甘く凍ったアナタを食べたい
●ため息をついたのは、
青みがかった黒い短髪、炯々と尖る紺色の双眸、日焼けを知らなそうな白い肌の、悪人面の男だった。
いつもの白シャツの袖は肘までめくり上げられて、開襟されて覗く胸元は、一層白い。
「……よォ、」
全身で暑いということを訴える鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)は、猟兵に挨拶をする。
「アルダワの地下迷宮に、冷凍庫みてえなフロアが見つかったからァ、行って涼んでこいよ」
ほら、最近、暑ィからさ……と誉人はぼやく。
しかし、誉人とてグリモア猟兵で、彼がここで話をし始めるということは、事件を予知したことに他ならない。
「涼みついでに、災魔を討ってきてほしいンだ。
特別強くて厄介じゃねえ……こともなくて、まあ、厄介なんだけどォ――……精神的に、こう、ぐったりしそうで……」
言葉を選ぶように、彼は続ける――
●視えたのは、
アルダワ魔法学園の地下に広がる、迷宮。
じわりじわりと夏が忍び寄るこの気温に負けない、溶けないという氷室がある。
そんな噂を聞いた生徒の、猫をも殺す好奇心が疼かないわけがない。
不思議な氷室を見たい――そう思った、女子生徒は、恋人を誘ってフロアを目指したそうだ。
道中、よく見る蜜ぷにの群れに遭遇したが、それらぐらいなら、なんとかなる。
二人は、蜜のように甘い時間を過ごしながら――互いに睦言を囁いて、蜜を集めつつダンジョンを進んだ。
「レーニャ、はい、あーん」
「あー、ん!」
「ひゃっ、それ、私の指ぃ!」
「あはは、間違えた! アーシャの指だったかー!」
微笑ましく思うか、鬱陶しく思うかは、自由だが――とにかく二人は始終そんな様子で、ダンジョンを進んでいた。
そうして見つけたのは、大きな扉。
大きな円の中に「氷」と書かれた奇妙な扉だった。
「アーシャ、一応気をつけろよ」
「うん、ありがとう」
にっこりと二人とも微笑んで、手を繋いで扉を触る。
「冷たぁい……!」
「待て、いきなり開け――」
期待感に危機感が押し負けた女生徒――アーシャは、彼の手を解いてフロアに走り込んだ。
「アーシャ!? わ!?」
思いもしなかった凶悪な冷気の塊が彼の視界を奪う。
足元を駆け抜けて、肺腑の奥まで凍らせるほどの鋭い冷気に襲われる。
「レ、ニャ……、にげ、」
「アーシャ?」
少年が寒さに目を閉じた瞬間に、最愛の少女は氷像となっていた。
「あれ? このコ、アナタの? でも、ワタシにちょうだいね――だって、このコ、とってもかわいいから」
凍りついた少女の頰にべろりと舌を這わせたのは、まぎれもない、災魔だった。
●
「……つーわけだ。いま二人は蜜ぷにどもと戯れてっからァ、さっさと追い返してやってくれ。
でないと、レフはともかくアリーサの方が犠牲になるンだけどォ……二人ともバカップルだから、あんま人の話聞かないンだよねェ……」
バカップルの頭の二音にことさら力を入れて誉人。
それはもう、付き合いたてのカップル特有の、あの、じゃりじゃりの砂糖を噛むような、胸焼けをおこすような――誉人は言いながら、眉間に皺を寄せる。
心底うんざりとしながらも、説明を続けた。
「まあ、おめえらならなんとなンだろ」
「レフと、アリーサ?」
「渾名だよォ。レフがレーニャ、アリーサがアーシャ」
二人を追い返した後にでも蜜ぷにを倒して――かき氷にかけるシロップにすればいい。
「用意は万端だぜ、これがありゃァ蜜入れられンだろ」
言った誉人が取り出したのは、空の大きめのビンとハニーディッパー。
かき氷、いいよな。おあつらえむきに蜜ぷにもいっからァ――と楽しそうに誉人。
「見てェ、桃のコンポート」
「うん……美味そうだな」
「だろォ? かき氷にかけたらぜってえウマいからァ!」
おめえらにもオスソワケしてあげるねェ。かちゃかちゃと瓶のぶつかる涼やかな音を鳴らしながら、誉人は紙袋の中にそれらを入れた。
「……あんたも行くのか?」
「おう、涼みにな。俺もいろいろ頑張るからさ、かき氷のおこぼれ、ヨロシクゥ」
言って笑った誉人の手に、仄青く光るまあるいグリモアが現れる。
「いやいや、俺のこたァなんだってイイんだよ。
とにかく、あのバッ――じゃなくって……二人ンこと帰してやってくれ」
で、災魔ももれなく倒してきてくれ――誉人は発破をかける。
「いやに凍えてっから、あんま油断すんなよ。詳しくは視えなかったからァ、あいまいなことしか言えねえんだけど」
油断さえしなければ、大丈夫だろう。
しかし、お楽しみにありつくには、これらをきっちりこなす必要がある。
誉人は猟兵をけしかけた。
「じゃ、頼んだぜ」
藤野キワミ
夏が来ますよ、準備はできてますか?
藤野です、どうぞよろしくお願いします。
シナリオ概要
一章:集団戦・蜜ぷにとバカップル
二章:ボス戦・vs???(凍えるフロアで)
三章:日常・氷室内でかき氷とか!
三章では、こっそりと鳴北誉人がかき氷を食べています。
呼ばれないかぎりリプレイ内に登場することはありません。ご用があれば話しかけてくれれば、応じます。
一人じゃちょっと…というときにでも使ってやってください。
全章通して、途中参加、特定の章のみなど、どんな参加の仕方をいただいても歓迎いたします!
楽しい一時を過ごしいて頂けるように尽力いたします!
お連れさまっがいらっしゃる場合、【チーム名】もしくは【呼び方(f〜)と同行】などの記載があれば迷子になりません。また【プレイング送信日】を揃えていただけますようお願いしております。ご容赦ください。
ただ、ソロ描写希望の方は【連携不可】【×】など記載ください。
プレイング受付日時、執筆状況はマスターページおよびツイッター(@kFujino_tw6)にてお知らせいたします。
一章プレイング受付は、少し先【7/17(水)8:31〜】となりますの、ご注意ください。
第1章 集団戦
『蜜ぷに』
|
POW : イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●蜜ぷにとバカップル
恋は盲目。
二人の世界は一瞬にして構築されて、周りにいる者を置き去りにする――その度合いは千差万別。
「わあっ! 蜜ぷに!」
「アーシャ、倒してあげようか?」
「きゃあ、レーニャ、カッコいい!」
蜜ぷにごときに、カッコイイもなにもないだろうが、二人にとっては、この瞬間にイチャつけるかイチャつけないかが問題なのだ。
弱い蜜ぷには絶好のイチャつきタイムだ。
「ぬあー! なめるなっぷにー!」
「おれたちをこけにしてるっぷにー!」
「『倒してあげようか?』じゃないぷにー!」
精一杯の低音イケボイス(のつもり)で蜜ぷにがカップルへ罵詈雑言を浴びせる。
「はきそうっぷに! おれのないようぶつがあ! みつをぶちまけちゃいそうっぷにー!!」
ぎょえ――――――!!
奇妙な叫び声をあげる蜜ぷにをよそに、レフとアリーサは、
「見たか、アーシャ! 俺にかかれば、なんもしなくっても蜜ぷにごとき倒せるぜ!」
「やーん、レーニャすてきー!」
全力でハートマークを散らすアリーサが手を叩いて喜んだ。
「しんでないぷにー!! なんならそこでしんじゃえばいいのはおまえらっぷにー!!」
「きゅーぼ! しきゅー! えまーじぇんしーこーるぷにー!!」
きいいいい!
蜜ぷにはボヨンボヨンと跳ねながら叫んだ。
香神乃・饗
誉人がぐったりするのって割とへー…あぁぁあ…(納得
よくこんなの見つけたっす
偽の記念のフェイントかけバカップルを撤去
おめでとうーっす!(紙ふぶき
この迷宮の222,222人目の踏破者っす!
記念にカップル限定あまあま巨大パフェ無料券をあげるっす!
めっちゃんこラブラブな2人には更におまけでカップル限定アイスケーキ無料券をつけちゃうっす!
あっ、このお店の営業時間もうすぐ終わっるっす!
早く行くっす!
強引に背を押してでも撤収
ふう(一仕事終えた顔
思う存分蜜を絞るっす蜜マシマシカキ氷の為に!
香神写しで武器増やし
剛糸で纏め捕まえ
苦無をフェイントに
死角から近づき苦無で容赦なくぶん殴る
リア充爆発っす!あ、間違えたっす
●
(「誉人がぐったりするのって割と……」)
よくあることなのではないのか。
香神乃・饗(東風・f00169)は、あの目つきの悪い友の様子を思い出したが、アレがゴキゲンな時は、何かを食っているときぐらいなのではないか。
(「あ、それと小鳥とネコチャンっすね。いやいや、誉人のことは今いいっす」)
雑念を振り払った饗だったが、眼前で繰り広げられる奇怪なコントに、小さく三度頷いた。
(「……あぁぁあ、……うぅん……」)
よく分かった。
納得した。
そして、こんな事件を予知したあの男と、次に顔を合わせたら「よくこんなの見つけたっす」と、言ってやろうと決めた。満面の笑みで。
ともあれ、無意識で蜜ぷににケンカをふっかけては、蜜ぷにを増やしている二人は実に邪魔だ。
(「さっさと帰ってもら……じゃないっすね、撤去っす」)
二人の背後にそっと近寄って、饗は大きく息を吸った。
「おめでとうーっす!」
「どわぁぁぁ!?」
「ひゃぁぁあ!?」
ビクつき悲鳴を上げた二人に降り注ぐのは、色とりどりの紙吹雪。
ひらひら舞い落ちる中、長身の饗を見上げてくる二人。
二対の碧の瞳が、誰何を問う。
「お二人さんはこの迷宮の222,222人目の踏破者っす!」
「にじゅうにまんにせんにひゃくにじゅうに!? 多いのか少ないのかわかんない!」
「私たち、どこからどこまで踏破したの!?」
(「あ、結構ツッコミいれてくるっす」)
煩わしさを感じつつも、饗は笑顔を崩さない。
「記念にカップル限定あまあま巨大パフェ無料券をあげるっす!」
紅半纏の下から出したるは白い封筒――それも、熨斗つき。
カップル限定?
あまあま……
巨大パフェ!
アリーサの碧眼がいよいよ輝き出す。
ふわりと微笑んだ饗は、さらにだめ押しの目録を取り出す。
「めっちゃんこラブラブな二人には更におまけで、カップル限定アイスケーキ無料券をつけちゃうっす!」
二人はラブラブっすか〜? なんてわざとらしく煽っておけば、ムキになって食いついてくるか。果たして二人は、わかりやすくぴったりと体を寄せて、「すっげーラブラブ!」とアピール。
(「…………うん」)
いろいろ思うところはあれど、饗はそれをおくびにも出さず、快活に笑った。ちらりと八重歯がのぞく眩しい笑顔に、アリーサもつられて笑みをこぼす。
「アーシャ、」
「あっ、このお店の営業時間もうすぐ終わるっす! 早く行くっす!」
これ以上二人と遊んでいるひまはない。
饗とてやりたいことがあってここまで来たのだ。
もうこの甘々に繰り広げられるやり取りに、胸がいっぱいだし、ごちそうさまと手を合わせ終いにしたい。
蜜ぷにどもも、今にも飛びかかってきそうなのだ。
強引に背を押してでも、来た道を引き返させようと 、二人の背後に回り込んで、
「さあ、行くっす! 行って向こうで心ゆくまでラブラブしてれば良、」
「とつげきっぷにー!!」
弱い。迷宮のおやつ。学生でも難なく倒せる災魔――たかが蜜ぷに。されど蜜ぷに。
瞬時に苦無を【香神写し】で複製させ、正確な軌道を銀色が奔る。
「漢を見せるっす!」
「お、おう!」
レフの背を叩き饗は剛糸をも写して増やし、蜜ぷにの群れを一網打尽に縛り上げんと、巧みに操る。
「ぐえっ! うごけないっぷーうぅ……」
「つぶれるっぷにー!」
「ぷぎゅうーうえ……」
実に形容し難くも、苦しそうな叫び声があがる――が、饗はもとよりそのつもりなのだ。
肩越しに(バ)カップルに視線をやれば、饗の渡した封筒をほくほく胸に抱いて笑うアリーサの笑顔があった。
ふうっと清々しい吐息――厄介な仕事をやっつけた、とびきりの安堵の表情。
「さあて! 思う存分蜜を絞るっす! 蜜マシマシカキ氷のために!」
「うわあー! よくわかんないりゆうで!!」
「ボクらのことたべるやつだったぷにー!」
「おれらをくったってうまくないっぷにー!」
「むねやけしてむしばになるだけぷにー!」
やかましく剛糸の中でぷよんぷよんと暴れる蜜ぷにの視界から、饗が消えている。
「ぷ?」
素っ頓狂な声で鳴いて、一様に「???」を浮かべまくっている、蜜ぷにども。その死角から、苦無を逆手に握った饗が現れる。
「リア充爆発しろっす!」
思いのほか全力だったのは、彼のたまった鬱憤がそうさせたのだろう。
「それはあっちっぷにー!」
「おれたちかんけーな、ぷぎゃー!!」
「あ、間違えたっす――蜜よこすっす!」
剛糸で縛り上げられた蜜ぷにどもに逃げ道はなく、饗の容赦のない一撃が花蜜を量産していく。
「蜜っ、マシっ、マシっ!」
「それはなんのじゅもんっぷにょー!?」
次々に斬られていく蜜ぷには、甘い蜜へと変わっていく。
「レーニャ、見て! あの人! すっごい倒してる!」
「アーシャ……! まさか……」
「なーに?」
「俺より、あの人のこと!」
「やっだー! レーニャよりカッコいい人なんていないよ!」
「そうか……そっか! そうだよな! よーし、俺もアーシャのために蜜ぷに倒そうっかな!」
「やーん、レーニャ素敵! パフェは、」
「俺がアーシャだけのために特大パフェつくってやるよ」
饗の耳に二人のそんなやりとりが聞こえてきて。
(「俺の頑張りが……この、くっ……」)
まさか最後の最後で振り出しに戻るとは思わなかった。
もう勘弁してよォ……と饗の耳に心底疲れ果てた友の声が聞こえた――気がした。
成功
🔵🔵🔴
ナザール・ウフラムル
【POW】
ベタベタベタベタ鬱陶しいなぁ!?
