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手を尽くしてもすべての命は救えず、この村は滅びる

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「いやだ……まだ死にたくない! 助け、や、ああああああアアッ!!」
「助けてぇええ! 熱い!! 身体が焼け、うううああああ!! 死にたく、死にたくなァ””ーーーーッ!」
「腕が、あああああッッ! やだ、なんで、なんでぇええええ!! お母さーーーんッッ!」

 村のあちこちから聞こえてくる断末魔。
 村には魔獣が徘徊し、あちこちに火の手が上がって燃え盛っている。
 誰一人として助からず、皆殺し。
 炎に焼かれる者、生きたまま魔獣に喰われる者、倒壊した家屋に押し潰される者。

 その光景を見て、満足気にほくそ笑むヴァンパイアの姿があった。

 オブリビオンの復活から百年。
 村人たちは生まれついての奴隷だった。
 散々こき使われ、苦しい生活を送り、それでも耐えて。
 そんな人生の最期を飾ったのは、ヴァンパイアの娯楽としての惨たらしい死だった。


「夢を視たわ。たくさん人が死ぬ夢。きっとあの人たち、もう助からないわね」
 あまり興味も無さそうに、ぼそりと告げるのは今回の事件を担当するグリモア猟兵、クロア・アフターグロウ(ネクローシス・f08673)。
 彼女は予知の内容を、夢として視る――そんな能力を持っていた。
「一応仕事だから説明するけど。もうちょっとしたらダークセイヴァーにある村が襲われる。本当に、もうすぐ。何も準備を無しに今すぐ転送したとしても、送り届けられるのは村が襲われ始めた後になると思う」
 その村は、ヴァンパイアの娯楽として滅ぼされる。
 村には炎と、魔獣の群れが放たれ。村人が苦しみ逃げ惑い絶望する姿を見て楽しむという趣向だ。
「どう足掻いても、村人を全員助けようなんて事は無理だと思う。なるべく多くの命を救えたらいいんじゃないかと思う、けど……」
 クロアは小さく溜息を吐いて、
「村人の命ばかりを気にしていたら、魔獣は殺せない。魔獣を足止めして村人を逃がそうとすれば、村人は他の魔獣に殺される。魔獣から村人を庇いながら避難をさせれば、その間に他の村人が他の魔獣に殺される。村人の為に体を張れば張るほど、あなたたちは消耗する。消耗すればヴァンパイアはおろか魔獣すら倒せず、あなたたちが直接助けた以外の村人は、全員死ぬ」

 つまり、どんなに手を尽くそうとも、多くの命が失われる。
 猟兵たちにできることは、可能な範囲で救える命を救い、助けられない命は見捨て、オブリビオンを殺すこと。

「正直、別に見捨てたっていい。だって同じ時間を使って他の人の予知のお仕事に行った方が、たくさんの命が救えると思う。余計な苦労もしなくて済む。こんな任務、非効率的だし、偽善で、自己満足。猟兵がどんなに頑張ったって、37世界の全人類の命を守ることなんてできない。どうせいつか人は死ぬ。だから――」

 行きたい人だけ、行ってきて。
 私はただ視えたから送るだけ。忠告はしたつもりだから、死んだり怪我しても恨まないでね。


まさひこ




●概要
 今回のシナリオはかなり特殊なルールで判定を行ないます。
 全体的に成功率やダイス目をかなり重視します。
 かと言ってレベルや能力値が低くても気にする必要はありません。
 何故なら誰も依頼に参加しなければ村人は全滅するからです。
 元より救いのない、後味の悪いシナリオです。

●1章
 火が回り、魔獣が徘徊する村から村人を逃がす。
 🔴1つにつき、村人が3人死ぬ。
 【人命優先】とした場合、🔴が出ても村人は死なない。
 ただし、判定の難易度が2倍となる。
 【人名優先】の場合でも、失敗判定の場合は村人が9人死ぬ。

●2章
 あらかたの避難を終え、魔獣と戦闘。
 まだ避難を終えていない村人も残っており、魔獣に追われている。
 🔴1つにつき、村人が1人死ぬ。
 【人命優先】とした場合、🔴が出ても村人は死なない。
 ただし、判定の難易度が2倍となる。
 【人名優先】の場合でも、失敗判定の場合は村人が3人死ぬ。
 【人名優先】で🔴が出た場合、身を挺して庇ったものと判断し、PCは深刻な怪我を負う。

●3章
 通常通りの判定。
 助けた村人のアフターケアなどを考えるのも良いかも知れない。
(何もなければ焼け野原となった村に置き去りとなる)

●プレイングボーナスについて
 【命を賭した行動】、及びそれに準ずる全身全霊を込めた行動だと判断できればダイスを+1個する。
 これは命を賭す事が推奨行動だと言っている訳ではなく、また、命を賭した場合は深刻な怪我の度合いもより深刻となる可能性がある。
 【真の姿】を使用すればダイスを+3個を保証する。ただしそれ以降、このシナリオ内でのプレイング採用率がやや下がる。

●深刻な怪我
 腕がもげたり足がもげたり腹を貫かれたり背中を裂かれる可能性がある。
 数値的なペナルティはないものとする。
 真の姿や味方の回復で治療することも可能。
(機械や人形のPCで内部構造や血液の有無など拘りがある場合、明記してください)

●シナリオ失敗
 シナリオが失敗した場合、リプレイで直接助けた村人以外は全員死ぬ。
 ヴァンパイアも何処ぞに消え失せる。
 人命優先をしすぎればシナリオ失敗率も上がる。
 ピンチボーナスのルールは勿論適応する。
 あまりに試験的なシナリオなので、普通に失敗もあり得る覚悟で臨んで欲しい。

●その他
 執筆が遅くなると思うのでプレイングの再投稿は大歓迎です。
 熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『【撤退戦】村からの脱出』

POW   :    守りが薄いところを狙って突破。力で敵を足止めしつつ逃げる。

SPD   :    見つからないようにこっそりと脱出。速さを生かして敵を撹乱する。

WIZ   :    敵を罠にはめて時間を稼ぐ。姿を変えたり隠したりして逃げる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジェイクス・ライアー
【SPD】
非情に、冷酷に、残忍に。
感情を封じ為すべきことを為す。ああ、慣れているとも。

まず、助けられない者は助けない。
すぐさま村には入らず、周囲から敵が少なく、かつ視線をさえぎる遮蔽物が多い場所を探す。例えば、薮や近くで建物が倒壊している場所など。
そこから侵入し、村人を集め速やかに来た道を戻り村から避難する。
ただし、怪我人、老人は連れて行かない。子供も足手まといならば見捨てる。
たとえ助けを乞われようと、裾を引かれようと、罵られようと。

同行するものがいるなら10人未満、私1人ならば5人未満が確実だろう。

生きろ、這ってでも生き残れ。血を吐き泥を飲み、それでも親兄弟友の上に、お前の生を積み上げろ。




 非情に、冷酷に、残忍に。
 感情を封じ為すべきことを為す。

 ――ああ、慣れているとも。

 ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)。彼の判断は冷静だった。
 助けられない者は助けない。

 彼を冷たい人間だと思っただろうか?
 だが、本当に冷たい人間であれば恐らくこの場には馳せ参じては居ない。
 己の能力を熟知し、だからこそ出来得る行動の限界も知っている。

 ジェイクスは聞こえてくる悲鳴を無視し、冷静に戦況を観察する。
 否、正確には無視しているわけではない。魔獣の咆哮や聞こえてくる悲鳴から、冷静に敵の位置や村人たちの状況を分析している。
 魔獣をやり過ごせるような遮蔽物、避難ルート。救うべき・救う事が可能な人物を選りすぐった。

「静かに。私は君たちを助けに来た。魔獣に気付かれる前に、早くこちらへ」
 無駄のない、的確な避難指示。
 だが当然、助けられない命もあった。
 村の少年が懇願するようにジェイクスに縋る。
「なぁ、おっちゃん! 向こうに俺の家族が――助けに行きたいけど、魔獣が彷徨いてて……」
「そうか、分かった。後で必ず助けに行く」
 表情も変えずに口から出まかせを吐く。もちろん助けに行く余裕など無い。
「そんな、後でって……急がないと母ちゃんが、妹が!!」
「なら君は、私に彼らを放置して君の家族を命懸けで救いに行けと、そう言うのか?」
「……っっ!」
 ジェイクスの問いを受け、少年は言葉に詰まった。
 その場に居る村人たちの視線が突き刺さる。
 顔見知りで家族のこともよく知っていて、気の毒そうな視線を投げかけるもの。
 恐怖に染まり、1秒でも早くここから逃げ出したいと願い、少年を心底疎ましく思う者。
 もはや思考もままならず、呆然としている者。
 冷静に考えれば、ジェイクスの言が正しい事は理解していた。
「けど、俺……そんな、どうすれば……ッ!」
「生きろ。這ってでも生き残れ。血を吐き泥を飲み、それでも親兄妹の上に、お前の生を積み上げろ。――それが君に出来る、せめてもの手向けだ」

 それがジェイクスにとっての本心なのか、この場を切り抜ける為のペテンなのかは分からない。
 だが少年は涙を呑んで頷くと、ジェイクスの後に付いて悲劇の村を後にした。


 生還者:6
 死亡者:3(少年の母と妹。それに飲んだくれの農夫)

成功 🔵​🔵​🔴​

サイラス・レドモンド
【POW】【人命優先】
こんな世界だ、救いのねぇ話はゴマンとある。
だがなァ、それを黙って見てられる程
オレァ薄情になれねぇ…手を尽くすぜ!

『野生の勘』でより敵の動きに警戒を
『コミュ力』で村人と打ち解け避難誘導に務めるぜ。
村人に村全体の構図を聞きつつ『地形の利用』で突破口を見出す。

村人を救えるんなら敵の前に出るのも悪かねぇ
そん時は『殺気』と『恐怖を与える』で敵を怯ませられればとァ思うが
上手くいかなかった場合は戦闘あるのみ。
槍の戦い方らしく『串刺し』『なぎ払い』『槍投げ』
そして『誠の一突き』を駆使。
村人に攻撃の手がいっちまったら『かばう』ぜ!

なあに、オレァ目の前で女子供の命散らすのは見てらんねぇのさ!




