〜グリードオーシャン・鮫牙島〜


「ふしゅぅるるるるるる……」
 不気味な肉塊の如き男が、深い眠りより目覚める。
 身の丈7m程。巨人の範疇としてもかなり巨躯ではあるが、ここ鮫牙島はコンキスタドール……即ちオブリビオンの本拠地。見た目だけなら、それ以上の異形も存在する。が、男の目覚めに気付いたコンキスタドール達は、瞬く間に恐慌状態に陥った。

「ざ……ザンギャバス様が目覚めた!」
「大至急迎撃体制! 再び飢餓状態に陥るまで、持ちこたえろ!」
「急げ! 早く集合しろ! ザンギャバス様はもうすぐそこまで……」

「気にいらねぇ。コロす」
 ザンギャバスに怯える彼らは、それぞれが七大海嘯の直轄になるに足る実力を持つ、数多の海を征服した凄腕のコンキスタドール。その猛者達が、ザンギャバスの無造作な腕の一振りで、瞬く間に無残な肉片へと化す。次々と部下を殺し、そして喰らい……ザンギャバスは飢えを満たしてゆく。

「ザンギャバス様は無敵だ! 誰にも倒せず、誰にも制御できない!」
「だが、飢餓状態に陥れば動きは止まり、我らの強力な力源となる」
「それが、我ら『鮫牙』軍の強さの所以であるというのに……」
「何故だ、何故、静止していた筈のザンギャバス様が目覚めたのだ!」
「飢餓を保つ為に、オルキヌスの瞳を操る『三つ目』や、クエーサービーストを操る『四の王笏』陛下と協定を結んだというのに……もしや、猟兵が彼らの島に!?」
「駄目だ、もうそこまでザンギャバス様が……!」

 …………………………。
 僅か数分後。部下達を全て喰らい尽くしたザンギャバスが、咆哮をあげる。

「グリモア、グリモアの匂いだぁ……!」
「グリモアを使うやつ、ゼンブコロしてヤル……!」