……まあいい。ベタベタしてるカップルは別れやすいって言うしな。
……ちょっと蜜ぷにたちにも手伝ってもらうとするか。
「イザ、ボクラノラクエンヘ!」で出てきた「勇者ぷに」と「戦士ぷに」を、あいつら二人の顔面へ全力で【投擲】する!もちろん、姿は空気の屈折率を変えて【迷彩】を施して消してな。
とっとと帰れ。ったく……、危険度の不明な怪しい部屋に不用意に突っ込むんじゃねえよ……。先生にチクってやろうか。
シェーラリト・ローズ
「ばかっぷる…ばかっぷるっていうのか」
なるほど
「それはそれとしてオシゴトオシゴト」
働かないのにおいしーもの食べるって世の中そんなに甘くないと思うんだよねー
じゃ、そういうことで、即全力込めて【空に星を、地に花を】いくよー
マヒの力モリモリすれば少しは動きにぶくなるかなー
ぶよぶよしても鎧は鎧、スルーして砕きにいくよー
合体されるとめんどーだし、散らばるよう吹き飛ばせたらいいんだけどなー
合体するしないカンケーなく攻撃は避けられるよう目と耳で注意
囲まれかけたら走って逃げるよー
ばかっぷるが狙われたらかばうよーオーラ防御でけーげんするけど
「ダイジョーブだよ、ばかっぷる!」(悪気ない笑顔
ちゃーんと守るよー
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
依頼はバカップルを救う事
そう割り切って受けてみたが想像以上だった
「これは…教育的指導だね」
影達を呼び出してカップルの周りに【目立たない】よう配置
万が一蜜ぷにがカップルの死角から攻撃した場合は、影に攻撃させる
「倒したのは食べても良いけど、あくまでも護るのが主だからね」
「蜜ぷに達すまない。君達の実力なら僕たちが相手をすべきだよね」
その上で蜜ぷにとカップルの間に割り込み、レーニャが活躍する前に倒していく
合わせて演技で派手に飛ばされてみたりする
活躍ももらえず、危なそうな敵だと判断したら帰ってくれないかな
正直蜜ぷに達に同情しているが依頼は依頼だ
終わったら美味しく食べてあげよう
●
俄然レフがやる気になったのは、見当違いな嫉妬心のせいだが、それでもその気骨は本物なのか、先刻のふにゃふにゃしたレフの雰囲気よりも、いくらも気合が入っている。
「俺が倒して、アーシャに蜜を舐めさせてやるんだ……!」
「ちょっとレーニャ、ほんと、カッコい――――!!」
恋人の言葉にさらにやる気をみせる。
「おう、見といて! 俺、アーシャのために倒す! うまい蜜、舐めさせてあげるから待ってて」
「うん! 頑張って、待ってるし、応援してるー!」
ナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)はその様子に、緑の瞳をぎゅうっと瞑って奥歯をぎりぎりと噛みしめる。
「べたべたべたべたべた……――うううああああ! 鬱陶しいなぁ!?」
もう我慢ならん! ナザールはたまらず叫ぶ。
「わかるぷにー!」
「おれもたいがいべたべたっぷにが、あれはみててはらたつぷにー」
「わかるぷにー!」
「まあ、べたべたしてるカップルは別れやすいっていうしな」
(「ん? 俺、蜜ぷにと話してる……?」)
ナザールがハッと我に返ったときには、蜜ぷにどもは、鬨の声を上げていた。
「ほんとっぷにか!? みんなー! あいつらをもっとべったべたにしてやるっぷにー!」
「とっこー!! すてみのじんけー!! いくっぷにー!!」
「いくぷにー!」
蜜ぷにを投げつけて二人をべたべたにしてやらずとも、奮起した蜜ぷにどもが、レフとアリーサ目がけてぼよんと跳ね上がる!
ボクラノラクエン――バカップルも捕食者もいない世界への道を切り拓くは、勇者と戦士。
コミカルな動きや鳴き声とは裏腹に、それらは容赦なく襲いかかっていく。
「アーシャ!」
レフの声――アリーサの頭を抱えて蜜ぷにの特攻から恋人を守った。
「ううう、べったべた……」
「レーニャ、レーニャ、」
「無事か、アーシャ? 君が無事でよかったよ」
キラキラし始めた二人――なんなら今頭から蜜を被った状態のべったべたのレフについた蜜を指で掬ったアリーサがそれを舐めて、にっこり笑む。
「今度は生き別れる戦場設定?」
げんなりとナザールが呟けども、雰囲気に酔い、お互いに酔っている二人には聞こえていない。
蜜ぷにを投げつけてやろうと思った。本気で。顔面へ。なんなら空気の屈折率を変えて視認できなくさせる迷彩を施してまで、念入りに、ナザールの激しいモヤモヤをぶつけんと。
彼の拳は開いたり閉じたりとかなり忙しなく苛立ちを発露させている。
しかし、ぷにょんと増えた蜜ぷにを掴む前に、それらは血気盛んに突撃を開始する。
ぷよんぷよんの第二波――
「たたみかけるっぷにー!」
「しょうきはわれらにあるぷにー!」
「ぷにぷにぷにー!」
「レー、」
「ダイジョーブだよ、ばかっぷる!」
屈託のない爽やかな笑顔で颯爽と現れたのは、その身にオーラを纏わせた、シェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)。
彼女は、二人を背に庇い立つ。
「いくら弱いったって、災魔だもんね――心配ないよー、ちゃーんと守るよー」
肩越しに振り返って、にこりと一笑。
「ちょっと、レーニャ、見惚れてない?」
「ないない! 俺は、アーシャ一筋に決まって」
「でも、あの子のこと見てたでしょ」
「き、君だって、さっき、その封筒くれた人のことぽけっと見てたじゃないか!」
「そりゃ見るでしょ、レーニャより背が高かったんだから!」
「俺だって、見るに決まってるだろ、アーシャより背が低かったんだから!」
「それだけ?」
「ああ、それだけ」
「……レーニャ!」
「アーシャぁ!!」
(「これは……」)
依頼だ、仕事だと割り切ってここまできたが、想像以上の、蜜月っぷりを目の当たりにして、歯の根が緩んで浮いてしまうのではないかと、仁科・恭介(観察する人・f14065)はナザールの隣に立った。
度がすぎるほどに周りが見えていない。
「まあまあ、少し落ち着きましょうか――」
「おう……」
ナザールは、低く呻いた。恭介も、その気持ちもわからなくはない。
「しかし、これは……教育的指導が必要……かな」
言った彼は、狼のような影を喚び出して、すでに見つけにくい影たちをさらに密やかに、レフとアリーサの周りに護衛の役目を与え、展開させる。
「倒したぷには食べても良いけど、あくまでも護るのが主だからね」
万が一のための策だ。
恭介は、静かにレフの前に立つ。
「ばかっぷる……ばかっぷるっていうのか」
なるほど――と、改めて口の中で呟いて頷く。さきほどは勢いで言ってしまったが、確かに周りを顧みない、仲の良さは微笑ましいやら愚かしいやら。
しかして、シェーラリトはかちりと思考を切り替えた。
一重咲きのバラがふわんと甘く香る。
「それはそれとしてオシゴトオシゴト」
シェーラリトの武器が無数の名もなく咲き誇る花の花弁へと姿を変えていく。
麻痺の力を纏繞した花弁が舞い狂う中、
「蜜ぷにたち、すまない。君たちの実力なら僕たちが相手をすべきだよね」
恭介もまた蜜ぷにへと挑みかかる。
同情の余地は大いにある。
蜜ぷにとて災厄を撒く魔物であろうが、このバカップルは害悪を撒く天災だ。
シェーラリトの【空に星を、地に花を】による花嵐はまだ続いている。
「ぶよぶよしてても鎧は鎧、砕くよー」
一切の容赦なく。合体されて強力になられても厄介だ。蜜ぷにが集結するのを阻止するように花弁を操り、嵐を巻きおこす。
「ぶにゃんっ!」
「あー! またやられたぷにー! こなくそー!!」
単騎突撃してくる蜜ぷにの体当たりに恭介は、しかし大げさにふっとんで見せた。
「ぐわぁーっ!?」
「ぷ!?」
「ぷぷ!?」
まさか恭介が吹っ飛ぶとは思ってもみなかったらしい蜜ぷには、きょろきょろと辺りを見回し、仲間を振り返し、ぽよんぽよんと激しく上下に揺れている。相当嬉しいらしい。
(「さあ、君には手に負えないと印象付けた――どうだ、帰ってくれないか」)
恭介は、ゆっくりと起き上がる。
本当は、ぴんしゃんしているが、これも蜜ぷにが意外と強敵だったと印象付けるための布石だ。
「レーニャ、なんかあの蜜ぷにって強いのかな? あの人倒れちゃったよ?」
「うん……この人たち、俺よりずっと強そうなのにな……」
「レーニャなら倒せるのかな!?」
「ンン!?」
アリーサのまさかの無茶振りに、流石の彼氏も驚いた――いや、見ただろう、あの人ふっとんだぜ!? と言えなくて、レフは困ったように笑っていた。
その間にも、シェーラリトはその力を存分に発揮している。
「働かないのにおいしーもの食べるって世の中そんなに甘くないと思うんだよねー」
世の理だ。
蜜ぷにの最期の土産――甘く爽やかなすきっとした蜜を指で掬って、ぺろりと舐める。
労働後の糖分摂取は格別だ!
しかも、このさきには、かき氷を食べることのできる氷室があるという。
「もっとおいしーものがあるんだよねー」
ならばそれに見合う労働を――立ち上がった恭介も苦戦を強いられているていで、剣を振るう。
「終わったら美味しく食べてあげるよ」
小声で、対峙した蜜ぷにには聞こえるように、恭介は目を細める。
「同情はしてるよ、けど――それはそれ、これはこれだから」
「ぷーにー! さぎぷにー! このひとさぎしぷにー!」
「やられたっぷにー!」
「まんまとこころをぬすまれたぷにー!」
「おれらいがいとやれるとおもったっぷにー!」
「だまされたぷにー!」
合体は許さない無数の花弁が蜜ぷにを巻き、討ちきれなかったものを、恭介が斬り伏せていった。
そんな様子を見ていた二人に、ナザールは近づく。
「ほれ、とっとと帰れ」
これ以上ここにとどまるというなら、本当に蜜ぷにを投げる算段がある。
ただただいちゃこいているだけの二人だ、蜜ぷにによる襲撃もあったし、これ以上は――との思いもある。
「ったく……、まっすぐ帰れよ、危険度の不明な怪しい部屋に不用意に突っ込むんじゃねえぞ……」
「き、君にカンケーないじゃないか! そも、俺たちの邪魔をしてるのは、き、」
ぎろりとナザーレはレフを睨みつける。
いくらハイティーンに間違えられることが多いナザールとて、年長の貫禄はある。中性的な面立ちをきゅっと引き締め、緑瞳を尖らせた。
「先生にチクってやろうか!」
「セコイ!」
「セコイ!」
二人は揃って異口同音。
こんなところまでラブラブなのか――ナザールは天を仰いで(奇妙な天井しか見えなかったが)、渾身のため息をついた。
そのとき、蜜ぷにがぽよんと跳ね上がり、アリーサめがけて落ちてくる。
瞬間《カマール》がその蜜ぷにを引き裂いた。
「帰れ、もう邪魔すんな」
低く掠れた声で、二人に凄む――純白の鷹の姿の風の精霊が、ナザールの頭上で旋回した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加
アドリブや他猟兵との絡み歓迎
WIZの行動
■心情
かき氷ですか、この季節には嬉しい氷菓子ですわね。
美味しいかき氷の為に、皆さんで頑張りましょう。
■行動
まずは、カップルをその場から逃げる様に促しますわね。
私は【殺気】と【恐怖を与える】で
その場にカップルが居座りづらい雰囲気を出して、逃がしておきますわ。
後は、蜜ぷにを相手ですわね。
夕暮れ時に薔薇は踊り咲くを使用して戦いますわ。
【範囲攻撃】で広範囲の敵を巻き込みながら攻撃し
【マヒ攻撃】や【気絶攻撃】で敵の動きを止めながら攻撃。
友情パワーぷには、合体される前に優先して倒しますわね。
栗花落・澪
【薔薇園の古城】で参加
人命には変えられないからね
まずは落ち着いてもらおうかな
部屋中に響かせる子守唄の【催眠歌唱の範囲攻撃】で
蜜ぷに+2人にも睡魔を与え気持ちを鎮める
その瞬間ローズさんの殺気に当てられれば効きやすいかと思って
お兄さん達仲良いんだね
でも…災魔を嘗めてると痛い目見るよ
翼で【空中浮遊】しつつ風の【全力魔法】を吹き荒れさせ脅かし
更に【指定UC】を発動
2人に襲い掛かりそうで当たらないギリギリで恐怖を煽り
帰るなら今だよ
続きはもっと安全な場所でゆっくりね?
今回の功労賞はある意味蜜ぷにかなぁ…
お疲れ様
労いに★Candy popをあげ優しく撫でつつ
【破魔】の炎の温もりで痛みを感じさせる前に浄化狙い
薬師神・悟郎
【薔薇園の古城】
くっ…これがバカップルの力…なんて破壊力だ…!
…これからすることは全てカキ氷のため
全然羨ましくなんてないし八つ当たりでもないからな
…さて、カップル共を驚かせようか
皆が行動するのに合わせて存在感を消し迷彩、地形の利用で周囲に溶け込む
UCで苦無を複製し操作、早業、視力、見切り、スナイパー
対象の二人を狙うように見せかけ、彼らの近くにいる蜜ぷにを狙い討伐していく
もし対象への脅しが足りないようであれば、殺気を込める(殺気の強弱はカップルの反応を見て判断する)
二人の逃亡を確認後、堂々と蜜ぷに狩りに参加する
先制攻撃、範囲攻撃で技を使われる前に暗殺狙い
後々のお楽しみの為に。たっぷり蜜を集めよう
コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と
……バのつくカップルは放っておいてもイイかしら
第一の障害に思わず真顔
うん、分かってマスって冗談よ冗談
説得するたぬちゃんの後ろでひたすら首肯
惚気なんかは右から左
話を聞かぬなら、二人には倒せなさそうな数の蜜ぷにを誘いだし
【彩雨】降らせ一網打尽(そして蜜はせっせと収集)
災魔倒しにオレらみたいなのが何人も来てンのよ
まあ、二人の愛は死をもって永遠に――ってしたいなら止めないケド
ったく相も変わらずお優しいコト
呆れて肩竦めて見せるも満更でもなく笑い
さ、おいしー氷の為にしっかり蜜集めて、お仕事オシゴト
OK、蜜が余ったら持ち帰って何か作りマショ
だからゴメンね?蜜ぷにちゃん(さくさく)
火狸・さつま
コノf03130と
二人の時間邪魔するみたいで話し掛け辛い、けど
何とか説得!しなきゃ、ね!
ね、二人、素敵なカップル、だ、ね
とっても仲良しさん!
惚気をふんふんと聞いてから
あのね、強い災魔が出て危険って避難勧告出てる、よ
デートは安全な場所が良いと思うんだ
聞かぬなら勝負挑み
見切りで躱し軽く背中をトンッ
俺にさえ敵わない程度じゃ進むの無理だと思う
失うのは…とてもとても辛い、よ
ひゅっと下がる耳をぷるぷるっと震わせ、ぴんと立て
今は気を付けて帰って
災魔が去ってから是非
説得後は空瓶へせっせと蜜集めつつ進む
ねぇ、沢山集めれたら
また美味しいオヤツ、作って、ね!
