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信者はだぁれ?

#UDCアース

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#UDCアース


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『寒い、な……』
 初老の男が呟く。
 都心から離れた郊外にある馬鹿みたいに広い屋敷。
 古い瀟洒な造りの洋館だが、中身は最新のセキュリティで守られている。
『そうですね。体に障ります、そろそろ中へ』
 年老いたメイドに促され、男は屋敷の中へと戻る。

『お嬢様、そろそろ時間ですが……』
『うー……分かってるわよ! もう起きる!』
 ベッドの中から若い女がメイドへ怒鳴る。
『ああもう、どうして……』
 どうして、こんな面倒な事をしなければならないの。
 女は頭を抱えて、睡魔に抗い飛び起きた。

『アキラ、アキラ……時間よ、早く出てきなさい!』
 中年女性が扉を力強く叩く。すると、勢い余って扉が開いてしまった。
『あ、アキラ。いい加減早く準備を……』
 中年女性の目の前には、目を見開いた若い男の死体があった。
 屋敷内に絶叫が響いた。

「……の様に、殺人事件が起きた」
 虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)が事件のあらましを説明する。
 郊外の屋敷で殺人事件が発生。被害者は坂東アキラ30歳男性。
 死因は溺死、死亡推定時刻は……ここで猟兵達から横槍が入る。
 どうして殺人事件の捜査をしなければならないんだ、と。
「……まあ、見ちゃったんだ。この後何が起こるか」
 放っておくと家族全員が皆殺しにされ、邪神の眷属にされるという。
 この事件を裏で操っているのは『黄昏秘密倶楽部』なる、邪神と繋がりがあるという要注意団体だ。
「十中八九この屋敷内に団体の信者が潜んでいる」
 そして事件を起こした、と思われるのだ。では全員しょっ引けばいいのでは? と質問が飛ぶ。
「それがね、警察の捜査では何も怪しい点は見当たらなかったそうだ。それに無理やり捕まえてもすぐに解放されて、また同じ事件を起こす可能性が高い」

 屋敷の中にいるのは主人、奥方、長女、メイド長、メイドの5人。
 この中の誰かが、間違いなく事件の首謀者だ。
「だからここで、猟兵の力で真実を暴き、犯人を捕まえて欲しいんだよ」
 試験の調査資料を配りながら、志郎は言った。
「相手は邪神の眷属だ。だったら、我々の出番だろう」


ブラツ
 日頃お世話になっております。ブラツです。
 今回は密室殺人事件の調査から始まります。
 被害現場は奥方の突進で鍵が壊されており、
 それまでは密室だった可能性が高いです。
 殺害時間のそれぞれのアリバイは以下の通りになります。

●主人(60歳):テラスで物思いに耽る
●奥方(54歳):何かの準備をしていた
●長女(21歳):自室で寝ていた
●メイド長(47歳):主人を呼びにテラスへ
●メイド(18歳):長女を起こしていた
 また、事件現場の屋敷は地下一階、地上三階の四階層に分かれています。
 地下一階には戦中に使われた大会議室兼倉庫です。
 地上一階は玄関と大広間と浴室です。
 地上二階は各々の個室です。
 地上三階は主人の書斎です。
 トイレは各階にあります。

 事件の真相解明や達成度判定により結末が変わり、
 最悪の場合屋敷の住人が全て亡くなります。
 真相解明は正しい推理を納得出来る形で提示する事で、真実に近づきます。
 とは言っても、これらは邪神の所業。常識だけで考える必要はありません。
 最後に、事件現場周辺に一般人や警察の立ち入りは無く、
 UDCによる封鎖と隠蔽工作が完了しています。

 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『クローズド・サークル』

POW   :    宅内をしらみつぶしに調べまわる

SPD   :    使用されたトリックを看破する

WIZ   :    容疑者たちと話をする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『お待ちしておりました。皆様、こちらへどうぞ』

 恭しく頭を垂れるメイド長に案内され、6人の猟兵は屋敷へ入った。
 古びた様式ながら、監視カメラや最新の照明で飾られた屋敷内は、さながら時間の流れが乱れた特異な空間の様であった。

『こちらが、坊ちゃまのお部屋でございます』
 事件現場へ着いた。表の雰囲気とは違い、現代風のインテリアで飾られた、いわゆる普通の部屋だった。唯一違和感があるとすれば、想像通りだだっ広い部屋の中央で、布に包まれたかつての部屋の主が逝ったその時の姿のままで倒れている事だ。

 数刻後、猟兵達は思い思いに散り散りになっていった。
 己の得意を活かし、やがて来る凄惨な未来を止める為。
 そして、忌わしき過去の骸より今を守る為に。
火奈本・火花
「単なる殺人ではなく邪神教団――黄昏秘密倶楽部が絡んでいるとなると、犯人を捕まえれば大きな情報源になるかも知れません」

■行動
まずは現場検証で情報の整理を収集をしましょうか
現場を虱潰しに調べて、殺害の方法や手順、トリックになりそうな箇所が無いか調べます

アキラさんの死因が溺死と言う事ですし、私室に溺死に繋がる設備があるか、そして各階のトイレや浴室を重点的に調べます
抵抗の跡等が見つかれば良いのですが

また、アキラさんの殺害現場が部屋でなければ、別の場所から運ばれてきた可能性が高いですね
成人男性の遺体一つを運搬できる出入口や、その手段として使われた物の痕跡がないか、アキラさんの個室も入念に調べましょう


ボーリャ・コータス
wizで聞き込みに回るわね。

メインターゲットはメイド(18)さん。
室内で溺死なんて珍しい事件だけど、
仮に浴室やトイレで溺れ殺したあとで被害者さんを引きずってったとして
廊下や被害者さん自室が濡れていた跡があったかどうか、
あとはマスターキーの管理や
今までに屋敷で起きた不自然なこと、
最近屋敷の人に不審な行動があれば聞いておきたいわね。

あとよければメイドさんが立ち入りを禁止されてる場所があったり
変な物音がする場所だったり
被害者さんと他の容疑者に対して思うことがあれば聞いてみたいわね。


メタ・フレン
ふむ……推理ものにおいて関係者への聞き込みは基本中の基本……
というわけで、聞き込みを開始します。

まず気になるのは、長女が言っていた「面倒なこと」ですね。それと奥方は何の為に被害者を起こしに行ったのか……「いい加減準備を……」というのは、一体何の準備なのか? 単に仕事のことかもしれませんが。

もしこの「面倒なこと」というのに、屋敷の住人全員が関わってるなら……それは何としても知りたいところですね。

現地での聞き込みだけでなく、【電脳ゴーグル】と【ゲームデバイス】で外部からも【情報収集】します。
屋敷の主人は何をしてこれだけの財を成したのか、『黄昏秘密倶楽部』とはいつ頃から関わっていたのか、等をね。


夷洞・みさき
魔女裁判はお仕事でするものじゃないから、真面目に捜査をしようかな。

こんな時にも役に立つ業が僕には四つあるからね。
恐怖、歯車、鉄釘、拘束具、そして、頼れる六の同胞!
あれ?

WIZ
屋敷の人達に被害者の事を聞いて回るよ。人間関係、趣味、被害者の昨日の行動、彼をどう思っていたか。
人と話す時は【恐怖】を与えて精神の余裕を削っていこう。
嘘、放言の時の癖をしっかり覚えよう。

被害者のプロファイルが集まったら死霊術士である事を示して、被害者を実際に呼んでみようとするよ。
同胞達にも雰囲気出しを頑張ってもらおう
成功失敗に関わらず、その時の皆の反応は見逃さないようにしないとね。

特に、ほっとしているような人をね。


空雷・闘真
「まず気になるのは、なぜ溺死した被害者の死体が部屋に転がっていたのか、ってことだ。そもそも被害者は一体どこで溺死した? 室内の風呂か洗面台か?」

最初に闘真の関心を引いたのはそこだった。

持ち前の【コミュ力】を使い、闘真は屋敷の住人達から出来る限りの情報を引き出していた。
だが、聞き込みだけでは限界がある。
特にこの屋敷の間取りや構造、そして隠されたものに関する情報。
それを調べるのに打って付けの能力が、闘真にはあった。

「頼むぜ、俺の影よ」

【影の追跡者の召喚】で影を呼び出し、屋敷中をくまなく調べるよう闘真は命令する。

「特に浴室と地下室は念入りに調べてくれ。どんな些細なことでも見逃すんじゃねぇぜ」


ロジロ・ワイズクリー
「各々の個室が地上二階ということは、現場も二階にあったということでしょうか」
テトラパックを片手に時々喉を湿らせながら情報収集に話を聞こう(WIZ)

「死因が溺死ということですが部屋に水槽などはありましたか?」
「床に水などは?」
「他に何か死体を見て違和感などあったでしょうか」
推理の取っ掛かりとして、ごく基本的なことから聞き込みを開始しよう。
指先で耳飾りを揺らせば、その輝きに多少なり皆さんの口も軽くなるでしょうか。

容疑者は5人。
否、これは何が起こるか分からない事件。ならば殺された者が『黄昏秘密倶楽部』に関わっていた可能性もあり得るのか?



