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無音

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●ぶ‐いん【無音】
 夜闇に沈む大きな屋敷。門は閉ざされ見張りも立っていない。燈火の一つも灯ることなく、溶け消えそうな程の静寂を見せる。

 その門が人の出入りを絶えさせて、二週間ほどになろうか。昼夜を問わず打ち捨てられたように静かだが、時おり狂わしげな叫びが聞こえては、すぐに収まりまた静かになる。それ以外に、塀の内からの便りは、ない。

 もしも門の中を覗く者があれば、その静寂はすぐさま打ち破られただろう。そこには幾体もの亡骸が、門扉に寄り掛かるようにして折り重なっていた。

●む‐おん【無音】
「死因は毒物、だとよ」
 グリモア猟兵の我妻・惇が嘆息交じりに吐き出した。
「食中毒とか死ぬかもしれねェって毒じゃねェ、正真正銘、必殺の毒だ」
 最初に死んだのは屋敷の主。苦悶の表情の遺体の横には、流麗な文字の署名も宛名もない手紙。
「屋敷より出るを禁ず、とさ。そンでもビビって屋敷から逃げようとした奴が何人も殺されて、言われた通りに中で生きてる奴らは震えながら食い繋いでンだと」
 生き残る者は、決して交換条件を求める人質として生かされているわけではない。ただ、一人一人をゆっくり丁寧に殺害し、恐怖を煽り、疑心を生み、そうして苦しむ様を楽しもうというのが、下手人のオブリビオン、咎忍『夾竹桃』である。

「まァそンなわけで、屋敷の人間は誰が犯人だかわかンねェし、誰を見ても犯人だと思うような状態だ。それぞれが警戒して出来るだけお互いツラ合わせねェようにしてるらしいんだが…そんな状態で俺ら猟兵とカチ合ったりしたらまァ、襲ッてくンだろォなァ」
 そうして騒ぎになれば、今回の享楽に見切りをつけて、姿を晦ます恐れがある。下手をすれば、最後に殺せるだけ殺して逃げるなどということもあり得るかもしれない。そういった最悪を避けるためには、目を盗むなり姿を消すなり、工夫を凝らして潜伏場所を探すことが望ましいだろう。
「つまるところだな、気ィつけンのは…門は破ンな、静かに手早く倒せ、帰りも見つかンな、ってェところか」
 犯人を知らない住人からすれば、オブリビオンを倒したところで疑心が拭えていなければ、ただの侵入者には違いない。事後の処理は公儀に任せて、敵を探し出して叩くことに心を砕いてほしい。

「まァ、もう何人も死ンじまってるし、後からも何もしてやれねェのは気分良くねェかも知れねェけどな。なンとか頼まァ」


相良飛蔓
 お世話になっております。相良飛蔓と申します。ご覧いただきありがとうございます。

 今回はスニーキングミッション想定のシナリオです。お付き合いいただければ幸いです。

 第1章・侵入です。物理で殴って門を破壊する手段はグリモア猟兵的にはオススメしません。最終的に逃げられる前に倒せれば、シナリオ的には問題はないですが…もしも敢行する際には工夫強めが良いかもです。

 第2章・探索です。見つかった場合、相手は人間になります。そして相手は問答無用で容赦なく襲ってきます。必然的に騒ぎになるので、こちらもオブリビオンに察知される恐れのある仕様です。

 辿り着きましたら第3章・ボス戦です。あくまで隠密任務なのでド派手にフラストレーション発散と行くのは難しいかもしれませんが、我慢して倒してやっていただけると。

 以上のような章立てとなっておりますが、最終的にひっつかまえてぶっとばしてしまえばOKですので、スーパー自由にプレイング掛けて相良を泣かしてやっていただいて大丈夫です。そういう感じで、ご検討をよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『開け!開かずの門』

POW   :    開けばいいのさ開けば!あえて真正面から門を破る。

SPD   :    急がば回れってね。迂回路を探したり忍び込んだり。

WIZ   :    頭を使ったらいいのさ。陽動?偽装?搦め手ですり抜る。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クラウン・アンダーウッド
アドリブ大歓迎

屋敷で何が起きているのだろうねぇ、非常に興味が沸くよ。

UCを使用して、屋敷周辺に展開させる。【第六感】、【情報収集】を駆使して迂回路を捜索。

発見後、迂回路から侵入する。


ヴィリヤ・カヤラ
屋敷から出られないなら最終的には餓死するか、
脱出に賭けて毒殺されるかって感じになるのかな?
どうやって毒殺してるのかも気になるけど。
分かるのは侵入してみてかな。

って、事でまずは侵入だね。
人が屋敷の中にいるなら良いんだけど、
一応侵入前に塀の外から出来る限り中の様子を伺ってみるね。
侵入する所は人の声が聞こえた所は避けたいし。

【澄明】で姿を消して【跳飛】で塀に上がって確認かな、
確認なしで降りて音がしても恐いしね。
周囲も確認して大丈夫そうなら入ってみるね。

アレンジ・連携歓迎。


形代・九十九
SPD

【念動力】で操る糸を屋敷の外壁に絡みつけ、【ロープワーク】の技術を駆使しつつ、建物の形状という【地形の利用】でよじ登り、屋敷内部へと侵入、天井上に張り付きながら人知れず移動する。

「……こそこそか。難しいが、やってみよう。人を斬れと言われるよりかは、よほど気が楽だ」
「最悪の場合も想定はするが――……なるべく死人は出さないで済ませたいものだな」

