トライ・アロウ領海線付近
嗣條・マリア 2021年1月25日
――――トライ・アロウ領海線付近 アルフレッド級戦艦1番艦 艦橋
「野犬が、やってくれる」
アリューシル王国が誇る海軍、誉れ高き第三大隊の旗艦である戦艦“アルフレッド”の艦橋で大隊司令官は一人、愚痴を漏らす。
トライ・アロウだけであれば一週間とかからず仕事を終えて本国へ帰ることが出来たのだが、現状は、このありさまだ。
世界各国の戦争に片っ端から介入し続ける野犬。ネバーランド。随分と狙いすましたタイミングで現れてくれたものだ。
「第13機械化歩兵大隊が間もなく到着します」
「ネバーランド側への弾幕を増やせ。前線を下げ、合流を急がせる」
「閣下。近衛隊の高速艇が接舷許可を求めています」
近衛――? 閣下と呼ばれた司令官は怪訝な顔を窓の外へ向ける。
高速艇の姿は確認できないが、それが事実ならば今すぐ歓待しなければならない地位の人間であり、これ以上ない戦力だ。
「右舷へ誘導を。私がそちらへ――――――」
司令官が襟を正し、服装を整えて艦橋を出ようかといった瞬間、艦体が大きく揺れた。
攻撃――ではない。何かの直撃を受けたような揺れではない。まるで大きな波を受けたような――――
「か、閣下!! あれは――!!」
オペレーターの一人が指で示した先。防弾ガラスの向こう。水平線の彼方。
戦場を突っ切る選択肢を取ったネバーランド本島が、まるで太陽が昇るように水平線から姿を現した。
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