〜香港租界・九龍城砦〜


 やあ御同輩、失礼するよ。
 分かってる。ここ九龍城砦では、人もオブリビオンも、その素性を問われない。
 香港の主たる私も、しきたりには従うよ。

 その代わり、私も勝手にやらせて貰う。
 私はここで、やってくる猟兵を迎え撃つ。
 激しい戦いになるだろう。君達も死ぬかもしれないね。
 でも……ここ九龍城砦では誰もが自由。私は君達を支配しないが、君達がどうなっても知ったこっちゃない。ただ、この広大なる魔窟を利用させていただくだけさ。

 さて、どこで猟兵を迎え撃とうか……。
 豪華な飯店や陽気な長屋もあるし、未亡人が蘇った旦那のオブリビオンと経営する安宿も、迷宮の如く鏡を並べた鏡屋もある。賭場やダンスホールに阿片窟もあるし、ごみ溜め場には落ちぶれた仙人が居たな?
 しかし九龍の住民には、彼らだけが纏う不思議な「霊気」がある。猟兵にその霊気は纏えまい。だから私は一方的に猟兵を補足し、仕留められる。ここ九龍城砦は、敵を招くのに最適の場所なのさ。