●怪しい同居人

「単なる殺人ではなく邪神教団――黄昏秘密倶楽部が絡んでいるとなると、犯人を捕まえれば大きな情報源になるかも知れません」
 火奈本・火花(エージェント・f00795)は早速、現場を改めた。猟兵達は法的機関の特殊捜査チームという建前である。警察は何も見つけられなかったというが、こちらはプロの猟兵、それも対UDC作戦のエキスパートだ。検証に漏れがあったとしても、自分達なら見つけられる。慎重に、大胆に、隠された秘密へのヴェールを剥がしていった。
 先ずは殺害方法。溺死という事だが、当事者の衣服に乱れはあるものの溺死に繋がる様な目立った跡……染みや生臭さなどは無かった。徐々に腐乱臭の様な饐えた臭いが広まりつつあるが、それは遺体が放置されていた為だろう。
「本当にただの溺死だったの? それとも……」
 頭を過ぎる疑問を一旦棚上げし、火花は次に殺害トリックを調べる。本当に溺死だとしたらどうやって殺されたのだろうか。被害者の個室にはそれに繋がる様な物は無い。ならば別の場所で殺され、ここまで運ばれた? 目の前には大きな窓があるが、鍵も掛かっており、何より被害者が外を伝って運ばれたのだとしたら、何がしかの傷跡や付着物があってもおかしくは無いが、それも見当たらない。
「まるで人間の仕業とは思えないわね」
 ふぅ、とため息をついた火花が改めて被害者を見ると、あるモノに気付く。
「これはもしかすると……」
 愛用のスマートフォンで被害者の写真を撮り自身の組織へ送信。詳細な照会を依頼した。もしそれが自分が想起するモノと同一だとしたら……
「最悪、これだけじゃ済まないわ」
 組織の連絡を待つ間、再び現場検証を再開する。
 自分の想像が、間違いである証拠を見つける為に。

 ボーリャ・コータス(ミレナリィドールのシンフォニア・f02027)とメタ・フレン(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f03345)は二階通路で揃って事情聴取を始めていた。目の前にはメイドと長女が。ボーリャは早速、メイドにこの屋敷の住人について質問する。
『……はい、本来なら軽々しくお話してはならないのですが』
 ちらりと長女の方を見るメイド。好きにすれば、と言わんばかりにそっぽを向いた長女を見て、ぽつりぽつりと語り始める。
 メイドに屋敷の住人や被害者の事を伺うも、皆いい人達ですと通り一辺倒の答えしかもらえない。溺死に関する証拠集めもおかしな点は聞き取れず、特に捗らなかった。
 進まない捜査に業を煮やし、一度話題を変える。今度は屋敷そのものについて質問してみた。
 すると意外にもメイドはすんなりと回答してくれた。元々ここの屋敷は昔の戦争の時、陸軍の収容施設だった場所に建てられたらしい。その為縁起が悪いと忌避され続け、当時の当主は破格の値段でこの土地と屋敷を手に入れたとか。しかしそんな不気味な屋敷に人は寄り付かず、見た目の割には細々と生活していたそうだ。現当主の主人もそれなりの生活をしているが、ここ数年奥方の具合が悪く、家事手伝いとして止む無く自分とメイド長を招き入れたとの事。
「成程。威容の割には随分と寂しさを感じたのは、その為だったのかしらね」
 ボーリャは腕を組み、メイドを値踏みするような目つきで舐め回す様に見た。話の内容は直接関係は無さそうだが、縁起が悪い土地に具合の悪い奥方と、少しばかり悪い予感を感じ取った。
 
 フレンは長女に質問をしながら、自身の電脳ゴーグルで屋敷内のセキュリティにアクセスしていた。目的は被害者の部屋を撮影した監視カメラの映像。カメラの映像には自室に入る被害者が映るが、その後誰も通らない通路しか映さない。
「誰も通らない……違うかな、これは」
 恐らく映像が編集されている。意図的に一定時間、何か別の映像が上書きされたのだ。
 しばらくすれば長女やメイドが通る姿が見えたが、特に意識しなければ何もおかしな所はない。
 フレンは映像の編集の痕跡を探るが、それは予期しない一言でかき消されてしまった。
『ちょっとアンタ、人の話聞いてるの?』
「あ……ゴメンなさい。話の途中でしたね」
 そうだった。被害者が死んだ日、屋敷で何があったのかを確認していた所だった。フレンが申し訳なさそうに肩を落とすと、長女は話をつづけた。
『こんな小さい子まで巻き込んで……アイツ、死んでも他人様に迷惑かけるつもりなのかしら』
 迷惑? フレンが首をかしげる。これまでの話を聞いた限り、警察に目をつけられる様な事を被害者がしてたとは思えない。
「迷惑って、アキラさんは何かされてたのですか?」
『ああ、そうじゃなくてね……あの日、アイツの誕生日だったのよ』
 で、折角の休日なのに家のしきたりで外に出られなかった、と長女が愚痴る。予知で見た準備とはこの事だろうか。
「成程。それじゃ誕生日パーティーか何かされる予定だったのですか?」
『まあね。毎年よ毎年! こんな年になっても……まあ、死ぬほど嫌ってわけじゃないけど』
 もう成人してるのだから、自分の時間くらい自由に使わせて欲しいと長女は肩をすくめた。
 死ぬほど嫌……まさかそんな理由では無いだろうなと、フレンは思案した。
 
 夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は屋敷の主人とメイド長に話を聞いていた。
 (魔女裁判はお仕事でするものじゃないから、真面目に捜査をしようかな)と、至極当然の聞き込み調査だった。
 被害者の昨日の様子、そして被害者の事をどう思っていたのか……感情の機微を捉え、真実を見つける為に。
『坊ちゃまはもう30歳を迎えるというのに、屋敷から出ようとしませんでした』
『ここにいれば取り敢えずは、将来の心配をする必要は無いからな』
 鉄面皮を被ったまま、二人は被害者の話をする。まるで他人事の様に。
「へーえ、それで油断して死んじゃった?」
 肉親と従者にしてはそっけない。それじゃそろそろ揺さぶってみようかと、みさきは話すトーンを変えた。他人事の様に被害者を嘲るみさき。その無礼な口調に、メイド長が怒りをあらわにした。
「あーゴメンゴメン。殺されたのか。そんな臆病な人が自分で死ぬなんてありえないもんね」
 あくまで揺さぶりを続けるみさき。しかし主人はそんな態度を意にも介さず、あくまで沈黙を貫く。
『貴女は、私達を疑っているのですか』
 主人の代わりに、と言わんばかりにメイド長が語気を荒げた。静かではあるが、その言葉は明らかに怒りを含んでいる。
「……いやそういう訳じゃなくてさ。これも捜査の一環だから。んじゃ」
 怒れるメイド長を背に、みさきはその場を後にした。情報はある程度手に入った。主人はともかく、メイド長にはそれなりに被害者への主従の気持ちがあったのだろう。どちらにせよ、余り好かれた人間ではなかったらしい。
 まあ、ここから先は全ての札が出そろってからだ。みさきは怪しく微笑し、再び事件の現場へと足を進めた。

「まず気になるのは、なぜ溺死した被害者の死体が部屋に転がっていたのか、って事だ。そもそも被害者は一体どこで溺死した? 室内の風呂か、洗面台か?」
 最初に空雷・闘真(人間のバーバリアン・f06727)の関心を引いたのはそこだった。
 ここまで持ち前の会話力で屋敷の住人達から様々な話を聞きだし、今は最後の一人である奥方に話を聞いていた。
『さあ……湯は張ってませんでしたから、あるいは抜かれたのかもしれないですけど』
 飄々と奥方は闘真の質問をいなす。これまでも被害者の様子や当日の状態など聞ける限りの事を聞いたが、それぞれがバラバラ過ぎて、今一つ溺死と結びつかない。
「そうかい。それじゃ奥さんが部屋の鍵をブッ壊したのは? 本当に壊したのかい?」
 それもやんわりと否定される。そもそもが古い建物、室内の鍵などあくまでプライバシーを守る為だけのお守りの様なモノ。今一つ収穫も無く、闘真はその場を後にした。否、あえて離れた。
 そもそも聞き込みだけでは限界がある事は分かっていた。だが、闘真にはそれを覆せる能力があった。ユーベルコード、猟兵にのみ許された超常の異能。
「頼むぜ、俺の影よ」
 一言、ゆらりと。闘真の影より漆黒の従者が現れる。異能の影は闘真に従い、瞬く間にその場から消えた。いや、駆けたのだ。自身と五感を共有するその影を使い、屋敷内を隈なく捜査する。特に怪しい浴室や地下室も含め、怪しい痕跡は一つ残らず見つける。
 相手が邪神なら尚更。闘真はニヤリと口を歪め、己の影の果報を待つ事にした。

「各々の個室が地上二階ということは、現場も二階にあったということでしょうか」
 怪しげなテトラパックを片手に、ロジロ・ワイズクリー(ブルーモーメント・f05625)は屋敷の住人を事件の現場に集めて話を聞いている。移動するのも億劫、という訳ではない。あえて事件の惨状を見せつけながら、揺さぶりを掛けようというのだった。勿論、現場は二階にある。勝手に移動はしていない……ひどくあからさまな揺さぶりだった。
「死因が溺死という事ですが、部屋に水槽などはありましたか?」
 ないです。
「床に水などは?」
 ありません。
「他に何か死体を見て違和感などあったでしょうか」
 死んでるから違和感しか……
 あくまで当たり障りの無い質問を繰り返し、静かに受け答えを繰り返すロジロ。しかし質問の意図は別にあった。
「では『黄昏秘密倶楽部』はご存知ですか?」
 不意に核心を、事件の黒幕と思しき名を告げる。一体何の事だ? 深夜番組? それぞれが思い思いを口にする。
「成程……して、ご主人」
 それらを一しきり聞いたロジロの眼が鋭く光る。矢張り、信者はこの屋敷にいた。
「何故、“一体何の事”などと言われたのでしょうか? 私はあくまで“知っているか”どうかを聞いただけです」
 これまで通りなら“知りません”とでも言うだろう。明らかに過剰な反応だと、ロジロは感じ取った。
『無礼ですよ、貴方達先程から……いい加減にして下さい!』
 追及するロジロに対してメイド長が口を挟む。これ以上、主人への狼藉を見逃せないと言わんばかりの剣幕だ。



