【噺】回帰
揺・かくり 2020年11月24日
血色の天に浮かび上がるのは純金の環
日と月が重なり合う儘――日蝕が留まり続けて居た
其れは災厄の兆しか、慶福への導きか
廻る生命の光景を切り取った、一つの堺目
◇ ◇ ◇
『 』を無くした君と
三十の発言、又はひと月程の経過を目処に終い
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揺・かくり 2020年11月24日
(彼方も此方も、世界の崩壊が始まっている。迷い込んだ此の場所は終わりを迎えるのであると、鼓動を止めた胸の内が告げるかの様だ) (不気味な迄に染まり切った血色の空を游いで、游いで――静止をする。純金の央に留まる様に立ち尽くす人型を、君の姿を捉えたのだ) ――逃げないのかい。(直に手遅れに成ると告げながら、日蝕の内側へと游ぎを進めてゆく)
ロキ・バロックヒート 2020年11月25日
(カタチも、音も、風も、こえも、いろも、最早意味を成さず解けて崩れて、滅びゆく。いちどまっさらになるために。ただ、それを齎しているものが、己が何者かを教えてくれる。静かで心地よくて、安らぎさえも感じるものだから。とうに気が付いていても動かず、微睡むようだった)(だから)――逃げる?どうして?(ゆるりと振り向いたそれは、随分と驚いていた。朧げな黒い眼を丸くしている)
揺・かくり 2020年11月25日
(滅びが加速する世界も、崩れ落ちる音さえも、全てが血色へと還ってゆく。二つの人型が嵌り込んだ金の円環も、何れは呑み込まれ、終わりへと解けてしまうのだろう) (君の瞳の色を視認する事は叶わない。然れど、茫とする視界の内で、君が首を傾いだ気がしたのだ) 手遅れに成ると、そう告げたのだよ。……君は、此の世界と共に消滅を望むのかい (耳に障った筈の崩壊の音さえも、既に聴こえなくなっていた。張り詰めた様な空気の中で、己の声だけが響いている)
ロキ・バロックヒート 2020年11月26日
(まさしく、ここは滅びの間近なのだろう。あと少し寄れば、血彩に引き摺り込まれてただのものへと還るだけの。男はその淵に居た)……?なにを言ってるか、よくわからない。(手遅れになる。重ねて云われて、ようやく――なんだか変だ、と思った)君は――なに?(手近な違和を確認するよう。思い浮かべていたかの安息の地であるならば、そもそも誰も居ないはずなのだ)(状況に反して緩やかな仕草で、存在を確かめるために、片手を伸ばす)
揺・かくり 2020年11月28日
(研ぎ澄まされた静けさは優れた聴覚への刃と成る。差し向けた声は君の内には届かず、己へと跳ね返った) (見据える視線の先で、細く浅黒い手が向く。一歩分の空白を埋める為に游ぎ出したのならば、大振りな黒衣の先端が触れる事だろう) ――私は、ただの屍人さ。(君は?と問い掛けを重ねた) 随分と落ち着いて居る君は、妖に移り宿る骸魂とは思えないのだが。
ロキ・バロックヒート 2020年11月29日
……布?(掴んで、弄ったり軽く引っ張ったりしようとする)屍人?骸魂……(幾つかの言葉を繰り返して、考えて)もしかしてここって、幽世?(では、この滅びの気配はあの“日常茶飯事”か。解答に辿り着ける程度には、頭ははっきりしてきた)なーんだ。だから色々とおかしかったんだ。 ……神様だよ。(問いに短く答えて)ねぇ。手遅れだって教えてくれる、君の方が危ないのではないの。(受け取れていなかった言葉を返す口調は、やっぱりどこか他人事だ)
揺・かくり 2020年12月1日
(黒い袖口が引かれ、宙へと浮かぶ躯は安易に移動をするだろう。色褪せた長髪が揺すれ漂っていた) (一人合点したのであろう君の言葉。次いで告げられたのは、) ――神。(繰り返し口遊ぶ。一連の様子に得心した様に双眸を細めた) ああ、私も呑まれてしまうのだろうね。(会話の最中も崩壊は止まらない) ……骸魂では無い神なる者。今一度、君に問おう。(抑揚の無い声が続く。不可思議な景色に浮かび上がった君の姿。此れは、唯の気の紛れだ) ――消え去ってもいいのかい。