 サイラス・レドモンド(野生のままに・f09014)は義に篤い男だった。
 オブリビオンによって支配された世界。救いのない話など、ごまんとある。
 だがそれを見過ごせる程、薄情にはなれなかった。

 サイラスは村に突入すると、さっそく魔獣に追われる子供らを発見。その手に持つ槍を振るって子供たちと魔獣の間に割って入る。
「おおっと! 女子供を追い回していい気になるなんざ、大人がしていい事じゃねえよなァ?」
 魔獣相手に言っても仕方ないか、とサイラスは笑う。
 サイラスの背中には子供が3人。そして此処は戦場となっている村の真っ只中。
 ただ逃げろと言って逃がすには流石に無理がある。
「よし、お前ら走れるか? このままここに居ちゃマズい。俺が何とか魔獣の相手をするから、こっから村の外まで……逃げるぞ!」
 進路に関しては村の子供たちの方がよっぽど詳しい筈。そして何より自分は殿を務める他ない。
 程々に魔獣の相手をし、攻撃をいなしながら子供たちと共に村の端へと避難する。
 魔獣は勿論1匹ではない。
 撤退する途中で他の魔物とも遭遇し、2体、3体と追手の数は増えていく。

 村の外れ。
 遠くには同じく避難誘導を行なっている仲間の猟兵の姿も見える。
「よし、あとはこのまま真っ直ぐ逃げな。ここはオレが引き受けるから」
 子供相手にニッコリ笑う。
 既に満身創痍。背中には4体もの魔獣。
 状況は絶望的だが、このまま魔獣を放置すればせっかく避難できた村人たちの安否にさえ関わる。
 子供たちは心配そうにサイラスを見るが、やがて頷いて村の外へと走っていった。

「さァて、いっちょ気合を入れますか!」
 相棒、『カーネリアン』を構え直して魔獣たちを見据える。
 闘気も殺気も、ありったけをこの槍に込めて。
「無茶しやがる、って思ってんだろ? ――なあに、オレァ目の前で女子供の命散らすのは見てらんねぇのさ!」

 そんな事は百も承知だと、手の中の槍が応えたような気がする。
 小さな猫族の誉れ高き騎士は、竜槍を携え魔獣の群れの前へと躍り出た。


 生還者:6+3
 死亡者:3

 重傷者:サイラス・レドモンド
(魔獣との死闘により瀕死の重症を負い、仲間の猟兵によってその身を保護される)

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セゲル・スヴェアボルグ
【人命優先】
たとえ絶望的な状況であろうとも、目の前にある救える命を放ってけるほど、器用な人間ではないのでな。
敵の処理も行うが、【救助活動】を優先させてもらう。
【時間稼ぎ】であれば、俺の得意分野よ。
少しでも多くの村人を【庇い】、逃がせるよう敵を【おびき寄せ】、俺が壁となろう。
無論、村人から近づきすぎず離れすぎず、常に対応できる距離に位置取るぞ。
無敵城塞は耐久には優れるが、集中攻撃時などを受けた場合など、一時的な防御のみに使用だ。そのあとは村人のいない方向へと【なぎ払い】、【吹き飛ばし】てしまえばいい。
なに、【激痛耐性】と【火炎耐性】があれば、多少の怪我など気にする必要などない。




「オラァ、こっちだ!! こっちはまだ比較的魔獣の数が少ない、怪我人は元気な奴が支えてやれ! 魔獣が居たら俺が殺す!」
 セゲル・スヴェアボルグ(ドラパラ・f00533)が村人たちへと檄を飛ばす。
 彼は村人たちの命を見捨てずにひとりでも多くの命を救う道を選んだ。
 それは何か深い考えに基づいたものだとか、そういったものではなく。単純に彼には『それしか選択できなかった』だけ。目の前にまだ救える命があるならば、それを助けずにはいられないのだ。

 セゲルは魔獣に突き刺さった剣を抜くと、血を払う。
 救助も行なうが敵も倒す。何故なら敵は倒さぬ限り永遠に村人たちを襲うからだ。
 戦闘に時間を掛けるほど避難は遅れ、且つ自分の手の届かぬ範囲で村人が襲われる可能性も高まる。
 魔獣を即座に屠る攻撃力と、村人たちを庇いながら戦う守備力。救助と殲滅の両立には高度な戦闘技術が要求された。

「セ、セゲルさん! た、たすけ……!!」
「オ、オ、オオオオオオッ!!」
 セゲルは村人の悲鳴に即座に反応すると、邪魔な建物の壁など物ともせずに薙ぎ倒し、最短距離で魔獣へと突撃する。
 見えた魔獣の数は3。即座に殺す事は不可能だが、セゲルであれば耐えきれない数ではない。
「こっから先は、1ミリたりとも通しゃしねえッッ!!」
 セゲルはユーベルコードを使用し、自身を無敵の城塞へと変じる。

「いいか、もうちょいで村から出れる。あと数十メートル魔獣共に見つからなきゃ俺らの勝ちだ! 神様でも何でも祈りながら、死ぬ気で走れ! 運が悪く魔獣が居たときゃ俺の名を呼べ! 勝手におっ死にやがったら許さねえぞ!!」
 通路を塞ぎ、魔獣たちの爪や牙を無数に受けながらも微動だにせず村人たちへ指示を送るセゲル。
 十分に時間は稼いだと見るや、無敵の防御を解除して、裏拳で魔獣1体の頭をかち割る。

「さて、これで6人か。まだ村人も、魔獣もウヨウヨ居やがる。――休んでる訳にゃ、行かねえよなァ?」
 周囲に守るべき存在はない。
 ならば遠慮の必要はないと、セゲルは周囲の建物ごと魔獣たちを消し飛ばし。再び村の中へと姿を消した。


 生還者:9+6
 死亡者:3

成功 🔵​🔵​🔴​

リンタロウ・ホネハミ
こんな胸糞悪いお仕事なんでするかっつったらまぁ……
「それでも人を助けたいんだ」とかいうお人好しばっかじゃ、困ることもあるんじゃねぇかと思ったんすよ
冷静冷徹な奴ってのは必要っす、特に負け戦じゃね

村に着いたらまだ助かる見込みがありそうな、体力ある奴から優先して逃してくっす
家族がなんだとか渋るようなら、嘘八百並べ立ててでも逃げるように言い聞かせるっす
そんで【〇〇六番之卑怯者】の超音波ソナーで包囲の隙間を縫って村人達を脱出させるっすよ
オレっちでカバーできない分の村人は他の猟兵に頼むっす
途中襲われた村人は切り捨てて、とにかくオレっちが出来る範囲だけを守るっす
出来ねぇことはしねぇっすよ

アドリブ大歓迎




(ま、お人好しばっかじゃ世の中回んねっスよね……)

 リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)は小さく溜め息を吐く。
 これはどう見ても負け戦、というより虐殺。
 だったらもう、人が死ぬのはもう確定事項で。
 んでもって、立ち回るのがお人好しばっかじゃ、溢れた魔獣が避難場所だとかを襲ったりとか何とかして、最悪な結果だって十分に起こり得る。
 ならば自分くらい、冷静冷徹であろうと心に決めた。少なくとも今回は、そうする。

「はい、こっちこっち。まだこっちに敵は来てないからね。安全だよー」
 口に蝙蝠の骨を咥えながら、村人たちの避難誘導。
 この道は安全だ。何故なら近くにいる魔獣は現在『お食事』の真っ最中で、こっちにまで気が回っていないから。
 『〇〇六番之卑怯者』。超音波のソナーは周囲の索敵に大いに貢献してくれた。
 魔獣は所詮魔獣に過ぎない。位置と行動パターンさえしっかり読めれば、対処には然程困らない。

「すいません、こっちに怪我人が……」
「オッケー、オレっちに任せといてくださいよ。後で一緒に運んでいくっすわ」
「ああっ、騎士様! ありがとうございます、ありがとうございます!!」
 騎士様とはまた随分と買い被られたものだな、とリンタロウは思った。
 怪我人の姿に目配せをする。もう自力では歩けそうにない、重症のお年寄り。

 村人たちが去った後で、リンタロウはお年寄りに声を掛ける。
「済まねえな、ジィさん」
「……ええ、老い先の短い年寄り。覚悟は出来ていました」
 こうなることを予測していたのか、老人は落ち着いた様子で自身が置き去りにされる未来を受け入れていた。
「お若い騎士さん、どうか自分をお責めなさるな。あなたはお優しい方だ。どうか村の衆の事、よろしく頼みますぞ……」
「――――」

 リンタロウは老人を残し、村人たちの避難誘導へと戻る。
 彼が胸中、何を想ったのかは彼自身にしか分かり得ぬことだ。


 生還者:15+6
 死亡者:3+3
(魔獣に喰われた男。襲撃により引き裂かれた女。置き去りにされた老人)

成功 🔵​🔵​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
――ふはは。偽善であろうが自己満足であろうが、この私に撤退の文字はない。
この命が尽きようとも、世界に愛と希望を示すことこそ、私が猟兵たる理由である!

守りの薄いところを最短経路で突破する。オブリビオンどもの排除を優先するが、庇えば逃げ切れそうな村人は庇ってやろう。
【呪纏】で自己強化を済ませたら、ドラゴンランスと黒炎で応戦しよう。村人には逃げる方向だけを指示する。誘導よりは突破と防衛が優先だ。その先、うまくいくかは……運次第だな。
足止めの役に立つようなら【呪詛】も振りまいておいてやる。

全員を救えないからといって、たった一つであっても救えるものを見捨てるのは、私の矜持が許さんのだ!




 村の外れにて。およそこの凄惨な状況に不釣合いだとさえ言えるような、高らかな笑い声が響き渡る。
「――ふはは。偽善であろうが自己満足であろうが、この私に撤退の文字はない。この命が尽きようとも、世界に愛と希望を示すことこそ、私が猟兵たる理由である!」
 灰燼の髪をした戦士、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)。
 彼はその金の瞳に確かな覚悟と闘志を湛えて戦火の中へと飛び込むと、最短経路で魔獣の撃破へと乗り出した。

 守りの薄いところから、着実に1匹ずつ。
 幸か不幸か村には多くの【呪詛】が満ちている。ニルズヘッグは集めた呪詛を『呪纏』によってその身に纏い、放つ黒炎によって魔獣を灼き滅ぼした。
 村人を見捨てるわけではない。避難誘導はしてやるし、手の届く範囲であれば助けもする。
 だが、優先するのは敵の殲滅。何故なら魔獣の数が減らぬ限り、この虐殺は止まることがないからだ。

「ひ、ひィ……こっちにも魔物が、うわああああッ!!」
 避難誘導を行なった先から悲鳴が聞こえる。残念ながらこの村に安全な避難ルートなんてものは存在しない。付きっきりで守ってやるでもなければ避難を促した村人が、その行先で襲われるのは当然と言える。
「ふっ――!」
 呪纏の高速移動によって悲鳴の元へと駆けつけ、魔獣の喉元を槍で一突き。その一撃で魔獣は倒れたものの、襲われた村人は既に事切れていた。