 だが、追及も尋問も、反論も焦燥も何もかも、これまでだ。
「……お待たせ、みんな」
 スマートフォンを手にした火花が一歩、前に出た。
「とても残念だけど、やっぱり」
 ここにUDCがいるわ。
 とびっきり、最悪な奴が。
 火花は拳を握り、屋敷の住人達を睨みつけた。



「動かないで。動いたら特殊部隊を即座に投入、全員拘束します」
 火花が現場に集った面々に強く告げる。対UDC作戦を数多くこなした彼女の眼には、絶対に逃さないという強い意志が感じ取られた。
「被害者に掛けられた布……見覚えがあるモノだったの」
 自身はサイバーコンタクトで照会した画像“黄昏への導き”と題された特定危険狂気物品をARで表示する。形状はほぼ完全に一致。そして手元のスマートフォンにも同じモノを映し、場にいる仲間達へ見せる。
「本部へ照会したら結果が出たわ。ちょっと時間が掛かったけど、これは……」
 その布は意識を喪失した者を邪神の眷属化する、触れえざるモノだった。それを死者へ掛けるとはどういう事か……火花の目は怒りに燃えていた。
「へッ、道理でこの屋敷中が臭いワケだぜ」
 この時を待っていたと言わんばかりに、闘真が身を乗り出した。
「俺の影の追跡が邪神の痕跡を逃すワケないだろ?」
 俺の影……ユーベルコードの異能は既に、邪神の影をも捉えていた。この屋敷の至る所に、邪神の眷属が蠢いていたという悍ましい痕跡を見つけていたというのだ。それは常人の目だけでは判別しかねる、超常の類のモノばかりだ。故に超常の猟兵にかかれば、いとも容易く見つけられてしまう。
「一人ずつ改めてやろうかと思ったけどよ、もっと早く分かる方法があるぜ」
 だからここにいる全員に何をするつもりだったのかはさておき。屋敷の住人の容疑を固めるべく、最後は人知の及ぶ痕跡から、その証拠が曝け出された。
「あ、それなら監視カメラの映像が編集されてます」
 闘真の様子を見、フレンが言葉を続けた。長女に聴取していた時から捜査していた監視カメラ映像の解析が、終わっていたのだ。それはこの時間に被害者の部屋を映されると不都合がある者がいるという、決定的な証拠だった。
「時間にして20分くらい、時間はアキラさんの死亡推定時刻からおよそ30分前後」
 その20分の間でアキラは殺されたのだろう。つまりその時間、他の監視カメラに映っている者は除外される。
「その時間他の監視カメラに映っていた人は奥様、メイド長さん。だから……」
 フレンが皆まで言いかけた時、一人の女が前に出る。
「あーそれじゃあさ、本人に聞いてみようか」
 みさきがずい、と、アキラの死体の前に立った。
「僕はね、実は死霊術士で……まー、死んだ人呼び出せるんだよ」
 だから聞いてみようよ、真実をさ。と、嘲るようにみさきは続けた。
「澱んだ海の底より来たれ。身を裂け、魅よ咲け。我ら七人の聲を、呪いを、恨みを、羨望を示そう。忘却した者達に懇願の祈りを込めて」
 ユーベルコード【忘却祈願・我は我等なり】、その場の死者を口寄せる術ではないが、本物の死者をその場に顕現する、呪われし業の一端を開放する。
「さーて、アキラ君おはよー……って」
 その勢いで同じく死者を蘇らせようとするみさき。しかしその秘術は唐突な奇声に掻き消された。
『フフ……ハハハハハハ……』



『アキラ君……おはよう? それは』

 ワ タ シ ノ セ リ フ ダ

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●救済は誰れの為に

 その者は突然奇声を上げると、肉体をぼりぼりと変容させた。
 身に着けた瀟洒な衣装はみずぼらしい煤けたローブに。
 手にした小綺麗な掃除道具は、獰猛な鉄球に。
 その顔は鉄面皮の装いから、色無き無の仮面へと変わる。



 メイド長は眷属だった。
 その姿を見た屋敷の面々は、
 ある者は怯えてその場で竦み、
 ある者は死を悟り祈りを捧げる。
 それは狂気に彩られた荘厳な儀式の様。
 何事も起こらなければ、あるいはこれが真実の姿だったとでも。
 否、世界の真実はこの様な色ではない。音ではない。
 歪に塗り替えられようとした真実は、まだ始まってはいないのだから。
火奈本・火花
「この家に仕えてから倶楽部に傾倒したか、そもそも倶楽部の狂信者だったのか。……あるいは自身の意思とは無関係に倶楽部に襲われたか」

■戦闘
後者であれば同情はする。が、我々が見逃してやる理由にはならないな
宣言通りにユーベルコードで機動部隊を突入させよう。家の者に危害を加えようとするなら、彼らの保護を優先する
機動部隊で家族の前に立ち、流れ弾も含めて被害が及ばないように盾となるつもりだ

黄昏の信徒への攻撃は銃撃が中心になるだろう。機動部隊とも協力し、弾幕を張って終了させる
我々を狙ってくるようなら、可能な限り引き付けてから蜂の巣にしてやる
「お前に彼を殺した理由を聞いたところで、誰も納得は出来ないだろうな」



「狂気存在確認……コール≪緊急要請≫!」
 火奈本・火花(エージェント・f00795)は迷う事無く自らのユーベルコードを発動。瞬間、空間を紫電が奔ると共にダイヤモンド陣形で火花を囲む様に4人、【機動部隊ひー4("四葉のクローバー")】が召喚された。
「各員散開、UDCを包囲しつつ民間人の保護を最優先」
 間断無く飛ばされる火花の指示と共に機動部隊が疾駆する。2人は眷属を挟み込むように、2人は館の住人らを護る様に配置。それを追い火花も、眷属を中心に囲む様に走り出す。
「捕獲、開始!」
 号令一下、機動部隊が手にした銃火器の照準を眷属に合わせ、発砲。耳を劈く強烈な炸裂音が室内に反響し、立ち込める硝煙が視界を遮る。それぞれを火線から避け、近距離あるいは中距離から的確に射撃するエキスパートの技。圧倒的な暴力が邪なるモノを屠ったかに見えた。

 煙が晴れてくると、眼前にはまだ五体無事な眷属がいた。あれほどの鉛玉の嵐を喰らっても尚、異形には目立った外傷は与えられていない。それもその筈、拷問を儀式と呼び信仰心を試す連中……生半可な攻撃では、捕獲どころか制圧すらままならない。けたけたと怪音を発する眷属を見やり、手段を変えようと火花は質問を投げかけた。
「この家に仕えてから倶楽部に傾倒したか、そもそも倶楽部の狂信者だったのか……あるいは、自身の意思とは無関係に倶楽部に襲われたか」
『正気トは思えない発言ダ。私は主の命に従ッタまデ』
 再びけたけたと嗤う眷属。物理で攻められないなら精神を揺さ振ろうとしたが、それは意味を為さなかった。せめて本意では無い行為であったなら多少の同情も感じられたが……こうまで否定するのであれば、最早慈悲は無い。
 (まあ、元より見逃してやる理由にはならないな)
「1番と3番シザース、足を封じろ。頭を潰すのはまだ先だ!」
 刹那に思考し、即座に次の指示を飛ばす。1番それに3番と呼ばれた機動部隊は即座に陣形を変更。対角線上に眷属を捉えつつ、ランダム且つシンクロした左右の機動で眷属への包囲を狭めた。

『フォハハハ……そうやっテ救済を拒む者は』
 近寄る機動部隊に対し、眷属が突如悍ましい程の甲高い悲鳴を上げた。瞬間、目にも止まらぬ早業で、手にした鉄球を3番と呼ばれた機動部隊に振り抜いた。
 ぐしゃり。

『苦痛ト精神の死を与えよう。嗚呼、この魂はもうすぐ救われる!』
 ぼとり、と。機動部隊の肉体の一部が鉄球に削がれ地面に落ちた。幸い動けなくなる程度の怪我だったが、それも『黄昏秘密倶楽部』の教義に則った『儀式』の一部だった。
『フヒヒ……痛みは喜び、痛みは赦し、嗚呼!』
 その光景を見て呆然とする屋敷の住人達。先程までメイド長として共に過ごしてきた家族とも言えよう彼女が、よもやこんな奇怪な化け物だったとは露にも思わず。こうやってアキラも拷問の様に苦痛を与えられて死んだのだろうか。

「民間人の保護を早く! 全周警戒しつつ後退、陣を立て直せ!」
 惨状を見ても火花は微塵も揺るがない。狂気に立ち向かうには人は弱すぎる。だが、人には人なりにそういったモノへの立ち向かい方があるのだ。再び発せられた指示の下、残った機動隊員が屋敷の住人達を囲う様に布陣し、眷属の攻撃に備える。

『フヒヒ……!』
 眷属は先程の奇声を上げながら、目にも止まらぬ速さで部屋を出た。形勢を見て不利を悟ったのだろうか、あるいは……



【私は主の命に従ッタまデ】
【苦痛ト精神の死を与えよう】
【痛みは喜び、痛みは赦し】

 主の命に従ったとあるが、これは屋敷の主なのだろうか。
 精神の死とは一体、最早暴力に興ずる必要は無いのだろうか。
 痛みは喜びと赦しなら、戦いは終わっていないのだろうか。

 黄昏の眷属は屋敷中に不気味な嗤い声を響かせながら、姿を消した。
 だがその声は止まらない……故に、姿を見つける事は容易いだろう。
 そして民間人の保護をしつつ、敵に一定の傷を与えられたのは事実だ。
 戦いは始まったばかりだが、決して悪いだけの状況では無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夷洞・みさき
屋内で溺死なんて方法は君の主の力かい?