アドリブ・他猟兵様との絡みなど、諸々歓迎致します。


政木・朱鞠
SPDで行動
呑気に思われちゃうかもしれないけど…変に揉め事起こしちゃうと本来のターゲットに悪事を遂行するチャンスを与えちゃうから、侵入経路の確保のために外周を探索して窓や出入り口から遠い塀を見つけておかないとね…。
条件に合う場所から【忍び足】や【クライミング】を使って慎重に屋根材を外して屋根裏から建物内に侵入するよ。
現時点ではターゲットの咎忍『夾竹桃』を含めた中に居る人達に見つかるわけにはいかないから、対人センサーの代わりにユーベルコード『柳風歩』を使って部屋の中にいる人たちの把握しながら探索かな…。

ただ…侵入した以上は私も『夾竹桃』のお楽しみの対象になる可能性が有ることを心しておかないとね。




「呑気に思われちゃうかもしれないけど…」
 少し申し訳なさそうな政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)のその考えを、咎める者は少なくともこの場にはいなかった。揉め事を起こすことで下手人に察知され、より凶事が拡大する恐れは間違いなくある。それを折り込んだ上で侵入経路を探すのであれば、中に取り残された人々の命を助けることを前提にするなら慎重を期するが得策であろう。
「……こそこそか。難しいが、やってみよう。人を斬れと言われるよりかは、よほど気が楽だ」
 形代・九十九(抜けば魂散る氷の刃・f18421)が頷いて見せた。鬼切りの勇士を象った人形を基とするヤドリガミの彼には、人を守るを是とする精神性が宿っているのかもしれない。あるいはただの人の好さゆえか。
「屋敷から出られないなら最終的には餓死するか、脱出に賭けて毒殺されるかって感じになるのかな?」
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は疑問を口にする。脱出を企てずとも、生殺与奪を握られている人々がいつ気まぐれに殺されてもおかしくはない。ましてそのオブリビオンは、殺すことに愉悦を覚えるまでに歪んでしまった存在である。
 それが有り得てはならぬことは、倫理や人道やに照らし合わせれば多くの場合子どもだってそう答えるだろう。しかし猟兵の中には、それが有り得てしまうことを見て、知っているものも少なくはない。そして、多くの場合の人々に当てはまらない者もある。
「屋敷で何が起きているのだろうねぇ、非常に興味が沸くよ」
クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)はその名に恥じぬ笑顔のままに、声を抑えながらもなお抑えきれない高揚を漏れ出させて、歌うように話す。
「どうやって毒殺してるのかも気になるけど…分かるのは侵入してみてかな」
 物騒な知的好奇心にヴィリヤも応じ、同時にその思索の方向性を侵入へと改めて誘導する。
「最悪の場合も想定はするが――」
 それぞれの胸に、最悪の可能性はおそらく想起されている。核心を避けつつも、それと思わせる言葉をそれぞれがほんの少しずつ口にして――
「……なるべく死人は出さないで済ませたいものだな」
 それぞれに頷き、侵入路を確保すべく調査を開始する。


 一通り塀の周囲を歩き回り、窓や出入り口から遠く、邸内から察知される危険が小さい場所を探す。条件に合う場所を選出すると、まずはクラウン。自身の本体である煤けた懐中時計と同じものをいくつも複製すると、それらを操り塀の内側へ。人目に付かぬよう低くゆっくりと展開し、内部の様子を細かく探っていく。その時計たちから伝わる感覚からしても、どうやら周辺の人の気配は問題ないようだ。
 ひとまずの所、周辺の安全が確保されると、次はヴィリヤの出番。
「光と闇にこの身を溶かせ」
 小さく唱えて姿を虚空へと隠すと、地を踏み切る音だけを残して跳躍する。それからしばらくの待機時間。非常に慎重な偵察に伴う時間を待つのは焦れるものである。それでも辛抱強く待つと、塀の内を叩く小さな音。偵察者が地上に降り、状況を確認したようだ。


 特殊な用意もなしに塀の瓦を踏みつければ、それ相応の音はしよう。発見を避けるなら跳び乗るよりはよじ登る方が得策と言えるかもしれない。そしてそれには九十九の作戦が功を奏した。
 未完成のままに作り手を喪った彼の身体は、その一部に魂が宿っていない。それを念動力によって操作し、余人と変わらぬ動きを実現しているのだ。当然その制御能力は自らの手足のように精緻なものであり、たとえ相手が堅牢な塀であろうと、継ぎや隙間、僅かな起伏に至るまで、糸を絡めることは難しくない。そうして作った足場にて、朱鞠の侵入を助け、次はクラウンを促そうと――
「…どうした?」
 もう一人のヤドリガミのただならぬ視線にほんの少したじろぎながら、九十九が問う。
「いやいや、なんでもないよ?」
 何でもなくはない熱量を収めながら、掴みどころのない笑顔を浮かべてクラウンも登っていく。彼の目標とすることの中に、「自律思考型の人形の作成」というものがある。ヤドリガミとはいえ基は人形、しかも魂の宿らぬ人形のままの部位もある九十九が、巧みに動き、巧みに動かし、自ら糸を繰っている。研究の糸口の一つとしては、興味が沸くのも仕方ないのではないだろうか。懸命によじ登るように顔を伏せながら、彼は抑えきれない笑みを貼り付けていた。


 塀を越えると九十九はそのまま、屋敷の屋根へと進路を伸ばす。伝って渡る足元に、先に入ったヴィリヤの姿。さらなる糸を差し伸べて、助け上げんと道を付ける。
 そうしてヴィリヤが登ってくると、また他の猟兵を見て少し慌てる。これまたその名に恥じないクラウンの服装は、たとえ闇にあっても浮き上がる。目立つことを生業の一つにする彼ではあるが、ちょっと今は、不向きかもしれない。なので彼女は近付くと、その身に手を触れ、ユーベルコードを行使した。まあ、遮蔽物が一切ないところだけでも、透明になっておくのが無難であろう。

