濃霧を放つ。
濃霧は猟兵のすべてを、そして辺り一帯を包み込み視界を遮った。そんな様子に御鏡・十兵衛は明るい声を上げる。
「妖術? うひゃー、なんか霧が出てきたでござるな」
どこか楽しんでいるようだ。
「安心せよ、某は貴殿を理解する気などさらさらないでござるよ。興味があるのは、ただ一つ。貴殿を斬って、剣の更なる高みへ至ることのみ」
濃霧は吸い込んだところで毒性はないようだと判断し、しかし視界から消えてしまった敵を探るため、十兵衛は慎重に歩き出す。
次の瞬間足先に当たったのは、何か柔らかい感触だった。
「おっとと、何かに躓いて……」
危うく足を取られそうになり、自身の足元を確認する。
すると、それは人の手であった。血の気を失い、ぐんにゃりと異様な方向へ曲がった手。さらにそこに続くのは血まみれの死体。
死体は一体だけではなく、数えられる限りでも七体。後は霧の中に無数に広がっているようだ。
「まさに屍山血河でござるな。……幻術?」
無論、先程までそこに人の死体など転がっていようはずもないのだから、幻に決まっているのだが。
「……別にこれ見せられても、某痛いところなーんにもないんでござるが」
生粋の剣豪である十兵衛の表情は変わらない。しかし、いくら幻と分かっていても見ていて気持ちの良いものではない。そして、その意識が図らずも足元の死体を踏まないよう、下へ向かってしまうのも防ぎようのないことであった。
濃霧に紛れ、頭上から飛びかかってきた雷切丸の影に気付いたのは、最早その刃の切っ先から逃れ得ない距離になってからだった。
咄嗟に跳びのいたが、刃は十兵衛の肩から胸元の肌の上を切り裂いていく。赤き血が溢れる。
その痛みに、しかし十兵衛の意識は覚醒した。
着地し、再び霧の中へ紛れようとする雷切丸へ向け、抜刀する。刃を抜き放つ流れのまま体を回転させ、全方位を撫で斬り、その刃からは超高圧の水流が迸る。
刃が確かに雷切丸の体のどこかを斬ったことは手応えで分かった。だが、その姿は再び霧に消えている。
だが、十兵衛の放った水は周囲の霧を揺るがした。
「志乃殿後ろでござる」
霧の動きの先を読み、仲間へと声をかける。
鈴木・志乃はその声に応じて意識を集中させ、手のした千羽鶴から無数の光の鳥を放った。
「どうか、どうか、届きますように……飛んでけ」
雷切丸に対峙した直後から、志乃はずっと祈り続けていた。
敵である雷切丸が失くした想い、人間性というようなものを拾い集めるように、その祈りを千羽鶴に籠めて。
「……もう一度思い出してほしい」
そこから召喚されて羽ばたいていった光の鳥は、失われた想いを思い出させるような眩さを持って。
「体の中まで染み渡れ」
「何……だと!」
無数の鳥に巻かれ、絡め取られるように雷切丸の動きが止まる。
その様は、まるで大きすぎる感情を抱えて身動きが取れなくなっているかのようにも見えた。
瞬間、雷切丸へ向けて玉恵が駆け出す。同時に、彼女の妖狐としての妖力を表すような耳と尻尾が大きさを増していく。
外見上は僅かな変化だが、彼女の身をいっそう神霊へと近づけている何よりの証拠である。
霧と幻術は彼女の目にも影響を及ぼしているが、悠久の時を見てきた彼女にとっては幻術は大した障害にはならなかった。
「奴は手練れじゃ、奴の土俵で戦ってやる義理はない」
玉恵の意図を汲み取り、狐珀が指を二本立て紋を切る。
「天狐地狐空狐赤狐白狐 稲荷の八霊五狐の神の光の玉なれば 浮世照らせし猛者達を守護し 慎み申す」
狐珀が唇から発したのは、祝詞。中性的な響きを持つ神聖な彼女の声は霧の中に凛と響き、その祝詞を耳にする者全ての力を増していく。
しかし、いっそうその術の恩恵を受けるのは、より近しい存在である玉恵だったであろう。
玉恵は動きを止めている雷切丸へ向け、手にした薙刀を大きく振り下ろす。だが、両者の間には未だ距離がある。
薙刀から放たれたのは、いつもの数倍の威力と飛距離を持った衝撃波だった。
「行いが間違っていると知っていても、それを貫く信念を持つ迷いのない者は強い……それでも」
「真に想う者に会いたいと欲するならば、こんなところで迷わずに真っ直ぐ黄泉比良坂を抜けよ」
衝撃波は雷切丸に直撃し、その身を斬りながら吹き飛ばす。そして同時に、周囲に立ち込めていた霧さえも晴らしていった。
決着は最早ついた、かと思われた瞬間だった。
「拙者は……ここで止まる訳には行かぬ」