【痛みは赦し】ね。そこだけは同意してあげるよ。だから、君も君の主とやらにも僕が痛みを与えてあげるよ。
罪を許されて元の所に還ると良いよ。
でも、苦痛と精神の死ね。最後に残る魂も殺すなんて、君の主は苛んで殺した相手の呪いが怖いのかい?
直接海水と行きたいけれど、深海の重圧と冷たさで君を苛んであげるよ。

相手はメイド長だった身。地の利は相手側だね。
一般の人も守らないと
先に現れた機動隊員が足りていないなら僕の同胞何人かに護衛に回そう
幽霊なので驚かれるの防ぐため、軽く冗句は言っておく。
「大丈夫、咎の有る人以外には無害だから。」

不意打ちを警戒しつつも、敵を追いかける



「大丈夫、咎の有る人以外には無害だから」
 夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は自身が呼び出した亡霊達を見て怯える屋敷の住人達を諭し、眷属が出ていった部屋の入口へ向かった。
 止まらない奇声、それが聞こえてくる方法へ同胞達を引き連れ、堂々と部屋の外へ出る。

 いた。眷属は狂ったような動きで屋敷の一階を走り続けている。まるで壊れた掃除ロボットの様にけたたましい怪音を響かせながら、壁に衝突と反転を繰り返し不規則な軌道で走る事を止めない。
「【痛みは赦し】ね。そこだけは同意してあげるよ」
 だから、君も君の主とやらにも僕が痛みを与えてあげる。眼下を駆ける怪異を睨み、ふわりと一階へ着地するみさき。それに気づいたか、眷属が鉄球を振り上げ、みさきを迎え撃たんと眼前へ迫ってきた。

 だがその迎撃も亡霊の無慈悲な一撃によって阻まれる。亡霊の一人が【澱んだ昏い海底の冷気を纏う生を羨む呪詛】で振り上げた腕を極低温で封じ込め、一人が【頭、手足、胴体、心臓を引きちぎる暴力】をもって鉄球を持つその腕を無残に引き千切る。
「苦痛と精神の死ね。最後に残る魂も殺すなんて、君の主は苛んで殺した相手の呪いが怖いのかい?」
 かつん、と靴音を響かせ、蹂躙された眷属へ歩みを進めるみさき。その目には侮蔑と憤怒が宿る。
『嗚呼! これこそが我に与えられし赦し! 嗚呼!』
 片腕を無くし止めどなく血の様な液体が溢れ出る眷属。しかしその心は、ある種の喜びに満たされている様でもあった。
「そうかい。それならこれも貰っちゃってよ」
 いつの間にかみさきの手元に現れた巨大な車輪が、眷属の両脚を引き潰さんと迫る。そして絶叫が響いた。それは二階のアキラの部屋からだった。

『あちらデも救済が始まっタ!』
 眷属が嬉しそうにはしゃぐ。自身の痛みなど構わない、我は儀式を完遂するのだと邪な勢いを増して。
「そうだね」
 それがどうした、と言わんばかりのみさき。
 そんな事、あらかじめ想定済みだ。

 眷属がみさきと交戦を始めた時と同じくして、二階のアキラの部屋で異変が起こった。不意にアキラの死体がピクリと動いたのだ。
『アキラ……え……?』
 部屋の隅で護衛に囲まれる長女はそれに気づき、おもむろに指を差した。それはむくりと立ち上がるが、顔は無く無表情の仮面を被る。黄昏への導き……死者あるいは気絶した者を『黄昏の信徒』として操る悍ましき技。眷属はこの為に自らを囮として、猟兵を外へ誘い出したのだ。
 ゆらり、ゆらりと不気味な動きで住人達へ近づくアキラだったモノ。しかし程無く異能と銃弾の洗礼を浴び、今度こそその場に崩れ落ちた。機動部隊と亡霊、部屋には二人の猟兵が残した恐るべき番犬がいたのだから。

「あー失敗しちゃったみたいだね」
 死体を損壊させてしまった事は謝るしかない。でも、気絶されてこれ以上眷属を増やされてはいけないな、とみさきは自分を戒めた。みさきの能力は、少しばかり刺激が強い。そしてくるりと眷属の方を見やり、改めて質問を投げかける。
「屋内で溺死なんて方法は君の主の力かい?」
 既に這う這うの体の眷属からは、この事件の黒幕を正しく聞き出さなければならない。
『それがどうしたというのダ』
 くけけ、と眷属が嗤う。未だ儀式を諦めた様子はない。だがその目論見は必ず潰えさせる。仕方がない、とみさきは手にした巨大な車輪を大きく掲げ、眷属へと振り下ろした。



 【眷属の主】……これは一体誰の事なのだろうか?
 そもそも屋敷の主はどうして『黄昏秘密倶楽部』を知っている風だったのか?
 残りの敵は一体どこに潜んでいる?

成功 🔵​🔵​🔴​

空雷・闘真
【POW】選択

「赦しだの救いだの…つくづく弱者の発想だな」

闘真は無防備のまま、屋敷に潜む敵を探す。

「神がいなきゃ何も出来ない。神に媚び諂うだけの生。惨めなことだな」

闘真は既に何者かの気配を察していた。
そいつを誘い出す為、隙だらけのまま挑発していたのだ。

「俺には赦しも救いも必要ない。俺の望むまま、飽くまで俺を生き続けるだけだ。罪も憎悪も怨念も、全て背負ってな」

その瞬間、闘真に【モーニングスター】が直撃した。
しかし闘真は倒れず、その隣に霧が立ち込める。

「こいつは俺の罪の結晶。邪神の腰巾着如きに、こいつを赦し切れるかな?」

霧は人の形を取る。
【戦場の亡霊】…かつて闘真が戦場で殺した敵兵の亡霊だった。



「赦しだの救いだの……つくづく弱者の発想だな」
 空雷・闘真(人間のバーバリアン・f06727)は無防備のまま、屋敷に潜む敵を探す。
「神がいなきゃ何も出来ない。神に媚び諂うだけの生。惨めなことだな」
 闘真は既に何者かの気配を察していた。そいつを誘い出す為、隙だらけのまま挑発していたのだ。刹那、クカァと奇声が響くと共に眷属が闘真の眼前に姿を現した。引き千切られた片腕をもう一方の腕で持ち、その先端にじゃらりと鉄球を伸ばす。

「俺には赦しも救いも必要ない。俺の望むまま、飽くまで俺を生き続けるだけだ。罪も憎悪も怨念も、全て背負ってな」
 挑発を続ける闘真。注意を引き付け敵意を煽り、無防備に己を攻撃しに来いと言わんばかりに。その瞬間、闘真に眷属の【モーニングスター】が直撃した。
 命中、肉が削げる耳を塞ぎたくなる様な怪音が屋敷に響く。しかし闘真は倒れず、突如その隣に霧が立ち込めた。

 霧は人の形を取る。【戦場の亡霊】……かつて闘真が戦場で殺した敵兵の亡霊だった。揺らめく影は不定形ながら、狂暴そうな気配を辺りへ撒き散らす。単車に跨り斧と銃を手にした亡霊は、その首を眷属の方へと向けた。
「こいつは俺の罪の結晶。邪神の腰巾着如きに、こいつを赦し切れるかな?」
 更に挑発する闘真。眷属は有無を言わさず、千切れた腕ごと鉄球を振り回し闘真へ迫った。それを遮らんとする亡霊が、手にした銃から弾丸をばら撒き眷属を近寄らせない。

『赦しを受け入れよ』
「……やってみろよ」
 亡霊は片手の銃で眷属を牽制し、片手の斧でその頭をかち割らんと猛追する。奇声を上げ疾走する眷属を、爆音を撒き散らす単車が追走する。交錯する刹那に重なる斧と鉄球、最早止まる事は死を意味するその様相は、さながら地獄のメリーゴーラウンドであった。
 だが眷属の相手は亡霊だけではない。乱舞する地獄の影から一つ、神速の拳が飛び出す。その一撃は眷属の顔面を仮面ごと吹き飛ばした。回転しながら落下する異形は満身創痍、剥がれ落ちた仮面の中から虚無が顔を覗かせる。

「獲物に気を取られたか馬鹿め、俺の最大の武器はこいつなんだよ」
 闘真は己の拳を掌で押さえながら、眷属を睨む。
 最早、大勢は決したに近しい。

成功 🔵​🔵​🔴​

火奈本・火花
「既に一人の犠牲を出しているのだ、これ以上の犠牲を出す事はUDCエージェントとして許さない」

■真の姿
胸から左腕にかけてが樹木化
浮き上がった血管のような根が、顔や腕、脚に張り巡らされている

■戦闘
眷属の意図など知れたものではないが、単なる狂気ではなく、儀式を為すための作戦でもあるのだろうか
狙われる可能性、信者がメイド長のみではない可能性も踏まえつつ、屋敷の家族からは目を離さないようにしよう

その上で黄昏の信徒を逃がさぬよう、下半身、特に脚を狙って拳銃での「2回攻撃」で機動力を削げないか試そう
鋼糸で捉える事が出来るよう、直線的な攻撃があれば、そのカウンターも狙う