 古来より忍ぶを生業とする朱鞠にしてみれば、糸を渡るも難のないことである。軽業まがいにすいすいと進み、先頭切って瓦を踏んだ彼女は、皆が来る前に中の音を検め、すでに屋根材を外していた。ユーベルコード・柳風歩を行使し、目を閉じ集中し、屋内のあらゆる動きから発する風を読む。震える気配やすすり泣く声はいずれも遠く、よほど巧妙に気配を殺した者ででもなければ、近辺に潜んでいることはまずないだろう。
(侵入した以上は私も『夾竹桃』のお楽しみの対象になる可能性があることを心しておかないとね)
 そう、対するは悪辣なる忍。巧妙に気配を殺すことに長けた相手である。朱鞠は気を引き締め直し、仲間へも侵入を促した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『忍び、忍べば、忍ぶとき』

POW   :    曲者だ! であえであえ!

SPD   :    闇に紛れて駆け抜ける

WIZ   :    警備網の穴をつく

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 天井上から室内へと侵入した猟兵たちは、油断なく周囲を警戒しつつ床面へと静かに降りる。なんとか問題なく邸内へと侵入することはできたようだ。あるいは屋敷と命を簒奪した怪異によって、次の娯楽のために泳がされているだけかもしれないが。

 とにかくこれ以上の被害を防ぐには、家人を巻き込まないように見つからないように潜みながら、同じく潜む迷惑千万な先客を一刻も早く探し、引きずり出す必要がある。
形代・九十九
SPD

「此処までは順調だが……さて、ここからどうしたものか」
「……隠密行動は苦手だが、一応の小技ならばおれでも使える」
「今回はこの手で行かせてもらうとしよう」

【念動力】で操る糸を先行させるように伸ばし、建築物内部の構造に這わせる【地形の利用】でこっそりと偵察しつつ【学習力】にてマッピング及び、人の歩き回るルートを割り出し、【追跡】の心得を応用して人の気配を避けながら手早く探索を進める。
万が一誰かと鉢合わせしそうになれば、すばやく【カウンター】の【ロープワーク】で自身を天井まで釣り上げ、すばやく身を潜める。


アドリブ・他猟兵さまとの絡み 諸々歓迎いたします。


クラウン・アンダーウッド
絡み・台詞修正・アドリブ 大歓迎

UCを使用して、自分を中心としたの周辺に展開する。逐一【情報収集】【第六感】で状況を確認する。

誰も居ないようなら、そのまま捜索しながら移動し続ける。
最悪、接触しそうな家人が、一人なら【怪力】で口と気道を押さえて意識を奪い、二人以上なら隠れるなりしてやり過ごす。


政木・朱鞠
WIZで行動
建物内の人の状態を目視で調べたいので『忍法・繰り飯綱』を先行させるように放ち、台所や厠の手水鉢などの毒を混入させ易い水回りを重点的に追跡させて人の分布を把握しながら、状況に対してのリアクションの違いなどの違和感に対して注意をはらって【忍び足】で探索を進めていこうかな。
気持ちは急くけど…攻撃対象を見つけないことにはこちらが手詰まりになっちゃうから、確実にターゲットを【追跡】しないとね。

不安要素は『夾竹桃』が住人の飲食を封じて苦しめるための水汚染以外にも噴霧や注射などの毒を摂取させる手段を使って絶望感を蔓延させている可能性が有ることかな…。

もちろん、協力できる猟兵が居れば手を貸すよ。




「此処までは順調だが……さて、ここからどうしたものか」
 どちらが危険か、どちらが安全か、そもそも敵が近いのか遠いのか、見つかっているのかいないのかも分からない状態において、最適解が何であるかは非常に難しい。形代・九十九は首を傾げて唸る。
 他の猟兵の動きを鑑みると、その中で政木・朱鞠の行動計画が目に留まる。彼女の計画においては、調べたい設備や調査の方向性が明確であり、そのためには事前に位置関係が把握されていた方がより精度を確保できるものだ。それならと彼は頷いて、闇に紛れる黒糸を伸ばし始めた。
「……隠密行動は苦手だが、一応の小技ならばおれでも使える」
 ヤドリガミにより操作されるそれは、床に壁に次々に接し、四方八方へと展開される。蜘蛛の巣のように、あるいは生物の神経網のように、屋敷中へと広がっていき、全体をくまなく確認していく。立体的な地形を把握し、ここに住まう人々の動きを、怪しい物の所在を、徹底的に捜査する。しばしの時間をかけて本館の全容を恐らく捉えきった九十九が、他の猟兵へと概略を説明する。聞くのは朱鞠とクラウン・アンダーウッド。一方は口を引き結び、もう一方はうっすら曲げて笑み、それぞれに頷いた。そうして、それぞれに散開する。観測者は一人、息を潜めてより精密な走査を進める。後に続く者へ、より確実な情報を伝えるためにも。