ぱぁあっと目を輝かせ
カキ氷も楽しみだね?とコノに笑顔向ける
●
なんなんだ。
レフは眉根を寄せる。ただただこの可愛い恋人と一緒に蜜ぷにを倒して、甘いひとときを過ごしたいというだけなのに。
次から次へと邪魔が入る――なんでこんな迷宮に、続々と人が現れるのか、さっぱりわからない。
「……男ばっかだったな……まさか!」
出会った四人のうち三人が男子だった。あのお団子頭の女子は確かに可愛かったが、その他の男子は心配になるほどに強く格好良かった――レフは青ざめる。
「アーシャが狙われてる……!?」
愕然としてレフが瞠目して、叫ぶ。
アリーサが彼氏の様子を見て、ぷぷっと吹き出した。
「レーニャ、かーわいー! 私、レーニャ以外の人なんて、ただの人参にしか見えないよ?」
(「人参……!」)
まさかの人参呼ばわりにコノハ・ライゼ(空々・f03130)は、薄氷を映すような青眼をわずかばかり見開いた。
「……まさか、こんな仕打ちをうけるなんて……もう、あのカップルは放って帰ってもイイかしら……」
「コノ、何とか説得! しなきゃ、ね!」
人参呼ばわりをされたのは、コノハだけではない。
「うん、分かってマスって、冗談よ冗談」
と言うわりには、その目はひとつも笑っていない。
「……説得は任せるわ、たぬちゃん」
げんなりとコノハ。
その彼の隣に立っていた火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)は、レフの前に立つ。ゆらりと揺らいだ碧眼を見下ろして、さつまはにこりと笑んだ。
「ね、二人、素敵なカップル、だ、ね――とっても仲良しさん」
「えへへー! レーニャ、褒められたねえ!」
「だな、ふふふ、アーシャが可愛いからだよ」
「やだー! レーニャがカッコいいからだもーん!」
「ふんふん、いい、ね」
ド直球に繰り広げられる惚気話に、特段興味はないし、この手の話は聞き流すに限る。コノハは、ちゃんと聞いている風を装って、右から左にノンストップで通過させていく。
しかし、さつまは、二人が一息つくのを待って、
「あのね、強い災魔が出て危険って避難勧告出てる、よ」
「つよい、災魔?」
レフの眉が険しく寄った。
ここまでのことが思い出されたのだろう――あの蜜ぷに相手に全力で戦っていた、先の四人の姿だ。
一人は吹っ飛ばされていた。一人は寄り道せずに帰れと強く警告していた。あの女子は二人を背に庇って蜜ぷにの群れを一人で食い止めていた。
この迷宮はもしかして、踏破者数と数えないといけないくらいの迷宮なのか。
レフとアリーサは顔を見合わせる。
「それ、本当?」
レフは寄せた眉を戻さないで、さつまを睨めあげる。
「蜜ぷに相手に、君らちょっとおかしいぜ――強い災魔? さっきから俺らをここから帰したいヤツらばっかだ……なんでそうまでして俺とアーシャの邪魔をするんだ?」
アリーサの肩を抱き寄せたレフは、威嚇するように猟兵たちを睥睨する。
バカップルといえど、彼女を守るという姿勢は見ていて微笑ましいものはあるが、
「蜜ぷになんかが脅威なわけないだろう? それにこれから俺らが行きたいのは、ただの氷室――」
「だからね、そこに強い災魔が出るって、ほら、デートは安全な場所がいいと思うんだ」
さつまが言えども、レフは首を振った。
「そんな話きいたことない! なんで! 俺とアーシャの邪魔をするんだ!」
「そうよ! もう、さっきからデートくらい好きにさせてよ!」
「ていうか、蜜ぷにだってまだ倒せてないし、俺はアーシャと約束したんだ!」
「やん、レーニャカッコいい!」
「当たり前だろ、アーシャとの約束は一番に守るよ」
「レーニャ……! 好き!」
「おい、みんな見てるだろ、やめろよ」
レフの腕に抱きついたアリーサと、まんざらでもない彼氏。
「くっ……これがバカップルの力……! なんて破壊力だ!」
ぐったり呻く薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)に、軽く嘆息したのは、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)だ。
「これからすることは、すべてカキ氷のため……全然羨ましくなんてないし、八つ当たりでもないからな」
誰に弁明しているのやら、悟郎はぶつくさ垂れる。
「そう、カキ氷のためだよ」
澪はにこりと笑む。しかし、それは人命をないがしろにしていいということではない。
このままでは、レフとアリーサはムキになって、問題の部屋へ入り込んでしまうのではないか。
「まずは、みんなを落ち着かせないと」
そして澪は、眠気を誘う歌を響かせる――この歌で毛羽立った心が穏やかになって、こちらの意見を十分に聞いてくれることを願って。
澪の歌声は、蜜ぷにどもには効果覿面で、ふわーっと大きな口をあけて、ぼんやりと欠伸をしたり、リラックスモードで、でろーんと広がったり。
もちろん、二人も効果を見せる。レフの眉間の皺はとれて、アリーサはふわりと欠伸をひとつ。
「落ち着かれたみたいで、ほっとしました」
瞬間、ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)の殺気が膨れ上がった。
花のかんばせを綻ばせたまま、おどろおどろしい気迫をみせる――その美しさが、返って恐怖を煽り立てる。
ローズは凄絶に笑む。
一切の容赦をみせないのは、ここで手を抜いて中途半端に怖がらせるくらいならば、しっかりと恐怖を植え付けて、これからは人の話くらい素直に聞き、きちんと取捨選択できるほどの人物になってくれることを願うからだ。
「……うわ」
(「効いたみたいだね」)
澪はローズへと視線を投げる。強烈な殺気の中にあるのは、潜在的な恐怖を煽り立てる不思議な力。
レフはその力を全身に浴びて、ぞわりと肌を粟立たせた。
「お兄さんたち仲良いんだね。でも……災魔を嘗めてると痛い目見るよ」
ふわっと空中へと飛び立った澪は、風の魔法を全力で編み上げてその場で吹き荒らす――そして、その風を受けて轟々と燃えあがる、鳥を召喚した。
小鳥から猛禽を思わせる大きな鳥まで――澪は、ありとあらゆる種の鳥を模した飛翔する破魔の炎を放ったのだ。
五十羽に届かなかったが――それでも大群だ。その一羽一羽が、レフの足元を飛び回り、その熱波にあてられる。
しかし炎の鳥はレフとアリーサを攻撃するつもりはなくて、二人に襲いかからないギリギリのところを、奔りさっていく。
(「……じゃあ、俺も驚かせてやろっかな」)
ローズの殺気に最後まで負けなかったは、きっと二人がその殺気の凄まじさを理解できるほどの手練れでなかったからだろう――なんだかそうでなければ辛いからそういうことにしておく。
「もー! おれらをむししてなにあそんでるっぷにー!?」
瞬間、悟郎はその存在を希薄にしてしまう。
地形を利用し、その身を隠し、二人に近づく蜜ぷにどもへ悟郎は、苦無を召喚させて擲つ。
レフの足元で串刺しになった蜜ぷにの体が弾け跳んだ。
「きゃあっ!」
「なんっ!?」
「帰るなら今だよ。続きはもっと安全な場所でゆっくりね?」
レフとアリーサの悲鳴に、澪は炎の鳥を操って見せる。
「だから! あんたらが邪魔しなければ、俺が蜜ぷにを倒せてたんだって! 帰るに帰れないだろ!」
「みんながこんなに言ってもきかないなんて……」
コノハは、隠すことなく溜息をついた。
バのつくカップル、恐るべし――というよりも、さすがに意固地になっているだけか。
自分がいったいどのレベルにいるかを教えてやれば目を覚ますだろうか。アリーサはレフの姿を見つめて従うように見受けられる。どうにかするなら、レフだ。
「蜜ぷにちゃん――のこと、ほんと、なめてるわね」
学生には倒しきることが難しいくらいの数の蜜ぷにが、ぷよんぷよんと召喚されていく。
「いい? その耳の穴かっぽじってよーっく聞きなさい」
氷の針路――コノハの意志に呼応して大きさを変える万色映す水晶の針が、【彩雨】となって降り注ぐ。
コノハの漂う色香に誘惑されて、うにうにと増えたと蜜ぷにが、数多の針に刺し貫かれて、ただの蜜へと変容していく。
「災魔を倒しにオレらみたいなのが何人も来てンのよ――見たでしょ、さっきの戦いも、今のも」
たかが蜜ぷに。されど蜜ぷに――オブリビオンに違いなくて。
「まあ、二人の愛は死をもって永遠に――っていう悲劇を気取りたいなら止めないケド」
「でも! 俺は……!」
さつまは小さく嘆息して、少し本気を出してレフの背後に回り込み、反射的に追いかけてきた彼の背をとらえ続け、その未熟な背をトンっと押した。
「……ね、俺にさえ敵わない程度じゃ、これ以上進むの、無理だと思う――失うのは……とてもとても辛い、よ」
さつまの耳がひゅんと下がり、その心持ちを払うようにぷるぷるっと震わせ、ぴんと立ちあがる。
さつまの双眸にレフが映る。
「だから、今は気をつけて帰って――災魔が去ってから、また、二人で来て、是非」
さつまの言葉に、レフはアリーサを見やる。
失う――その言葉がずどんと重くのしかかった。災魔を相手取って戦ってどうこうできるレベルでないことを、今思い知ったばかりだ。
蜜ぷにごとき倒せる自負はあるが――今まで耳にしてきた災魔は蜜ぷにだけではない。
それを思い出したとき、背筋が凍えた。
アリーサを守りながら――彼女とて戦うすべは有しているが男としてのプライドのために恋人は守りたいのだ――、どこまで戦えるか分からない。
それに気づいた。
「アリーサ」
愛称でなく、真剣に名を呼ぶ。彼女は、ぴっと背筋を伸ばした。
「今日は、帰ろう」
「レーニャがそう決めたんなら――私も一緒に行くね」
碧眼がやわらかく細められて、白い頬がふわりと緩む。
この笑顔を失ってたまるか――レフもまた決意を抱き、恋人に微笑み返す。
そして、さつまを見上げ、「ありがと」と一言告げて、先刻、歩いてきた道を引き返していった。
「……ったく、相も変わらずお優しいコト」
「ん」
呆れて肩を竦めたコノハだったが、ふわりと笑んださつまに、微笑み返した。
「さ、おいしー氷のためにしっかり蜜集めて、お仕事オシゴト」
「ねぇ、沢山集めれたらまた美味しいオヤツ、作って、ね!」
こちらを振り返ったさつまがコノハに笑む。
きょとんと目を瞠ったが、青眼はすぐに細められた。
「OK、蜜が余ったら持ち帰って何か作りマショ」
コノハの言葉にさつまは、ぱぁあっと目を輝かせ、隠しきれない笑みを浮かべて、「コノ、カキ氷も楽しみだね?」とふわふわの尾を揺らめかせた。
「みつがあまったら!」
「まだおれたちをぎゃくさつするつもりぷにか!」
「ゴメンね? 蜜ぷにちゃん――聞いたでしょ、たぬちゃんが楽しみにしてるの」
にっこり。
コノハは笑む。そして、向かってくるそれを一匹残らず、花蜜へと姿を変えさせていった。
前準備は、上々だ。
「えーっと、二人は帰しましたので、あとは……かき氷ですか、この季節には嬉しい氷菓子ですわね」
ローズの眼前にはぷよよんと震える、たっぷり蜜の詰まった蜜ぷにども。
「美味しいかき氷の為に、最後まで皆さんで頑張りましょう」
同じ旅団に属する悟郎と澪を振り返って、ローズはオレンジ色の瞳を細める。
その様子に澪と悟郎の二人は顔を見合わせ、くすりと微笑んだ。
ローズははしゃぐように、すべての武器をオレンジ色のバラの花弁に変容させた。
瞬間、あたりが夕暮れ時に時間が進んだと錯覚するほどに朱く染まった。
「さぁ、数多に咲き誇って、蜜を置いていきなさい!」
「ぷぷぷぷ……よくないっぷにー!」
「おれらなんかくってもおなかこわすだけぷにー!」
「そうっぷに! はげしいおうととげりをくりかえすっぷにー!」
「ヤなこと言うなよ、これから食おうってときに……」
悟郎の嘆息。
友情パワーで合体しかけた蜜ぷにどもは、オレンジ色の濁流に飲み込まれて、甘い甘い蜜へと姿を変える。
苦無を手に蜜ぷにを屠っていく悟郎は、それでもこのあと待ち構えている、最大のお楽しみのために奔走する。
「たっぷり蜜を集めさせてもらおう!」
「ぷぎゃー! はったりがぜんぜんきかないぷにー!」
「こなくそー! こうなったらとつげきっぷにー!」
それでいくら仲間が討たれたか知らないはずはないだろうが、蜜ぷには悟郎へ、澪へ、そしてローズへ突撃してくる。
そのことごとくを返り討ちにする三人の前には、ずらりとご褒美が展開された。
「おつかれさま。いっぱいツッコミいれてたし、疲れたよね――今回の功労賞はある意味、きみたち蜜ぷにかなぁ……」
言った澪は、生き残った、たった一匹の蜜ぷにを労いながら《Candy pop》をあげて、その頭部を優しく撫でる。
「りょーへーさん……!」
「頑張ったね」
冷たくも弾力のある肌触りに、思わず笑みが漏れる。
「でも、かき氷は食べたいんだよね」
「りょーへーをしんよーしかけたおれがばかだったっぷにー!」
じゅうっと浄化の炎に焼かれた蜜ぷには、焦げた甘い蜜の香りを漂わせ、その口を開くことはなくなった。
俄かに訪れた静寂――いなくなった蜜ぷにに、今まで彼らがどれほど喧しくぷにぷに言っていたかを思い知る。
これで、氷室に巣食うオブリビオンを討てば――かき氷だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 ボス戦
『スノゥ・ブリザード』
|
POW : 欲望解放
自身に【極低温の冷気と強烈な唾液の臭い】をまとい、高速移動と【放射&拡散する広範囲瞬間冷凍ビーム】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 至凍の覚醒
【雪の女王】に覚醒して【猛吹雪を纏う超戦闘モード】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 凍神宿し
【氷の神(猛吹雪を纏う)】【香りの神(強烈な唾液の臭いを纏う)】【凍気の神(猛烈な低温と氷を操る力)】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠凍雪・つらら」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●凍結の女王――スノゥ・ブリザード
古の氷室に包み隠された絶品の氷――それでつくるかき氷は、美味さが約束されている。
しかも『迷宮のおやつ』と名高い蜜ぷにの澄んだ甘さの花蜜も手に入れた。
グリモア猟兵に託された空き瓶の中にたっぷり、一切の隙間なく詰まっている。
これも、レフとアリーサが無自覚に蜜ぷにを刺激して増殖させては猟兵に狩られたということに他ならない。
そして、猟兵たちの目の前に現れるのは、大きな扉。
大きな円の中に「氷」の一字が刻まれた重厚な扉。
その前に立てば、確かな冷気を感じることができる――わずかな隙間から漏れ出てくるのか、扉自体を凍らせるほどに、フロアが凍りついているのか。
しかしここで二の足を踏む猟兵ではない。
指先が凍てつくほどの冷たさは、名状しがたい疲れがたまる体を冷やしていく。
ぐぐっと力を入れて押し開ける。
ひゅう……っと、隙間から刺すような凍気。
開け放たれたフロアには、奇妙な甘い――花の香りのような、蜜のような香りと、肺胞が凍えていくような冷気が充満していた。
「ん? あはっ、おきゃくさん? アタシとあそんでくれるの?」
極寒のフロアに佇むのは、少女然とした災魔。
その身には霜がおりて、氷柱が垂れ下がっている。
「でも、そのままじゃ、かわいくないから、アタシがもっとかわいくしてあげる」
気温だけでなく、意識をも凍らせるほどの冷たい冷たい声音。
否、無邪気に殺意を振りまく笑みを頰に刻んでいるからこその、這い上がる警戒恐怖戦慄。
「アナタを、こおりづけにするね、そうしたら、アタシがいっぱいかわいがってあげる」
その災魔は笑う。
無邪気に、少女のように、陽気に、歌うように。
命を賭した戦いを挑むような声音ではない。
猟兵は一分の隙もなく、得物を手に緩んだ気を引き締めた。
災魔は一歩踏み出す。踏んだところから氷柱が生える。
「かわいい、かわいいって、してあげるね、だから、つめたくかたまってね」
災魔の殺気は、 強烈なブリザードとなってフロアに吹き荒れた。
「このままじゃ凍える……!」
お遊びはナシ、蜜ぷにとはワケが違う、気合いを入れろ、渾身のユーベルコードを叩き込め。
己が身が、凍りつく前に。
▽
▼マスターより
おまたせいたしました。
さて、お楽しみ前の戦闘といきましょう。
当シナリオにおいて、「スノゥ・ブリザード」は「スノゥ」という名の「舌ったらず」な「無邪気な殺意を隠さない」「少女」として描写いたします。
一章のゆるさはどこにいったか? みなさまが集めた蜜と一緒に瓶詰めされてます。
次に蓋が開く三章まで出てきません。
ここを突破すると、お待ちかねのかき氷です。
猟兵のみなさま、気張っていきましょう!
二章のプレイングは【7/25(木)8:31以降】にお送りいただけると幸いです。
この凍えるフロアを溶かすような、熱いプレイングをお待ちしています。
香神乃・饗
絶品の氷っすか!(きらきら)
っし、たーっぷ…さぁぶいっす!っくしょん!うう、鼻凍ったっす…
命はもう削らないっす!削るのは氷だけっす!
香神写しで武器を増やし
相手が放つ猛吹雪の地形を利用して隠れ暗殺を狙うっす
苦無を手足に剛糸で縛り念の力も使って加速し一気に近づき殴り削り斬るっす
残った苦無はフェイントに使うっす
俺はもう愛でられるだけのモノじゃないんっす
俺は決めたんっす
大事なものをこの手で護るって
見守るだけじゃなくて
ともに歩き、ともに笑い、時々泣いて、また笑って
ともに生きるんっす
だから、こんな氷の牢獄で固まってらんないっす
時計の鼓動は止まらないっす
カキ氷に可愛さはヌキっす!