ロキ・バロックヒート 2020年12月3日
(滅びが遂に到達する。ずぶりと片足が沼に沈んだかのような感触がして、それから先の感覚がなくなった。そこを見ても如何なっているのかわからない。この世界は些細なことで滅ぶというけれど、『 』でもなくなったのだろうか。頼りないように漂う君の身体が、まるで命綱かなにかのようだ)それは不味いね。良い――(良いの?と聞こうとして、先に問われた。先程と同じように眼を丸くして、ふ、と笑う。いつも問うことばかりで、問われることは珍しいから)どうかなぁ。幽世の滅びに巻き込まれたことは、そういえばないんだよね。単に骸の海にゆくのかな。神もさ。(ねぇ、どうなると思う?と。戯れに結局こちらも問うのだけど)(沈みは踝程度だったのが、徐々に膝程まで至っている)
揺・かくり 2020年12月8日
(音さえも喰らう滅びの色が、己の爪先を呑み込んで往く。時の経過と共に胴を、頚を、頭をと侵食が進むのだろう。感覚が鈍麻した屍人の顔には表情の一つも浮かばない。喰われているなどとは知り得ない、と言う様に) ――ふ。骸の海に還る神、かい。(朧げな黒。君の双眸を、漸く捉える事が出来た。掴まれた儘の袖口から覗かす指の先は蒼白く、酷く冷え切っている) 神は消滅を遂げるのか、邪なる存在として新たな生を得るのか……些か興が湧いてしまう様だよ。(微笑む代わりに双眸が細まった。此の堺目は滅び逝くと云うのに、何処までも他人事のように) 常では往く事の出来ぬ域だ。そこに屍人が溶け込んだのならば――どう成るのだろうね。
ロキ・バロックヒート 2020年12月12日
(ひらりひらりと辺りを探るように遊ばせていた片方の手の指先が、水を掻くような感触のあと、失せた。引っ込めて、ぺたりと自分の頬をそれで触る。確かに滅びを受けて喪失しているのに、痛みもない。常人ならば恐怖するかもしれないが、生憎とここに残って居る者はそんな神経は持ち合わせていない)おや、興味がある?(よいしょと一歩、残った足で跳んで、滅びから遠ざかった。滅ぶ前にもう少し君と話してみたい。そんな理由で)神と屍人の混ざった先かぁ。新しい世界でも出来上がるかな。きっと天国みたいなものじゃなくて、地獄に近くなるかもしれないけれど、それとも――あぁ、ねぇ。君の未練はなんだろう?(袖から冷たい手に至って、聞いた。屍人はなにかしら強い想いを抱いて現世に留まっている。そう思っているから)
揺・かくり 2020年12月19日
(消滅を免れて居た片脚が弾む。宙に浮ぶ屍人の身も、君が逃れた方角へと引かれて往くだろう。夜闇の様な黒衣が揺らめいた) そうだね、多少は。死に際の神になど、滅多に出会えるものでは無いからね。(君の語りは的を得て居るのだろう。ぎこちない首肯を示してみせた。神と屍人が混ざり合った世界を浮かべてみたとて、始まりの兆しを欠片も感じ取れなかったのだ) 私の未練は私でさえ知り得ない。……然れど。無知である事を忌むかの様に、裡の内の呪詛が騒ぐのだよ。(朧げな双眸を見据えて濁った金を細めた。己が手に触れた君の指は、温度を宿すのだろうか) ……君は?仮にも未練を遺して消滅するのならば。君の記憶は、次なる君に継がれて往くのかい。
ロキ・バロックヒート 2020年12月20日
(とん、とん。二歩、三歩。片足だから、それなりに曲げて力を入れて跳ねて、君を引いて、思い付いたようにくるりと回って。まるでダンスのよう。血色にそんな影が揺蕩い踊る)あはは、そうかな。この器は割とあっさり死んでしまうよ。それこそ人間みたいにさ。 そっかぁ、知らないんだ。でも呪詛は覚えているのかな。これでもね、ひとの願いを叶える神だから。君と混ざり合ったなら、そうして出来た世界には、君の未練があらわれるかもしれないよ。どう?(気安い誘い文句)……記憶はそのままだね。結構忘れることも多いけど、この消滅も、君のこともきっと覚えてる。でも――(少しばかりの熱をもつ手が触れる先に顔を向けて、首を傾げた)いろが見えない子は、初めてだ。