雷切丸の草履を履いた足が地面に付き、堪えるように踏みしめた。眼前に握っている刀で玉恵の放った衝撃波の一部を防いだのだと分かる。
押しつぶされた撥条のように地を蹴り、より近くに居た志乃へ斬りかかる。
「死して尚自らの主に尽くそうとするその心意気……願わくば別の形で出会いたかった」
そんな雷切丸の前に飛び込んで行ったのは、アルフォート・イグニス。
彼女が全身に纏うは気功により蓄えた膨大な気。最早視覚では捉えきれない驚異的な速度で雷切丸と志乃の間に割って入ると、間一髪、黒金のガントレッドで刃を受け止めた。
「……こちらも聞こう『では貴様には何がわかるのか』と。……我が名はアルフォート・イグニス」
戦いながら、尚も彼女の気は増しているようで、それは彼女の装備している手甲に現れ出る。
金属の地にオブシディアンが纏わりつくように生まれ、その強度と破壊力を増していくのだ。
「いざ、尋常に勝負ッ」
「最早、戻れはせぬ……!」
それは、真正面からの誤魔化しのない対峙だった。
雷撃纏う雷切丸の刃が目にも留まらぬ速度で振り下ろされ、アルフォートの身を袈裟斬りにする。
だが次の瞬間、アルフォートの肩を打ち付ける靠撃が雷切丸の鳩尾に入り、体を揺らめかせる。
あまりの衝撃に罅割れた地面と飛び散った鮮血が、その両者の威力の凄まじさを物語っていた。
その数瞬前、死神の大鎌を構え、クー・フロストは思い出していた。
過去の己のことを。
かつての彼女は惑星の生命を喰らい、エネルギー得る事で生き延びる事が出来るだけの存在だった。
「しかし――私は間違っていた」
奪うことではなく、人と共に生きることができると彼女は理解した。
だから、クーはここで、今こうして仲間と共に雷切丸に対峙している。
「貴殿は何故その刀を振るう? 死神として、何故……人を殺める? 何の為だ?」
アルフォートが捨て身の突撃をした瞬間、クーもまた、その背後で大鎌を振り上げていた。
斬られたアルフォートの体が、地へと崩れ落ちる。クーと雷切丸の視線が、かち合ったその瞬間。
「――ブレイクスクエアッ!!」
振り下ろした大鎌から放たれた衝撃波は、雷切丸を斬り裂き骸の海へと霧散させていた。
「愛おしい者は貴殿に何を求めていたのか、はっきりと思いだすんだな」
成功
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第3章 日常
『月酔い語り』
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POW : いつもより素直になる
SPD : 本当の自分が顔を出す
WIZ : 秘めた想いが零れる
イラスト:anじぇら
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦いの後、傷ついた体を休めるため猟兵たちは、自身たちが守った村へ来ていた。
村人に手厚い手当を受けた彼らは、村にある月見堂にて一晩明かしてみてはどうだと誘いを受ける。
そこで語ったことは、いっそう想いが強くなるという言い伝えがあるらしい。
空には、今も薄紅の月が輝いている。村の中でも高い場所に位置する月見堂からは、いっそう美しい月が見られるだろう。
大崎・玉恵
「…死して尚逢いたい、か」
月見堂。昔と変わらぬ美しい月を仰ぐそこで一人ごちる狐。
人を色香で惑わし、傾国と呼ばれたこともある。…結果的に。
狐の想いは、人を陥れて弄ぶなど、そんな所にあった訳ではない。
ただ、寂しかった。自らへの想いが、欲しかったのだ。
そんな自分に向けられた、ある男の熱い想い。…それは、自ら欺いてしまった。人として愛され、狐として裏切ってしまった。
「赦してくれとは言わぬよ、皇子様」
追われ、討伐されたように見せかけ欺き、生き長らえた。
その後の彼の事は知るよしもない。
「幾星霜経ようと、お主以上に忘れ得ぬ男には出会わぬな」
とりとめのない考えをするのは、きっと先程の男の想いに当てられたから。
吉備・狐珀
月見堂の広縁から月を眺めます。
自分がどれだけ愚かなことをしているか改めて思い知らされた依頼。
けれど、魂を解放する気にもならない。
雷切丸が戻れぬと言ったように…私も戻るつもりはない。
貴方といられるなら・・・。
人形を見つめたところで声をかけてくるわけでも、ましてや笑いかけてもらえるわけもなく。
自嘲気味に笑って、再度月を眺めて一夜を過ごします。
アルフォート・イグニス
チーム:死神と機兵
アドリブ可
・戦闘終了後、村に戻る間際に