氷だけ貰うっす!たっぷりと!
シェーラリト・ローズ
「え。やだ」
わたし今の自分好きだし、君の好みになりたいとかナイナイ
「タブン頭の中が氷になっててザンネンなんだろーから仕方ないかー」
ま、いいや、スルーしよ
【セイクリッド・ランス】を【高速詠唱】するよー
もちろん【全力魔法】で【マヒ攻撃】モーリモリ
氷の鎧を無視してくだいちゃおー
【目潰し】狙ってみるけど、きびしーならコシツしないー
「祈るよーに歌うよーに、どっかーん!」
動きはよく見て、移動する音、動作の音、氷の音は注意深く聞いて、情報収集は忘れずに
おっかしーなと思ったら、周囲にカクサン
攻撃はできれば見切ってカウンターで反撃したいけど、きびしー時は氷結属性をオーラに纏わせ耐性上げつつダメージけーげん狙うー
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「私の好みは…もうちょっと大人な女性なので。遊ぶのはちょっと」
【携帯食料】を食みUC対象をスノゥへ
細胞を通して感じる無邪気な感情に複雑な気持ちを感じつつも、体を包む凍気に負けない様細胞を燃焼させるように活性化し対抗する
戦闘前に周囲を確認
使えそうなものがあれば目星をつけておく
【学習力】でスノゥの動きを観察しつつ【残像】で攻撃を誘う
「細胞が強化されている分これは辛いね」
時折匂う唾液の匂いで集中力が切れない様に注意する
冷凍ビームを打つ気配を感じたら、近くにある障害物を【投擲】して回避
回避できなくても障害物の破片を使いながら【目立たない】よう【ダッシュ】して接近する
●
にこにこと上機嫌に笑う少女は、フロアを支配する主人だ。
もちろん己が他より優位に立てるだろうに。
しかし、彼女の様子は――ご機嫌に笑っているのが不思議なほど、その身を凍えさせていた。
万全たる防寒着を着込んでなお震え、霜がおりる青白い肌。
それでも、少女は――このフロアの支配者――凍結の女王――氷雪を操る災魔、スノゥ・ブリザードは、無邪気にグローブのはまった両手をぽふっと打ち鳴らす。
「おにいちゃんは、おっきいから、かわいくない……けど、いっぱいこおったら、かわいくなるよ、そうしたらアタシ、いっぱい、かわいいってしたげるね」
子どものようだが眼前のコレは紛うことなき災魔だ。
香神乃・饗(東風・f00169)は、黒瞳をわずかに細めた。
「寝言は寝て言うものっす。俺はもう、愛でられるだけのモノじゃないんっす」
「アタシ、ねてないよ? だって、こんなにわくわくするの、アタシ、たのしい」
にっこりと笑んだスノゥを一瞥して、「たのしいっすか……やっぱり、相容れないっす」と、静かに饗。
「この先の氷室に、氷に用事があるっす。カキ氷に可愛さはヌキっす! 氷だけで十分っす! たーっぷりともらってくっす!」
とはいえ、命を削るような戦い方はもうしない――それ以外の方法で打開する。
命を削るよりも、氷を削って食う方がよっぽどマシだ。
(「心配させたくないっすから、ねっ、と!」)
饗の手に苦無が現れる。よっつ。いつつ。即時に複製されて現れてくる――【香神写し】によるものだ。
三十。四十余。
「おにいちゃんが、もっとちっちゃかったらもっとかわいいのにね、くろいおめめ、こおったら、かわいいのにね、ざんねん」
スノゥはにこっと笑んだ。
瞬間、饗の苦無が災魔の視界を遮るように放たれる。
咄嗟に目を閉じたスノゥ――その隙を見逃さなかった饗――疾る。
しかし、視界がクリアか否かはさほど重要でないスノゥは、全身から殺気を噴き上げる。触れるモノすべてを凍りつかせるほどの強烈な冷気となって、逆巻く。
「おにいちゃん、どこ?」
饗を探す、冷たい声――彼を凍らせ愛で撫で舐め食わんとする声。
氷雪の颶風を纏い、ブリザードを巻き起こすスノゥの力は、肌で感じるほどに極悪なものへと高められている。
災魔の呼びかけに、どうして応じてやる必要がある。
吹き荒れるのは、視界をも白く奪う吹雪。
鼻の奥が痛い。肺の奥が痛い――体が冷たく凍えていく。
手足に剛糸で括り付け、殺傷力を高めた饗は、凍えて痛む体を叱咤、鋭く吐息、念の力場を利用しさらなる加速――饗のスピードに巻き上げられ乱された氷雪は、しかしスノゥのブリザードには及ばない。
それは百も承知だ。
(「俺、決めたんっす。大事なものを、この手で護るって、決めたんっす」)
饗の苦無が横一閃に奔る――銀色の軌跡は凍気を斬り裂いて、スノゥの頸へ迫る。
吹雪のわずかな揺らぎを感じ取ったか、スノゥはくるりと饗を振り返った。
「おにいちゃん、みっけ」
「っ!?」
猛吹雪を最大限に利用して近づき、暗殺を図る。死角をついて一撃を放つ心算――その刃が届く前に気づかれたが、もう止まることはできない。
鋭い吐息は白く濁り、全力で苦無を振り抜く。切っ先は、吹雪を纏うスノゥの外套を斬り裂いて、薄氷を散らした。
着地後、素早く跳んで距離をとった饗は、スノゥの気をこちらから逸らすために、息つく間もなく苦無を投げれば、裂けた外套が地に落ちる。
「もう、見守るだけじゃなくて――」
饗の声は聞こえていない。スノゥは落ちた外套を少し寂しそうに見下ろしたが、 それに付き合ってやる義理はない。
走る。凍刃と化した苦無が宙を割いて、フードを跳ね上げ、桃色の髪が露わになった。
「ともに歩き、ともに笑い、時々泣いて、また笑って!」
思いを言葉にすれば、それは饗の力となって、覚悟が強固になっていく。
氷瞳に饗が映り込む、転瞬、饗の体は氷の粒を巻き上げてスノゥの背後へと踊り込んだ。
「ともに生きるんっす。そう決めたんっす。だから――こんな氷の牢獄でっ!」
血を吐くような、慟哭にも似た決意を苦無とともに閃かせる。
「俺は、固まってらんないっす」
さらに一歩踏み込んで、分厚い防寒具を切り裂いた。
動き出した時の鼓動は、止まらない。いつまでも刻む。ともにある刻を。ともにない刻も。
「んで、うまい氷を食べたいんっす。さっさと還ってくれないっすか、骸のうみ……ふっ、へっ、っくしょん!」
こらえきれなかったくしゃみは、白い粒となって落ちていく。
「うう……さっすがに、さぁっぶいっす……」
「おにいちゃん、くしゃみ、かわいい」
くすくす笑うスノゥが一歩、饗へと近寄ってくる。
一歩。殺気が噴き上がる。
一歩。氷柱が生える。
一歩。吹雪は意思を得たように饗を巻く。
「さむい? つめたい? こごえる? かわいい、かわいいって、したげる、くろいおめめも、さっきのつばもぜーんぶ、なめたげる」
笑んで歩み寄る。
足が竦む――否、凍りつく。
惜しげもなく舌を打って、ぎりっと睨めつければ、スノゥはぞろりと舌舐めずり。
「え。やだ」
饗を向いていたスノゥの瞳は、突然の声に驚いてそちらを振り返って――表情を弾けさせた。
「わあっ、かわいい……!」
スノゥの纏っていた殺気がふっと失せて、足元の氷柱を蹴り砕いて、完全に饗に背を向けた。
「……あの熱烈な歓迎は、ううん」
嘆息を漏らした仁科・恭介(観察する人・f14065)は、ちらりと饗を見上げ、
「バトンタッチですね」
「仁科さん。はいっす……頼むっす」
饗の背をぽんと叩いて、恭介はスノゥへと近づく。
その双眸はフロア内を油断なく眺める。遮蔽物になりそうなもの、投擲に使えそうなものは、先刻、スノゥ自身が蹴り割った氷柱くらいか――天井には氷柱がいくつか生えている。どれも太いが、高い位置にある――あれをどうにかするか、手持ちのカードでスノゥを弱体化させるか。
携帯食料を食いながら、全身の細胞を活性化させていく。
「かわいい、かみにさいてるおはな、かわいい、ぴかぴかのおめめ、かわいい」
「かわいい? うん、知ってるけどー」
シェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)は、眉を寄せた。
「――無邪気……か?」
名状しがたい感情を抱く恭介は、氷柱を拾い上げ、隠し持つ。
指先から感じる凍気に、その凶悪さを知った。
「おにいちゃんも、アタシに、かわいいってしてほしいの?」
「私の好みは……もうちょっと大人な女性なので――ちょっと」
丁寧に言ってしまうのは、染みついた礼儀作法のたまものか。恭介は、スノゥの誘いを固辞して、食いかけの携帯食料の最後の一口を咀嚼し嚥下した。
これに負けるわけにはいかないと、全身の細胞を燃焼させるように活性化させる。
「タブン頭の中が氷になっててザンネンなんだろーから仕方ないよー」
「なかなか、辛辣ですね」
「あーゆーのは、スルーしよ」
言ったシェーラリトは、凍りつきそうな翼で一度空を打って、見据える金瞳、伸ばされたすらりとした白い指先、収斂するシェーラリトの魔力。
聖性の光は、煌然と邪悪を祓う強靭な槍となる。
「祈るよーに歌うよーに、どっかーん!」
もっと長い詠唱によって顕現するのだが、それをすっ飛ばしてでも、シェーラリトの聖性は揺るがない。
スノゥの動きを制限するために、麻痺の光をも隙なく纏繞させて、氷瞳に向けて解き放つ!
その切っ先がスノゥの眼球に届く前に、双眸がぎらりと光った――異臭を放つ猛吹雪を纏い、さらなる低温を招く魔氷を縦横無尽に操る【凍神】を宿し、刹那のうちに現れた氷壁に聖槍は突き刺さる。
聖性を揮発させて融けゆく氷壁であっても、スノゥの力は衰えない。
その鎧壁を砕かんと、シェーラリトは力を注いだが。
「はあ、さむい……こんなの、かわいくない……かわいいの、なめたい、アナタのつば、なめたい、きっとおいしい、あまくって、ぜったい」
ぞわりと背筋が嫌悪に震えた。
そして、恭介もうっそりと眉をひそめた。
スノゥの身から流れ出る血は、強力な凍神を宿した代償か。
あまり動かずに氷雪を操って凍らせてしまう――そういう戦闘スタイルなのだろう。
あの臭気にあてられるのはごめん被りたい。
(「細胞が強化されている分これは辛いね」)
スノゥの放つ、いかんともしがたい異臭は、今の恭介にとって耐えがたいものになったが、これに集中力を欠くようなことはしない――が、くるりと恭介を振り返ったスノゥは、にこりと笑った。
「おにいちゃん、あそぼ、あそんでくれるよね? アタシのこおりになってね」
「……くっ、なりませんって!」
恭介に向けて放たれたのは、すべてを凍てつかせる波動。腹に入れたものが活性化し、恭介の戦闘力を向上させる――今は諸刃の剣だが、仕方あるまい。
彼の強化された力で擲ったのは、先刻拾い上げてあったスノゥの氷柱だ。
厄介なビームの照射を止めさせなければ、本当に凍りつく。
正確無比に投げられた氷柱は、裂かれて血の垂れるスノゥの頬へ吸い込まれるように飛びゆく。
それを躱そうと体を捻った瞬間、恭介はもう一投。その氷柱は逃げをうったところへ、投げ込まれる。
回避。スノゥの身のこなしは、もっこもこの防寒着を着こんでいるとは思えないほど軽やかだ。
その命と引き換えに猛烈な力を得続けているのだから、当然か。
「きゃ」
瞬間、まばゆく光が満ちた。躱した先に飛来したのは、シェーラリトの【セイクリッド・ランス】だ。
猛吹雪が吹き荒れる中、今度こそ届いた聖槍は、スノゥの肩を刺し貫いた。
たたみかけるように、気配を希薄にさせた恭介が走る。死角から、最後の一擲。
擲たれた氷柱はピンクの髪の一房を千切り落とした。
「ごめんねー、ちょっと思ったいじょーに読み切れなかったー」
「いいえ、大丈夫です、かまいません。助かりました」
シェーラリトの言葉に恭介は首を振って応える。スノゥの背後まで隠密に駆け抜けたのだ。
「わあ、すごーい! いっしゅんで、そんなとこまで――ぜんぜん、つめたくかたまってくれないな、つかまえたい」
いろんな意味で強敵だ。そう簡単に予備動作があるとは思えない。先刻から恭介もなんとかクセをつかもうと観察しているが、これといったクセが見当たらないのだ。
短く素早く交わされた言葉のやりとりに、スノゥはシェーラリトをもう一度視界に捉えた。
「ねえ、アタシね、そのおはなさわりたい、いっぱいつめたくなったの、さわりたい」
「もーいやー、」
げんなりして、シェーラリト。
むわりと異臭が冷気を伴って爆発的に膨れ上がる。
「あのビーム? もー、またくるよー」
「そのよう、だ!」
にこにこと笑う少女のような災魔は、ハグを求めるように両手を広げた。
「ふたりとも、こおりになっちゃえ、そうしたら、アタシがかわいいって、いっぱいなめてあげる」
触れるものを瞬間冷凍してしまうビームが、ブリザードを巻き起こしながら、解き放たれた。
厄介な低温、悴む手足。それでも、この攻撃を受けてしまえば、どうなってしまうか、目に見えている。
さきほどからずっと宣言されているのだ。
シェーラリトを、恭介を凍らせて舐めて愛でると。
「ほんとーに、やだ」
決意。拒否。氷結に耐えきれずとも、軽減することならできるだろうて。シェーラリトは対抗できうるオーラを纏い、それでもそのビームを躱すためにしっかと見る。
見切れるならそれに越したことはない――果たしてビームは恭介とシェーラリトの二人をねらうように、執拗に照射された。
が。
この氷結のフロアの主であるというのに異様なほどの防寒着を着ていたが、それは早々に饗によって剥がれ。
恭介を捉えるためにその命を削り続けた。
強烈な聖槍によって肩を貫かれて灼かれている。
ここにきて、三人によるダメージの蓄積が顕著に現れ始めた。
その命の代償に放たれるビームのことごとくを躱してみせた。
恭介は、さきほど砕かれた氷壁のかけらを持ち、素早く一投、その軌道に合わせるように、シェーラリトは指先をスノゥに向ける。
投じた氷の欠片は恭介の強化された膂力を受けて、剛烈に飛来――それを回避しようとたたらを踏んだところに、
「安息を与えたまえー! もーいっぱあーっつ! どかーん!」
聖性を発露させた光の槍が、一切の容赦なく撃ち出される。
「いや! アタシはアナタをたべたいだけなのに!」
突如として現れた氷壁を打ち砕いて、槍はスノゥの眼球へ――瞬間的に吹き荒れたブリザードに軌道を歪められて、スノゥの髪を焼き落とすにとどまった。
「もう、アナタはとってもかわいいのに、こおらせたいのに、なめたいのに……かわいいって、かわいいって、いっぱいなめたいのに」
ブレないスノゥに、無性に空を見たくなる。
吐き出されたため息は、勢いよく白煙となった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水野・花
【テフラくん(f03212)と一緒】
そんなに凍らせたいのであれば凍ってあげましょう。
私の分身ちゃんがね!
という訳で「分け身の術」で出した分身ちゃんを先行させて、あえて猛吹雪に突っ込ませて凍ってもらいましょう。
相手は氷漬けにした人にご執心のご様子、存分に可愛がってもらいますよ。
先行してるテフラくんも囮に使わせてもらいます。
敵が分身ちゃんとテフラくんに気を取られている隙にこっそり背後に回り込み、呪詛の弓矢で石化の【呪詛】をオブリビオンに撃ち込みます!