揺・かくり 2020年12月21日
(君の戯れに寄せられるが儘に游いで、幕引きの天に黒衣が踊る。華麗なる輪舞など知らずとも、己の躯が憶えているかの様であった。不可思議な心地に浸りながら、幾重にも灰の螺旋を描いてゆく) おや、人間の様に脆いのかい。ならば痛みなども感じるのだろうか。……ふ、蠱惑的な誘いだね。支払うべき対価は必要かい? (其れは唆す蛇の後を追うかの様に。仄かに口許を吊り上げて、訊ねた) そうかい。最期に見映し記憶に刻まれる者が、澱んだ魂を持つ屍人だとはね。僅かながら同情をしよう。(首傾ぐ君の瞳を見据え、蒼白い唇に音を乗せる) ――君の瞳は、月が隠れた夜の様だね。
ロキ・バロックヒート 2020年12月25日
そうだねぇ、感覚は大体一緒だよ。でも、これは全然痛くないや。本当になぁんにもなくなりそうな……理想的な滅びだ。対価は、一緒に滅びて暮れるなら、じゅうぶん。もし君の未練を知ることができるなら、お釣りがくるんじゃないかなぁ。すごく興味があるもの。(嬉しそうに君を望む声は、酔いに近い熱と甘さを帯びて)あは、そんな謙遜しないでよ。でも残念ながらさ、その魂ってやつが見えな――、え?(ゆったりとした円舞は、滅亡から逃れるふたりの一シーンを彩っていた。けれど、唐突に。曲が流れていたならブツリと途切れてしまったかのように、終わる)(ぱ、と緩んだ手から君の手が擦り抜けるだろう。あとは片足では支え切れずに、ぺたんとその場に座り込んだ)
ロキ・バロックヒート 2020年12月25日
……おかしいなぁ。いつも、明るい月みたいだって、言われる、のに。(滅びに触れた時ですら微笑んでいた顔は少しばかり強張って、震える手が目元へ)(そうだ。どうやって君は“手遅れになる者”を見付けたのだろう。はじめから、どこか噛み合わなかった)ここは……『 』がなくなって滅びる世界じゃ、ない?
揺・かくり 2020年12月28日
痛みを厭う者ならば、君の告ぐ通り理想的な消滅なのだろうね。 充分?――共に滅びる事だけで良いのかい (口を得た屍人が紡ぐ言葉は真意か戯言か。其の解釈は君に委ねる事としよう。蕩ける果実酒の様な君は如何なる言葉を連ねるのか、興が沸いたのは真実である)
揺・かくり 2020年12月28日
(――だのに。酔いに浸る舞踏は刹那的で、此の手を掴んだ君が遠退いて往くのだ。君を見下ろした金は、君を照らす為のものでは無い。終わりへと加速する世界なぞには目をくれず、静かに君を見据えて居る) 明月と喩う事は難しいだろうね。……其の『 』は――君は、何処へと隠れてしまったのかな。(浮かび上がった躯の高度を下げる。眼窩に嵌る闇の先に、君の姿を捜した)
ロキ・バロックヒート 2020年12月31日
ああ――(それは一本足でも気にしなかった癖、もう立てなくなったとでも言いたげに座り込んでいた)……これは、貰いものなんだ。失くしたまま死んだら、失くしたままかもしれないなぁ。どうしよう。君と一緒に滅びてみたかったのに、こんな“未練”ができるなんて。(笑うように言葉を吐く。震えはすぐに治まるが、結構途方に暮れているのは確か)……どこに隠れたんだろうね。隠れていても、真昼のように居るかもしれない。ねぇ、君にはみえる? ……ここ。ここだよ。(音は、声は消える前に届いているのだろうか。また、君に触れられないかと。手だけ伸ばす)
揺・かくり 2021年1月3日