 九十九の調査によって、朱鞠もより容易に目的の場所へと手を進めることができた。無暗に動いて発見されるのが上策ではないのなら、安全に得られる情報は貴重であろう。急を要する中でも待つ価値はあるというものだ。
 そうして得た情報、目的とする場所は、台所や厠の手水鉢など、いわゆる水回りである。忍である朱鞠は、毒に対して一定の知識を持つ。防ぐこと、除くことだけでなく、当然ながら使うことにも。であるからこそ、こういった場所が毒を混入させやすい、命を効果的に、奪うことに適していることを知っている。
「我が魂魄の欠片よ目覚め…力を行使し見聞きせよ…急急如律令」
 唱えると、虚空より子狐のような霊体が躍り出る。それは彼女の忍法によって召喚された、自身の分霊である。狐は僅かに先行し、気配の薄いその身体をさらに潜ませながら、角の先の台所へと進んでいった。目を閉じ、霊狐と視界を同期する。低い視界から周囲を見回しても、人の姿はなく、気配もない。軽く跳び、台上へと登ってみても、同様である。
 不在を確認した所で改めて、念のため息を殺し足音を忍ばせ自身で踏み込むが、霊狐の目を通した時と変わらず変哲のない台所。ひとまずは、今回「そういう」趣向のオブリビオンではないようである。一つの懸念の解消に胸を撫でおろしながらも、彼女はすぐに次へと意識を向ける。
(あとは、噴霧や注射、直接摂取させる手段を使って絶望感を蔓延させている可能性かな…)
 そうなると、それぞれの被害者に接触し、確実に殺害していることになるだろう。より確実で悪質ではあるが、より姿を捉えやすいタイミングであるとも言える。逃す手はないだろう。
 その瞬間を確実に押さえんと意識を定め、朱鞠は引き続き忍びつつ、台所を後にした。


 こちらはクラウン・アンダーウッド。もう一人の進行方向と道を外し、外に面した廊下を歩いている。他の猟兵の調べで、すぐそばには人通りがそう多くないことは分かっている。少し行ってから再び本体の複製を錬成し、周囲へ展開させてセンサーとする。そういえば彼の操糸も念力によるもので。内部の状態の説明を聞きながらクラウンの目が、その複雑なセンサーを巧みに操り続ける九十九の指を追っている時間は決して短くはなかった。
「興味深い、実に興味深いねぇ」
 そうして角に差し掛かろうという時に、先を行く懐中時計の一つが人の気配を捉えた。というより――
「な、なんだぁ、こりゃあ」
 震える叫び声の主により、浮遊する懐中時計の姿が発見されてしまったのだ。決して思索に耽っていたわけではない。任務に不忠であったわけでもない。この接触は、紛うかたなきイレギュラー!
「まずいかなぁ」
 悪態のようでもあり、しかしどこか楽しげにも聞こえる声を上げながら、クラウンは死角の相手を視覚に捉えんと数歩を急いだ。
 見つけた相手は家中の男。恐怖は時計から猟兵へ。続く悲鳴を発する前に、道化は一跳び躍り込む。人ならざりし剛力もちて、口を押さえて発すを封じ、続け喉首ひっ捕まえて、手早にくっと一捻り。あっという間に白目をむいて、男の身体の力が抜ける。
「これは…セーフかな?」
 疑心暗鬼に救われたとも言えよう。悲鳴を聞いて姿を現す者などはただの一人もいなかった。もしかしたら、幻覚に怯えて発する悲鳴すらも、すでに日常なのかもしれない。
 とりあえず、失神した住人をそのまま転がしておくわけにもいかず、クラウンは縁の下へと隠しておくことにした。庭に降りて覗き込むと、動く者や気配はない。ひとまずは安全であろうと判断し、男を丁寧に押し込むと、また縁を登り探索を再開する。

 床下の既に動かぬ先客が、今は動かぬ男に害を成すことはなかろう。捨て置いても構うまい。


 一度天井上に引っ込んだ九十九が、周囲を警戒しながら顔を出す。警戒網の中心に向け、歩み来る者があったのだ。何者かは分からぬが、これもまた想定の外にある移動。やり過ごして降りると、九十九はその場から移動し、積極的な索敵を始める。
「……どうしたものか」
 既に見つかっているのかもしれない。より慎重にか、より迅速にか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴィリヤ・カヤラ
【澄明】で透明になったままでも良いんだけど疲れちゃうから、
空き部屋や物入れっぽい所とか暗い所があれば利用して
危なそうなら【四精儀】の闇の霧で暗くして休憩と探索するね。

屋敷内で怯えて無さそうな雰囲気の人がいれば
分かりやすいんだけど『第六感』にも頼って動くね。
もし透明になっててもこっちを認識してる人も
オブリビオンの可能性があるかな。

夾竹桃の毒を使っているかは分からないけど、
もしかしたら香りがあるかな?甘い感じだっけ。
もし、気になる香りのする人物がいたら気にしてみるね。

もし見付けて捕まえるチャンスがあれば鋼糸の刻旋か
ダークネスクロークの晦冥に頼んでみるね。

アレンジ・連携歓迎




(もう大丈夫かな)
 押入から這い出すように、ヴィリヤ・カヤラが顔を覗かせる。探索中に聞こえた足音を警戒し、近場の隠れられる場所を探して飛び込んだものである。先にも使用されたユーベルコード・澄明で姿を隠すことはできるが、代償として消耗する体力は決して軽視できるものではない。疲労の中で突然敵と鉢合わせ、あるいは不意打ちを受けでもしたら対応できない恐れもあろう。急を要するからこそ休息を摂る必要がある。
 と、しばらく様子を窺っていると、再び足音が近付いた。薄く開いた襖を静かに閉じ、狭い空間の壁に寄って座る。一枚を隔てて近付き、また遠ざかるを聞きながら、注意を巡らす。整わない速足には怯え。歩き方からみて武道の心得があるわけでなし。先程通り過ぎた足音と同じ重み、同じ接地、恐らくは同じ人物。小用を済ませてねぐら、あるいは独房に帰るところか。しかしもちろん、全て意図して細工を施した、忍による擬態の可能性もあり――そんな風に考えていけば、長らく獄の中にある家人でなくとも疑心暗鬼に陥ってしまいそうである。
(屋敷内で怯えて無さそうな雰囲気の人がいれば分かりやすいんだけど)
 思いの外に難航する調査に嘆息する。しかし、そう言って――思っていても何かが動くものでもない。とりあえず足音が遠ざかり新たな気配がない以上、静かに迅速に調査を再開するが良いだろう。