その後はまた分身ちゃんを出して盾にしつつフロア内を動き回りつつ矢を撃っていきます。立ち止まると凍りついちゃいそうですし。
テフラ・カルデラ
水野・花【f08135】と同行
アドリブ可
【POW】
あわわ…芯まで凍ってしまいそうなほどの寒さなのです…
でもこのウィザード・ミサイルで温めてやりますよ!
花さんの分身と一緒に攻撃します…が猛吹雪によって一緒に凍り付いていきます…!
必死にウィザード・ミサイルを撃ちますが…途中で凍って届きそうにありません…
ですがわたしたちはあくまで囮、本命は花さん本体が何とかしてくれます!
うぅ…わたしの足も凍っていく…さ…さすがに寒い…!
というかオブリビオンが近づいてきてません?凍る速度も早くなってく!?
あぁ…動け…ない…身体…凍って…冷た…ぁ…
(冷たい氷像と化し愛でられてしまうテフラであった)
●
ずいぶんと傷を負ったスノゥが、ふいにこちらを振り返る。
「わあ、かわいいコ」
笑う瞳が見つめた先には、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)の、歯の根が合わずに震える姿。
「あわわ……芯まで凍ってしまいそうなほどの寒さなのです……」
「あはっ、かわいい……つめたくなろうね、アタシが、かわいいって、したげる」
「そんなに凍らせたいのであれば凍ってあげましょう――私の分身ちゃんがね!」
テフラを一瞥、水野・花(妖狐の戦巫女・f08135)は、【分け身の術】でもう一人の花を現した。
「えー……にせもの、いらない……でも、アナタもかわいいから、アタシのこおりになって」
「なりません」
にべもなく花。
「そう簡単に捕まってあげません、このウィザード・ミサイルで温めてやりますよ!」
テフラの赤瞳がスノゥを見る。
寒い。痛い。冷たい。凍てる――スノゥの瞳は茫漠として、ただまっすぐにこちらを見返してくる。
氷のように冷たい色の瞳だ。
その双眸がやわく細められる。
「あはっ、たのしみにしてる」
テフラを見て笑ったスノゥへ向けて、花が駆け出す――否、それは花の分身だ。姿形はもちろん、彼女の能力までまるっと写し取った分身は、テフラを守るように、弓に矢を番え躊躇いなく射る。猛吹雪をものともせずに、空を切り裂いていく矢は、しかしスノゥに届く前に失速、地に落ちる。
「ふあ……」
テフラもテフラとて、魔炎を纏う矢を解き放つ。百を超える炎の矢だが、猛威を振るう暴風雪の前では、歯が立たない。
いよいよテフラの体も凍えていく。花の分身とともに。
矢は役に立たなかった。花の写し身は薙刀を構え、
「貫きます!」
花の分身の体に霜が下りる――《なぎなた》の切っ先がスノゥを掠める直前、その動きを止める。
「やったあ! かわいい!」
うっとりと氷漬けにされた花に抱きついて、深呼吸をする――己の嗜好を満たすように。
その様子に、本人はぞわっと背筋を凍らせる。
(「分身で、本当に良かった……」)
氷漬けになった己の姿だけでもぞっとしないのに、それが今オブリビオンによって、いいように弄ばれている。
絶対に一発叩き込む――花は密かに決意を固める。
そっとそっと、気づかれないように移動を始めた。
「わたしだって! 次こそ溶かします!」
テフラの声は、スノゥの意識を釘付けにしてくれる。
「むう……そのアツいのきらい。こおっちゃえ」
いよいよ吹雪が強くなっていく。
無数の炎の矢のことごとくが薙ぎ落とされ、テフラは足の先の感覚がなくなっていることに気づいた。
動かない。
動かせという信号に従えないのは、足が凍りついているから。
自由に動けないのは恐怖だ。花の分身はすでに氷像となって、スノゥに舐められたあとだ。
背筋を駆け上る恐怖をさらに煽るのは、スノゥの恍惚たる笑み。
「はふ、うごけなくなってきた? さむい? こごえてきた? ふふふ、かわいい、かわいいね」
ゆっくりと、凄絶な笑みを頰に刻んだまま近寄ってくるスノゥの不気味さに、テフラは、しかし花がこっそり移動しているのを見た。
大丈夫、まだこちらの作戦は気取られていない。
「うぅ……わたしの足も凍っていく……さ、……さすがに、寒い……!」
テフラは混乱している風を装って――または、本当に焦りながら、
「ああ……動けない……」
「かわいいね、かわいい」
はやる気持ちがスノゥの動きを加速させて、極悪なブリザードを巻き起こす。
「あぁ……身体、凍って……冷た、ぁ……」
動けない。見えるのに、聞こえるのに、話せないし、動けない。
「まっかなおめめ、かわいい」
れーっと舌先で頰を舐められる――感覚はないが、それでも災魔がそこにいるという恐怖は、この状況を意図的に作り出したといっても、耐え難いものがある。
「――はああ……いいにおい、かわいい」
恍惚としてスノゥ。
テフラのにおいを嗅いで身悶えて、愛おしげに彼の頰を両手で包んでにっこりと笑む。
「おいしそう、たべたい、たべたい、ころしたい」
不穏な一言を吐くスノゥは、それでも、テフラを眺め、首に腕を回してぎゅっと抱きついた。
「えへへ、アタシの。かわいい、あとでゆっくりたべるね」
(「狙い通りですね」)
花は呪詛を練りこんだ《呪詛の弓矢》を構える。
氷漬けの人に固執するという読みは当たった。怖いくらいに。
(「テフラくん、助けますよ」)
石化の呪詛を練りこんだ矢を放つ。
それは、無警戒のスノゥの背に突き刺さった。
「いたい!?」
「さぁて、凍ったテフラくんが溶ける前に私を倒さないと、あなたが死ぬことになります」
もう一度射られた矢が刺さる。
しかし、災魔の体が石化していく気配はない。
「うう、いたい……やめてよぉ……でも、アナタもかわいい……こおってよ、アタシがいっぱいかわいがったげる」
「いやよ」
花はフロア内を走る。肺を凍らせるほどの低温だ。じわりと滲んだ汗がパリっと薄氷になるような感覚――それを振り切って花は、石化の矢を放ってスノゥの自由を奪わんとする。
「そろそろテフラくんを返してください」
何度目かの石化の矢が、スノゥの右腕に深々と突き刺さった。
「それはいや……でも、かわりにアナタがアタシのになってくれる? ほんと、まっくろなおめめも、ぴこぴこのおみみも、ぜーんぶかわいい」
うっとりと花を見て笑んだスノゥの右手が自由を奪われ、だらりと垂れ下がった。
「え?」
「いやよ、私は少なくともあなたのものにはなりません」
吐き出す息が白濁し、そのとき、魔炎が噴き上がる。
およそ二百の炎の矢が、猛然と冷気を溶かしてスノゥへと飛来する!
ごおおおっ
燃える雨となってスノゥへと襲いかかる。
「あ、アタシの……」
それでも、災魔は、ちらりとそれら一瞥し、腕を振り上げた――瞬間、凄烈な氷雪が巻き上がった。すべてを氷結させる波動は、一本たりと残さず氷漬けにしてしまった。
「無事のようですね、テフラくん。いい囮でした」
「はいぃ、ひどいめにあいました……でも、花さん、見てましたよ!」
二人は、凍える体を気迫で支えて、互いに笑む。
寒くて痛いが――反撃開始だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
火狸・さつま
コノf03130と
わぁわぁ!ここ、涼し!ね!!
折角、夏毛に生え揃いそ、なのに…
冬毛戻っちゃう…
換毛期が延びるじゃないかと尻尾毛並み気にしつつ
ん、ん、コノ、寒い?
しもやけ、風邪ひき、大変
氷漬けになんか、以ての外
絶対させない
トンッと足踏み鳴らし
【燐火】の炎の仔狐へ風の『属性攻撃』纏わせて
決して燃え移らせぬよう
境目『見切り』つつ
温められた空気を二人の周りに纏わす
……コノちゃん、何気に人参呼ばわり…気にして、る?
おみみぴこぴこ首傾げ
におい、は、俺も苦手…
両手でお鼻おさえ
向きなおれば
コノに続いて【燐火】嗾け
『2回攻撃』<雷火>の雷撃
敵の動き『見切り』躱し
『オーラ防御』で防ぎ
『氷結耐性・激痛耐性』で凌ぐ
コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と
さっむ!傷付いた心に沁みンじゃナイ(嫌そうな顔すれど平然と)
つうか寒いよかクサ……ああ駄目ダメ、近寄るのパス!
寒さは相方の焔を盾に凌いで
相方より僅かに早いタイミングで【月焔】撃ち込むヨ
熱を持たない焔は溶かす事は出来ないケド傷を刻むには十分
たぬちゃんの焔の熱もより染みるデショ?
更に『2回攻撃』で『傷口をえぐる』よう刻んだ傷狙ったら
『生命力吸収』でちょいとその命喰らわせてもらうねぇ
反撃は動きと気配『見切り』躱し、避けられぬ寒さは『オーラ防御』と『激痛耐性』で凌ぐヨ
ちょっとぉ、たぬちゃんは今のままでとびきり可愛いンだからネ
もふもふ固まったらタダじゃおかないから!
●
「わぁわぁ! ここ、涼し! ね!」
ふわふわの尻尾を揺らし、こちらを振り返った火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)も、涼しいと感じたのはそれまでで、
(「折角、夏毛に生え揃いそ、なのに……冬毛戻っちゃう……」)
尾の毛並みを心配そうに見る。
(「換毛期延びちゃう、かな……」)
「涼しい!? さっむいの間違いよ!」
吐く息を白く凍らせて、極寒を唾棄したが、それでも思う以上に平然としていられた――否、彼の端正な顔が翳りをみせる。
「つうか寒いよかクサ……ああ駄目ダメ、近寄るのパス!」
「ん、ん、コノ、寒い?」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)の様子にさつまは彼の目を覗き込む。鮮やかな青にコノハが映る。
「しもやけ、風邪ひき、大変――」
ぎっと青い瞳を尖らせて、スノゥを睨みつけるさつまは、トンッと脚を踏み鳴らした。
「氷漬けなんか以ての外……そんなこと、絶対、させない」
ふわりと生み出された炎の仔狐に風の加護を与え、決してコノハとさつまに燃え移らないように巧みに操る。
熱風は適度に冷やされ、二人は暖かな風に包まれる。束の間の安らぎを、凶悪な凍結から護る盾を生み出した。
「あつい……あついのキライ……こおってよ、かわいいって、なって! だって、おにいちゃんのふわふわのしっぽ、とってもかわいい、おっきなおみみもかわいい、アタシ、みて、もうこんなきずまみれなの、いたいの、だから、ちょっとだけ、ねえ?」
スノゥの言葉は悲哀に満ちていたが、コノハは鼻で笑って捨てた。
【月焔】がフロアに垂れ込め、じわりとスノゥに絡みついていく。
「熱を持たないケド、傷を刻むには十分――」
瞬時に凍神を宿したスノゥは、異臭と厳寒の猛威を纏って、唇を尖らせる。身体能力が飛躍的に跳ね上がるがその身に刻み込まれるのは、月白の炎と、力を得ることによって裂けた肌から流れ出る命――代償。
【燐火】が煌めく。さつまだ。それらに追随するように《雷火》が閃く。
尾に漆黒の雷紋が浮かび上がり、轟烈たる雷電を解き放つ。
焔と雷に撃たれ金切り声が上がる。それでも攻撃の手を休めてやろうとは思わない。
畳みかけるコノハの熱のない白い焔が、スノゥの傷を焼く。
「どう? たぬちゃんの焔の熱よりも染みるデショ?」
「も……いや、なんで! おにいちゃん、ちょっとでいいの、ぺろってさせて?」
「……いや」
さつまはぽつりと呟く。これを許可するわけにはいかない。さつまの身が危うくなるだろうし、そうなればコノハに要らぬ心配をさせることになる。
論外だ。
悲しい、寂しい、辛い――そんな声でスノゥはハグを求めるように手を差し出す。
「たぬちゃんっ」
コノハの警告。さつまも首肯し、身構え見切って躱そうと息を詰める。
それでも、その冷凍ビームに纏繞されてくる悪臭に、コノハは眉根を寄せて舌を打つ。
さつまの仔狐による盾は凍結の波動によって壊され、それでも二人とも辛くも躱しきる――が、体の深奥まで凍えさせる極寒は、容赦なく体力を奪っていく。
コノハの四肢に漲らせたオーラが地力を発揮させる。ある程度の痛みになんぞ負けない気概を見せれども。
「はあっ! もう……クサーイ!」
いくらオーラを纏い寒さを凌ごうが、どうしたって侵入してくる悪臭に、イラつきを隠せない。
「におい、は、俺も苦手……」
両手で鼻を押さえて、さつまもコノハに向き直ってこくこく頷く。
「なんなのヨ、この迷宮! バカップルはいるわ、寒いわ、クサいわ! 傷付いた心に沁みンじゃナイ」
(「…………さっきの二人のこと、まだ言ってる?」)
さつまは、鼻を押さえたまま、目をぱちぱちと二度瞬き。
「……コノちゃん、何気に人参呼ばわり……気にしてる?」
「しっ! なっ、なに、してるワケないデショ!」
コノハが弾かれたように否定すれど、さつまはふふっと小さく微笑った。
「ふたりとも、なかよし、いいなあ、ふたりともほしい、あはっ、おにいちゃんたち、ほしい」
二人の会話にスノゥは茶々を入れた。それもとびきり不愉快な。
さつまの【燐火】がふわりと広がる。愛くるしく走る仔狐に混じって、一匹だけ――毛色の違うモノが混じっている。
それは、コノハの目の前を駆け抜けていく。
そして、青い青い幽玄たる光を放ち、猛然と燃え狂う火炎となってスノゥに襲いかかる。
息をつかせぬ凄まじい落雷――スノゥが先刻と同じように、二人を求めるように腕を広げたのだ。
嗾けろ。疾れ。燃えろ。
さつまの連撃を引き継ぐコノハ。
「暖めてあげようか――【月焔】」
その言葉とは裏腹に、熱は恐ろしいほどに感じないが、無数に刻まれたスノゥの傷を焼き抉り、血を焦がし、氷結を溶かし、体温を上昇させて、にわかに青白い頰に朱がさす。
「あつい、あっつい……! やだあ! うう……」
涙声でその身に宿す、神々の異様な力――しかし、それはスノゥをさらに追い詰める。
纏う厳寒、凍冰、甘やかな唾液のにおい、暴風雪。
白と青の焔はたち消える。
「はあ、はあ……――はああぁぁぁ……、ふふ、あはっ、さむい……! おにいちゃん、ふわふわのしっぽも、ぴこぴこのおみみも、アタシが、ぜーんぶたべたげる、もっと、もーっと、かわいくしたげる」
「ちょっとぉ! たぬちゃんは今のままでとびきり可愛いンだからネ」
再三、【月焔】が揺らめく。凍結したフロアを踏みしめる。
「たぬちゃんのもふもふ、固めてみなさいよ――タダじゃおかないから!」
真っ赤な血を凍らせるスノゥは、コノハの焔に巻かれて、言葉にならない悲鳴をあげる。
凍れるフロアが、揺らいだ。
さつまは、ただ一匹の仔狸の顎を撫で、無数のの仔狐の元へ送り出す。
フロアを溶かす炎獄が、ブリザードをかき消して、漆黒の雷電が爆ぜた。
こだまするは、災魔の悲鳴。
「――――――っ!」
「ちょいとその命喰らわせてもらうねぇ」
凄絶にコノハは笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加
WIZ判定の行動
アドリブ等歓迎
■心情
かわいいがるためとはいえ、人を氷漬けにするのは良くないですわね。
ちゃんと生きて感情がある方々の方がよっぽどかわいいですわ。
■行動
夕暮れ時に薔薇は踊り咲く(UC)を使用して攻撃しますわね。
【範囲攻撃】で広範囲を攻撃する様にして、避け難い攻撃を行いますわ。
その後はUCを使い
【マヒ攻撃】や【気絶攻撃】で動きを止める様な攻撃を行いますわね。
凍神宿しを使用されたら【見切り】や【残像】で避け
避けきれない場合は【氷結耐性】で耐える様にしますわ。
仲間も積極的に【かばう】で守り【武器受け】や【盾受け】で防御。
防御後は【カウンター】狙い。
栗花落・澪
【薔薇園の古城(3人)】
可愛いものを愛でたいって気持ちだけなら
普通の女の子なんだけど…
手段が良くなかったね
女性に手を出すのは気が引けるけど、倒させてもらうよ
初手は風魔法を宿した★Venti Alaと翼の【空中戦、空中浮遊】で
遠距離から放つ炎の【高速詠唱、属性攻撃】魔法で2人の援護
更に隙があれば急接近からの★爪紅の【投擲】で爆発ダメージ
または回避されてもそちらに注意を向けさせる事で隙を作り
他の2人の攻撃チャンスに
指定UCを発動
総数のうち4分の1程度の卵入り分身には僕を守らせ
自身も【オーラ防御】を張りながら
残りの分身と僕とで一斉に
【催眠歌唱】+炎の【全力魔法、範囲攻撃】
回避の意思を奪いつつ攻撃
薬師神・悟郎
【薔薇園の古城】の仲間と参加
かわいくしてもらわなくて結構
俺はお前と遊ぶために此処へ来たわけじゃない
面倒な事はさっさと終わらせよう
事前に氷結耐性、激痛耐性で備えUC使用
ダッシュで一気に距離を詰め暗殺、先制攻撃
以降フェイント、だまし討ち、カウンターを交ぜながら、攻撃を途切れさせないよう意識し早業にて連続攻撃
敵の注意が仲間ではなく俺に引き付けるられるように意識し接近戦にて行動する
戦闘知識、見切り、聞き耳、野生の勘、第六勘で敵が技を使用するタイミングを察することができれば、咄嗟の一撃、目潰しでキャンセル狙い
もし敵が体勢を崩す等して隙を見せれば、怪力を乗せた重い一撃にて部位破壊を行う
●
(「可愛いものを愛でたいって気持ちだけなら、普通の女の子なんだけど……」)
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、息も絶え絶えに、ガチガチと歯の根が合わないスノゥを見つめる。
あまりうまく動いていなさそうな右腕、もこもこだった万全すぎた防寒具は裂かれ、焼かれ、ボロボロになっている。
フードの奥に隠されていたピンク色の髪もズタズタに引きちぎられている。
なにより、その愛らしい顔には無数の裂傷――凍りつく血痕の上から流血をさらに重ねている。
「はあっ、はあっ、……おなかすいた」
それは比喩なのか、本当に空腹なのか――オブリビオンは腹が減ることはあるのか――不意にわいた疑問だが、今思案に耽るときではない。
薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)は、満身創痍のスノゥを見つめた。
この災魔を討てば、待ち望んだご褒美。
「女性に手を出すのは気が引けるけど、倒させてもらうよ」
「あらステキですわね」
ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)は澪の言葉に、ふふっと微笑む。
そうして、オレンジの瞳にスノゥを映した。
「かわいがるためとはいえ、人を氷漬けにするのは良くないですわね」
「そうそう、手段が良くなかったよね」
「ちゃんと生きて感情がある方々の方が、よっぽどかわいいですわ」
「ん、ローズさんの意見に賛成かな」
うんうんと首肯して、澪。
「面倒な事はさっさと終わらせよう」
悟郎も二人に頷いて、双眸を真紅に輝かせた。
疾駆。
囮は引き受けた。悟郎は一気にスノゥとの距離を詰める。ブリザードはまだ弱い。攻める好機だ。
悟郎の内に眠る血が目醒める。
彼の二種の苦無による斬撃を、凄まじい加速を後押しするように、ローズの花弁の濁流が、澪の炎を纏ってスノゥを燃やしていく。
「やだ! あっ、あついの、やだあ!」
悲痛な声。
炎はスノゥの体に生える霜も氷柱も溶かして、悟郎の連撃が小さな体を斬り裂いていく。
「――ッ!」
鋭い呼気は、白くならない。じわりと汗が滲むほどの熱が生み出される。
「あついの、あつい、おにいちゃ、」
「おにいちゃん呼ばわりされる筋合いない」
悟郎はにべもない。
スノゥの薄氷のように煌めく双眸を睨み返して――違和感に彼は、しかし苛烈に一歩踏み込んで《疾風》の銘を冠した苦無を、その眼球に向けて一閃!