…(雷切丸が消えた場所に、結晶で出来た花を置いて)貴殿が安らかな眠りにつける事を。…どうかあちらの世界では、優しき夢を見れるよう…(祈る神は居ないが、それでも彼女は小さく願いを込めた言葉を薄紅の月に向けて呟いた)
・村にて
今回はともに依頼を完遂出来た良かった。二人の力が無ければ私ももしかしたらもっと大きな傷を負っていたかもしれない。ありがとう
・話
満月の夜には月見酒をよくしていてな…村の者達の好意で頂いた(早速飲みはじめ)
(そこからは、聞き上手な味方のとお酒の力で緩んだのか普段話さない趣味の料理やぬいぐるみ集め、妹の話などをして)
鈴木・志乃
WIZ
はあ
きゅうっと一杯、ほしいね
梅酒がいい、梅酒が
恋の為に甦るなんて
良い度胸してんじゃん
はあ
私もあそこまで素直になれたらなあ
今ねえ、悩んでんの
誰かと一緒の一歩を踏み出して良いものか
踏み出さない方が良いのか、迷ってんの
私の大切な人達って
みーんな私のこと置いてけぼりにするわけ
守って死んだり
信念に殉じたりするわけ
今大切な人達もどっか危うくてさあ
これ以上踏み出して
これ以上大切な人になるのが怖いのよ
また、いなくなるんじゃないかって
引き留めても引き留めても
皆止まってくれないんだもん
だから、そうだね
もう置いてかれんの嫌だから
一緒に死ぬわ
一緒に生きて、一緒に死ぬ
うん、決めた
クー・フロスト
死神と機兵
アドリブ◎
天候雪
――
●御礼
ステラ殿、アルフォート殿此度の助力感謝する……。
此度の軍制、非常に強敵であった。
貴殿らの助力無ければ非常に厳しい戦いであっただろう
不在の場合でも
お辞儀をして、心より深く感謝する。
●お話
月見か……、エンパイアの夜空は綺麗だな……。
こう見えて私は人の話を聞くのが好きなんだ。
実は妹のようなものが身内にいてな、その子は機械がとっても大好きなんだ
だから――さ?
聞かせてくれないか?
そう言って、お酌をします
聞き上手な感じで
●雷切丸
雷切丸か…。
また合間見れる事もあるだろう……
その時は――
秘めた想いと口には出せない覚悟を持って
ふと死神は最初からそこにいなかったかの様に消える
〆
仲間が先に村へ向かう中、一人アルフォート・イグニスは平原の中に立っていた。
先程までの戦いを思い起こさせるのは、大地に刻まれた傷跡だけ。そこに漂う静寂は、最早あの熱気の欠片もない。
アルフォートはしゃがみ、その傷ついた大地に、結晶で出来た花を置く。
「貴殿が安らかな眠りにつける事を。……どうかあちらの世界では、優しき夢を見れるよう……」
誰に祈ったわけではない。そもそも、彼女に信仰する神はいない。それでも、小さな願いを、薄紅の月へ。
「……死して尚逢いたい、か」
猟兵達は、月見堂にやって来ていた。白木で出来た東屋は、薄紅の月光を浴びていっそう神秘的に美しく見えた。
どこかぬくもりを感じる板張りの床に腰をおろし、大崎・玉恵は夜空を仰ぐ。今日は月が明るいせいで、他の星はよく見えない。
その光り輝く月もいつもの様子とは少々違うが、こういった月を見るのが何回目か、玉恵にとっては最早憶えていない。
幾歳月が過ぎても昔と変わらぬその姿は、かつて人を色香で惑わし、傾国と呼ばれたこともある玉恵自身とも重なって見える。
「……結果的に、じゃ」
彼女は決して、人を陥れて弄ぶようなつもりではなかった。ただ寂しかった。自らへ向けられる想いが、欲しかっただけ。
だから、そんな時に向けられた熱い想いに、心が揺れた。人として愛され――そして、狐として裏切った。
「赦してくれとは言わぬよ、皇子様」
玉恵は変わらぬ月に語りかける。
あの日、追われ、討伐されたように見せかけ欺き、生き長らえた。その後の男のことは知る由もない。最早、この世にはいなかろう。
「幾星霜経ようと、お主以上に忘れ得ぬ男には出会わぬな」
月に溢れたのは、玉恵の人としての偽りなき言葉。
玉恵は赤銅の瞳をすいと細める。このようにとりとめもなく過去を思い出す自らが、どこか可笑しかった。
「きっと、先程の男の想いに当てられたのじゃろうな」
月見堂の広縁に腰掛け、そこから足を投げ出して。
吉備・狐珀はぼうっと月へ視線を向けていた。視線は向けているものの、しっかりと月を見ているのか、定かではない。
それ程までに、今の狐珀は雷切丸の想いに引きずられていた。
彼女の隣には、兄の魂を宿した人形が、こちらもちょこんと腰掛けている。