滅びの間際にて“其れ”が生じるのならば、共に逝くのは先送りと成るだろうね。(地上へと繋ぎ止める程の未練を、己が裡では計り知る事など出来ない) ……ああ。僅かでは有るが、君の姿は視えているよ。(震える様な声音は、確と届いている。起立する術を無くした君が、今一度立ち上がれる様に。ぎこちない動作を刻みながら手を伸ばす。君の手に触れる事が叶うのならば、念力を纏わせて引き上げる算段だ) ――かくり。私の名だ。朧げな神よ。“君”は、何者なのかな。(分厚い暗雲の先。其処に居るであろう君の色を探る為に、そう問うて)
ロキ・バロックヒート 2021年1月4日
がっかりしたかな。(ごめんねぇ、なんて謝るものの。自分から誘った癖に、悪びれた様子はない)……もし失くしたままだとしても、その時は世界がそう決めたんだろうなって、思うんだけどさ。(だから座り込んだままだ。生きてはいけるだろう。諦めたように。まるで死んだように。――そういうものを“未練”と呼ぶのだと思っている。忘れてもこの世を往く、君の未練は如何程なのだろう)ほんとう?良かった。(滅びの中見付けてくれた君に、ここだよと。もう一度言いながら、うんと伸ばした手が触れる)かくり、ちゃん。聞き覚えはあるなぁ。ごく最近だ。……名もなき神様だよ。呼ぶ名が必要なら、ロキ、とでも。
揺・かくり 2021年1月10日
まさか。(間延びする謝罪に淡々とした返答を降らせた) (君の浅黒い手が屍人の手へと触れる。錆び付いた針のぎこちなさで指先を織り込んで、指の先から君の身へと念力を纏わせてゆくだろう。君が拒絶をした際には、安易に振り払えてしまう程度のものだ) ――ロキ。初めて聞く名では無いね。ロキは私を、私はロキを知って居るのかもしれない。……私の視力は当てには成らないのさ。其の瞳に映す事が叶うのならば、答えてお呉れよ。 (月が、隠れた君が姿を見せるのならば。其の時には“見附けた”と告げてみせよう。触れた指を――君を、引いた)
ロキ・バロックヒート 2021年1月11日
あはは、全然気にしてなさそう。それともお詫びは要る?(要らない、と答えられそうな気もしつつ。なんとなく聞いた)(力の流れは感じるけれど、拒否はしない。むしろ大人しく受け入れるよう。指か手を確りと掴もうともするだろう)あ、やっぱり?どこで会ったんだったかな。こっちも顔よりも名前よりも、いろで覚えているものだから。(そのいろは、覚えている。もし“ ”を取り戻したなら、きっと叶うよ、と頷いた)わぁ、(引かれて、面白そうに声をあげた)ねぇ。……たぶんね、なぁんにもなくなるさまを眺められるところに居るよ。それが与えられた役目だからさ。(内緒ごとみたいに、密やかな声で)
揺・かくり 2021年1月16日
(君の予測通り“要らない”と告げようとし、一寸思い留まった。能面の様に変化を見せない貌を刷いた儘で、常とは異なるのだと云う双眸を見据える。濁った金を細めたとて捉う事の出来ぬもの。君が無くした『 』は、何処に) 詫び、か。そうだね……逝くのでは無く、私と共に往かないかい。(直に手遅れに成ると告げたものの、既に手遅れと云う状況ではない。血色の天、浮かび上がる純金の環。残された最後の道が有るのならば、屹度――) (手前へと引き寄せると安易に身体が持ち上がった。己よりも背高な君を見下ろす様な形で、僅か上方へと浮かび上がる。密やかな告げ事さえ取り零さずに鮮烈な色の宙を游いだ) 君は、神としての役目を全うして居るのだね。……ああ、ならば。幾度と廻るものを、ロキは独りで見続けて来たのかい。
ロキ・バロックヒート 2021年1月17日
――君と共に、往く。(てっきり。要らない、そっかぁ、なんてやりとりをするものと思っていたから。意外な言葉が続いて、首をゆるく傾いだ。いらえはこのとき返らなかった。一度ゆるりと、滅びの気配が在った方を眺める)(その内に目に見えない力で引っ張られて、身を任せた格好。ああ、これはまるで)ふ、ふふ。なんだか、君に拾われでもしたみたい。(なにかを連想した。そう、犬猫の首根っこでも摘まみ上げるやつだ。可笑しくなってくすくす笑って)ううん。(首を振った。ちゃらりと首枷の鎖が鳴る。いろのない、透明な否定)神としての役目はずうと果たせていないの。……でも、そうだねぇ。いつもそういう役回りだ。