(このあたりが潮時であろうな……)
 ニルズヘッグは倒した魔獣の数、この場の村人の数、予想される残敵数などを冷静に分析し、一度撤退するよう判断を下す。
「この私が先導して道を切り拓く。助かりたい者は付いて来い。付いて来れぬ者は、置いていく」
 残酷なようにも取れる判断。だが、これがこの場では最善だ。
 自分の身はひとつ。先頭も殿を同時にこなすなど、不可能な話なのだから。

 最悪の状況下で、男は嗤う。
 たったひとつの命であろうとも、救えるものは救ってみせよう。
 それこそが私の矜持であり、示すべき愛と希望である。


 生還者:21+6
 死亡者:6+3
(家屋の下敷きとなり逃げそびれた母親。逃走中に魔獣に襲われた男がふたり)

成功 🔵​🔵​🔴​

ユハナ・ハルヴァリ
【人命優先】
魔獣の声や物音を聞きながらなるべく避け
庇える位置を取りながら風上に向けて誘導

慌てずに、急いで。
守るから。だいじょうぶ。
そんな、嘘にしたくないことを嘯く
叶えるよ
叶えられるだけ

この人たちだけでも、守ってみせる
「みんな」を救えなくても
それが後で、残った人たちを傷つけるとしても
だって「全部」がなくなるなんて
そんなのは、嫌なんだ

だいじょうぶ。
大丈夫。
それは自分にも言い聞かせるように
大丈夫。
悲鳴、断末魔、焼ける匂い、その僅かな隙間で
――大丈夫。

傷ついたひとたちにはシンフォニックキュアを
こんなところで歌なんて、響かないかもしれない
それでも
この喉が灼けつき、枯れ果てても
僕は。




 村の一角。
 魔物に追い詰められた村の少女。

「や、やだ……来ないで……」
 死にたくない。
 毎日沢山働かされて、ご飯もお腹いっぱいなんて食べれなくて。
 お母さんは何処かに連れて行かれて、お父さんも日々やつれていって。
 お父さんは仕事から帰るといつも機嫌が悪く、殴られるのが怖くて私は目を付けられないよう部屋の隅で大人しくしていた。
 そんな、救いのない毎日。大人になったら私も吸血鬼に連れて行かれるのだろうか。
 でも、こんな唐突に終わりが来るなんて思ってはいなかったから。

 さんざん逃げ回ったけど、もう足が動かない。
 怖くて立つことさえできない。

 少女はすべてを諦め、世界を呪い、死を受け入れた。――その時。

「――こっち」
 魔獣を襲う目眩ましの炎弾と共に、誰かが少女の手を引いた。
 その背中は煤で汚れて、服はあちこち裂けて血が滲んでいる。
「慌てずに、急いで」
 少女はその手を引かれるまま、何処かを目指して逃げ続けた。

 連れられた先は村の倉庫で、そこには同じく助けられたのであろう村の子供が幾人か匿われている。
 少女を此処まで連れてきてくれた誰か――エルフの少年はフードを脱ぐと、不安そうにしていた子供たちを優しく抱いて、笑い掛けた。

 だいじょうぶ。
 大丈夫。
 こわくないよ。

 とても優しい声。

 ちょっとまってて、と断りを入れてから。少年は魔物に見つからないよう声を殺し、子供たちにだけ聞こえるようなか細い声で歌を謳った。

「――、――――」

 どこか切なく、胸が締め付けられるような悲しい旋律。
 だけど不思議と、嫌な気持ちはしなかった。優しく抱きしめてくれるような温かさがあった。
 一緒に居た男の子はその場で泣き出してしまったけど。ちゃんと声を荒げるのは我慢して、静かに息を殺して涙を拭っていた。

 その歌声を聞いて、少女は彼がまるで自分たちに謝っているみたいだと感じた。
 見ず知らずの私たちを助けて、自分だってこんなにも傷ついて。
 けれど彼はどこか申し訳なさそうに、贖罪のように優しく謳い続けている。

 少女は何とかお礼が言いたくて、少年の顔を見る。
 ふと目の合った青年は、少女に優しく笑い掛けた。

 どれだけ時間が経っただろう。
 とても長いように感じられた、きっと短い時間。

「もう少し、ここで待っててね。必ず助けを呼んでくるから」
 そう言って少年は倉庫を出ていく。

 ありがとうも言えなかった。名前も知らない誰か。
 
 結局、少年――ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)が子供たちの元に戻ることはなかった。


 生還者:27+3
 死亡者:9
 重傷者:ユハナ・ハルヴァリ
(手足を引き摺りながらも仲間の元へと辿り着き、子供たちの居場所を告げるとそのまま意識を失った)

苦戦 🔵​🔴​🔴​

天御鏡・百々
【WIZ:生まれながらの光で治療しつつ救助、避難】
【人命優先】

我は道具。人の助けになるために作られたもの
なればこそ、救える命は可能な限り救わねばならぬ

治療をメインとしつつ他の猟兵のサポートを行う

生まれながらの光による治療は村人はもちろん
怪我を負った猟兵を治療できれば猟兵達の早期復帰に期待できる
けがの程度がさほどでもなければ「医術3」でも対応できるな

サポートに関しては
「第六感」で敵の薄い所を探す
「失せ物探し」で逃げ遅れた村人を探す
「救助活動」で避難誘導
「オーラ防御12」で敵から護る

ヤドリガミであるが故、この肉体は仮初の物
我が身を犠牲にかばうこともできるな

願わくば一人でも多くの人命救助を(祈り8)


朽守・カスカ
命がある限り、いずれ喪われるのは摂理だ
だけどそれは、唾棄するような所業を見過ごす理由ではない

戦うのでもなく、救い出すのでもなく
囮となって魔獣達を引き連れて、時間を稼ごう

至る所から悲鳴、断末魔が聞こえるだろうが
近くから向かい、魔獣の前に出て囮となって引き連れよう
間に合わなかったなんて、悔やむのは後だ
今、出来ることを只管やるだけだ

さぁ、魔獣よ
私のような小娘は絶好の獲物だろう
襲いかかるといい

【幽かな標】よ、照らして導いてくれ
数多の魔獣が相手でも引く気はない
救い出そうとする者が少しでも多く助けられるよう
戦う者が、少しでも多く倒せるよう
この戦場に集った仲間を信じて
ただ只管、引きつけて、いなしてみせよう


蓮花寺・ねも
嗚呼、……――否。いい。動こう。

【人命優先】

血を染み込ませた衣類を着せた瓦礫を、人の居ない方で動かして気を惹くように。
生身でないと効果がないならぼくが行こう。
開けた場所よりも建物の傍が良い。
誘き寄せたら念動力で建物を倒壊させて周囲を塞ぐ。

村人を逃がした道も、火種や瓦礫で塞いで後を追わせないように。
火は恐れないかな。煙で見えなくなっていれば良いけれど。

精々惹き付けて時間を稼ぐ。
直接対峙するのは最後の手段。
どうせ必要なら派手に、他に気を向けられない位目立とう。


全部を救える訳ではない。
伸ばせる手は小さい。
死は覆らない。
知っている。

知っているよ。
だけれど、今は未だ終わっていない。
見送るのは、その後だ。




(嗚呼、……――否。いい。動こう)
 燃える村を俯瞰し、蓮花寺・ねも(廃棄軌道・f01773)は何かを想う――いや、そうしようとして、止めた。
 物思いに耽るような時間など無いのだ。
 そうしている間にも、手の届かぬところで誰かの命が失われているかも知れない。

 ねもはできる限り派手に立ち回った。
 少しでも魔獣を惹きつけるように。時間を稼いで、その間に仲間が村人たちの避難を進めてくれれば良い。
 建物を倒壊させて進路を塞ぎ、また逃げ回っては挑発する。
 さながら命懸けの鬼ごっこをどれだけの時間続けただろう。

(そろそろ頃合いだろうか)
 ねもは魔獣と対峙する。
 魔獣の数は7。このまま単独で戦って、ギリギリ勝てるかどうかの絶妙なライン。

 そこに、思わぬ乱入者の姿があった。

「おとさん、おかさん、どこ……?」
 魔獣を惹き付けたねもの背後の建物から現れた、小さな女の子。
 どうしてまだこんな場所に、と憤慨している場合でも無い。
 ねもは咄嗟に子供を抱きかかえて魔獣たちと距離を取る。

 不意に思考が停止した。
 自分はどうなったって構わない。なのにこの子を救う事がどうしてもできない。
 凡そ感情が欠落したかのように、底抜けに暢気に見える蓮花寺・ねもに、珍しくも焦燥と言って良いに近しき感情が宿る。
 考えろ。ぼくはどうすればいい。この子抱えたまま一点突破を図るべきだろうか、家屋にでも放り込んで戦うべきか。
 思考が袋小路へと入り込み、気付いた時には――

「グオオオオオオッ!!」
 目の前に振り上げられる魔獣の凶爪。

 だめだ。何もできなかった。
 変われない。変わっていない。
 ただここに居て、何もできない。
 見送ることしかできないのだと。

「やれやれ。ここは死にたがりばかりが多くて困るね」
 何処からともなく声が聞こえた。
 目の前に振り上げられた爪はそのまま振り下ろされること無く、魔獣は前のめりに倒れ伏す。
 その背後には、人形の少女と和装の少女の姿があった。

「どうも、お嬢さん。正義のヒーローの登場、なんてね」
「よく言うわ、痴れ者が。汝も似たようなものだったではないか」
「手厳しいなぁモモ君。私とキミの仲じゃないか」
「我と汝はさっき出会ったばかりなのだが……」
 息の合うような、ちぐはぐなようなよく分からない掛け合い。
 溜息を吐きながらも、和装の少女――天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は朱の薙刀を振るって周囲の魔獣を横一閃に薙ぎ払う。
 その斬撃は魔獣の内の一体を仕留め、残る複数体に対する牽制としても十分な効果を発揮した。

「まぁまぁ。旅は道連れと言うだろう? ボクらは十分に囮の役目は果たした。あとはなるべく怪我をしないよう仲良く帰ろうじゃないか」
「倒すのも癒やすのも我に押し付けておいて抜け抜けと……いや、良い。我は道具。相手が食えぬ人形であろうとも我は我の務めを果たそう」
「ふふ、流石。素敵だねモモ君。大丈夫、ボクだってサボりはしないさ。さぁ『幽かな標』よ、照らして導いてくれ」
 笑いながら人形の少女、朽守・カスカ(灯台守・f00170)は手に持つランタンに火を灯した。
 敵の攻撃を予測するユーベルコード。揺らめく灯が、カスカに未来を指し示す。
「モモ君、ちゃんと共有できてる?」
「あぁ、無論だ。我は鏡。この程度の光を写し取れずして何とする!」
 カスカのランタンが映し出した敵の未来。それを百々は鏡――ヤドリガミとしての己の本体にて直接写し取り、その情報を共有する。
「既に視えている攻撃を、避けれぬ道理はない!」
 百々は魔獣の攻撃をひらりと躱し、破魔の力を込めた薙刀で魔獣を次々に屠っていった。