それでも、予想しえたブリザードは捲き起こる。凶暴な暴風は氷雪を掻き混ぜて熱を奪い、猛烈な悪臭を解き放つ。
「はふ……ふふ、ああ……はあっ、さむい、さむいの、こおるくらいさむいの、すき、あはっ――ふう」
凍結と嗜好の神々を宿したスノゥは、凄絶に微笑む。
己の血をも凍らせ死へ誘うブリザードを生み出す。
「ああ、ああ……!」
寒さに震えるスノゥは、大きく大袈裟に深呼吸を繰り返して、ひとここちついたように、悟郎を一瞥。
「おにいちゃんのおめめ、かわいい、つめたくなったら、もっとかわいい、こおって、アタシ、アナタをたべたい」
ぞわりと嫌悪が背筋を駆け上る。
「かわいくしてもらわなくて結構――俺はお前と遊ぶために此処へ来たわけじゃない」
翼を現した《Venti Ala》と、自身の翼で宙に留まる澪は、スノゥが悟郎に集中している隙を見逃さなかった。
冷気をその翼たちで掻き混ぜ打って、琥珀色の艶やかな髪から赤花の髪飾りを引き抜く――それのおしべはトリガー。
「それ、僕からのプレゼント」
全力で擲たれた《爪紅》が、スノゥの手の中に納まる。
「わ、」
ふわりと頬を綻ばせたスノゥの顔が、刹那のうちに引き攣った――フロアを揺るがすほどの爆発が起こる。
「お、……」
悟郎も驚き、ローズも目を瞠る。
「……容赦ないな」
ぽつんと呟いてしまったが、猛吹雪が爆発の熱気を吹き飛ばす!
体の奥底から凍える、氷雪の嵐――それでもこれに襲われることは覚悟できていた三人だ。
防御のために、澪はオーラを纏い、ローズと悟郎は氷結に対する耐性を整えてきた。
「それぐらいしなければならないということですわ」
にこりとしてローズ――いくら氷結に耐え得る力があるとはいえ、それをはるかに凌駕してくるスノゥの暴風雪に、オレンジ色の髪は掻き混ぜられる。
「数多に咲き誇りなさい――【夕暮れ時に薔薇は踊り咲く】のですから」
ローズの武装の全てが黄昏色の薔薇の花弁へと変化して、濁流となって暴風雪を抑え込むように、仲間を凍結の脅威から守る。
その勢いは、果たしてやや衰えた。
「そろそろ、ネンネの時間だろ?」
血統は覚醒している。悟郎の双眼は真紅に濡れ光っている。その力は爆発的に飛躍し、閃く斬撃は鋭さと重激な破壊力を生み出す。
「――ッ!」
鋭く息を吐き、振り抜いた苦無――その勢いを殺さず、その場で一回転、もう一本の苦無は、いよいよスノゥの額を横一文字に切り裂いた。
「いやあああっ!」
「イヤでもなんでも、もうお終いのときだよ」
「だって、アタシ、アナタのこと、さわってない! とってもかわいいの、アタシ、アナタみたいなおんなのこすごくすきぃ」
「女の子……違うから」
澪はげっそりして呟く。女子に間違えられることは、少なくなはいが。
「澪は可愛らしいから仕方ありませんわね」
「だな」
ローズと悟郎の言葉に、苦笑して、彼はユーベルコードを発動させた。
その技も技で、あざといほどに可愛いものなのだが。
「わあっ、ちっちゃーい!」
喜んだスノゥは、満身創痍であることも忘れ、手を打って喜色満面で、【極めて小さいつゆりんのカワイイアタック】を受け入れる。
大量の小さなつゆりんたちは、無邪気に笑んで、あざと可愛さを撒き散らしながらも――猛火をその身に宿す。
「わ、技名は意地でも言わないって決めたんだよ!」
その声に乗せた催眠の力。タマゴの殻からひょっこりのぞくとても可愛いつゆりんは、主人を守るために、愛くるしさを武器に展開する。
そして、練り上げられた澪の魔炎は全力でスノゥを燃やし焦がしていく。
「やだあああっ! かわいいのに! あつい! おねえちゃ、あつい、あついの、いやっ、ううう……!」
澪は全力で魔力を注ぎ、つゆりんたちを嗾ける。
つゆりんの波に飲まれたスノゥは、その身を容赦なく焼かれていく。
意識が朦朧とし始めたように思うのは、澪の眠りへと誘う歌を聞いているからだろう。
それでも、そこまでされても、スノゥはぶわりと冷気を纏う。
「もう、諦めろ!」
「往生際が悪いですわ!」
凍り付いていたフロアは溶け、水たまりが多くできた。
その一つをローズは踏みつける。
操るのは、オレンジ色の薔薇。
唾液のにおいに興奮し、恍惚としていたスノゥでは、理解し難いかもしれないが――薔薇の甘やかで華やかな香りがフロアに咲き乱れる。
厳寒の監獄は瓦解する。
ローズの解き放つ花弁の奔流は、凍り落ちて消えていくつゆりんたちの背後から、スノゥへ迫る。
「おねえ、」
「どこ見てる?」
眼前に気を取られる隙に背後から迫るは、悟郎の刃。
両手に光る《疾風》と《飛雷》の銘を持つ苦無――
可愛らしい面立ちのスノゥだったが、今は見る影もなく、その命を終えようとしている。
一陣の風となって、悟郎は奔る。
小さな澪たちは炎を携え突撃し、彼らを掬いあげるようにローズの花弁が、大蛇のうねりとなって、凍結の女王を飲み込んだ。
「たべ、……アタシ…! みんなを……なめたかった……なめたかったのお!」
異様なにおいが満ちたフロア――凍てつき凍え氷雪が支配するフロアから、死呼ぶ氷結は融け消えて。
じわりじわりと、夏の気配が扉の隙間を抜けて、漂い始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『真夏の奇跡』
|
POW : 氷を細かく削って食べる
SPD : 砕いた氷を飲み物に入れる
WIZ : 大きな氷を器に冷菓子を作る
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●絶品かき氷
脅威は去った。厄介も去った。極寒は失せ、かわりに現れたのは、暑い夏。
あの喧しい蜜ぷにが残した甘い甘い花蜜は、ここに大量にある。
古の氷室は、凍結の女王が居すわったフロアの奥にあった。
そこでは、青みがかった黒色の頭がせっせと氷を削り出しては、ごりごりとかき氷を作っている。
いわく、かき氷機は好きに使って構わねえからァ。
むろん彼が提案した桃のコンポートもそこにある。
いわく、好きなだけ食べてもいい――けどォ、ちゃんと氷にかけろよ、そのまま食うんじゃすぐなくなっちまうからァ。
ともあれ十分な量がある。他にも、気を利かせたか、小豆の甘煮、練乳、イチゴソースに、マンゴーソース――えり好んでも十分なほどのトッピングがある。
さあ、かき氷をぞんぶんに楽しむ時がきた!
今は地上の熱も忘れて、思うままに楽しめ。
▽
▼
お待たせいたしました!
いよいよかき氷を食って楽しむ章です!
フラグメントのPOW・SPD・WIZは、とりあえずPOWを想定していますが、飲み物・冷菓子なんでもこい!のスタンスでいきますので、お気軽にやりたいことをプレイングに書いてください。
なお、氷室内にグリモア猟兵の鳴北・誉人がいますが、お声がかからないかぎりリプレイに登場はしませんので、ご安心を。
ひとりではちょっと…というときにでも、使っていただいて大丈夫です。
三章プレイングは、【7/31(水)8:31~】受け付けます!
新規プレイング締め切り日時は、マスターページおよびツイッター(@kFujino_tw6)にて、随時連絡いたします。
それでは、みなさまの美味しいプレイングをお待ちしています。
シェーラリト・ローズ
「改めて見ると、氷すごいねぇ」
わたしの故郷だと馴染みがないねー
そもそも氷をホカンしておく場所ないしー運べないしー
「で、ねータカトー氷ってどうやって食べるの?」
手本見せてほしーとお願いするよー
氷を削って食べること自体オドロキなんだからねぇ
教えてもらったら自分でもやってみるー
自分で作る感覚もいいねー
慈悲深きコンソラトゥール歌いながら楽しんで作ろー
「他の世界でも氷がサリサリしたあいすきゃんでー? 食べたりしたけど、それとは何か違ってて、これもこれでおいしそー」
桃のコンポートかけて食べてみよ
「おいしー」
へーカキゴオリこういう味なんだー
カンドーだねー
「他にもオススメあるー?」
色々教えてもらって食べよー
●幸せは甘露
「改めて見ると、氷すごいねぇ」
眼前に広がる煌めく氷に、シェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)は、瞳を輝かせる。
ダークセイヴァーで生まれ育ったシェーラリトには、とんと馴染みのない光景だ。そもそも、氷を保管しておく場所――というものもないし、運べない。
その彼女の中の基準外のことが、いま目の前で起こっている。それだけでも心は躍るというのに、ここの氷を削って食べていいという。
ともあれ、そんな文化のない場所で育ったシェーラリトにとって、未知のものでしかない。
百聞は一見に如かず。
旅の恥はかき捨て。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。
氷の削れる小気味よい音――しゃぁん、しゃァん……調節されている刃の具合は、絶妙で申し分はない。そのかき氷器を手慣れた様子でハンドルを回すグリモア猟兵の名を呼んだ。
「で、ねータカトー」
「なにィ?」
紺瞳がこちらを見る――鋭い視線だったが、作っているものがものなだけに、怖さは微塵もない。
「氷ってどうやって食べるの? 手本見せてほしー」
言えば、誉人は小さく頷いて、使っていたかき氷器をシェーラリトへと示し、「回すのコッチだからァ、反対に回しても削れねえから気づくだろォけどな」なんて言いながら、ごりごりハンドルを回す。
「へー!」
そもそも、氷を削って食べるという経験がないのだ。薄く削られて雪山になっていく皿を見て、シェーラリトは目を輝かせる。
「あとァ、自分の食いてえだけ削りゃいいからァ」
「うん、ありがとー。ちょっとやってみるー」
誉人は軽々と回していたが、なるほど、氷にも意地があるらしく小さな抵抗をみせる。しかし、一度回り出してしまえば、その抵抗も心地よい。
【慈悲深きコンソラトゥール】が口をついて溢れ出す。優しい歌声、弾む歌声――それを唐突にやめて、
「こんな感じ? もっと?」
「イイんじゃねえ?」
桃のコンポートの入ったを持ってきた誉人は、コトンと皿の隣に置く。
花蜜の瓶は、蓋が開いている。中に突っ込まれたままのハニーディッパーを持ち上げれば、トロリと垂れていく。
口ずさむ歌も軽快で、こんもり盛られた雪山にたっぷりかけた。
「他の世界でも氷がサリサリしたあいすきゃんでー? 食べたりしたけど、それとは何か違ってて、これもこれでおいしそー」
蜜との温度差で溶けていく氷を眺めて、にこにこのシェーラリトは、最後に桃を乗せる。
ふわっと桃の甘い香りが鼻腔をくすぐった。
スプーンで掬って、口に放り込む。
とたんに口内の熱を奪われる。そして追ってくる桃と花蜜の甘さ――氷の優しい冷たさは、先刻のソレとは比にならないほどに、心を落ち着かせた。
「おいしー……へーカキゴオリこういう味なんだー!」
もう一口、さらにもう一口。
シェーラリトは、しゃくっ、ぱくっと食べ進める。
「つめたくって、思ったよりカンドーだねー」
ここにたどり着くまでの困難も一役かっているのだろう。
「タカト、他にもオススメあるー?」
「いろいろあるぜ、先にソレ、食っちまいな」
誉人が気を利かせ用意したトッピングはまだまだある。彼はマンゴーソースをたらりと垂らしたものを、しゃくしゃく食べていた。
「それも、おいしーの?」
「マンゴー? 美味いぜ、ちっとかけてみるか?」
シェーラリトの皿の端に、鮮やかなオレンジが垂れる。そこを掬って口の中へ。
「んん! こっちもおいしー」
コンポートや花蜜の甘さとはまた別の、美味い甘みが舌の上に広がって、金瞳を輝かせた。
頭一つ分背の高い誉人を見上げ、
「他には?」
「イチゴと練乳かけると、王道美味えからァ――はよ空っぽにしろ」
言った彼も自分の皿の雪山を崩しにかかっている。
シェーラリトの皿の中で、じわりとみっつの甘さが混じり合った。
鼻歌まじりに氷をシャクシャクとかき混ぜる――真夏の褒美は、彼女の手の中で幸せと溶け合う。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
【薔薇園の古城(3人)】
ついにかき氷…!