 開けると、それはふわりと微かに、優しく鼻孔をくすぐった。もしかしたらと、その可能性を警戒していたからこそ感じられた程度の、僅かな残り香。
 この屋敷を檻とするオブリビオンの名は、夾竹桃。それは花木の名でもある。鮮やかで美しい花を咲かせ、日常の中にも馴染み深い形で存在するそれは、その実強い毒性を持つ。花に毒、葉に毒、枝も根も実も、燃やした煙や育つ土壌に至るまで毒害を成す。日常の中に潜み、思わぬ瞬間に苦しみを齎すその花は。
「甘い香りだっけ」
 その名を冠する忍が、必ずしもその毒を使っているとは限らない。しかし、今この瞬間のその香りには、疑うに足る存在感があった。ヴィリヤはその直感を頼りに、先ほどやり過ごした足音を、今度は追跡し始めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
WIZで行動
咎人殺しとして滑稽な考えかもしれないけど、相手が元は人だったって考えちゃうせいかもしれないけど、私はターゲットが継続的に罪を重ねさせるのは我慢できない性質なんだよね…。
早計と言われるかもしれないけど、この緊迫した閉鎖空間で何の枷も無く行動できる人物と甘く強い香りを手掛かりに【追跡】の対象を絞り『夾竹桃』探索のためも再度『忍法・繰り飯綱』を放つよ…。

勝手に追い詰まって弱気になるようで恥ずかしいけど、何の咎も無い人を巻き込んでおきながら失敗して犠牲を出してしまう不安に迫られちゃってるんだよね。
今は結果が出ないまま空振りにならないよう祈るだけだね。

アレンジや他の猟兵との連携OK




 咎無き人をこれ以上死なせること。自らと同じ忍がそれを為すこと。そして元は人だったものに、この上罪を重ねさせること。
(咎人殺しとして滑稽な考えかもしれないけど…我慢できない性質なんだよね)
 不安と焦燥を抱えたままに、政木・朱鞠が廊下を歩く。辛うじて駆けると言わぬ速さで足取りで、逸る心を制しながら忍び歩く。
 彼女にとって忍ぶということは在るべき姿であり、実際に走り出したい気持ちを抑え込んでいる。しかしそれでも若さゆえかはたまた責任感によるものか、無辜の人々を巻き込み死なせてしまうことへの忌避感ばかりは忍べないようである。そういった焦りが、今の彼女の行動の直接的な動機であろう。
(早計と言われるかもしれないけど)
 先の猟兵による情報の中には、甘い香りとそれを伴う足音があった。確かに怪しいが、それと断じるには早い感も否めなくもある。しかしこの邸内の緊張状態の中で、怯えながらでも自由に行動できるものだろうか。僅かな疑念と、それ以上に僅かな手掛かり。慎重に動く間に犠牲者が増えるかもしれない。それならば――
「空振りにならないよう祈るだけだね」
 賭けに出る価値はあるだろう。

 再び繰り飯綱を放ち、死角を潰しながらの探索を行う。発見され難い子狐はともかく、自身が認識されるわけにはいかない。
 慎重に進み、しばらくしてその背を見つけた。怯えた様子で忙しなくきょろきょろと首を振り、ざるのような警戒網を展開している。これでは、肉薄し背後に迫ると言えども、霊体である狐を発見することは難しいだろう。咎忍の演技であるのか、危惧した通りの空振りか――男は何の疑いもなく部屋の戸を開け、脛を擦るかという間で入り込むそれを知らず迎え入れた。

 子狐の低い視界に一本足と義足。共有する嗅覚からはより濃くなったあの匂い。朱鞠は忍ぶもそこそこに、蹴破るばかりに戸を開けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『咎忍『夾竹桃』』

POW   :    舞琴鬼神
自身が戦闘で瀕死になると【毒霧の巨人】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    紅天狗の水飴
自身の装備武器に【粘着性の毒】を搭載し、破壊力を増加する。
WIZ   :    蠱毒返し
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【毒を付加して体】から排出する。失敗すると被害は2倍。

イラスト:純志

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は政木・朱鞠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 爛々と光る赤い目、歪に裂けた赤い口、そして、赤い花の甘い香り。嗤い、駆け、刃を掲げる。叫ぶ暇もあらばこそ、怯えた男は口を塞がれ、速やかに声を動きを奪われた。丁寧に支えて仰向けに倒され、這うこともできず首を振ることもできず――
「ああ、見つかっちまったか…鼻の利く犬っころでもいるみたいだな」
 勢い良く戸が開かれた音。振り仰ぐこともできないが、咎人の注意はそちらを向いているようだ。

「しようがない、しまいにしてやるよ。だから――」
 咎忍『夾竹桃』は溜め息交じりに言いながら、肩を竦めて猟兵に向けて言う。
「見逃しちゃくれねえか?」
 勿論、それはできない相談である。彼自身もそれは承知していよう。だからそいつは、答えを待たずに唯一の退路へ向けて跳び出した。
形代・九十九
見逃してはやれん。そしておまえが望む望まぬに関わらず、凶行はこれにて仕舞いだ。

開かれた戸を後ろ手に閉ざし、長刀を鞘より引き抜く。
――― おまえは誰にも知られず、ここで終わるのだ。
夾竹桃、花言葉は『注意』『危険』『用心』。おまえに相応しい名だ。
だが、心せよ。今宵此処で咲き誇り、散って消えるのは凍てついた血の蓮の華だ。