 百々とカスカの活躍により、ねもが惹き付けていた魔獣の群れは無事に一掃された。
「お疲れ様。大丈夫だったかい? ピンクの髪のお嬢さん」
「――嗚呼。礼を言う。ありがとう。人形のきみと……、鏡のきみ」
「天御鏡・百々だ。礼には及ばぬ。我は我の信条に従ったまで」
 窮地を救ってくれたふたりに礼を述べる、ねも。
 だが彼女の心は、どこか晴れない。

 全部を救える訳ではない。
 伸ばせる手は小さい。
 死は覆らない。
 知っている。

 知っている。――筈だった。

 けど自分は、何もできなかった。
 ふたりが来なければ、誰ひとり助ける事もできぬままあの場で死んでいただろう。
 そう。死んでいた。自分も、この女の子も。

 ねもは少女の姿を見る。
 その時、ねもはようやく気付いた。
 自分が手に抱く少女が、まだ小さく震えている事に。

 ――未だ終わっていない。
 見送るのではなく。
 ちゃんとこの手で、

「大丈夫。きみはぼくが送り届ける」
 ねもはその場に屈んで、少女の頭を優しく撫でた。


 生還者:30+1
 死亡者:9

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『暗闇の獣』

POW   :    魔獣の一撃
単純で重い【血塗られた爪】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暗闇の咆哮
【血に餓えた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    見えざる狩猟者
自身と自身の装備、【自身と接触している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵たちの活躍により、戦火に包まれる村から31名もの村人を救出した。
 失った命は現段階で9名。
 状況を考えれば十二分の成果と言って良いだろう。

 ――この結果をどう捉えるかは、個々人の完成に依るところだが。

 これで村人たちの粗方の避難は終了した。
 しかし依然として村には何名か逃げ遅れた村人が残っているし、血に飢えた魔獣も数多く徘徊している。

 手早く魔獣を掃討しなければ残る村人は息絶えるし、後に控えるヴァンパイアの討伐にも影響が出てしまう。

 ここからは魔獣の掃討戦だ。
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
あらかた逃げたな。ならば後は、残った連中を助けるためにも、敵を殺めるのみよ!

【三番目の根】で武器の封印を解く。【呪詛】を乗せてやれば、充分に殺傷力の高い槍になろう。
……なに、私の救えなかった者の痛みだ。持ち主の味わった苦しみに比べれば、なんということはない!
こいつで片っ端から【串刺し】だ。爪の一撃は単純だが、見切れなければ槍で防ぐ。殺戮形態のこいつならば、多少の攻撃には耐えてくれよう。

救える範疇に村人がいるならば、手を貸そう。逃げる方向くらいは教えてやれる。
獣どもは単純だ。【恐怖を与える】ことが出来るならば、足止めも出来るやもしれん。
しんがりは任せるが良い。先導はしてやれんがな。




「あらかた逃げたな。ならば後は、残った連中を助けるためにも、敵を殺めるのみよ!」

 ならば一番槍は私が戴く。
 そう言ってニルズヘッグ・ニヴルヘイムは竜槍を手に周囲の呪詛を掻き集めた。
 『三番目の根』による装備品の封印解除。
 その代償は、【救えなかった者の死の記憶の追体験】だ。
 たった今、目の前で死んでいった者たちの苦しみが、恐怖が、ニルズヘッグの心の内へと注がれていく。

 さぁ、死者共よ、私を呪え!
 私の救えなかった者の痛みだ。
 持ち主の味わった苦しみに比べれば、なんということはない!

 竜槍は咆哮を上げ、その姿を【殺戮形態】へと変貌させる。

「往くぞ、相棒。ここから先は黄泉路、魔獣の一匹たりとも生かしては帰すまい」

 ニルズへッグは殺戮の化身と成った竜槍を手に、翼を大きくはためかせ空を駆ける。
 そこから始まるのは一方的な殺戮。
 一匹二匹と串刺しにして、ニルズへッグの身体は返り血に染まっていった。
 魔獣たちはニルズへッグを危険と見るや、その身体目掛けて一斉に襲い掛かる。
 ニルズへッグも竜槍にてその攻撃を受け止めるが、流石に全てを捌き切るとはいかず、魔獣の爪が肉を裂いた。
 だがそれでもなお、ニルズへッグは不敵に嗤う。
「それがどうした。この程度の傷で、私は死なぬぞ!」
 ニルズへッグは力任せに振るった槍で魔獣たちを吹き飛ばすと、また一匹魔獣を串刺しにして、その死骸を別の魔獣へと投げつけた。
 さしもの魔獣たちも多少怯んだのか、慎重にヴィルヘルムとの距離を取る。
 
「まだ動ける者は早くこの場を離れよ。しんがりは私に任せるが良い。先導はしてやれんがな」
 血塗れの戦士は金の瞳を輝かせ、再び戦場を駆け抜けた。


 生還者:31+1
 死亡者:9+2

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
人命優先
ボクは英雄で、ボクはヒーロー。それはボクを救った人達への証明なんだ。

ダッシュ、ジャンプで敵を見つけ次第突っ込み怪力で切って斬って叩き切って叩き潰して薙ぎ払って行く。
野生の感に、本能に身を任せろ。隠れている獲物は音を、痕跡を見切れ
人を救え。救えないヒーローに意味はない。英雄を証明できなければ、自分を救ったものへの裏切りだ
傷を恐れず庇え。その痛みに意味はない。激痛耐性
構わずに切り返せ。敵だけを見ろ

侵食加速
期待に思考が脳を蝕み痛みを消す。祈りに血が沸騰し体を内から裂く
決意が力の代償に体を蝕む

血塗れの、骨が見える傷を負いながら表情を変えない彼女を一般人はどう見るだろう。
きっと化け物、怪物と…




 宮落・ライア(英雄こそが守り手!(志望)・f05053)が戦場を飛び回る。

 建物の屋根伝いに飛んで、跳ねて。敵を見つけ次第、死角から思い切り潰し切る。その無骨な大剣による斬撃はむしろ打撃にも近く、魔獣の肉体をぐしゃりと潰し、力任せに捩じ切った。

(ボクは英雄で、ボクはヒーロー。それはボクを救った人達への証明なんだ!)
 人を救え。救えないヒーローに意味はない。
 英雄を証明できなければ、自分を救ったものへの裏切りだ。
 ライアが胸に秘めた決意。それは端から見れば自己暗示を越えて呪いのようなものにさえ映った。

「ひ、ひぃいいいっ!!」
 ライアの視線の先。村の男がたった今、まさに魔獣によって襲われている。
「――――!!」
 普通に向かっても間に合わない。ならば力を使うしか無い。
 元より出し惜しみをするつもりも無かった。
 期待に思考が脳を蝕み痛みを消す。祈りに血が沸騰し体を内から裂く。決意が力の代償に体を蝕む。
 骨が軋み、折れて。筋肉が断絶し、それを補う新たな筋組織が無理矢理にライアの肉体を急速に作り変える。

 全身の血が沸騰する。負荷を考えぬ力の行使に肉体が悲鳴を上げる。
 構うものか。ただこの一撃、ただあの命を救う為に今のボクがある。

 大地を蹴り、跳ねた。
 その瞬間、ライアは目にも留まらぬスピードで魔獣へと肉薄する。
 力任せの大振り。その一撃は魔獣に抵抗する事も許さず、その上半身をただの一撃で消し飛ばした。
 魔獣から噴水の如く吹き出す血液。無理な力の行使に耐えきれず、ぶらりと垂れ下がるライアの右腕。
 支障はない。怪我なんてそのうち治る。死なずに戦いを続けられるなら大丈夫。

 助けた男へと視線を向ける。
 どうやら目立った外傷もなく、無事なようだった。
 ライアは男に声を掛ける。
「大丈――」
「ひっ、ば……化物ッ……!!」
 男はその顔を恐怖に染め上げ、みっともなく這いずりながら一目散にその場を逃げ出す。
「…………」
 それでもライアは笑顔を崩すことはなかった。
 胸の奥が、じくりと痛む。
 けど大丈夫。彼の命は助かった。
 わたしはまだ、わたしで居られる。

 幸いにも、まだ魔獣はたくさん残っている。
 さぁ人を救おう。救えないヒーローに意味はない。
 もっとたくさん人を助けて、ボクは英雄を証明するんだ。


 生還者:32+2
 死亡者:11

成功 🔵​🔵​🔴​

西院鬼・織久
【POW】
【心情】
死臭がする。血の臭いがする
この魔獣共の血肉はさぞ怨念に塗れていよう
喰らった者の怨念ごと我等の糧となるがいい

【行動】
「視力」「暗視」「第六感」を働かせ奇襲に警戒

【戦闘】
周辺の火の影に潜み接近
「ダッシュ」も利用し敵に「先制攻撃」を仕掛ける
数体固まっていれば「範囲攻撃」「なぎ払い」
一体一体距離が離れているなら「二回攻撃」「傷口を抉る」
攻撃は致命傷のみ「見切り」、避けられないもののみ「武器受け」
機会があれば「カウンター」を狙う
包囲される前に敵一体を「影面」で捕縛
「怪力」で「敵を盾に」して周りの攻撃を防ぐ、または進路上の敵に叩きつけて道を作るなど包囲されないよう立ち回る




「ふ、くく……」
 自分でも不思議だった。我等に『笑う』などという感情が残されていたとは。
 だが、それ程までに。この身は歓喜に打ち震えている。
 死臭。血の臭い。
 この魔獣共の血肉はさぞ怨念に塗れている事だろう。
 西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)、それは「個」ではなく西院鬼の狂気と殺意を指す名前。
 織久は闇器を手に、その身を影へと潜らせた。

 織久の戦い方は効率的に魔獣を狩る事に終始徹底していた。
 個を相手取り背面からの強襲。
 確実に仕留め切れると踏めば複数まとめての薙ぎ払い。
 迅速に、丁寧に、油断なく。
 その手際は見事と言うしか無く、着実に魔獣の数を減らしていった。
 膨大な狂気と殺意を抱えながらも、冷静さは決して失わない。
 それこそ西院鬼一門がオブリビオン狩りとして名を馳せる事となった一因である事は疑いようがなかった。

「ひ、あああああああぁあッ!!」
 またひとり、村人が魔獣に喰われ犠牲となった。
 しかし、生きたままに肉を貪られる姿を目の前にしても織久は眉ひとつ動かさない。
 若干13歳、まだ幼さの残る顔立ち。
 それでも彼は『西院鬼』の狂戦士として既に完成された存在だった。