質問は
「お前の主の名前は何だ?」



「既に一人の犠牲を出しているのだ、これ以上の犠牲を出す事はUDCエージェントとして許さない」
 一人の犠牲……アキラの生命と隊員の負傷。既にこちらも手負いなのだ。淡々とした口調で、それでも尚怒りを隠さない火奈本・火花(エージェント・f00795)は、屹然と部屋の入り口を睨む。

 人の意志とは、祈りとは、時として運命をも凌駕する現実を示す。眷属の意図など知れたものではないが、単なる狂気ではなく、儀式を為すための作戦でもあるのだろうか……
 部屋の護衛は機動部隊に任せて跳躍、戦場へ。一階大広間――既にこれまでの戦いで片腕と顔面を無残にも破壊された眷属は、それでも尚火花を見つけると嬉しそうに、尋常ではない速さで這い寄った。それでも尚、火花には追い付かない。クイックドロウ、刹那の手業で眷属の両脚をハンドガンの閃光が撃ち貫く。気味の悪い悲鳴を上げのた打ち回る眷属。追い打ちにエージェントグローブから鋼糸が放たれ、眷属を絡め取る。

「逃がすと思うか」
 淡々と、火花は尋問を開始した。その姿はいつの間にか真の姿――左上半身を樹木の様な歪な形状に、浮き上がった血管の様な樹木の根が全身を侵食する。ヤドリギの異能を顕現した火花は、厳しい口調で眷属を責め立てた。

「お前の主の名前は何だ?」
『アル……ジ……ィ?』
 ばちりと紫電を纏った電撃が眷属を襲い、汚い悲鳴がこだました。
「成程、ではもう一度聞く。お前の主の名前は何だ?」
 拘束式尋問術。嘘を吐けばダメージを、真実を伝えれば解除されるユーベルコード。単純ながらこの状況で最も有効な技だろう。
『アルジ……我ガアルジハ……ヒトリ……』
 唸り声を上げながら必死で正気を振り絞ろうとする眷属。
『ゴシュジン……サマ……イガイ……アリエナイ!』
 瞬間、物凄い轟音と共に電撃が流れる。しかし余りにも膨大なその電撃で、絡みついた鋼糸が一部千切れる。その隙に眷属は拘束から離脱した。しかしその体は既に幾度もの交戦で傷つけられ、立って歩く事すらままならない状態だった。



 この屋敷の主人は【眷属の主】ではない。
 【監視カメラ】に映っていたのはメイド長と奥方。
 残るは長女か、メイドか。

 真相は目前まで、迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メタ・フレン
こんなになっても主、主と。
ご苦労なことですね。

今なら尋問することも容易でしょうし、一度眷属さんに質問してみます。

「それ程までにあなたが身を削って尽くしているというのに、何故あなたの主はあなたに何もしてくれないんでしょうか?」とね。

それでもしこいつが「疑問」を少しでも抱いたら【謎を喰らう触手の群れ】を飛ばします。
まあこの手の人種は考えるという行為そのものを放棄していることがほとんどだから、失敗の可能性の方が高いですけど。
ま、失敗したなら適当に【エレクトロレギオン】で処理するだけです。

でも成否関係なく、一度この手の人種に聞いてみたいんですよ。
どんな心境で、何の見返りもなくこんな凶行に走るのかをね。


火奈本・火花
「主を守る義理があると言うより、そもそも質問に的確に答える知恵が無いようにも見える、か」

■戦闘
機動部隊への協力要請は継続しよう
だが目の前で虫の息になっている信徒より、仲間の可能性が高い長女とメイドへの警戒を行って貰うつもりだ
完全な勘ではあるが、怪しいのはメイドだろうか。同じ職と言う事もあるしな

私自身は信徒の終了措置に注力する
弾倉を一発分だけ残して、後は全て撃ち込む。機動力は削いでいるし、狙うのは頭部の仮面だ

信徒が終了した直後、気の緩みそうな瞬間に奇襲される可能性が高いし、戦闘体制は継続する
ただ姿を表さないならば、長女とメイドの二人を機動部隊に拘束させよう
反撃が無ければ良し、炙り出せれば好都合だ



「こんなになっても主、主と。ご苦労なことですね」
 逃げおおせた眷属の前に、メタ・フレン(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f03345)がふわりと着地する。先に眷属と交戦していた火奈本・火花(エージェント・f00795)と挟み込むような形で対峙。袋の鼠、眷属が逃げる事は最早叶わない状況だ。
「それ程までにあなたが身を削って尽くしているというのに、何故あなたの主はあなたに何もしてくれないんでしょうか?」
 この瞬間にフレンは自身のユーベルコードを発動。【謎を喰らう触手の群れ】――尋問と拘束を兼ねる異形が、その牙を剥かんとフレンの影からゆらゆらと頭角を現し始めた。

『アルジ! アルジハスデニキュウサイヲナシテイル!』
「何を勘違いしているのですか。あなたがこれだけ教義を実践しているのに、どうして主は何もしないんでしょうか」
 最早疑問形ではない、尋問。語気を強めるフレンに圧倒される眷属は、己の異能を発揮しようと力を込めるが、倒された死体が二度起き上がる事は無かった。
「主を守る義理があると言うより、そもそも質問に的確に答える知恵が無いようにも見える、か」
 火花が眷属を睨みながら独り言ちる。その手には黒光りするハンドガンが。少しでも戦意を剥きだせば、即座に撃ち殺すという強い意志の表れ。
「あの中の誰が主かは誰だっていいです別に。けれど」
 ふぅ、とため息をつきフレンは挑発する。反応はあった、ならばもう一押し。
「この状況で何もしないというのは、教義に反するのではありませんか?」
 それは眷属の務めに対する主への質問。もし主が屋敷の住人内に紛れているのならば、猟兵を引き剥がした今こそ屋敷の住人を殺戮する最大の好機。しかし何も起こらない。つまり眷属は主に捨てられた……?

 そう、一瞬でも思ってしまった。元は人、心と体を邪神に捧げようと、本質は人であったまま。瞬間、影より放たれた触手が眷属の全身を縛り上げる。
「愚か」
 眷属の全身は縛り上げられた触手に無残にも五体を裂かれる。転がり落ちる頭だった物に、火花は間髪入れずにハンドガンを叩き込んだ。弾数は数えている。一発は万が一の為に残し、その醜悪な異形の原形を留める事無く、飛び散る飛沫と肉片に姿を変えさせた。

 フレンはその様子を一瞥すると二階を見る。そろそろ、主とやらが動き出す頃合いだろうか。
「そろそろ動く頃合いか。だがあっちは大丈夫だ」
 仲間がいる。火花はそう強く言うとフレンと共にアキラの部屋へと向かった。





 二階のアキラの部屋では眷属の襲撃を警戒して、呼び出された機動部隊による鉄壁の布陣が成されていた。ユーベルコードによる召喚、制限はあれど更新されたコールがその現界を未だ許している。一階では眷属が終ぞ倒れた。だが、焦る事は無い。

 今回は一人しか出来なかった、しかも合わせて二つの眷属が既に力を失った。何という失態……しかしここを出てやり直せばいい。そう、ここを出ればいいのだ。ここにいる連中を全て絶やした所で、この先に赦す数に比べれば微々たるモノ。誤差の範囲だ。

 不意に機動部隊の動きが変わった。眷属の姿が見えなくなった事、眷属に戦意がほぼ無い事、これらを踏まえて今後の安全の為、機動部隊が一人ずつ屋敷の住人を外へ出すというのだ。まあいい、これでようやく解放される。素知らぬ顔で呼び出される時を待つ。最後に残された私はそこで、既に手遅れである事を悟った。
「――お前が主だな。しかし」



 メイドが主とは何たる皮肉か。
 ハンドガンを構える火花が呟く。



 既に屋敷の住人は全員脱出した。
 ここに残されているのはメイドのみ。
 何故ばれた!? 何故…………
『フフフ、アハハハハ……』
 哄笑するメイドの姿が蒼い炎に包まれる。
 最後の一発をその怪異に撃ち込む火花。しかしそれは届かず、炎に弾かれる。
 そして竜巻の様に巻き上がるその炎は水底の様な暗い水となり、
 辺りに邪な飛沫を撒き散らし、主の真の姿を顕わにした。

 ふわりとしたおさげをヴェールで包み、
 その太腿に瀟洒な鋏を、その細い腰に歪な鉄球を。
 修道女の様な可憐な出で立ち、燭台を掲げるその姿は神に仕える聖者の様。
 しかしその女が仕えるモノは邪神、人類の敵、深淵より来たる骸の残滓。
 そしてそのモノはオブリビオン、この世界に仇なす黄昏の使徒。

「火責め、水責めか……悪趣味な」
 舌打ちをする火花。次の弾倉を装填するも、メイド――主はその隙を逃さず、己の腰に差した鋏を投げつけた。
 その一撃を避け、体勢を立て直す火花。主は最早人外の動きで宙に舞い、引きつった笑みと冷酷な視線を投げかける。
『よく分かったわねェ……ヤドリギのお嬢さん』
「馬鹿め、分かるか。両方同じ目に合わせただけよ」
 メイドと長女のどちらかが主であることは分かっていた。それが絞れないなら、両方とも個別に尋問すればいい。
 たまたまメイドの方が怪しいと判断したから、先に火花が来たまで。それ以外に理由などない。
「……狂気存在確認、これより」
 対象を無力化する。

 銃把が掛かる指先に力がこもる。
 遂に狂気の先触れを降す時が来た。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『黄昏色の信心』祈谷・希』

POW   :    偉大なる先駆者からの加護
自身の身長の2倍の【強化された眷属『黄昏の信徒』】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    神からの愛と赦しを貴方に
【麻袋を被り巨大な鋏を携えた屈強な拷問者】の霊を召喚する。これは【人切り用の巨大な鋏】や【手足や首を縛って吊るし上げにする鎖】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    肉と魂が死んだ時、貴方は『黄昏の救済』に召される
レベル×5体の、小型の戦闘用【拷問具を装備した歪な人形】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夷洞・みさき
メイドな主ね。結局、神のに仕える者ではあるようだけど。

生憎、神様とやらの救済はいらない身でね。
罪を裁いて、咎を洗うのは、生きている人の特権だよ。
だから、君達の咎は僕等が洗い流してあげよう。
でも水責めなんてしないよ、僕が君に下すのは水葬、だからね。

忘れ去られた海の潮騒と香りは君達に届いたかな?