SPD
UC【抜けば魂散る氷の刃】を発動。
冷気によって戸口を凍結させて外部からの干渉を阻害(地形の利用)、時すら凍らせる冷気によって作り出した己の氷像で幻惑しつつ敵の攻撃を凌ぎ(残像 武器受け 激痛耐性)ながら、繰り出す反撃で夾竹桃を斬り刻み、その戦力を削ぎ落としていく(カウンター)。


ヴィリヤ・カヤラ
やっと出てきたね!
逃がしてもまた別の所でやるんでしょう?
だったら逃がせないよね。

私、静かに戦闘ってあまり得意じゃないんだけど、
ここにいる人達にあまり見つからない方が
良いって言ってたし早めに倒したいね。

追い掛けながら宵闇の蛇腹剣で腰辺りを狙うか、
刻旋を使って体の一部分でも
鋼糸で絡められれば足を止められるかな?
追い付くのが難しそうなら出来るだけ短時間で【瞬刻】を使うか、
【四精儀】で鎌鼬を作って攻撃して足止めを狙うね。

帰りは夜に紛れるなら【四精儀】で
闇の霧を周辺に発生させてみるよ。
敵を倒したら門から出られるよね?

アレンジ・連携歓迎



●ワイヤア・ワアクス
「やっと出てきたね!」
「見逃してはやれん」
 阻んで立つのはヴィリヤ・カヤラと形代・九十九。いずれも鋭い眼光により、夾竹桃を縫い止めんとす。行く手を塞がれ立ち止まり、されども忍は飄々と
「まあそう言うなよ。屋敷の残りの連中と、ついでにお前らの命もくれてやるんだから」
「逃がしてもまた別の所でやるんでしょう? だったら逃がせないよね」
「ああ、そうかい」
 挑発も無視して突っ撥ねると、咎忍は詰まらなそうに返す。途端、薄かった気配は消失する。視認を外されたら再度認識するのは骨であろう。逃してはまずいと素早く刻旋を伸ばし、その足元を絡め取らんとするヴィリヤ。
「ま、勝手に逃げさせてもらうけどな」
 堕ちても忍、鋼糸の襲撃をひょいと跳び避け、女の隣を擦り抜けて、嘲笑交じりに視線を投げて、そのまま戸口へ一直線に――
「逃がさないってば」
 擦り抜けようとする咎忍に後ろ跳びで並走し、蛇腹にした宵闇にて前方から打ち付けた。
「なんとっ!?」
 ヴィリヤはユーベルコード・瞬刻を行使し、自身の速度を引き上げていた。鋼糸が仕損じた場合の二段構え。そのまま絡めて叩き落とすと、寿命を削るその能力を速やかに解除した。

「おまえが望む望まぬに関わらず、凶行はこれにて仕舞いだ」
 蛇腹剣による梱包を解く間に、九十九による仕込みは完了していた。開け放たれた戸を後ろ手に閉ざし、背負った刀を鞘より抜いて。
「――おまえは誰にも知られず、ここで終わるのだ」
 抜けば魂散る氷の刃。露わになるごと冷気を放ち、辺りに霜を纏わせる。間近の戸口は凍りつき、そう簡単には動かない。振えば太刀風が起こり、僅かに身動いだ敵の脇をかすめ、その装いをほんの少し凍り付かせた。四六の蝦蟇なら分も悪かろうが、相手はただの毒使い。口寄せなどは使うまい。
「ちぇっ、やるしかねえか」
 立ち上がり、舌打ちをすると、ようやくその得物に手を掛ける。なおも殺気は感じさせず、されど明確な殺意を言葉に乗せた。
「楽に死ねると思うなよ」
 俄かに甘い香りが強くなり、部屋中を満たす。幸い香気自体には毒はないらしい。見ると敵の手の中、その刃に浸潤するように、粘性の液体がじわりじわりと広がっていく。言うまでもなく猛毒である。それが行き渡ると、夾竹桃は九十九に向けて再び駆けた。正面に捉えた剣士に刃を振りかぶり――物理的にあり得ないような機敏な軌道修正によってそれを回避し、氷の幻像でない本物の九十九を捉え、その得物を振り抜いた。
「そういうのは俺らの得手だよ」
 その手の長刀で辛うじて受ける剣士に厭らしい笑いを向け、流れるような動作で刃を滑らせて、その腕部を斬りつけて跳び退る。
「猛毒だ。ちょっと傷付ければこっちのもんさ。痛いぜえ、苦しいぜえ」
 抑えた低い声にも滲む、愉悦の声色。苦しみ焦る若き猟兵の表情を見てやろうと視線を移すが…
「夾竹桃、花言葉は『注意』『危険』『用心』。おまえに相応しい名だ」
 実際見た目よりも相当年を経ているヤドリガミは、淡々と、しかし感心したように頷いていた。
「だが、心せよ。今宵此処で咲き誇り、散って消えるのは凍てついた血の蓮の華だ」
 咲き誇るはおまえではない。そしてその花も散って消える。期待外れにも投げつけられた勝利宣言に、加虐趣味の咎忍は気分の良いはずもなく。
「俺に接ぎ木でもすんのかい。面白い、やれるもんならやってみな」