 村人の肉を喰らう魔獣の背中に、淡々と振り下ろされる大剣。
 ぐしゃり、と潰れた魔獣の返り血と内蔵が、織久の顔を赤く染める。
「喰らった者の怨念ごと、我等の糧となるがいい」
 ただそれだけを言い捨てて。
 織久は返り血を拭おうともせず、大剣を手にその場を後にした。


 生還者:34+2
 死亡者:11+1

成功 🔵​🔵​🔴​

ユハナ・ハルヴァリ
【人命優先】
起き上がって、立ち上がって
歌の続きをうたえなくとも

助けられた命と助けられなかった命
天秤に掛けたら答えは簡単で
でも
そんな風には、計りたくないから

未だ残っている村人のみんなの姿を探しながら
魔獣を一体一体屠る
星花弁は夜空の煌きに似て
貫いて、貫いて
何処にも逃げない様に
おしまいだよ。
邪魔をし続ければきっと
ヴァンパイアが出てくる筈
駆けずり回って煤に塗れて
その時を待つ

助けた人たちには
大丈夫だよ、って声を掛ける
それがどんなに無意味でも
手を伸ばす事をやめたくない

ただ祈る、祈る、
明日が来るようにと。
それが少しでも
君たちに優しく在るようにと。
だから、ね。
振り向かないで走って
目を瞑ってもいいから
走って。




「煌めく星よ――」
 ユハナ・ハルヴァリが放った貴石の花弁は、さながら星屑のように煌めきを放ち、されど無慈悲に魔獣の命を屠る。
 ユハナにとって魔獣1体1体の戦闘力は然程の脅威ではない。何の制約も無しに戦えば、遅れを取る事など滅多にない筈なのだ。

 だがそれは、意味のない仮定だ。
 現にユハナは先程も意識を失うほどの怪我を負ったばかりだ。
 仲間の治療が無ければ、或いは猟兵としての異常とも言える生命力が無ければ、そのまま命を失っていてもおかしくない状況だった。
 何故そんな状況に陥ったのか。
 それはひとえに彼がどうしようもなく『甘い』人間であったからに他ならない。

「危ない……!」
 目の前で襲われる男の人の姿。
 それは先程助けた子供たちとは違い、自分よりも歳上の、れっきとした大人。
 それでも関係ない。救うべき命に区別はない。
 身を挺して庇い、敵を倒し。また次の敵か、或いは助けるべき人間を探す。
 駆けずり回って煤に塗れて、大地に血の跡を残しながら。
 そんな事を繰り返せば限界が来る。
 猟兵は超人であれど、無敵ではない。
 疲弊すれば攻撃の精度は失われ、身のこなしも落ちる。
 次第に一撃で魔獣を屠る事さえ困難となり、手間取っている間に他の魔獣にも襲われ、村人も襲われ、それを庇っては傷を負い、戦闘効率は更に落ちていく。

 けれどユハナは足を止めなかった。
 泣きもせず、苦しさを隠し、助けた村人には優しく言葉を投げ掛けた。

「大丈夫です。魔獣は僕が倒します。だから――」

 振り向かないで走って。
 目を瞑ってもいいから。
 走って。

 いま僕は、どんな表情をしているのだろう。
 笑えていただろうか。いや、きっと笑えてはいない。
 けれどせめて、彼らが気に病まず逃げ切れるように。
 少しでも安心できるように、振る舞えただろうか。

 星屑の花弁が輝きを失う。
 もはやユハナに杖を握るだけの力も残されてはおらず、村人たちの背を見送ったところで膝を付く。
 目の前には魔獣の群れ。どうやらこの場から逃げ切るような体力さえ残ってはいない。
 ユハナは目を閉じて祈った。
 彼らが無事に逃げ切れますように。彼らに明日が、訪れますように。

 魔獣の血塗られた爪は無慈悲にも振り下ろされ、ユハナの肉体は千切れる程に深く、大きく切り裂かれた。


 生還者:34+?
 死亡者:11+?

苦戦 🔵​🔴​🔴​



 とくん、とくん――

 鼓動と共に流れゆく血液。
 痛い、と叫ぶ事すらできず、ただうっすらと景色だけが見える。

 何も考えられない。
 ただ漠然と感じていた。
 これから自分が「死ぬ」のだと。

 遣り残した事はあっただろうか。
 後悔はしているだろうか。
 そんな事を反芻するような余韻もなく、ただ意識だけがぼんやりと薄らいでいく。
 意識は空に溶け、肉体だけを置き去りにして。

 きっとこの魂は、骸の海へと向かうのだろう。
フェイス・レス
アドリブ大歓迎
乗り遅れたが後は害獣の掃討だろう?なら気楽に獣とコウモリ狩りを楽しもう。
逃げ遅れ?避難先は教えるが基本後回しだ。村人優先するぐらいなら仲間でピンチの猟兵を助ける、まぁ相手の猟兵には怒られるだろうがな。どうせ村人助けるのに必死になって自分を省みない奴は結構居るだろうしな。二回目だが村人より敵と仲間猟兵の助け優先だ。
武器のアサルトウェポンと鉄塊剣の二つで派手に音を出し【二回攻撃】で魔獣を村人からオレに誘き寄せる位はする。

・・・魔獣もヴァンパイアも絶対に生かして返さない。

そう言えば猟兵の仲間を化け物扱いしてた村人が居たみたいだがオレにそんなことしたら足元に弾丸叩き込んでやる・・・


リンタロウ・ホネハミ
騎士様……騎士様っすか……
ご立派なモノホンの騎士様ならなんとかするかもしんねぇっすけど
オレっちはただの傭兵に過ぎねぇんで
やれるっつったら、さっさと魔獣共をブチ殺して被害を抑えることぐらいっすわ

豹の骨を噛み砕いて【〇八三番之韋駄天】を発動
スピードに任せて魔獣共を片っ端からぶった斬ってやるっすよ!
殺すことより行動不能にさせることを重視するっす
動けなくしときゃー他の猟兵さん方が手が空いたときにトドメを刺すこともできるっすからね
村人救出中にさんざ把握した行動パターンから動きを先読みすりゃあそれなりに効率よくやれるってもんっすよ

アドリブ大歓迎




「よし。行くぞ、リンタロウ」
「あいよ、了解っす」
 ふたりの猟兵がそれぞれ愛用の武器を手に敵陣へと躍り出る。
 まず先手を取ったのはリンタロウ・ホネハミ。彼は呪いの代償として豹の骨を噛み砕くと、身体のバネを大幅に強化した。
 『〇八三番之韋駄天』。その瞬発力はオリジナルの豹をも越えて、一拍と置かずに敵に肉薄する。
「んじゃ、その首いただい――っと、ぬわっ!?」
 呪いの骨剣『Bones Circus』で敵の首を撥ねてやろうと構えた瞬間、泥濘に足を滑らせる。
 それはリンタロウにとって圧倒的な不運であったのだろう。本来であれば致命的、戦場においてその一瞬の隙が命取りとなる事は然程珍しい話ではないところだったが。
「大丈夫だ、任せておけ」
 対象的にこの男、フェイス・レス(人間の戦場傭兵・f11086)はまさに絶好調といった様子で。
 片手で魔獣相手に魔弾をぶち込みながら距離を詰めて、跳躍からの豪快な鉄塊剣による袈裟斬り。
 フェイス・レスは見事に魔獣を仕留めると、尻餅をついたリンタロウの傍へと駆け寄り周囲の魔獣を牽制した。
「危ないところ、どうもっすよ」
 たまたま調子が悪かっただけだと言いたいところだが、助けられた事実には変わりない。それは傭兵として、リンタロウも十分に弁えている。

「あれ、まだ生きてんすかね?」
「どうだかな」
 ふたりは横目で大量の血を流しながら倒れている猟兵――ユハナの姿を見る。
 傍目から見れば、常人であれば確実に死んでいるであろう出血量。
「あれはもう、助からないかも知れないな」
 フェイス・レスは大きく息を吐いた。
 どうせ村人助けるのに必死になって自分を省みない奴は結構居るだろう、そう予測はしていたが。
 ああも見事におっ死ぬような馬鹿が居るとは思ってなかった。
 しかも恐らく、記憶が確かなら――あの猟兵はさっきも大怪我をして仲間の治療を受けてなかったか。
 戦場では間違いなく早死にするタイプだ。そんな事、傭兵でなくたって察しが付く。
 そんなフェイス・レスの心中を察してか、リンタロウは意地の悪い笑みを浮かべてフェイス・レスに声を掛ける。
「んじゃ、どーするんすか? 見捨てるっす?」
「……そうだな」
 フェイス・レスは銃を捨て、その大剣で片腕を大きく斬り裂いた。迸る地獄の炎が大剣を包み、燃え盛る。
「命知らずの馬鹿の命など、知ったことでは無いが……こいつらは絶対に生かして帰さない」
「そうっすね。オレっちらにやれる事っつったら、さっさと魔獣共をブチ殺して被害を抑えることぐらいっすわ」
 リンタロウは薄っすら笑いながら答えると、再び骨を齧って武器を構えた。

 生死は不明、されど魔獣を倒さなければ治療する事だってままならない。
 ならば自分たちにできる最善は、1秒でも早くこの敵を屠り、仲間の命を助けること。

「今度は無様を見せないっすからね! オレっちが足止めるんで、トドメはおなしゃっす!」
「了解だ。纏めて灼き散らす」

 ふたりの傭兵による、魔獣の掃討が始まった。


 生還者:34+3
 死亡者:11+4

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

天御鏡・百々
【人形部隊の数を生かし魔獣に対応】

手に持つ人形兵の左右に鏡を召喚
合わせ鏡に映る鏡像兵達を鏡の中から呼び出す

90体の鏡像兵部隊は
咆哮対策で数体ずつに分けて行動させるぞ

兵達には敵を直接攻撃して倒すのはもちろんとして
村人を追わせないように道をふさいだり
牽制攻撃で我や他の猟兵がたどり付くまでの時間稼ぎをさせる

我自身も破魔の力を乗せた薙刀で魔獣を薙ぎ払う
鏡像兵は防御力が低いため
我のオーラ防御で護りつつ戦いたいところか
とはいえ防御は村人や猟兵優先だ

透明になるとは厄介だな
だが、生まれながらの光で照らせば
不自然に光が消える場所で判別できるのではないか?