WIZ
相手の手駒が増えるのは、周りの人への被害にも気を付けないと行けないし、まずはあちらの小さなご同業(?)を封じさせてもらおうかな。
人が触れるだけでも大けがになりそうだし、巻き込まないようにしないとね。
相手に肉薄して拘束、敵攻撃範囲を制限。
護衛の同胞は継続

真の姿:状況次第または、拘束され動けなくなった時



――二階・アキラの部屋
 無造作に散らばる家具、弾痕と焦げ跡と傷だらけの壁紙が、これまでの戦闘を物語る。
 最早ここに人はいない。ここから先は人外の時間。
 未来への希望は果たして、呪われた過去の残滓を討つ事が出来るのだろうか。

「メイドな主ね。結局、神に仕える者ではあるようだけど」
 夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は眼前の主とやらを嘲笑する。
 既に人ならざる身。僕の罪なんてものがあるなら、それは既に代価を支払った。
「生憎、神様とやらの救済はいらない身でね。罪を裁いて、咎を洗うのは、生きている人の特権だよ」
 故に、その狂った教義を否定する。イカれた救済を否定する。
 主へ向けて歩むみさきの周囲には、既に先の同胞が姿を現していた。
 最早護衛対象は存在しない。ならば、後は眼前の狂気を駆逐するだけ。
「だから、君達の咎は僕等が洗い流してあげよう」
 瞬間、部屋全体の空気が、水底の様な冷たさと場違いな磯の香を纏う。
「でも水責めなんてしないよ、僕が君に下すのは水葬、だからね!」
 みさきの周囲から爆ぜる飛沫が主を襲った。飛沫は蜷局を巻いて水龍が如く、天井まで届かんとする勢いでその勢いが主を飲み込んだ。

『それでも神は、等しく手を差し伸べて下さるわァ。その為に私が赦すのですから』
 水流に顔ごと締め付けられる主。しかしそれすらも教義における赦し、抗う事も無く水の中から声を伝える。その音色は甘く、冷たい。
『貴女の罪は私が貰い受けるわァ』
「勿体無くてあげられないよ、君にはね」
 ばちんと水流が弾け、中から水滴を滴らせる主の姿が。その顔は赤く上気して恍惚した表情を浮かべている。無傷……ではない。でなければあんな顔色にはならないだろう。みさきは己の処刑道具――七咎潰しの大車輪を取り出して、主の反撃に備えた。
『そんな怖い顔をしなくてもォ、ちゃあんと赦してあげますわ』
 手を振りかざす主、すると地面の影より異形の従者が召喚される。その数およそ100体。
『救済ィ、してあげる』
 翳した手を下すと共に、わちゃわちゃとぎこちない動きで異形の群れがみさきへ殺到した。その手にした鉄球――棘付の拷問器具を引きずって、床を削りながら津波の様に。
「そんなにお友達がいたんだ。賑やかだね……でも」
 みさきの前に同胞、6体の亡霊が立ち塞がる。異形と異形のぶつかり合いは、部屋に死の気配を充満させた。足元の異形はみさきがすり潰し、残る異形はその前で亡霊の異能が五体を引き千切る。

 縊り殺される異形の群れを前に、主はまたも恍惚の表情を浮かべる。
 それはまるで、狂った救済を愉しむ邪神の様。
 死して尚それを振りまく脅威は、未だ健在だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

火奈本・火花
「やはり人型のUDCは厄介だな。人に紛れるのは勿論だが、この場を逃れる、という選択肢を選んでくる。だが……お前はすでに我々が発見した。後は捕獲するだけだ」

■真の姿
胸から左腕にかけてが樹木化
浮き上がった血管のような根が、顔や腕、脚に張り巡らされている

■戦闘
基本は拳銃による「2回攻撃」で、奴の呼び出した召喚存在を攻撃する
一撃を与えれば消えるようだし、鋼糸を鞭のように振るって切り付ける事でも倒せるか試してみよう

ある程度まで減らせたら爆弾を人形の群れの中へ、なるべく奴の近くに投げる
爆撃で数を減らすと同時に鋼糸を奴自身に伸ばし、捕獲を試みる。この状況で逃走はしないだろうが、動きを封じる事は有用だろう



「やはり人型のUDCは厄介だな」
 火奈本・火花(エージェント・f00795)は眼前に浮かぶ主を睨み、呟いた。
 (人に紛れるのは勿論だが、この場を逃れる、という選択肢を選んでくる)
 実際この場で逃げられたら、後の追跡は大分困難になっていただろう。それだけ、今回の様な場合、速やかに対処しなければならない。ハンドガンを主に向けて構えたまま、火花は宣言する。
「……お前はすでに我々が発見した。後は捕獲するだけだ」
 銃把に掛かる指先が殺意を弾いた。

『それが貴女の赦しィ? それでは足りない、足りないわァ』
 既に呼ばれた異形の群れが壁となり主を護衛する。麻袋を被った異形の頭部を、正確に一発で撃ち抜いていく火花。それでも尚、圧倒的な物量を崩し切る事は出来ない。戦術を変更、ハンドガンを戻しエージェントグローブから射出される鋼糸による面制圧。一体ずつでは手数が足りぬのならば、纏めて始末するだけ。その手から放たれた鋭い鋼の殺意が音も無く異形の群れの塊を包み込み、裁断する。ばらばらと崩れ落ちる異形の壁、それでもまだその群れ自体は健在だ。
 (ここまでは想定通り……)
 鋼糸に穿たれた護衛の解れを見やり、ボールペンに偽装した小型爆弾を用意する。
「赦し……違うな」
 カチリと起爆スイッチを入れ、爆弾を投げ込むコースを計算。後は放るだけ。
「捕獲させてもらう。お前への救済など無い、黄昏の使い!」
 放物線を描く暴力装置が異形の群れ……浮かぶ主の足元へと投げ込まれた。



●黄昏から来た少女
 轟音と共に爆ぜた暴力が、巻き込まれた異形を形の無い物体へと変えていく。そして立ち込める噴煙の中に、火花は再度、手にした鋼糸を放った。異形は粗方片付けた、今度は主を引きずり下ろす為。傲慢な目で見降ろす狂気存在を、地面に這いつくばらす為に。
 しかしその一撃は煙の中から現れた巨大な影に防がれる。
『中々……中々良い救済でした。でもォ』
 それだけじゃ足りないわ。呟く主の足元から更なる異形が姿を現す。先程排除した『黄昏の信徒』を更に巨大にしたような化け物が。右手に巨大な鉄球、左手に剣の様な鋏を持ち、絡め取られた鋼糸をその鋏で寸断する。そして残った鉄球を、火花に向けて猛然と振り下ろした。
 巨躯から放たれる圧倒的な暴力が火花の眼前に迫る。しかしそれすらも予想していたかの様に、既に異形と化した左腕で難なく受け止めた。
「そう来るだろうと……思っていた」
『その姿を、待っていました』
 対峙する両者、根の様に浮き上がった血管が火花の肌を侵食している。その姿は恐ろしく、暴力的に神々しい。歓喜の声を上げる主を無視して、火花が言葉を続けた。 
「私が何度“お前と対峙した”と思う?」
 小型と大型の眷属を使った攻撃方法、瀟洒な姿、狂気的なまでの嗜虐性。恐らく間違え様が無い。これはアレらと同種の存在。自身が何度も屠った、あのUDC。
「もう一度言おう主……いや、祈谷・希」
 受け止めた鉄球を投げ返す。最早、これ以上は語るまでも無い。

「お前を捕獲する」

成功 🔵​🔵​🔴​

メタ・フレン
およそ100体の拷問人形……
わたしの【エレクトロレギオン】は95体の機械兵器を出せますが、どうやらわたしより主の方が少しレベルが上みたいですね。
これは勝負のし甲斐がありますよ。

と言っても、わたしの狙いはあくまで【時間稼ぎ】。
機械兵器達が取り巻きを抑えてる間に、猟兵さん達はあの主を攻撃して下さい。

それにしても美人だなぁ、あの主。
これで内面がまともだったなら、あの巨乳に顔をうずめてみたかったんですけど。
あの人の信じる神様は、セクハラも赦してくれますかね?