腰掛けていると言っても、そこにそれを座らせたのは狐珀自身。見つめたところで、声をかけてくるわけでも、まして笑いかけてくれるのでもなく。
雷切丸の姿を見て、狐珀は自分自身、どれほど愚かなことをしているのか改めて思い知らされた。
「でも……」
そっと、人形の小さな手に触れる。
「雷切丸が戻れぬと言ったように……私も戻るつもりはない」
人形の手にはぬくもりはない。けれど、自身の手で温めれば、ほんのりとしたぬくもりを返してくれるのだ。
「貴方と、いられるのなら……」
狐珀は月に視線を向けたまま、ふと笑う。その笑顔は自嘲のようにも見えたが、覚悟を決めたように、穏やかだった。
透明な硝子の中で、溶けた氷がカランと音を立てた。
「……はあ」
鈴木・志乃が手にしているのは冷やした梅酒。飲みたくなって、つい、村人にもらってきてしまった。酒に浸かった青梅の身が添えられている。
「恋の為に甦るなんて、良い度胸してんじゃん」
まるで悪友に語りかけるように、志乃は呟いた。
「はぁ……私もあそこまで素直になれたらなあ」
溢れたのは、幾度目かも分からぬ溜め息。酒器に口をつけ、甘酸っぱい梅酒を煽ったところで、足元から猫の鳴き声がした。
ぶにゃあんと鳴く声はどこかぶさいくで、その大柄な猫を、そっと撫でる。
「今ねえ、悩んでんの。誰かと一緒の一歩を踏み出して良いものか、踏み出さない方が良いのか、迷ってんの」
志乃がそう相談を始めれば、猫の金色の瞳が見返してくれる。
「私の大切な人達って、みーんな私のこと置いてけぼりにするわけ。守って死んだり、信念に殉じたりするわけ。今大切な人達もどっか危うくてさあ……これ以上踏み出して……」
梅酒の器を持ったまま、板張りの床の上、膝を抱える。
「これ以上大切な人になるのが、怖いのよ」
抱え込んだ膝の上に顔を乗せ、何やら話を聞いてくれている猫に、また視線を向けて。
「また、いなくなるんじゃないかって。引き留めても引き留めても、皆、止まってくれないんだもん」
と、そこまで弱い心を吐露したところで、尻尾を揺らして猫が立ち上がった。
「あ、いっちゃうの?」
思わず声をかけたが、猫はそのままのんびりとした歩調で、宵闇の中へと溶けていく。
その後姿がなんだか切なくて、追いかけたくなる。自身の気持ちに気付いて、志乃は目を細めた。
「だから……そうだね、もう置いてかれんの嫌だから。一緒に死ぬわ、一緒に生きて、一緒に死ぬ」
飲み干した梅酒の、梅を齧れば爽やかな香りが広がった。
「うん、決めた」
月見堂の一角に隣り合って座り、アルフォートとクー・フロストの二人もまた、静かに酒を味わっていた。
それはアルフォートが村人からもらってきた、爽やかな飲み口の冷酒である。視線を合わせ二人で猪口を傾け、穏やかな時間を楽しむ。
「アルフォート殿、此度の助力感謝する……此度の軍制、非常に強敵であった。貴殿らの助力無ければ非常に厳しい戦いであっただろう」
クーの感謝の言葉は、途中まで共に戦ってくれた、もうひとりの仲間へも。
頭を下げると、心よりの感謝を伝えた。
「いや、私こそ。ともに依頼を完遂出来て良かった。二人の力が無ければ、私ももしかしたら、もっと大きな傷を負っていたかもしれない。ありがとう」
アルフォートもまた合わせて頭を下げると、顔を見合わせ笑う。
「エンパイアの夜空は綺麗だな……」
視線を上げたクーはそう呟き、徳利を手にすると、アルフォートの猪口に冷酒を注ぎ満たす。
「こう見えて私は人の話を聞くのが好きなんだ。実は妹のようなものが身内にいてな、その子は機械がとっても大好きなんだ。だから――さ? 聞かせてくれないか?」
酒と共に話すことを勧められ、アルフォートはしばし悩むと、ゆっくりと口を開く。
「そうだな……機械と言えば、二足歩行機動兵器【ドール】機体名レギンレイブは高い戦闘能力を秘めていて」
クーはそんな仲間に、藍の瞳を向けながら頷く。
それから二人は薄紅の月の下、とりとめのない話をいくつもした。普段話さない趣味や、料理、妹の話。
そして。
いつしか東の空が、白んでいた。
薄紅の月が、その輝きを、色を失っていく。
「雷切丸か……」
そんな月の姿に、骸の海に消えた敵の姿を思い出し、クーは呟く。
またいつか、相対する時もあるかもしれない。
「その時は――」
唇には載せぬ想いと覚悟を胸に秘め。
死神は、朝靄に姿を消した。
大成功
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