どうせならまだ食べたことの無い味がいいなぁ
えっと、かき氷機ってどうやって使うの?
ここ回せば良いの?
うっ……意外と硬い…(ゆっくりガリガリ)
あっ、薬師神さんありがとう!
ピーチシロップあるかな?
氷に桃のコンポートを混ぜて、ピーチシロップ掛けて
上に蜜ぷにの蜜も少量とろり
少し甘めくらいがいいよね
出来れば暖かい飲み物も貰って体を冷やしすぎないよう注意
紅茶があれば嬉しいけどワガママは言いません
ありがとうローズさん
んー、甘くて美味しい!
これはコンポート入りピーチシロップだよ
去年初めて食べたイチゴも美味しかったし好きだけど
色んな味覚えたいからね
こちらこそお誘いありがと!
ローズ・ベルシュタイン
【薔薇園の古城】メンバーで参加
アドリブや他猟兵との絡み歓迎
POW判定の行動
■心情
一仕事終えた後のかき氷は格別でしょうね
私も沢山、かき氷を食べておきたいですわ
■行動
氷を細かく削って食べますわ
かき氷機を使って、氷を細かく削っていきますわね
器に盛ったら、後はシロップをかけてみましょう
私は赤色が好きですので、イチゴのシロップをかけてみますわね
「んー、冷たくて気持ち良くて、とても美味しいですわ」
「こういう暑い日に食べるかき氷は格別ですわね」
あと、体を冷やし過ぎない様に、水筒に熱いお茶を入れておきますわ
澪や悟郎とも話してみますわね
「お二人ともかき氷にはどんなシロップを選びましたでしょうか?」
薬師神・悟郎
【薔薇園の古城】の仲間と参加
疲れた体には甘い物が一番
そして暑い夏の定番の甘味といえばかき氷だ
逸る気持ちを抑え、皆で美味いかき氷を作ろう
かき氷機に苦戦する澪を手伝い、削った氷はローズに頼んで器に盛って貰ったり、互いに協力しよう
俺が食べたいのは宇治金時かき氷なんだが、小豆の甘煮、練乳の他にも抹茶シロップや白玉の用意はあるだろうか?
用意してもらったお茶に感謝し受け取れば、冷えた体も温まるようだ。
二人のかき氷も美味そうだと話しながら、気付けば、最後の一口まであっという間に食べて終わってしまう
最後に美味しいかき氷が食べられたのは二人のお蔭だと、此処まで付き合ってくれたローズと澪に改めて感謝したい
●いちご+もも+しらたま=しあわせ
「ついにかき氷……!」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の胸に万感の思いがこみ上げる。この迷宮に入ってからの疲労もいっぺんに吹き飛んでしまうようだった。
「疲れた体には甘い物が一番」
「ええ、一仕事終えた後のかき氷は格別でしょうね」
ローズ・ベルシュタイン(夕焼けの薔薇騎士・f04715)は、薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)の言に、こくりと一つ、首肯して返す。
氷室の中へと足を踏み入れた三人は、真夏の褒美を賜る――
夏に食う氷菓の定番といえば、かき氷だ。むろん、アイスクリームやフラッペも捨てがたいが。
しかし、見目にも涼しく感じられるのは、氷の山だ。
「私も沢山、食べておきたいですわ」
「僕、どうせなら、まだ食べたことの無い味がいいなぁ」
「俺は抹茶のを食いたいんだよ、あるかな?」
「抹茶! それも美味しそう!」
「私はイチゴにしましょうか」
ほくほくとしてローズ。白玉があればいいなと心をはやらせる悟郎は、「だろ? 抹茶抹茶」と、澪とともにかき氷器の前に立つ。
すでに氷がセットされている状態だ。
「えっと、これってどうやって使うの?」
「これを回せば良いのではないでしょうか?」
ハンドルを持って、回してみれば、がりっと音を立て、氷に刃が食いこんでハンドルは動かなくなる。
「うっ……意外と硬い……」
予想外の抵抗に、澪は細腕に力を込めてゆっくりハンドルを回していく。
「代わるよ、澪」
「あっ、薬師神さんありがとう!」
「うん、シロップとかいろいろ用意してて」
「任して」
澪は、悟郎にハンドルを渡せば、がりがりとスムーズに回していく。
ふわふわと落ちてくる雪のような氷は、ローズによってなだらかな山になっていく。
「つめたいですわ……!」
くすりと笑う。手にかかった氷の欠片に頬を綻ばせ、三人分の山を築いていく。
白い雪山が器の中に現れる。
「ローズさんは、いちごだっけ?」
桃のコンポートの瓶と、見つけたピーチシロップの小瓶を持った澪は、ふいーっと息をついた悟郎を労うローズを見る。
「そうですわね、イチゴのシロップにしましょうか」
好きな色の赤色のかき氷になると、心を弾ませる。たらりと垂らす。薄く薄く削られた氷は、じわっと解けて頂点が崩れていく――しかし、それでも濃い赤との対比が美しくて、頬はゆるんだままだ。
澪は、山のてっぺんに桃のコンポートをのせ、あえて混ぜてしまってから、ピーチシロップをかける。白桃色のとろりとした蜜が、彼特製の山を香り高いものに変える――そして、(いろいろと)苦労して集めた蜜ぷにの蜜も、少しだけかけた。
「ちょっと甘すぎるかな……でも、少し甘めくらいがいいよね」
「おっ! 白玉!」
えり好んでも十分なほどのトッピング――用意しすぎな気もしたが、それでも悟郎の望んだ白玉も、抹茶のシロップも、甘くなりすぎないようにと抹茶(粉末)まである。
(「これ、絶対美味いのできる……!」)
悟郎は抹茶シロップで山を盛夏色に変えて、小豆の甘煮で影を、練乳の入道雲――悟郎特製の宇治金時かき氷が完成する。
そうして三者三様のかき氷が完成して、互いの顔を見て、
「いただきます!」
そうして異口同音。
「んー!」
「ぅんー!」
「んん!」
それぞれの口に広がるのは、望んだ冷たさと、甘さと至福の一時。
「甘酸っぱいですわ……!」
「甘くて美味しい! ピーチもいいし、蜜ぷにのもなかなか……!」
「澪のも美味しそうですわね」
「えへへ、コンポート入りのピーチシロップがけだよ、イチゴも美味しいよね」
「冷たくて気持ち良くて、とても美味しいですわ」
「僕も好きー」
いちごのかき氷は去年食べたことがある。なるべくいろいろな味を覚えたいがために、今年はいちごではなく桃をチョイスした。
「こういう暑い日に食べるかき氷は格別ですわね」
「ああ、急だったからな、暑くなったの……」
悟郎は白玉をもっちもっち食べながら、頷く。
「澪は桃で、ローズはいちごか。うん、二人のも美味そうだな」
悟郎はしゃくしゃくと小豆と深緑の氷を掻き混ぜながら、笑む。
「悟郎さん、蜜ぷにの蜜はかけた?」
ハニーディッパーが入ったままの瓶を一瞥、悟郎は、うーんと一度唸って、
「あとで、かな」
今際の際の蜜ぷにの言葉が引っ掛かっているわけではないが。
「まだまだ氷あるし、あとで試してみるな」
「甘いよ、とーっても!」
「それでは、私も後ほど試してみましょうか」
スプーンは、口と器の行き来をやめない。気心の知れた仲間とのおしゃべりは、止めどなくて。
最後の一口まであっという間に食べて終わってしまっていた。
「おかわりの前に、ちょっと体を温めましょうか」
言ったローズは水筒を取り出して、三人分のコップも差し出す。準備は万端だ。かき氷を食べるということは、腹から冷えてしまうということだ。
こぽこぽと注がれる茶の色は、優しい緑だった。
「……緑茶?」
「はい、どうかしましたか?」
「ううん、紅茶だと嬉しかったなぁって思っただけ……あっ! ううん、ワガママじゃないよ!」
「ふふ、分かってますわ」
差し出された茶は、もわんと湯気を立てる。
「ありがとう、ローズさん」
「ローズ、ありがとう」
悟郎も茶を受け取って、金瞳を細めた。
ふーっと息をふき、熱そうな茶に口をつける――が、火傷するほどに熱いものではなかった。氷室の中というのが、湯気を大きくさせるのだろう。
戦闘で昂ぶった熱はかき氷が治めてくれた。今度は、安堵の熱が腹から広がっていく。
はあぁぁ……――
まったりと、のんびりと茶を飲めば、冷えすぎた体が温まってくる。
「なあ……ローズ、澪?」
金瞳を伏せ、手元の茶が揺らめくのを見る悟郎は、
「今回な、こんな、美味しいかき氷を食べることができて、……二人のおかげだ。ここまで付き合ってくれてありがとう」
突然述べられた謝辞に、きょとんと目を丸めた澪は、ぱちぱちと瞬いた。
「こちらこそお誘いありがと!」
「ええ、誘っていただけて嬉しかったですわ――ありがとう、悟郎」
三人の互いの視線がぶつかる。
ふわふわっと空気が温まり、自然と笑みが零れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
香神乃・饗
誉人誘いカキ氷堪能
ご案内お疲れさまっす!俺にも欲しいっす!
カキ氷作り手馴れてるっす
毎年作ってるんっすか
有難うっす!(受取り
…できたっすエナガチャン盛り!
(桃コンポートを半分にきり翼
小豆やチョコ等でエナガチャン顔
誉人もするっすか
一緒に写真も撮る
お勧めの味あるっすか
頂きますっす!
あまっうまっ!
やっぱ夏はカキ氷っす
しゃきっとするっす!
っ、キーンときたっす!こめかみぺしぺしお茶飲む
誉人もキーンしてないっすか
お揃いでもそうでなくとも笑顔
この桃どうしたんっすか
よろず屋報酬でもなかなか貰えない逸品っす
すっごいご縁っす!
桃は仙人の果実っす
長生きできるっす
ご馳走さまっす
食べ過ぎてお腹下さないように気をつけるっす
●
氷室の中は、先刻の氷結の監獄よりも、優しい冷たさだった。
「たーかと! 俺にも作って欲しいっす!」
香神乃・饗(東風・f00169)は、友の背をトンと叩いて、黒瞳を細め八重歯をのぞかせる。饗より幾分も背の低い男は手を止めて、律儀にこちらに向き直って、「おう、饗。お疲れさん」と挨拶する。
「誉人もご案内、おつかれさまっす!」
かき氷器のハンドルを回す鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)だったが、その手元へ視線を戻してから、饗をちらりと見上げて、
「俺に作らせんのォ?」
「俺は蜜集めるの頑張ったっす」
「うん、氷削るぐらい俺がやってやる!」
言った誉人は、言葉とは裏腹に楽しそうにハンドルをごりごりと回す。
小気味良く氷が削られて、落ちてくる薄い氷は山になって皿にたまっていく。躊躇いなくぐるぐるぐる、皿を持って山になるように皿も適度に回して、ハンドルの回転数をコントロールしながら、雪山を大きく高くしていく様子に、ほえーっと饗は感心した。
「手馴れてるっすね、誉人。毎年作ってるんっすか?」
「んーん、毎年もしねえよォ、手馴れてっかァ?」
「うん、めっちゃんこ上手っす」
「ぐるぐるしてるだけなのにィ?」
途切れない軽口の応酬に、饗はにこにこと頰を緩める。
「ほい、饗、削れたよォ」
「有難うっす!」
ほわほわの氷は、刃の出し方が絶妙な証拠だ。そうして氷が上質なのだろう。
友が盛ってくれた氷の山に、饗はせっせと細工を施していく。
真剣に桃のコンポートを選び半分に切って、形のいい小豆を選別して、チョコソースでちょんちょんと色づかせる。
「饗? なにしてンのォ?」
「ふっふっふー! できたっす、見るっす! エナガチャン盛り!」
「ふあっ!」
誉人から変な声が出た。
饗の飾り付けに彼は、三白眼をきらっきらに輝かせている。
桃のコンポートは翼になるように突き刺さり、小豆はつぶらな瞳を、チョコソースで小さな嘴を作ったのだ。
「誉人のにもするっすか?」
「え! かァいいから、食えない」
「くふ、ふはっ、そっすか、食えないならやめるっす」
「ンだよ! 知っててやってンだろォ!」
紺色の双眸はぎらりと尖ったが、決して不機嫌でないことは、分かった――知っている、照れ隠しだ。
「エナガチャン盛りと写真撮るっす。誉人は皿持つっす」
ぐいっと押し付けて、饗はいつものスマホを取り出す。慣れた操作でカメラを起動して構えれば、誉人は皿をすっと写真の中心に据えるように、饗へと肩を寄せて。
(「……ほんと、写真に慣れたんっすね」)
胸中で呟く。
撮れた写真を確認しながら、ほわりと嬉しくなる。
饗がエナガチャン盛りを作っている間に、誉人は自分の分の雪山を築いていたのは見えていた。彼はそれに蜜をたらし、桃をのせる。
「さあ、食べるっす! 頂きますっす!」
「いただきます」
饗と誉人は手を合わせて、いざそれぞれのかき氷へ。
「あまっ!」
「つめてえっ!」
「うまっ!」
「うンま! 蜜イイぜ!」
「やっぱ夏はカキ氷っす! しゃきっとするっす!」
しかし、唐突に氷は饗へ牙を剥く。
「っ、キーンときたっす!」
こめかみに突き刺すような極寒の痛み――ぺしぺしとこめかみを叩いて、持っていた茶を飲む。
隣を見れば、きーんとなっていない誉人が、「うンめ…!」と饗を放って舌鼓を打っている。
彼の食べっぷりはいつ見ても微笑ましくて、思わず笑ってしまった。
「桃、やっぱイイ!」
「そうっす、誉人。この桃、どうしたんっすか?」
猟兵の傍ら営んでいるよろず屋の報酬でも、なかなか手に入れられない逸品だ。
それを、友がたっぷり仕入れてきたのだ。
「ん? もらいものォ――誰からとか、ヤボなこと聞くなよ、饗」
今まさに聞こうとしたことを先んじて封じられたが、悔しくはない。
「誉人、知ってるっすか? 桃は仙人の果実っす。桃食べると長生きできるっす」
笑みながら、コンポートになった桃を食う誉人を見る。
(「いい、縁を繋いだんっすね――いっぱい食べるといいっす」)
そうして長く生きろ。
「――誉人、ごちそうさまっす。いいもの頂いたっす」
「おう。もういいンか? マンゴーも美味いよォ?」
言った誉人の肩をぽんと叩いて、
「食べ過ぎてお腹下さないように気をつけるっす」
マンゴーソースをかけたものが美味いことを知っていたというとこは、すでにそれを食ったということだろう。
「いっくら暑いからって、体を冷やしすぎるのもよくないっす」
茶を渡して言えば、彼はきょとんして――破顔した。
「さんきゅ、饗。ン、気をつけとくねェ」
茶を受け取った笑顔の誉人につられて、饗も頰に笑みを刻み、ちらりと八重歯が覗いた。
大成功
🔵🔵🔵
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「これは…私にはきつい…」
暑い夏の熱気に包まれて汗だくになる
服を脱げばよいのだが、肌を晒すのはためらわれるため近くにあった氷塊数個を脇の下へ
「早く涼しくならないと倒れてしまうかな」
早く熱気を振り払おうとかき氷を楽しむ
「出来る限り薄く削ってほしいのだけど…流石にこれ以上薄くは削れないよね」
桃のコンポートを置きその上に氷、花蜜、氷、練乳と層を作りながら盛り付ける
最後は緑の粉をかけて彩りも鮮やかに
「ところで、この緑色の粉末ってなんだっけ?」
氷を食べつつ涼を楽しむが甘い物を取りすぎて口の中をさっぱりしたい
いろいろ探したが…やはり【携帯食料】を口に頬りこむ
「やはりこれは落ち着くね」
ジャスパー・ジャンブルジョルト
冷たい災魔との熱き戦いの後でかき氷を食うたぁ、乙な趣向だな。(とか言ってるが、JJは熱き戦いとやらに参加していない)
いろんなトッピングがあるようだが、ここは自前でいくぜ。果肉を贅沢に使ったメロンのシロップをお料理隊に作らせよう。
うん、うまーい! ほどよい甘さと果肉の食感が堪らん! 誉人たちにもお裾分けしてやっか。
でも、このシロップ、見た目を派手にするために食紅を使ってるから、舌が緑色になっちまうんだよな。
ほらほら、誉人。見てみ。んべっ!(と、緑の舌を出す)
んべぇーっ!(面白がって、周囲の人々にも舌を見せまくる)
(そして、おバカな猫のように舌をしまい忘れる)
煮るな焼くなとご自由に扱ってください。
●ミルフィーユと「んべっ」
極寒と氷雪を操る災魔との熱き戦いを繰り広げ、見事勝利を収めた猟兵たちに用意された至福のかき氷タイム。
「ふむふむ。乙な趣向だな」
訳知り顔で頷いて、にまにま笑むジャスパー・ジャンブルジョルト(JJ・f08532)は、しかし、その戦いには参加していない――のは、言わずもがな。
分厚い毛皮をもっていてもここは涼しい。だが、そうでない猟兵がひとり。
「これは……私にはきつかった……」
災魔が骸の海に沈んですぐに、あの極寒は消えていったのだ。急速に訪れた夏の気配は、温度差の攻撃力を上げて、仁科・恭介(観察する人・f14065)に容赦なく襲いかかった。
服を脱ぐ――脱がずとも、もう少し開襟すれば改善されるだろうが、それは躊躇われた。いくら汗だくになろうとも、肌を晒す理由にはならない。
氷塊を脇の下へ挟み込む。できれば頸動脈にも当ててしまいたいが、それよりも腹からも冷やしてしまおう。
「早く涼しくならないと倒れてしまうかな」
この熱気を振り払うために、恭介はかき氷器の前に立つ。
早く氷を食って楽しまねば!