…もし主に隙があればマジックハンド型の機械兵器で、主の胸を狙ってみます。
思い切り揉みしだいてみたら、あの狂気に染まった顔も変わるんでしょうか。



「ざっと100体……わたしより量が多いですね」
 メタ・フレン(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f03345)は眼前の主『祈谷・希』の実力に戦慄した。これでも相当場数を踏んで、ちょっとした相手なら遅れは取らない自負はあった。しかし目の前の可憐な醜悪の塊は、それをも軽く凌駕してきた。
「……これは勝負のし甲斐がありますよ」
 それでも尚、諦めない。【エレクトロレギオン】で自身が呼べる最大数の機動兵器を召喚する。その数95体。それに呼応するかの様に、主も自身の眷属を100体召喚、足元に配置する。
「行きなさい……」
 見た所対空火器の類は無い。ならば数で劣勢だとしても、手数と先制打で押し切れる筈。フレンは爆装した頼もしき編隊を見送り、自身もひっそりと主へ向けて前進を始めた。



 (それにしても美人だなぁ、あの主)
 ぞわり、とフレンの精神が蠢く。
 (これで内面がまともだったなら、あの巨乳に顔をうずめてみたかったんですけど)
 内から湧き出る衝動を、堪えられそうにも無い。
 (……あの人の信じる神様は、セクハラも赦してくれますかね?)
 それは狂気に呑まれた肉欲か、本能に従う己の意思か。



 フレンはゲームデバイスからマジックハンド状のアイテムを召喚する。本来なら本物が欲しい所だが、生憎手持ちがない。どちらにせよ感触は分からないが、感じさせる事は出来るだろう。部屋中で暴力を振るいあう眷属たちを見て恍惚の表情を浮かべる主。宙に浮かぶその足元で、ふらりと小さな影が迫っていた。
「えい」
 フレンは即席のマジックハンドを主の胸元へ伸ばす。もう少し前に出れば艶かしい肢体をよく見れただろうに。ただ今はその胸を揉みしだかなければならない。脅迫的なまでの肉欲に支配されたフレンの一撃は、しかし瀟洒な鋏に受け止められ弾かれた。
『惜しかったわねェ。あっちに気を取らせてここまで来れたのに』
 主は嬌声を上げながら鋏を投げつけ、マジックハンドを文字通り消滅させた。
 己の両胸を蠱惑的な仕草で押さえ付けながら、主は続けた。
『もう少しで私の心臓を抉り……嗚呼!』
 いや違うそうじゃない。というかわたしは、一体何をしているんだ?
「そ、そうね。残念だったわ」
 あなたの胸を揉めなくて。

 狂気は侵食する。それは如何なる形で発現してもおかしくは無い。幸いにして眷属の動きは上手く封じられているが、主への決定的な一打が望めない状況が続いている……

成功 🔵​🔵​🔴​

ボーリャ・コータス
あらら、一番の黒幕に話を聞きに行ってたわけね。
勘が悪かったわ……捜査も進まなかったわけね。
まぁ結果オーライ、自白は取れたし
あとはぶちのめすだけかしら。

距離を保ちつつ紫電疾駆で体力を削っていくわ。
痺れてくれたり行動に制限入れば儲けものね。
技能は属性攻撃3、全力魔法2、高速詠唱1、
第六感3、呪詛2、祈り2、戦闘に使えそうなのは全部つっこむわね。

殺害方法とかどんな狙いで事件を起こしたのかとか、
死ぬ前に語りたいことがあったら聞いてあげるわ



「勘が悪かったわ……捜査も進まなかったわけね」
 ボーリャ・コータス(ミレナリィドールのシンフォニア・f02027)は宙に浮かぶ主を見て呟く。一番の黒幕に話を聞きに行っていたボーリャだからこそ、その憤りは想像に難くない。
「まぁ結果オーライ、自白は取れたし」
 あとはぶちのめすだけかしら。
 怒れる神のプロトタイプは、眼前の邪神信仰者へ鉄槌を降さんと迫った。

 既に眷属は仲間達の活躍によって、その殆どが無力化されている。打撃を与えるなら今しかない。
 環境変数調整――コード改変、リブート。神たる権能を発揮し、周囲の物理的環境を上書きする【紫電疾駆】。[内なる電属性を言語体系に沿って分解、再構成]/ボーリャに纏わりつく紫電がバチバチと集合・拡散を繰り返す。[高速詠唱による圧縮に、付加された正義の祈りと悪への呪詛]/そして紫電へ更に白と黒の光と闇が、二重螺旋の形で纏わりつく。タイミングは己の感に従って、明確な殺意をもって、主の喉元へその刃を突き立てる為に。
『何だか……面白そうな事になってるわねェ』
 主は喜びの声を上げる。そうだ、それこそが赦しの、裁きの雷に相応しい。
「面白くなんか無いわよ、これは」
 臨界まで圧縮されたエネルギーが燃素結晶を輝かせる。
 広がる紫電を一点に収束させる為、詠唱装置が魔導曲面を展開する。
「神の怒りそのものだから」
 70束の雷光渦巻く神の鉄槌が、ボーリャの周囲より放たれた。
 放たれた極太の紫電は魔導曲面にぶつかり、収束。最早青白く輝く何かと形容せざるを得ない、非常識な威力と化して、宙に浮かぶ主を飲み込んだ。

 瞬間的な燃焼が酸素を奪い、かろうじで延焼を防ぐ事は出来たが、何者かに喰われたかの様、その非常識は屋敷にぽっかりと大穴を開けた。
 主はその威力に飲み込まれ、遂に地面へと落ちる。最早飛ぶ事は叶わない。赦されようなんて甘い考えを持たなければこうはならなかった筈。折角大穴が開いたとて、既に逃げ出せるだけの余力が、主には無かった。

 神の怒りは、明確に裁きを下す事に成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葡萄原・聚楽
ふぅん、成る程。
そういう敵か、じゃあ少し手伝おう。
俺も因縁の相手ってのはいるからな、コレは自己満足の勝手なお節介だ。

【POW】
眷属の残骸を武器「爪の刻印:人形」で喰らってパペットに。
敵の攻撃は見て(技能「視力」)避けたり、武器「パペット:バスタードソード」で受け流しつつかな(技能「武器受け」)
無理にでもまず敵の近くまで行く(技能「捨て身の一撃」)

敵の足を地面ごとぶっ潰す(ユーベルコード+技能「鎧砕き」)
大きかろうが小さかろうが、足元が覚束無いんじゃやり難いのは一緒のはずだ。

俺は今回あくまで手伝いのつもりだからな。
取り巻きの片付けや、妨害するような行動優先でいく。

※アドリブ、他の方との絡み:歓迎


空雷・闘真
「お前の下僕にも言ったことだが。赦しだの救いだの、弱者の戯言に付き合う趣味など、俺にはない」

闘真は【ジャンプ】で、一気に主の元へと間合いを詰める。

「だが、たまにはお前らの神様ごっこに付き合ってやってもいいぞ」

闘真は主の眼前に立ち、【力溜め】【怪力】で、神如き力を腕に籠める。
稲妻のような血管が縦横に浮かび上がったその腕は、最早神腕と言っても差し支えないものだった。

「この俺が直々に、赦しをくれてやろう」

己が【拳】を【武器】とし、【捨て身の一撃】からの【グラウンドクラッシャー】。
闘真はその神拳を、主に向けて解き放った。

「汝は、赦された」



「お前の下僕にも言ったことだが。赦しだの救いだの、弱者の戯言に付き合う趣味など、俺にはない」
 地に墜ちた主を見やり、空雷・闘真(伝説の古武術、空雷流の継承者・f06727)は主の前へ飛び込み、不敵に言い放つ。己が身一つで地獄の様な戦場を渡り歩いた傭兵には、最早救いだの赦しだの耳触りの良い言葉は通じない。そんな甘言を戯言と切り捨て、拳を構える。
「……ふぅん、成る程。そういう敵か、じゃあ少し手伝おう」
 続く葡萄原・聚楽(サイボーグのパラディン・f10987)、この屋敷の住人と同じくUDCに家族を“壊された”聚楽にとっても、目の前の敵の所業はとうてい許されるものではない。主ににじり寄る二人、だがその前に屈強な眷属がゆらりと、その姿を現した。

「いいだろう、そいつの方が俺向きだ」
 右足を半歩前に出し、いつでも飛び込める体勢を作る。3m近い巨躯の眷属だが、その分足元も懐も狙いやすい。丹田に意識を集中、気合を溜め込む。
「先に行かせてもらうよ」
 聚楽は床に転がる小さな眷属の死骸を掴むと、己の【爪の刻印】で喰らう。ぐちゃりと、吐かれた残滓が重く硬いパペットへと変貌し、戦士の形状をしているもう片方のパペットと合わせ、眷属の前に対峙した。
『その信念、転向させて上げますわ』
 ニヤリと笑みを浮かべる主。右手に鋏を持ち高く掲げる。その動きに合わせる様に、眷属も右手の巨大な鋏を大きく振り上げた。
『教義を説くのも務め、ですから』
 主が嗤う。自らの正しさを証明する為に。
「やかましい……この俺が直々に、赦しをくれてやろう」
 闘真が一歩踏み込み、戦端が開かれる。
 矜持と教義、信念の衝突が始まった。

 駆ける聚楽が先手を取る。間合いを詰め死骸のパペットを振り回し強襲、宙を舞う暴力が眷属の胸元へ迫るが、下段から振り上げられた鉄球に打ち落とされた。
「それで終わりじゃ……無いんだな!」
 反動で回転、裏拳の要領でもう一撃を試みる。しかし一歩間合いを外され、その一撃は空を払った。体を開いて一撃を避けた眷属は、その隙を逃さず振り上げた鋏で反撃に転じる。寸前の所を戦士のパペットで受け流すが、崩れた体制に眷属の追撃が重なろうとしていた。
「こっちを忘れて貰っちゃ……困るぜ」
 闘真が吼える。聚楽が作った僅かな時間で既に心身共に気は行き渡った。稲妻のような血管が縦横に浮かび上がったその腕は、最早神腕と言っても差し支えない。体を開ききって動けない眷属。その特大の隙を逃す闘真ではない。
「お前らの神様ごっこに付き合ってやる。往くぞ」
 風が唸る。神速の踏み込みは間合いを無きものとし、懐手前にその身体を預けた。
「汝は、赦された」
 闘真はその神拳を、主に向けて解き放った。