 忍は再び跳びかかり、再びその刃を振るう。九十九も再び迎え撃ち、捌ききれない攻撃を再びその左腕に受ける。防戦に回りつつも傷を増やす剣士に、自然と欲求を増しもっともっとと深入りしていく夾竹桃であったが、幾度目か退かれ、追い縋ろうとした時に、自らの足が凍り貼り付き、動かぬことに気付く。
「そら、相応しい名だろう」
 花言葉は注意、危険、用心。心がけぬ者にこそ送られる言葉である。振りかぶり、太刀風を放射すると、今度は躱すことのできぬ敵へとまともに当たり、その身を凍らせ肌は引き攣れそこから裂ける。血の花を咲かせる。
 そして動きが止まればしめたもの、制御の難しいヴィリヤの四精儀も、その力を遺憾なく発揮できるというものである。
「この地を構成するモノよ、その力の一端を示せ」
 氷のつむじ風とでも言おうか。よく制御された強力な鎌鼬は、夾竹桃を包み込むように発生してその身を満遍なく刻む。九十九とヴィリヤ、両者の凍気が作用しあい、風は血飛沫すらも舞い上げて苦痛の紅蓮を咲き乱れさせる。

 毒の効かぬ疑問へ答えるように、ヤドリガミはその絡繰の左腕を引き抜いて見せる。正体見たりと苦く笑うと、満身創痍が減らず口にて返礼する。
「夾竹桃はなあ、しぶといんだぜえ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
悦に入るために恐怖と絶望の猛毒を撒き散らすかくれんぼはもうお仕舞だよ…。
私は妖狐なのに鼻の利く犬呼ばわりした罪とお痛をした咎の責任はキッチリと取って、今回は骸の海から抜け出て成仏して貰うんだからね…お覚悟よろしくって?

戦闘【SPD】
避けきれなければ大ダメージと毒を貰うリスクは有るけど、初撃を封じるため『降魔化身法』を使用してちょっと強化状態で迎え撃つよ。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

もし、仕留めることが出来たら。
自慰行為かもしれないけど、元・咎人狩りの先輩に弔いの言葉を送らないとね…。

アドリブ連帯歓迎


クラウン・アンダーウッド
アドリブ・連携 大歓迎

「見逃す筈がないじゃないか。こんなに苦労したんだからねぇ。さっさと倒されておくれよ」

[懐中時計]【第六感】【情報収集】で敵の弱点や攻撃方向を掌握し、油断なく攻撃を仕掛けよう。複数の[からくり人形]に、炎を纏わせた[投げナイフ]【鎧無視攻撃】【投擲】【暗殺】を持たせて、相手を【カウンター】と【フェイント】を交えて翻弄しよう。

隙をついて、[ガントレット]【怪力】をもって抱き締めるように拘束、キミという存在を毒と共に炎で浄化してあげるよ。


ウルフシャ・オーゲツ
侵入暗殺なんでもござれ、神出鬼没のくノ一軍団、およびとあらば即参上!

……若干温度感を読み間違えておる気もするが、こちらも本職の忍者を連れてきたのじゃ。
忍者相手に毒霧とは笑止千万、宇宙や不思議未来の力による最新式隠密防毒装備を全員に配備したうちらに死角はない!これで侵入退却も完璧じゃ。

風情?
情緒?
勝てばよかろうなのだ。

といっても基本的には支援
他の仲間の行動を補助しつつ敵の逃走を防ぐ
蛇の道は蛇。
同じ忍者ならば脱出手段とて熟知しておる

とくとみよ変幻自在の妖しの技!
お互いに馬鹿試合……化かし合いとでもいこうかの

……まぁ

うちは忍者ではないので、隠れて応援なんじゃがな?
いざとなれば忍者の真似事はするがの



●ベノム・フォア・ベノム
「悦に入るために恐怖と絶望の猛毒を撒き散らすかくれんぼはもうお仕舞だよ…」
 発見当初とは違い闘志を見せる咎忍の正面は、続いて政木・朱鞠。彼女の目には他の猟兵よりも、憐憫の色が少し色濃い。かつては咎人狩りの同志であったろう男に、思う所はあるのだろう。しかし、オブリビオンのそれには知ったことではない。恐れられるべき自分が、憐みの目を向けられることは、看過し難い。
「ふん、犬っころが吠えるじゃねえか」
「私は妖狐だよ。犬呼ばわりの罪と、お痛の責任はキッチリ取ってもらうからね…」
「そいつは悪かった、女狐の間違いだったか。いいぜ、やれるもんならやってみろよ」
 詫びながらも悪びれず、ふざけた口調ながらも鋭い眼光で猟兵を見つめる夾竹桃。躙り歩き、回り込むようにしながら様子を窺う。対する朱鞠は、ユーベルコードを用いてその身に魔を降ろす。幽鬼は術者の身を蝕み苦しめるが、彼女がそれを気にかける様子はない。
「毒を受ける前に手前で飲もうってか。慌てなくてもしっかり漬け込んでやるよ」
 平静のようにしていても、毒に精通する彼には、冒された者の具合は察せられる。嗜虐心を刺激されたそれは嗤い、知らず気を取られる。隙を逃さず跳び出す朱鞠、手に構えるは荊野鎖、咎人を責め苛む縛鎖。不意を突かれた夾竹桃は、若輩相手に傷を負う。絡み付いては咬み付いて、荊棘の蛇が血肉を奪う。
「ッの…アマぁ!」
 抑えながらも威圧感を覚えさせるような殺気混じりの怒声を放つ男に、その猟兵はしてやったりと挑発的な笑みを向ける。抉り奪った生命力によって血色を幾分か良くし、強化の代償分をも補ってさらに速く、強くある。そんな彼女に放たれた大手裏剣の斬撃は、当然ながらいとも容易く避けられる。咎忍は、笑う。