●アドリブ、絡み歓迎
特に1章で組んだ朽守と戦えれば心強いな


朽守・カスカ
百々君(f01640)を援護しつつ
逃げ遅れた村人の救出の時間を稼ごう

【幽かな標】
この灯は百々君とも相性がいいみたいだしね
透明化されても、揺らめきが攻撃を教えてくれるさ
そして……1人でも多くを助けるために
村に残る魔獣を狩りにいくよ

近距離で強力な一撃を持つ相手だ
無為に接近しなくて済むように
武器のガジェットは杭を打ち出すものを呼び出そう

悲鳴が聞こえたならば駆けつければ
囮となっては避け
撃ち抜いては傷を負わせ
手負いとなった獣達を引き連れて
救出の時間を稼いだら後は反抗だ

先程はわざと逃げ回っていたがね
…私達は、猟兵だ
魔獣達よ、狩る側だったお前達を狩りにきた

お前達がそうであったように、慈悲はない
狩り尽くすよ


ジェイクス・ライアー
少年の家族は死んだだろう。獣に食い散らかされたか火の手に巻かれたか家の下敷きになったのか。
他の心ある猟兵であれば、きっと彼らも救えたのだろう。
だが私は英雄ではない。ただの兵士だ。

まだ先がある。行こう。

【POW】
魔獣を発見し次第討伐にあたる。それが村人の避難時間を稼ぐ事にも繋がるはずだ。
近くに村人の逃げ遅れがいる場合は銃の使用を避け、ベルトのバックルの裏に仕込んだらナイフなどで近接戦。次の戦いもあるからあまり消耗しないよう、なるべく効率的に【戦闘知識】などで弱点を狙う。
目潰しや鼻潰しが有効なら躊躇わず行う。
血を浴びることも、怪我を負うことも、戦場では日常の光景だ。人が死ぬことも、日常だ。




 この村はもう終わりだ、とジェイクス・ライアーは思った。
 人命はそれなりに助けられた。だが、焼けてしまった家や備蓄は如何ともし難い。
 この不毛な、ヴァンパイアに依る支配を受けた土地で、一から村の復興をするのはまず難しい。
 何処か受け入れ先の村を探すか。そも、そんな余裕のある村が存在するのかどうか。
 何にせよ放逐すれば助けた村人たちもそのまま飢えて死ぬか、魔獣の餌となるだけだろう。
 場合によっては新しい「飼い主」でも探した方が、少しはマシに生きれるかも知れない。

 少年の家族は死んだだろう。獣に食い散らかされたか火の手に巻かれたか家の下敷きになったのか。
 他の心ある猟兵であれば、きっと彼らも救えたのだろう。

(――だが私は英雄ではない。ただの兵士だ)

 弁えている。
 情に流されず、己に出来る最適の行動を。
 それが戦場傭兵の流儀であり、戦場に生きるものの鉄則だ。
 まずは魔獣たちの掃討を。そして吸血鬼の討伐を。

 そしてナイフを構えたジェイクスの傍には、あとふたり、猟兵の姿があった。
「では朽守、準備はよいか?」
「勿論だとも。この灯は百々君とも相性がいいみたいだしね、期待してくれて構わないよ」
 天御鏡・百々と朽守・カスカ、ふたりの少女。
 百々が懐から人形兵の形代を取り出すと、その人形兵にカスカがランタンの火を灯した。
「『幽かな標』よ、百々君の人形を照らし、導いておくれ――」
「『我が眷属、合わせ鏡に果てなく映りし鏡像兵よ、境界を越え現世へと至れ』」
 揺らめく灯が魂のように、人形兵へと宿る。
 その人形兵が、百々が喚び出した合わせ鏡によって無数に数を増やしていく。

『幽かな標をその身に宿す、合わせ鏡の人形部隊』――百騎夜行とも取れるそれは、百々・カスカ・ジェイクスの三人の前に、理路整然と並び立った。

「残念ながら百、とは行かぬがな。配下としては申し分あるまい」
「ふむ。私が部下を持つ事になるとは、何とも不思議な気分だな」
 肩を竦めるジェイクス。彼は確かに兵士ではあったが、その性質はどちらかと言えばスパイや暗殺者に近いとさえ言えた。
「じゃあ私と百々君が兵隊を連れて、戦場を掻き乱す囮となろう。その間にジェイクス君には浮いた魔獣を始末してもらう……という形でどうだろう?」
「成程、それで構わない。得意分野だ」
「では決まりだな。鏡像兵、個々の力は然程高くない。幾つかの武隊に分けて運用する故、我らは着実に敵の撃破を」
「心得た。ふふ、では頼りにしているよ、ふたりとも。それに兵隊君たちもね」
 カスカは笑い、百々は薙刀を構え、ジェイクスは闇へと消えていく。

「我らも行こうか」
「ああ。先程は逃げ回ってばかりだったからね、汚名返上といこう」
 私達は、猟兵だ。
 魔獣達よ、狩る側だったお前達を狩りにきた。
 お前達がそうであったように、慈悲はない。
「百々君。これで終わりにしよう」
「うむ。これ以上、魔獣や吸血鬼の好きにさせて良い理由も無い」

 ふたりと九十の人形兵が動き出した。
 この村を襲う災厄の禍根、その総てを討ち取る為に。


 生還者:37+6
 死亡者:15+3

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 こうして長いようで短い、魔獣の掃討作戦は終わりを告げた。
 助かった命は43、失われた命は18。

 だがもうひとり、倒さねばならない敵は残っている。

 オブリビオン:ヴァンパイア。

 それは数いる支配者の内の、ただのひとりに過ぎない
 彼を倒したところで、ダークセイヴァーにおけるヴァンパイアの支配は何一つ揺るがない。
 それが現実。

 それでもなお、君たちは――、
ベリザリオ・ルナセルウス
●目的
織久(f10350)に協力してヴァンパイアを倒す


やっと追い付いたよ織久。本当に君は何かを嗅ぎつけるとあっと言う間にいなくなるな
織久、ヴァンパイアの討伐を私にも手伝わせてほしい
君の戦いは君自身も傷付ける
止めはしない。それが君の生き方だから
ただ側で戦わせてくれ

●戦闘(WIZ)
影の蝙蝠は【鈴蘭の嵐】で対抗しよう
敵の注意を引き付ける事もできればいいが
あえて目立って私に注意を引き付け織久が戦いやすいようにする
いかにヴァンパイアでも隙はできる
その隙を逃す織久ではないからな
そのために私は守りを固めて一秒でも長くヴァンパイアを引き付ける
ただ守るだけでなく【武器落とし】と【鈴蘭の嵐】も使う


西院鬼・織久
【POW】
【心情】
現れたか
我等が狩るべきオブリビオン
この惨状の首魁となればさぞその身は怨念に塗れていよう
斬り刻み焼き尽くし、我等が糧としよう

【行動】
「視力」「暗視」「第六感」「戦闘知識」など
使える物は全て使い先手を取り隙を突く

【戦闘】
狙いは「先制攻撃」での「殺意の炎」
接近して「二回攻撃」「なぎ払い」で手応えを確かめる
防御が高ければ「鎧砕き」「鎧無視攻撃」
間合いを空けられたら「範囲攻撃」「殺意の炎」で牽制
隙が出来れば「ダッシュ」で距離を詰める
有効打があればその箇所に「傷口をえぐる」
攻撃は致命傷のみ「見切り」
避けられない場合は「怪力」も利用し「武器受け」すると同時に「カウンター」を狙う




「まったく、酷い有様だ……」
 空より舞い降りた、一帯の首魁であろうオブリビオン:ヴァンパイア。
 およそ1匹残らず駆逐された魔獣たちの姿を見て、ヴァンパイアは嘆く。
「此奴等を生み出すのとて、タダではない。再びの召喚には多くの贄を必要とするだろう。例えばそれは、噂に聞く猟兵とやらの血であったり、何処ぞに身を潜めているこの村の家畜どもの血であったり――な!」
 ヴァンパイアは言葉を紡ぎながらも、死角から放たれた大剣の一撃を腰に帯びた剣で打ち払う。
 仕掛けたのは西院鬼・織久。彼は初撃を防がれると同時に黒い炎を放ち、目眩ましと同時に距離を取った。
「口上の途中で奇襲とは。まこと、猟兵というのは躾のなっていない蛮族よな」
「…………」
 織久は何も答えない。
 彼にとってオブリビオンは、狩るべき対象であってコミュニケーションの対象ではない。よって、交わす言葉など不要。ヴァンパイアの言葉など、最初から耳に入ってすらいなかった。

「やっと追い付いたよ織久。本当に君は何かを嗅ぎつけるとあっと言う間にいなくなるな」
「……ベリザリオですか」
 一拍を置いて戦場へと駆けつけたのは、聖騎士ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)。
 彼は織久の保護者――と言えば語弊はあるが、恩人の忘れ形見である織久の事を何かと気に掛けているようだった。
「織久、ヴァンパイアの討伐を私にも手伝わせてほしい。君の戦いは君自身も傷付ける」
 止めはしない。それが彼の生き方だから。
 彼の生き方を否定する事は、西院鬼――自分の命を救った者への否定にも繋がる。
 それはつまり、自身の存在の否定に他ならない。
 ただ側で戦うだけでいい。彼の生き様を見届ける。
 それがベルザリオなりの恩義への報い方であり、織久への愛情の示し方だった。
「分かりました、ベリザリオ。あなたの助力は心強い。ですが――、」
 爛々と光る赤い瞳が、ベリザリオを睨み付ける。
「我等の流儀に口出しは無用です。傷付こうが、傷付くまいが、我らの使命はオブリビオンを狩り、その怨念を糧とする事。邪魔立てするようなら、あなたであっても容赦はしません」
「……分かっているよ」
 べリザリオとて、本音で言うなら織久には同じ年頃の他の子供らのように、もっと幸せな、人間らしい生き方が与えられて良いように思う。
 だが、それは不可能だ。少なくとも軽い言葉を投げ掛けたところでどうにかなるほど、西院鬼の『呪縛』は根の浅いものではない。
 べリザリオは『保護者』としての心を押し殺し、『戦士』として織久の隣に並び立つ。

 ――余談ではあるが。
 織久がひとりで戦っていれば、ヴァンパイア相手の戦いに苦戦は免れなかっただろう。
 ベリザリオの過保護とさえ言える織久への想いが、結果として今回は彼を助ける事に繋がった。

「花よ、舞え――!」
 ベルザリオから放たれる、鈴蘭の嵐。
 舞い散る花弁に身を潜ませて。殺意の炎をその手に宿し、西院鬼の狂戦士はオブリビオンの元へと駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
黒・幕・発・見! 