 力の開放、圧縮された闘気が形を成す。放たれた拳は眷属を吹き飛ばし、その衝撃で屋敷の部屋そのものが崩れる。その一撃で体勢を立て直す聚楽。
「足元が覚束無いだろ? おまけをくれてやるよ」
 跳躍、残骸のパペットを振り上げて転がる眷属に飛び掛かる。狙うのは眷属の足元。ぶつかる衝撃で今度こそ、部屋そのものが大きく崩れ落ちる。

 屋敷は最早当初の面影は無く、縦横に放たれた破壊の衝撃で原形を留めない。二階のアキラの部屋だった場所には既に物は無く、がらがらと轟音を響かせ一回まで崩れ落ちる有様。地に足をつけ立ち上がる猟兵達の前に、それでも眷属と主は健在を誇示する。
『ああ……大分汚してしまったわ。これじゃご主人様に叱られるわね』
 だが、その言葉に以前ほどの余裕は無い。
 主は、確実に追い詰められている。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

火奈本・火花
「ただ倒すだけではUDCを完全に終了させる事が出来ないだろうし、お前を倒して黄昏秘密倶楽部自体を捕獲・収容させる事には至らないだろうな」

■戦闘
だが、目の前のお前を捕獲せずにいる選択肢など私にはないのだ

今は屋敷自体も大きく変わっている。……機動部隊に家族を避難させておいて良かった
ともあれ「地形を利用」し、瓦礫や粉塵で身を隠しての「先制攻撃」「暗殺」を実行しようと思う
相手をするのは巨大な信徒になるだろうか。接近に気付かれなければ祈谷・希に直接一撃を叩き込むが、気付かれるようであればヤドリギの一撃で信徒を迎え撃つ
信徒からの邪魔を無視できるようになった段階で、「捨て身の一撃」を狙って拳銃で心臓を狙おう


クリーク・クリークフリークス
拙草は最初から完璧に真相を見抜いていたである!
だからここに潜んでいたである!
異形なる邪神の眷属なぞ、決して見逃さないである!

技能:目立たない9、だまし討ち3、地形の利用3で
何の変哲もない普通のタケノコのフリをして
戦場の隅っこに隠れていました。
隙を見て不意打ち狙いでタケノコ・バタリオンで攻撃します。
技能は2回攻撃7、範囲攻撃2、先制攻撃2、戦闘知識2で
ユーベルコードを効果的に使えるか意識します。

戦争を! 闘争を! さらなる戦いを! である!


アト・タウィル
さて、殺人事件の調査とのことでしたが、すでに犯人を追い詰める場面でしたか。
それでは私は、皆さんの援護に回るとしましょう。

魔笛≪Guardian of the Gate≫を手に、狂気の行進曲で皆さんを鼓舞しましょう。
私には、今の彼女とは深い因縁がありません。
それならば、トドメを刺すのは他の方であるべきです。
そのようなことを考えながら、明るいマーチでありながら多少の不安を覚える音楽を奏でましょう。



「ただ倒すだけではUDCを完全に終了させる事が出来ないだろう……」
 崩れた屋敷の一角、瓦礫を挟んで主と対峙する火奈本・火花(エージェント・f00795)が主のいる方角を睨む。
「それに、例えお前を倒したとして、黄昏秘密倶楽部自体を捕獲・収容させる事には至らないだろうな」
 口調は淡々としているが、既に犠牲者が出ているこの事件、内心の怒りは言葉の端々から溢れていた。
『貴女はやはり、私達をとても深く理解している』
「そうだ。だが目の前のお前を捕獲せずにいる選択肢など、私にはないのだ」
 樹木の様な異形と化した半身を震わせ、主の挑発を流す火花。奴はまだ諦めてはいない。この状況ですら脱する事が出来ると信じている。あるいは、この危機すら教義の救いと赦しだとでもいうのだろうか。

「少し出遅れてしまいましたか……でも犯人はあそこにいる訳ですし、私は皆さんの援護に回るとしましょう」
 風が吹いた。ふらりと、アト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)が現れる。その手には奇妙に捻れたフルート【魔笛≪Guardian of the Gate≫】が。
「さぁ進みましょう。進めばすべてがうまくいきます」
 フルートを口元に寄せるアト。奏でられる旋律は明るくもどこか不穏な【狂気の行進曲】。しかしそれは、ふつふつと猟兵達に闘志が沸き上がらせた。
『狂気を奏でる人形……フフ、相手に不足は無いわ、ねェ!』
 全身を紅潮させた主が叫ぶ。お互いが試練の時か、空気を震わせるその叫びは【麻袋を被り巨大な鋏を携えた屈強な拷問者の霊】を顕現させた。醜悪な形状の大鋏を担ぎ、猟兵の前に立ち塞がる威力。だがそれだけではない。
『これが神が与えたもうた……私の救い!』
 再び100体の拷問人形が群れを成す。その後ろには屈強な眷属が。未だ主はかの様な力を持っていたのだ。しかし。

「戦争である!」
 何か出た。
「戦争である!」
 獰猛なる漆黒、クリーク・クリークフリークス(ブラックタールの戦場傭兵・f02568)が突如瓦礫を突き破り、その姿を現した。
「拙草は戦争である! 拙草は最初から完璧に真相を見抜いていたである!」
 屋敷が崩れ大地より這い出たクリークは、高らかに宣言した。
「だからここに潜んでいたである! 異形なる邪神の眷属なぞ、決して見逃さないである!」
 正義の異形が狂気の異形らを弾劾する。
「戦争を! 一心不乱の戦争を!」
 大地が割れ、瓦礫を裂き、黒の軍団が姿を現す。
「闘争を! 熾烈で苛烈な闘争を!」
 その叫びは瞬く間に増え、アトの調べに乗って広がってゆく。
「戦いを! さらなる猛烈な戦いを! である!」
 役者は揃った。最後の戦いの火蓋が、切って落とされた。

 鉄球を引きずった拷問人形の群れが、大地を震わせ猟兵の元へ殺到する。しかしそれらは鋭い黒きモノ達【タケノコ・バタリオン】によって悉くが駆逐された。数が威力ならば更に多い数で蹂躙すればよい。ホバートレイで滑るクリークの周りには無尽蔵に筍の同志達が集う。その姿は狂気すら飲み込む獰猛な漆黒。ぬらりと出した銃器と数珠を手に、次なる獲物を狩らんと疾駆する。

 調べは止まる事を知らない。戦場に浸透したその行進曲は、あらゆる悪意に立ち向かわんとする猟兵の心を燃やし続ける。それでも飛び交う暴力の渦中、純然たる威力の化身がアトに迫った。だが恐れる事は無い。詰めた間合いは双方の死中。大鋏を広げその首を狩らんと、大きく振りかぶった邪霊は不意にその場で崩れ落ちた。その影より黒き筍の弾丸が飛び出したのだった。五体を貫かれたその姿は、まるで磔刑の様。機を制された邪霊は音も無く姿を消し去った。
 
『これは……嗚呼、私はまた赦されようとしているのですね、神よ!』
 狂える神への妄信が主を支える。それは文字通りのデタラメ。とうに潰えた退き口を認めず、もう一度赦されようとする愚考。瓦礫に身を潜め、巨躯の眷属に護らせるその姿は、刻々と迫る刑を待つ囚人の様でもあった。
 不意に眼前で音が爆ぜた。眼前の巨躯が膝をつき、その腹部にはぽっかりと大穴が開いている。
「誰が許すか」
 火花だった。樹木の様だった半身は元に戻り、根が張ったように浮き出た血管の後も消えている。
「お前は終わっているんだ、祈谷・希」
 位置は既に分かっていた。後は気取られず如何に近付くか……その中で頼もしい援軍が陽動になり、音を隠し姿を潜め、瓦礫の中を渡り歩く事が出来た。そして元より仲間達の攻撃を受け、無事では済まない状態だった眷属は、火花の一撃を受け、がらがらと音をたてながら姿を消した。
『終わる? 違うわ、私は救済されたのよ!』
 上気した顔を上げ火花に迫る主。その手にはもう何もない。彼女を護る眷属は、どこにもいない。
『さあ……早』
「それ以上言わせない」
 弾丸が主の心臓を貫いた。ただ人が人の道具で、狂気の根源を制した。
『か……ハ……』
 止めどなく赤い血が流れる、まるで人の様に。だがそれは人の姿をしたオブリビオン、UDCアースの邪神の眷属だ。
「化け物にトドメを刺すのは、人であるべきです」
 ふわりと、アトが近寄る。周囲の眷属らも既に姿を消していた。
「戦争は終わったである!」
 クリークも来た。同志達は既に大地へ還った様だ。
「そうだ、これで終わりだ。お前は人に負けたんだ」
 仰向けに倒れる主を、祈谷・希を睨みながら、火花は勝利を宣言した。



 救助された屋敷の住人達は一度、全員が改めてUDCの取り調べを受ける事になった。
 『黄昏秘密倶楽部』との関連、長男殺害の真相、色々と詳らかにしなければならない事は多い。
 そして祈谷・希の遺体も同じく引き取られ、厳重に収容される。
 今回の事件は幕を下ろした。しかし黄昏の暗躍はこれだけではない。
 そして、これで終わりでは無いであろう事は、誰しもが感じた事であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日
宿敵 『『黄昏色の信心』祈谷・希』 を撃破!


挿絵イラスト