「出来る限り薄く削れてほしいのだけど……」
一度ハンドルを回して、落ちてきた氷の具合を確認する。
「流石にこれ以上薄くは削れないよね」
しかし、まあ、上等だ。
器の一番底になるように桃のコンポートを入れ、そこへ氷を削り入れる。
そうして、集めた花蜜をたらりと垂らし、もう一度氷の層を作った。
最後に練乳をたっぷりめに回しかけ、盛りつけていく。
かき氷のパフェの完成だ。しかし、色がない。ふむ、と恭介は目にとまった小瓶を手に取る。
中には緑の粒子の細かい粉末――
「ところで、この緑色の粉末ってなんだっけ?」
「抹茶だろう、だよな!?」
言ったジャスパーは黒髪のグリモア猟兵へ確認すれば、彼は頷いていた。
「抹茶、」
「ちと苦い、大人の味ってヤツだ」
ならば、と練乳の上に振りかけて、恭介特製のかき氷が完成した。
言ったジャスパーは、召喚して、なにやら調理させているエプロンとコック帽を身に着けたネズミたちを見守っている。
(「なるほど、うん……」)
口の中に広がるのは、甘い層と苦みのアクセント――は、ほとんど感じられなった。
花蜜の甘さはすっきりして、練乳のクリーミーな甘みが舌に絡み、それを氷が喉奥へ流し込んでいく。
さくさくっと氷と蜜とコンポートを掻き混ぜて、もう一口。
冷たく冷やされた桃の果肉の甘さと、砂糖漬けにされているからさらに甘く色づいて、疲れた体に染み入ってくる。
そのまま一口、もう一口、としゃくしゃくしゃく――
ようよう腹の底から冷えてきたために、ふうっと一息ついた。
氷を食う。涼を楽しむ。これも夏の醍醐味だが、暑さはほどほどであればありがたい。
「よーし! でかしたぞ、お料理隊! 解散!」
恭介がミルフィーユかき氷を食べているときから、ずいぶんにぎやかだと思っていたジャスパーが、ひときわ大きく笑ったのは、ひと皿分を食い終えたときだった。
甘くて冷たくて申し分なかったが、それでも口の中が甘ったるくてかなわない。
これをサッパリさせたくて、恭介はポケットの中をごそごそすれば――
「やはりこれが落ち着くね」
出てきたのはいつもの携帯食料。それを慣れた手つきで一口食う。咀嚼。嚥下。口の中の甘さも一緒に腹へと落ちていった。
その間もジャスパーのにぎやかな声はやまない。
「いろんなトッピング? 結構! だが俺は自前のメロンシロップを作ってやった!」
しかも、メロンの果肉を贅沢に使いまくった、売り物にすればべらぼうな価格がつきそうな一品だ。
「誉人! 氷の準備は?」
「はい、どォぞ。削れてるよォ」
ジャスパーのために小さな氷山を作っていた誉人は、その器を彼に渡す。
そこにゴロゴロ果肉のシロップをかける。いやに鮮やかな緑が白とのコントラストに映える。
そして彼は渾身の一品を氷ごと口の中へ入れれば、ぶわっと毛が逆立ちそうだった。
「うん、うまーい! ほどよい甘さと果肉の食感が堪らん!」
独り占めしてもいいが、この美味さはシェアした方がより幸せになれることは知っている。
「誉人にも分けてやろうな、氷の準備!」
「やった! JJサン、実はもうある!」
「食う気だったなあ!?」
からりと笑って、誉人の器の氷にもかけてやった。
「でも、このシロップ、舌が緑色になっちまうんだよな」
見た目を派手にするために使った食紅の影響だが――ふと、その心によぎるのは、抑えがたい衝動。
ふーん、なんて生返事をした誉人は、メロンの果肉に夢中だ。
「ほらほら、誉人。見てみ。んべっ!」
「うぐっ!? ちょ、……JJサンッ……!」
見ろ、ジャスパー。
案の定、誉人には会心の一撃だ。ジャスパーの愛らしさに、危うく倒れそうになっているではないか。
(「マジで、あのヒト、反則……!」)
まさか緑になった舌を見せてくるとは。
そして、誉人の反応に味をしめたジャスパーは、「んべぇーっ!」と走り出した。
氷室内で、かき氷を楽しむ猟兵たちに己の舌を見せつけるテロに出たのだ。
「――ああ、緑ですね」
「ふへへ」
いつもの携帯食料を食い終えた恭介が律儀に応える――気を良くしたジャスパーは、いよいよスキップを始めた。
「JJサァン、もォ……! マジか……!」
あのフォルム! あの無邪気! そして、猫のように舌をしまい忘れるという、迂闊さ!
緑に色づいてしまった舌をちろりと出したまま、誰よりも誉人を悶えさせる張本人――しかし、それでも年長の彼に、ストレートに指摘するのは憚られた。
「JJサン!」
呼ばれたジャスパーは振り返り、誉人へ近寄る。まだ舌は出たままだ。
「んべっ!」
「おおっ、誉人も緑じゃないか!」
(「あ、よかった、舌戻った」)
「なんだあ!? 気に入ったか!」
「ん、美味しかったよォ」
「そうかそうか! ならもっと食っていいぞ! にゃはは!」
危うく萌え殺されるところだった誉人をどこ吹く風と、ふらふらと歩きまわるから、ふわふわの尾は揺れる。
自慢の毛並みは冷える。しかし、氷室の中の穏やかな雰囲気に、ジャスパーはヒゲを震わせた。
「みーどーりーのしたー!」
適当な歌を歌う彼は、上機嫌に笑っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と
かきごおり!ふわっふわの!
せっせと削って先ずは戦利品の蜜をたっぷり
あまぁーい!
コレに桃のコンポート乗せたら最強じゃナイ?天才!
ソッチのも食べるー(あー)
敵はくっさいしカップルはバ……面倒だし
疲れたわぁ、と溜息ついたトコで人参との声拾いぴくりと眉あげる
大体何処が人参だってンのよ、恋する女子は目ぇ腐るの?盲目ってそう言う事なの??
大根にはそうじゃナイ、とツッコミの手
ったく実に怖ろしきはバカップルかな……
えぇぇ、記憶にないし恋ってめんどくさそーだもの
甘いのは食べ物だけでイイわあ
言いつつしっかりおかわり繰り返し満足満足、ゴチソウサマ
今度はアイスが食べたいわねぇ、なーんて
火狸・さつま
コノf03130と
しもやけ無いか
臭いが染みついて無いか
念入りにコノちゃんをふんふんくんくんチェック!!
ん、大丈夫そ、だね(ほっ)
わぁい!かき氷ー!!
まずは…俺、マンゴ…!!
果物色々、たくさん、のせたい
しゃくしゃく舌鼓
ん、こっちも、美味し、よ!
食べ、る?
ひと掬い
あーん、と差し出す
人参……(ぽつり)
やぱ、すっごく、気にしてる、ね(ふふ
あ。そか
コノちゃん、色白だから…大根だよ、ね!
え?じゃ…あまぁくて優しい…かきごおり?(きょとん)
おかわりの小豆に抹茶しゃくしゃくしつつ
甘い食べ物、幸せ、だね!
またひと掬い、差し出しつつ
コノちゃん、恋の、記憶、は?
色々沢山おかわりして満足…!
ご馳走様!
アイスも、好き!
●しあわせのシェア
「コノちゃん、しもやけ無いか? 臭いが染みついて無いか?」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)に鼻をくっつけ、においを嗅ぎまくる火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)に、
「はいはい、ありがとう、大丈夫よ」
苦笑を洩らすも、さつまのやりたいようにやらせるコノハもまた、さつまの様子をちらりと見る。こちらも大きく変わりはなさそうだ。ふわふわもこもこの尾も健在。
「ん、大丈夫そ、だね」
念入りにコノハの状態をふんふんくんくんしまくったさつまは、ようやく安堵の息をついた。
大丈夫。いつものコノハだ。
互いの無事を確認したあとは、お待ちかねのかき氷タイム!
凍結の災魔が討たれた瞬間から、先のフロアの気温はうなぎ昇りだったが、《真夏の奇跡》と呼ばれるこの氷室内は、心地よい涼しさだった。
眼前には、いくら食べてもなくなりそうにない氷の山、そして、余るほどに用意されたトッピングの数々。
「わぁい! かき氷ー!!」
「かきごおり! ふわっふわの! さあ、削るわよ!」
白い頬に刻む笑みは、さつまをも笑顔にさせる。
綿雪のような氷が器に山を作る。
「コノちゃん、すごい!」
「先に食べてていいわよ」
「いい! コノちゃん、待って、る」
面食らって、ならばと、しゃんしゃんと小気味よく削れていく氷――堆く盛られていく山は、コノハの頑張りですぐに出来上がる。
「はー疲れた――さてっと! まずは戦利品の蜜をたっぷり、ね」
「……俺、マンゴ……!!」
ハニーディッパーを持ち上げれば、あの苦労が蘇れども、削りたての氷の上に回しかける。じわんと氷を解かす蜜は、甘く花の香りを立たせた。
さつまの器に、とろとろのマンゴーソースが彩って、小さなマンゴーの果肉の欠片がころんと転がる。
もう待ち切れなかったコノハは、スプーンで掬ってぱくり。
「あまぁーい!」
甘く濃いが、後味はすっきりしている。それが氷と相まって極上の氷菓へと変化して。
「え、まって、コレに桃のコンポート乗せたら最強じゃナイ? 天才!」
桃の果肉を乗せて、しゃくしゃくと食べる。思った通り、美味い!
「俺も、果物色々、たくさん、のせたい」
マンゴーが乗っているが、そこに贅沢にも桃も乗せて、しゃくしゃくと氷と混ぜて舌鼓をうつ。
「たぬちゃん、美味しい?」
「ん、こっちも、美味し、よ! 食べ、る?」
ひと掬いすれば、コノハはこくんと頷いて、「ソッチのも食べるー」と、口をあけた。コノハの口元へ慎重に運ぶ。
「あーん」
口の中に放り込まれたのはマンゴーソースのかかった絶品の氷。
「美味しいわね!」
瞳を輝かせて、コノハが笑った。さつまもつられて微笑む。
一気にひと皿分をしゃくしゃくと食べてしまって、ふた皿目を用意した。
コノハはイチゴに練乳をかけて。さつまは小豆と抹茶。
今度はゆっくりと味わいながら、シェアして、おしゃべりできるほどに匙を進める。
「それにしても、ここまで大変だったわね……敵はくっさいしカップルはバ……面倒だし、疲れたわぁ」
はふ……とため息をついた。
レフとアリーサの厄介な盲目具合を思い出して、さつまは、
「人参……」
口の中でこっそり呟いたが、コノハの眉がぴくりと動き、眉間にしわを刻んだ。
「大体何処が人参だってンのよ、恋する女子は目ぇ腐るの? 盲目ってそう言う事なの??」
「やぱ、すっごく、気にしてる、ね」
気にしてない、気にしているわけない。コノハの言とは裏腹に眉はしっかりと寄っているし、口角はやや下がっている。
「あ。そか」
抹茶の氷をこくんと飲み込んで、
「コノちゃん、色白だから……大根だよ、ね!」
「そうじゃナイ」
「え? じゃ……あまぁくて優しい……かきごおり?」
きょとんと小首を傾げたさつまに、コノハは小さく嘆息した。
「かきごおりでもないけど……」
「そ? でも、甘い食べ物、幸せ、……コノちゃん、幸せ、ね!」
ふふっとやわらかく笑ったさつまは、小豆と氷を掬って、コノハの口元へ持っていく。
その一口を素直に受け取りつつ、もう一度コノハはため息をつく。
「ったく実に怖ろしきはバカップルかな……」
「コノちゃん、恋の、記憶、は?」
「えぇぇ、記憶にないし恋ってめんどくさそーだもの」
過去の記憶には、彼らのような煌びやかな恋愛の引き出しは見当たらない。
ともあれ、アリーサのように周りが見えなくなるほどの恋は、ハタ迷惑でしかない。
なにより、人を人参呼ばわりしたのだ。
さつまは、首を傾げている。また眉間にしわが寄っていた。
そこを指でこすって、目を閉じる――さつまはそんなコノハの様子を見て、「コノちゃん?」と気遣い、名を呼ぶ。
「甘いのは食べ物だけでイイわあ――たぬちゃん、次はなににする?」
「次は、ん、と……あ、桃!」
二人でたっぷりと、蜜ぷにの蜜も、桃のコンポートも、絶品の氷も楽しんで、心ゆくまでおかわりをして、すっかり心も腹も満たされる。
「ゴチソウサマ」
「ご馳走様!」
カランとスプーンと皿が涼やかな音を立てる。
氷室の中は、ゆったりと穏やかな時間が流れている。
先刻まで戦闘し、戦意を漲らせていた同じ猟兵とは思えないほどに、みなのんびりと思い思いに過ごしていた。
その様子にさつまは、ふわっとやわらかく微笑んだ。
「今度はアイスが食べたいわねぇ、なーんて」
そのコノハの言葉に、彼の目を覗き込む。
「っ! アイスも、好き!」
「じゃあ、次はアイス食べにいきましょ」
ふっかふかの尾が、嬉しそうにびびっと震えて、ゆらゆらとゆったり揺れた。
●
そして、氷室は閉じられた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2019年08月04日
宿敵
『スノゥ・ブリザード』
を撃破!
|