 避けた朱鞠の背後に、大手裏剣が打ち下ろされた。渾身のそれは氷ごと戸を砕き、彼に退路を設える。
「残念だったな」
 怒りも強打も陽動として、巧みに位置を調整し、逃げることだけを考えていた咎忍。ただいまこの部屋の中で、最も出口に近いのが彼であり、本気で逃げられた場合に追い縋ることは難しいかもしれない。
「ほんに、残念じゃったのお」
 しかしそれは、この邸が今なお隔絶された異界であれば、の話。出口の外にも地続きの世界があれば、外は絶対の逃げ場とはなりえない。
「侵入暗殺なんでもござれ、神出鬼没のくノ一軍団、およびとあらば即参上!」
 開けた道を塞いて立つは、幾多のくノ一従えて、腕を組んだるウルフシャ・オーゲツ(しょしんしゃ・f00046)。勝利を確信した瞬間にこの有様では、いかな忍といえども毒気を抜かれるというものだ。口を開けてぽかんとしている。
「……若干温度感を読み間違えておる気もするが」
 誰に言うともなく呟くウルフシャ。確かに先ほどまで冷気に襲われていた室内と、戸を隔てた外とでは、激しい温度差が発生していることだろう。
「糞、どいつもこいつもふざけやがって」
 策を幾重にも構えて出し抜いた所で横紙を破るようにしてご破算にされ、毒気を取り戻しさらにいや増し、夾竹桃はそれを吐き出す。暗色の霧となり、それは見る間に人型を形成し、戸から溢れてウルフシャ率いるくノ一軍団を見下ろすように覆いかぶさる。
「全員まとめて中から腐らせてやるよ」
 なりふり構わず皆殺しに方針を切り替えた咎忍の悍ましき声色に、しかし俯いた猟兵は肩を震わせ含み笑う。
「忍者相手に毒霧とは笑止千万、宇宙や不思議未来の力による最新式隠密防毒装備を全員に配備したうちらに死角はない!」
 顔を上げてびしっと言葉を叩きつけるが、その声は少しくぐもっていた。それもそのはず、彼女の、否、彼女たちの顔には、一人残らず『最新式防毒装備』――平たく言えばガスマスクが装着されていたのだ。既に忍者とは関係ないような気も、する。
「風情?情緒?勝てばよかろうなのじゃ」
 勿論、忍者対決などではなくオブリビオン退治が目的なので、それは正しい。

 想定外てんこ盛りの伏兵を持て余しているうちに、室内側を疎かにしてしまった夾竹桃へ、幾体ものからくり人形が迫る。それらは音もなく敵を取り囲み、侵入者を見つけた警備隊のように手に火を灯し追い詰める。配置を終えると、その一体が携えた灯りを投擲する。それは炎を纏った投げナイフ。寸での所で風切り音を察知して、下手人は素早く回避した。人形を睨みつけるも、もはや減らず口を叩く余裕もない。着地を狙い別の人形からの攻撃。その次の着地を狙い違うナイフ。さらに次――当たれば焼かれ、避けても続く。輪の中で踊り続ける忍に、巧者による本命の攻撃が放たれた。
「なっ…」
 背後より突然組み付かれ胴を腕ごと拘束される。同時に傀儡たちは制御を失い、皆一様に倒れ伏した。抱き着き、見上げ、クラウン・アンダーウッドは目を輝かせながら、笑った。
「見逃す筈がないじゃないか。こんなに苦労したんだからねぇ。さっさと倒されておくれよ」
 躍起になって引き剥がそうとするも、猟兵の怪力がそれを許さない。武器を操る腕は封じられ、霧の巨人も外で釘付けになっている。もがくばかりの咎忍の前で、一体の人形が再度起き上がった。手にはまた、ナイフを携えている。
「キミという存在を、毒と共に炎で浄化してあげるよ」
 人形はゆっくりと近付き、それを振りかぶり…クラウンの身を斬り裂いた。息を呑むオブリビオンの目を光で埋めたのは、その傷口から噴き出した地獄の炎。それは夾竹桃の身体へと燃え移り、燃え広がり、身動きを許さぬままに包み込む。
「貴…ッ様ぁぁぁぁぁ!」
 怒りと焦りと痛みと絶望、叫ぶ男へ朱鞠が寄った。茨野鎖を再び伸ばし、敵の頸へと幾重にも掛けて。
「お覚悟、よろしくって?」
「やめ」
 叫び終わらぬうちに、その棘鞭をずるりと引いた。抉り、削ぎ、引き毟り、そしてまた、ずるりと。分かたれたそれらは、どちらも一様に塵になり、消えた。

●しのぶこと
 夜の帳になお暗く、無明の闇が煙りて包む。ユーベルコードで起こされた、真っ暗闇の霧の中、ウルフシャ傘下のくノ一達が安全な道を先導しつつ、消耗している猟兵達を労わりながら進み行く。なお彼女ら自身は最新式隠密装備で姿を消すことはできるのだが、そうすると猟兵達にも見えないので平常運行である。
 室内の冷気も拡散し、季節柄の生温い風が吹いている。戦闘の跡も多くは残さず、半狂乱の被害者が暴れた程度にしか見えない。明日になれば公儀の手が入り、家人たちの心胆を寒からしめることもなくなるだろう。こうなれば唯一冷え込んでいるのは、ただ今手厚い案内をしてくれているくノ一たちに残業代をお支払いするウルフシャの懐ぐらいか。

 いや、もう一人。朱鞠は一人室内にて、既にこの世にない骸に向かい、何事かを思っていた。あるいは偲んでいた。堕ちた咎人殺し、だったモノ。彼女にとっては先達であった者。信ずる道を踏み外せばこうなるかも知れない。薄ら寒いものがある。かつて同志であっても、そうなっては倒すしかない。寒々しいものがある。そんな空虚感すらも、忍ばねばならぬのだろう。
 彼女は踵を返し、仲間を追って霧の中へと溶け消えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年06月28日
宿敵 『咎忍『夾竹桃』』 を撃破!


挿絵イラスト