十分倒した?十分働いた?その考えに意味はない。
目の前に敵がいる。
何も変わらない?何も変えられない? 考える必要も無い。
目の前に敵がいる。

目の前に敵がいる。ヒーローにはそれで十分な理由だよ。


【侵食加速】でドーピング。
大剣と刀の二刀流で【ダッシュ】し突っ込む。
敵の攻撃を見切り切り払い【鎧砕き】【衝撃波】【二回攻撃】でもって攻撃する。
誓約が北なら【覚悟】【激痛耐性】でもって破る。




「ふっ、ふふ……ふふふ……」
 宮落・ライアは笑っていた。
 あちこちから血を流し、変形した骨が飛び出て、歪な形で繋がった筋肉が捻じれようとも。

「黒・幕・発・見!」
 宿敵を前に赤い瞳は狂気に染まり、湧き上がる感情は歓喜のみ。

 十分倒した? 十分働いた?
 ――その考えに意味はない。

 何も変わらない? 何も変えられない?
 ――考える必要も無い。

 目の前に敵がいる。

 目の前に敵がいる。
 ――ヒーローにはそれで十分な理由だよ。

「『負けられない、死ぬことも止まることも認められない――』」

 ここに来て、ライアの肉体の侵食は更に加速していく。

 違えられぬ期待――それは多くに選ばれた。
 内に響き続ける祈り――それは多くに託された。
 それは多くに救われた。
 だから――、

「『私は託された! 選ばれたんだから!』」

 強く狂気に近い決意。
 ライアの中で、何かが弾けた。

 その姿は彼女の思い描くヒーローとは程遠く。化け物じみた、狂戦士と呼ぶに相応しいものだった。
 大剣と刀の二刀流。筋力を強化し、骨格を強化し。耐えきれぬ反動を無理矢理抑えつけながら、人ならざる速度での連撃を加える。
 その速度は支配種たるヴァンパイアですら、反応するのがやっとといったところ。

「わた、し……、こそがっ! ヒーロー、に……なるん、だあッ!!」

 ライアの放った渾身の一撃は、それを受け止めたヴァンパイアの剣ごとへし折って。
 その身を遠く、燃え盛る家屋の壁へと吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワン・シャウレン
遅れた身でのこのこ加わりに来るのもなんじゃが。
ここまで成したことを捨ておけぬでの。
わしの相手もして貰おうか。

他の者がおれば協力して戦闘。
目的はヴァンパイアを逃がさず仕留めることのみ。

敵の懐まで潜り抜け、連ね流星を叩き込むか、
でなくば自身が注意を引き、他の者の攻め筋を通すか。
敵目掛け攻め入るだけで出来る、シンプルな二択よ。

技能は無論フルに活用。
見切り、フェイント、第六感、オーラ防御、残像、カウンター、怪力など。
ぶち抜く為に手段は選ばぬ。


鞍馬・景正
残るは悪鬼が一匹、か。
奪った命の償いをしろなどは言わん。
ただ貴様が終わる時が来たというだけだ。

◆戦闘
戦場にワン嬢(f00710)の姿見れば、懸る彼女の援護を。
【紅葉賀】にて火矢を番えて放ち、炎でヴァンパイアめを妨害しながら注意を逸らそう。

為朝公ほどの強弓には及ばぬなりに、【スナイパー】【援護射撃】で仕損じぬよう狙い、【怪力】【鎧砕き】にて肉を爆ぜ骨を微塵としてくれよう。

君が行く 道の長手を繰り畳ね――
「……焼き滅ぼさむ天の火もがも」

ワン嬢が間合を詰めて仕掛ける瞬間には消火し、存分に打擲できるように。

――血の昂揚はない。
我が武道も羅刹の性も、奴にその価値はないと断じている。
ならば、疾く始末を。




「何故だ……何故この私が、オブリビオンですらないただの人間如きに、遅れを……!」
 瓦礫から身を起こしながら、怒りに震えるヴァンパイア。
 完全に格下と見ていた猟兵相手にここまで苦戦をするなど、プライドの高い彼にとってこの上ない屈辱だった。
「散り際を弁えぬとは、無様よな。憐れではあるが、ここまで成したことを捨ておけぬでの。わしの相手もして貰おうか」
 ヴァンパイアを見下ろす美しい少女。ワン・シャウレン(潰夢遺夢・f00710)――彼女もまた、この場に馳せ参じた猟兵のひとり。

「生意気な口を……あまり侮るなよ、小娘ェ!!」
 このような少女にまで小馬鹿にされ、ヴァンパイアは激昂しながら【血で書いた誓約書】を召喚した。
「『クルーエルオーダー』! 汝、その場より動く事を禁ず!!」
 ヴァンパイアの圧倒的な魔力により、ワンの身体は呪縛によって拘束される。
 猟兵たちの良いようにやられていたからと言って、このヴァンパイアと手そこらの雑兵とは訳が違う。その呪縛は、生半可な抵抗で解くことはできない。
 だが、当のワン本人は眉ひとつ動かさぬまま、涼しい顔をしていた。
「さっきまでの威勢はどうした、小娘。震えて声も出ぬか!」
「ふ、ふふ……まこと、まことに愚かしくてならぬ。まさか、貴様の相手がわしひとりとでも思うておるのか?」
 ヴァンパイアのあまりの浅はかさにワンは思わず笑ってしまった。
 今まさに自身を射止めんとする伏兵の存在に、微塵も気付く気配を見せないとは。


 ワンとヴァンパイアが対峙する姿を高台より伺う羅刹の武士。
 鞍馬・景正(竜胆の剣・f02972)は弓に矢を番え、目標へと狙いを定める。

 ――血の昂揚はない。
 彼の武道も羅刹の性も、あの吸血鬼にその価値はないと断じている。
 ならば奴の始末は、戦友に任せてしまえば事足りるだろう。
 
「君が行く 道の長手を繰り畳ね――『……焼き滅ぼさむ天の火もがも』」
 風を切る音と共に、矢が放たれる。ユーベルコード『紅葉賀』。卓越した技能を上乗せして放たれたその火矢は、ヴァンパイアの魔術障壁さえ容易に砕き、『クルーエルオーダー』、その契約書を寸分違わず射抜くと一瞬にして燃やし散らす。
 ワンの肉体が、ヴァンパイアの呪縛より解き放たれた。

「奪った命の償いをしろなどは言わん。ただ、終わる時が来たというだけだ」
 それだけ告げると、後は興味を失ったように景正はその場を去った。


「残念ながら、既にわしの間合いじゃ。己の所業の報い、今ここで受けるが良いぞ!」
 それはワンの友人、さる老拳士の秘奥を模倣した連撃。確かにオリジナルと比べ柔軟性で言えば欠けるものの、一挙一投足、完全に模倣したその技は、初見で見切る事はまず困難。
 圧倒的な速度によって繰り出される連撃を、ヴァンパイアは反撃の糸口さえ見つけられぬままに打たれ続ける。

「これぞ、わしが友より継いだ拳。――そして。貴様に嬲られてきた者どもの痛みじゃ!!」
 連撃の最後を締め括る発勁が、ヴァンパイアの鳩尾を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リンタロウ・ホネハミ
死にかけてるガキ(ユハナっつったか?)にポーションを雑にぶっかけて、ヴァンパイアと相対するっす
まったく……胸糞ワリィもん見せやがって
好きじゃねぇんすよ、こういうの
だから、ここで終わりにしてやるっす

追加で豹の骨を食って【〇八三番之韋駄天】で棒立ち状態から一瞬でトップスピードへ
この「早業」「ダッシュ」で「先制攻撃」を叩き込むっす!
奴が操る刀剣を「戦闘知識」と「第六感」で「見切り」、オレっちの骨剣を突き立ててやるってんすよ!

全部終わったら、村人達を近くの村か街に送る手配ぐれーはするっすかね
ま、生きてりゃ次があるっす
次がどうなるかはわかんねぇっすけど……ここで終わりたくなきゃ乗ってくといいっす


ジェイクス・ライアー
最早、手段など何でもいい。結果だ。
この目の前の敵を殺し、帰るぞ。
【SPD】
仲間の猟兵と連携し、【2回攻撃】や【だまし討ち】等使える戦闘技能は惜しみなく使用する。
一体敵なので猟兵が密集し流れ弾が当たる可能性が高いことを考慮し、銃は使用しない。

このヴァンパイアを屠ったところで救世主にはなり得ない。そんなものを目指すならば、はなからここに来るべきではない。
こんな地獄の底で一握りの明日あるかも分からない命は拾い上げたところで、きっといずれ落ちていく。
それでも、ここに来てしまったのはーー〝俺〟も地獄で生を見いだした者の一人だからだ。

これが終わったら、少年の家族を埋葬しに行こう。彼にも、決別が必要だ。


フェイス・レス
アドリブ歓迎
真の姿に近づき鎧の隙間から溢れる炎が体を覆いつつある。

「とうとう、姿表したなぁこのノミ虫の分際でよぉ!」
「お前はうじゃうじゃ居るノミの一匹、次が詰まってんだから早く死ねよォ!?」
コミュ力1で威勢よく煽るが一人で使用面から戦うのは辛いからアサルトウェポンで建物の中から攻撃、近づいてきたら【二回攻撃】で素早く鉄塊剣で攻撃の【鎧砕き】、そしてブレイズフレイムで建物に火をつけ足止めして再びアサルトウェポンの遠距離攻撃だ。
もし協力出来そうな猟兵が居るなら援護するなり救助するなりしたい所だな。相手は一人、こっちは義憤に燃える猟兵が沢山。一人援護に回っても問題ないだろ。




「ったく……胸糞ワリィもん見せやがって」
 好きじゃねぇんすよ、こういうの。
 そうボヤきながら、リンタロウ・ホネハミは最低限の応急処置を施したユハナ・ハルヴァリの身体に手持ちのポーションをありったけぶち撒ける。
「それだってタダじゃねーんだから。感謝しろよな、クソガキ」
 それだけ告げて、リンタロウは戦場へと向かう。


「ハッ、しこたま殴られてゴキゲンじゃねえか、このノミ虫野郎がよぉ!」
 ワンにさんざん殴られ息を切らすヴァンパイアの姿を見て、ヒャハハハハと笑い声を上げながら虚空にアサルトウェポンの弾丸を乱射するフェイス・レス。
 彼の姿は真の姿へと近付き、鎧の隙間からは地獄の炎が漏れ出していた。
「うっへ……ニーサンそんなキャラだったんすね……」
「そんなキャラもどんなキャラも、俺ァ元からこんなキャラだっつーのよ。ナァ、リンタロー君よォ!」
 まるで酔っ払いに絡まれてるかのような倦怠感。
 フェイス・レスという男は、先程まではもう少し丁寧……とも言えないが、まぁ多少は落ち着きのある男のように見えた。
 だが今は違う。恐らくは地獄の炎の影響だろう。より攻撃的な、殺意の高い本性が剥き出しとなっていた。(どちらが『素』なのか、という問題はさて置いて)

