閻魔王『生と死を分かつもの』
……ふたつの三日月、銀色の雨の時代。
……久しく、久しく忘れていた。
……|吾人《われわれ》は既に『骸の海』なれば、戯れに世界に染み出すもまた必定か。
トゥルダクよ、再会の悦びに啼いているのか。
地獄の獄卒よ、カクリヨは今も健在であるか。
かつて|吾人《われわれ》の眼前には『生の世界』が、背後には『死の世界』が広がっていた。
いまや|吾人《われわれ》の前では万物が渾然となり、時すらも未来に流れるとは限らない。
|吾人《われわれ》の名は閻魔王『生と死を分かつもの』。
あらゆる時に顯現しうる、世界の宿敵がひとりである。