『はじまりの猟兵』
〜獣人戦線・はじまりの場所〜

 ……知らなかった、皆さんがここまで強いだなんて!
 今回の戦いはまさに『世界大戦』でした。人道も良心もなく、世界に住まう獣人の事など一顧だにしないオブリビオン達が、大軍勢を率い、山脈を砕き、悪魔を召喚し、都市を占領し、戦艦まで大地を闊歩していました。
 なのに何の被害もありません。戦後復興は全く必要ないでしょう。
 それどころか、ゾルダートグラードと人民租界は共に多くの戦力と絶対的な指導者を失い、これまでのような非道はもう行えません。そう考えると、この大戦を経て、獣人たちは「よりよい日々を過ごせるだろう」というのが、もっとも正しい未来予想となります。こんな事が、できるのですね……!

 ……さて、そろそろわたしも消滅の時を迎えるようです。
 もしかしたらまたお会いできるかもしれませんが、その前に約束を果たさなくては。

 儀式魔術【Q】「骸の海を拒み真実を語る言葉」。
 これより皆さんに、二番目から五番目の猟兵についてお教えします。

 先に概要を申し上げます。
 過去の猟兵は全て『全滅』し、『オブリビオンと化しました』
 そして、もうひとつ大事な事を。
 わたし達以外の猟兵は、『世界の守護者でも何でもありませんでした』
 むしろ、フォーミュラや|五卿六眼《ごきょうろくがん》、その先に潜むものどもの領域に到達すべく、みずから骸の海に踏み込んだ者達もいます。確かにわたし達がすべての発端かもしれませんが、二番目から五番目の猟兵達はその構造を悪用し、今や各々が力あるオブリビオン勢力の一角として、骸の海にて権勢を誇っています。
 オブリビオンと化した猟兵達は、皆が限定的ながら『世界移動能力』を有し、多くはフォーミュラを頂点とする他オブリビオン勢力に対し戦力は劣りながらも、戦略的な優位を得ています。

 二番目から五番目の猟兵達。その陣容について説明します。

 二番目の猟兵『アーカイブ』
 到底理解の及ばぬ目的の為、様々な世界より用途不明な技術や能力を『|持ち帰る《アーカイブ》』事を目的とした集団です。生物やオブリビオンは本来世界に帰属し、元の世界を離れると骸の海に稀釈されてしまうのですが、彼等は「オブリビオン同士の融合合体」によって克服し、世界移動能力を得たとされています。二つの三日月や大神ザウスなどの強大な臣下を従えているとされ、UDCアースに本拠地があります。

 三番目の猟兵『猟書家』
 骸の月と呼ばれる『世界変換術式』を用いて、世界そのものの蒐集を目論む集団です。各々が、収集した|小世界《アライアンス》を書物に収め、世界を書き換える能力を備えています。書架の王ブックドミネーターを頂点に、世界の根源元素を司る大天使達を従えて……えっブックドミネーターは倒した? でも本体は剣で……えっ剣も折った??? ならもう壊滅状態なんじゃないでしょうか。あとは大天使討伐か、本拠地の小世界『無限書架コルドフリード』を探すぐらいでしょうか。オウガ・オリジンという滅茶苦茶強いオブリビオンはいませんでした? それも倒した……なるほどですね。

 四番目の猟兵『コンキスタドール』
 正式名称は「多世界侵略船団コンキスタドール」。骸の海の女神オーシャンを頂点とする、世界を航行する海賊軍団です。グリードオーシャンの海は骸の海を凌駕するため、女神に選ばれた|七大海嘯《ななだいかいしょう》は、航海装備にて世界を渡る事ができます。オーシャンも既に倒したのですね……ですが流石に、彼女程の存在がそれで終わりになるでしょうか。この獣人戦線にも、侵略の爪痕ははっきりと残っていることですし(今ようやく中国を奪還できるかな?ぐらいの状況ですので)。

 五番目の猟兵『カタストロフ』
 皆さんに次いで最も新しい、全てにおいて謎めいた集団です。
 オブリビオン・フォーミュラに|炎の破滅《カタストロフ》を教え、世界を灼き尽くし消滅する事を目的とする……という事までしか、わたしも掴めていません。しかしながら、(わたしも全容は知りませんが)かつては三六より多くの世界があった筈なので、新興勢力ながら既に目論見はかなり成功しているのかもしれません。彼等は極端な秘密主義であり、原則として正体を明かしませんが、カタストロフを企てるフォーミュラの傍らには、常に腹心のように彼等の一派が付き従っている筈……つまり、皆さんはカタストロフに会った事がある筈です。

 ……以上です!
 これからの皆さんの戦いにおいて、何かの参考になれば幸いです。
 それでは私は消滅しますが、おそらくまた、出会う事となるでしょう。
 その時が、今のように良い出会いでありますように。
 そして皆さんが、ご自分の為した『選択』を悔やまれる事のありませんよう、お祈り申し上げます……!