「求められるのは手段ではなく結果だ。戦力として頼りになるなら、それに越した事はない」
 ジェイクス・ライアーはあくまで冷静に、ストイックに眼前の敵を見据える。

 ヴァンパイアを屠ったところで救世主にはなり得ない。そんなものを目指すならば、はなからここに来るべきではない。
 こんな地獄の底で、一握りの、明日あるかも分からない命は。拾い上げたところで、きっといずれ落ちていく。
 意味なんて無い、無い筈だ。

 だがそれでも、ジェイクスは今ここに居た。
 自分の意志で、明確に選び取り、ここに立っている。
 明確に自分の考えとは、理論とは、矛盾している。

 それでも、ここに来てしまったのは――、

(“俺”も、地獄で生を見いだした者の一人だからだ)

 あの少年は自分自身だ。
 嘘で塗り固められた世の中であっても、自分に対してだけは嘘を付けない。

「っしゃァ、殺るぜェ! 援護は俺に任せろォ!!」
「……ホントに大丈夫っすか? オレに弾当てねーようにしてくださいっすよ?」
 リンタロウはスゥ、と息を吐いて。追加の骨を齧る。
 脱力した状態から、『〇八三番之韋駄天』によって一気にトップスピードへ。瞬時にヴァンパイアへと肉薄し、呪いの骨剣で斬り付ける。
「後がつっかえてんだ、さっさと死ねよノミ虫野郎ォ!!」
 リンタロウが距離を取った間隙を縫ってのフェイス・レスとジェイクスによるクロスファイア。流石のリンタロウも常時トップスピードとは行かないが、ふたりと息を合わせることで持続力の難を克服していた。

「猪口才な……雑魚どもが群れおってぇぇぇ!!」
 手数の多い攻撃に痺れを切らしたヴァンパイアは、周囲の空間に無数の剣を召喚する。その数は悠に50を超える。
「纏めて串刺しだ! 死ねェェッ!!」
 ユーベルコード『マサクゥルブレイド』。剣の1本1本が意志を持つように猟兵へと狙いを付け、一気に放たれた。
「っとぉ、やられないっすよ!」
 リンタロウは身軽に避けながら骨剣でその剣を叩き落とす。
 だが――、
「……ッ!!」
 ジェイクスはこの戦いにおいて、ひとつだけ大きなミスを犯していた。
 それは首領格のオブリビオンに対して、ユーベルコードを使用する心構え無しで立ち向かった事である。
 猟兵の卓越した技量は、ユーベルコード無しでもオブリビオンを倒し得る。だが、それはあくまで倒し得るというだけの話であって、戦闘において互角以上に渡り合えるという意味ではない。
 ユーベルコードに対してユーベルコード無しで挑むというのは、基本的にはかなりの困難だと思って良い。それがただの雑兵でなく、首領格のオブリビオンが相手ともなれば尚の事。
 仮に素の戦闘技術を主軸として戦術を組み立てるにしても、敵のユーベルコードの対策としてユーベルコードを備えないのは、オブリビオンとの戦いにおいて時に致命傷となりかねない。
 敵を倒す為の手段に拘らない――そうであれば、尚の事『ユーベルコードを使わない』事に拘ってはならなかった。

 十を越える刀剣が、ジェイクスの元へと殺到する。
 それは弾丸を以ってしても弾けず、他の武器で叩き落とすにも数が多い。

 ヴァンパイアの凶刃がジェイクスへと突き刺さる――、その寸前。

「オオオオラァァアアッッ!! 全部だァ! 全部燃えちまえ!! ヒャーッホォーーー!!」
 第三の男、フェイス・レスの放つ地獄の炎が、辺り一帯、全ての剣を焼き払った!

 ――フェイス・レス。この男は今日、あまりにもノッていた。
 技量だけで言えば、フェイス・レスの技量は戦場を訪れている猟兵たちの中でも特別優れたものではない。
 だが今日に関して言えば、実はこのフェイス・レスこそが全猟兵におけるトップオブエースと言っても差し支えない程の『豪運』を発揮していた。
 ユーベルコードのぶつかり合いに、必ずしも再現性はない。ここぞという場面で運気を引き寄せるのも、また猟兵としての実力と言えた。

 かくして、フェイス・レスの『ブレイズフレイム』がヴァンパイアの『マサクゥルブレイド』を相殺する。
「ナイスっすよ、仮面のニーサン!」
 リンタロウがフェイス・レスに称賛の声を浴びせる。
 ヴァンパイアからユーベルコードの力が失われた隙を逃さず、リンタロウはその骨剣にてヴァンパイアの翼をばさりと斬り落とした。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ようやく首魁のお出ましか。
では、この非道の清算といこう。此度の蛮行、その命をもって償うが良い!

【ドラゴニック・エンド】の発動のため、まずは槍を当てねばならん。
腕なり足なりを狙いたい。機動力を奪うために【串刺し】だ。
槍が当たれば黒い蛇竜を召喚出来る。傷のこともある、後は任せよう。
燃やしてやるでも良いが……村の連中の報復だ。食いちぎられる苦しみでも、味わってみるが良い。
誓約書が傷付けてくるのは無視する。傷つこうが何だろうが、この傷では今更だ。
ふはは、この程度で殺せるものなら殺してみろ。貴様の命を屠るまで、私は死んでも倒れんぞ!


セゲル・スヴェアボルグ
人を生み出すのとてタダではない。
ましてや貴様のような輩に、彼らの死に様を決める権利などあろうものか。
利益?損得?そんな御託はどうでもいい。
助けを求めている奴を放っておくなんざ、パラディンの名折れよ。

隙を見て【絶巓の帝】をぶち込むが、奴の件が邪魔だな。
数で攻めて来るのであれば、こちらも【エレクトロレギオン】による物量で対応すればいいだけのこと。
多少剣が抜けてこようが構う必要などない。
奴のどてっぱらに、どでかいのを叩き込んでやろう。
一本で足りないなら二本、それでも足りないなら、地面にへばりつくまで突き刺すのみだ。




「満身創痍ではないか、御仁」
「なに、この程度はまだ掠り傷よ」
 槍を構え並び立つ猟兵、セゲル・スヴェアボルグとニルズヘッグ・ニヴルヘイム。
 彼らは今が絶好の機と見て、最後の力を振り絞る。

「何故だ、何故だァッ!! こんな事、あっていい筈がない。我らは蘇ったのだぞ、辛酸の歴史を拭う為、あるべき栄華を取り戻す為に!!」
「あるべき栄華がこの蛮行とは。里が知れるな、浅ましき吸血鬼よ」
 ヴァンパイアの論理を一笑に付すニルズへッグ。
 その言葉を受けて、セゲルが続ける。
「人を生み出すのとてタダではない。ましてや貴様のような輩に、彼らの死に様を決める権利などあろうものか」
 利益や損得など、そんな御託はどうでもいい。
 助けを求めている者を放っておくなど、パラディンの名折れ。
「流石は同族、良い事を言う」
 ニルズへッグはセゲルの言葉にふはは、と笑い。
「では、この非道の清算といこう。此度の蛮行、その命をもって償うが良い!」
 その言葉を皮切りに、ふたりは駆ける。
 ヴァンパイアの剣刃が飛んで来ようが、ふたりはひとつも意に介さない。
 どんなに傷を負おうが関係ない。何故なら自分が死ぬ前に相手を殺せばいいのだから。

(この一撃を当てれば良い。それに、総てを――)
 出し惜しみは必要ない。ありったけの呪詛をその身に纏い、瞬間的に速度を上げるニルズへッグ。
 心へと直接響く怨嗟の声。増幅する苦痛。嘆き、悲しみ。
 そういったモノを身に取り込んで、ニルズへッグはなお笑っている。
 その在り様は、愛と希望から最も遠い。然してその存在を信じ、手放さない。
 竜槍の切っ先がヴァンパイアの肩口を貫いた時、ニルズへッグはその名を喚ぶ。
「――Ormar、我が相棒! 奴を喰らえ!!」
 喚び声に応えるように、ニルズへッグの竜槍が黒き蛇竜へと姿を変える。
 ニルズへッグの呪詛に呼応し肥大化したその姿は、本来の30cm程の小さな姿とは異なり、もっとドラゴンと呼ぶに相応しい、大きく禍々しい姿をしていた。
 蛇竜は“呪”を結んだヴァンパイアの身体目掛けて突撃し、その片腕をがぶりと食い千切る。
「ッグ、ガアアアアアアッッッ!!!」
 あまりに苦痛に叫び声をあげるヴァンパイア。
 その姿を見て、無様と笑うニルズへッグ。
「どうだ、生きるままにその身を喰われる苦しみは。貴様が与えた苦痛、その何分の一かでも味わうがよい!」

 そして。
 ヴァンパイアが苦痛に悶えるその隙を逃すセゲルでは無い。
「貴様の犯した所業を悔いろ、ヴァンパイア。穿て、『絶巓の帝(インペリウム・アブ・ヘイドプント)』!!」
「か、は……っ!」
 応龍槍『ギュールグルド』がヴァンパイアの腹を深々と貫く。
 1発、2発、3発――、
 最早それは、物理法則を。時間の概念すらも捻じ曲げて。
 圧倒的な質量を持つ重槍が、あり得ざる速度でヴァンパイアを繰り返し貫いていく。

「貴様が今さっき奪ったばかりの人間の命の数、その程度には穿ったか」
 四肢を失い、もはや胸像と化したヴァンパイアの元に歩み寄るセゲル。
 その姿に侮蔑を込め、見下す。
「終わりだ――引導をくれてやろう、ヴァンパイア!」
 最後の一撃。
 渾身の力を込めて突き下ろされた竜槍が、ヴァンパイアの心臓を貫いて大地へと縫い止めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 大地に染みを残し、灰となって消え去るヴァンパイア亡骸。
 こうして戦いは終わりを告げた。

 猟兵たちは避難させた村人たちと合流し、戦後の処理を行なう。
 村はこの惨状だ。祝宴を開くような余裕もなければ、空気でもない。
 怪我人の治療、死者の埋葬とやるべき事は数多く、それらを済ませた後は住処を失った村人たちの行き先についても考える必要があった。
 命を助けたからと言って全てが解決した訳では無い。
 それがダークセイヴァー、ヴァンパイアによって支配された土地の現状。

 だが、43の命が救われた事は確かな事実であり、成果だ。
 おかげで彼らには、未来が残された。
 その気になればこの場所を再び訪れる事だって可能だし、時間を掛けてゆっくりと支援を行なう事だって可能だろう。

 焦る必要はない。出来ることから着実に、一歩ずつ。
 それはダークセイヴァーに住まう者たちと、猟兵に課せられた今後の課題であろう。

最終結果:成功

完成日:2019年01月20日


挿絵イラスト