〜仙界・山岳武侠要塞「梁山泊りょうざんぱく」〜


 私はかつて、封神台建立の命を受け、人界に降り立ちました。
 仙界の桃花のみを食していた私が、酒池肉林に穢れる事で生まれる香気……。
 私は万物を魅了する「蠱毒の贄」となり、人に討たれる事で封神台を築きました。
 それを成す為に、私は多くの殺戮と悪徳に手を染めました。オブリビオンの根絶が後の世に安寧をもたらすと信じたが故であっても、私のした事は赦されません。

 されど、封神台建立を命じた仙翁達は何故か死に、封神台は破壊され、私はオブリビオンとして蘇生され、異門同胞に縛られて……こんな事なら、私は何の為に……。

 私のユーベルコードはいずれも、かつて私の離反を恐れた仙翁達に移植された、自動発動型。私の香気を散布する「傾世元禳けいせいげんじょう」も、武林の秘宝「流星胡蝶剣りゅうせいこちょうけん」も、殺戮と欲情を煽る「殺生狐理精せっしょうこりせい」も、私の意思とは関係なく発動します。これらは私への危機を全て阻害し、私の自死すら阻みます。

 さらにこの地「梁山泊りょうざんぱく」は、いずれ宿星武侠が大乱によりて集いし時に、人界に飛ばして彼らの拠点とする為に作られた、幾千幾万もの武器が湧き出て侵入者を殺す「山岳武侠要塞」。私が何もせずただ座していたとしても、私を殺すことは困難でしょう。

 それでも、私は願います。
 誰か、私を殺してください。もう、生きていたくはないのです……。