ロキ・バロックヒート 2021年1月17日
ねぇ。共に往くと云うのなら、同じところへ至るのでしょう。(問いのような、確認のような)(触れ合う指を少し引いた。宙を游ぐうち、極彩色に混ざるいろ。それは己の帳の降りた世界も、君の霞みがかった世界をも、やわく染めはじめる――)
揺・かくり 2021年1月25日
(風に揺らぐ、とは異なった黒髪の畝りを捉える。君が喉奥を鳴らしたのならば、屍人はぎこち無く首を傾ぐのだろう。ぎぎ、と軋む音こそしないが、其の動作は錆び付いた人形を操るかの如し) そう、私と。(可笑しげな笑声、次いで鼓膜を揺する透明な音色。発生源は君では無い。軽やかな其の音は、細首に嵌った重たげな鉄枷から成されて居る) ……そうかい。役目を放棄する事無く、其の域に居続けるのだね。(果たせていないのだと、君の唇が告ぐ。君は幾度の季節を巡ったのだろう。己の唇が問いを重ねる事は無く、只静かに双眸を細めた)
揺・かくり 2021年1月25日
ああ。(此度は然りと是を示した。世界を眺む君、此の堺目と共に消滅したとて最期まで笑って居たであろう君。其の君に生まれた“未練”を拾えるのならば、) ――然れど。其の役目を放棄しろとは云わないさ。其の域に至る君を、赤の他人で有る私が引き摺り降ろす事は出来ないからね。(暫しの沈黙と、思案。再び唇を開く頃には、己が遣う死霊たちが“道”を拓く為に、日蝕が浮かぶ天を目指す) ……そうだね。散歩に往く程度に捉えると良い。(崩壊の中で、透明な鎖の音が聴こえた) 私は死なない。既に死している屍人だからね。君を今生に繋ぎ止めた“未練”を見附け出す手助けをしよう。……勿論。ロキが望むのならば、だがね。
ロキ・バロックヒート 2021年1月30日
(常人とは違う動きをもし捉えていたら、興味を向けて見詰めたかもしれない。無遠慮に手を伸ばしたかもしれない。どれもが今は思い至らずに。冷たい手を、君の存在を確かめるよう掴むのみ)役目を放棄した神は――存在する意味は、あるのかなぁ。(答えを知りたがる子どものようで、悟り切った老人の如く。ゆるく笑みを浮かべて)(だから、棄てはしないよ。ただ首を振った)
ロキ・バロックヒート 2021年1月30日
(考えるさまに、きょとんとした。染み付いた人間くさい癖みたいに、丸くなって瞬きをする黒い眼。沈黙を遮ることはなかった。同じように、考えをめぐらせていたから)……ふふ、散歩かぁ。わかった。 でも、共に往くなら、降りはしない。至るんだ、君も。だって、見付けるのは神様のモノだもの。(おちたところには、きっとない。確認はそれを告げるため)神に成るってわけじゃないけど。ただ、少し触れるかもしれない。踏み込むかもしれない。……それでも良いなら、ひとときの標になってよ。輪廻に還らぬ、滅びぬ屍人。
揺・かくり 2021年2月4日
(此の身に触れる君の指は温度を宿すのだろうか。暗夜を鎖した双眸は何を映すのか、屍人の女は知り得ない。只、君の手を緩く掴んだ儘離さない。遣った死霊たちは夫々に術を展開しては放って居る。直に其の“道”が拓かれるだろう) 少なくとも、私は――君に消滅して欲しくは無いかな。(役目、理、君に重く纏わる全てを置き去りにして、そう告げる。神としてでは無く。“君”個人に興味を見出した屍人は、何処までも他人事のように) ……軽々しい、と嗤うかい? (拙劣な指先に込められた力は微々たるもの。君が振り解くのは、余りにも容易い)
揺・かくり 2021年2月4日
(音無き崩壊の中、二人の間に沈黙が流れた。稍有って濁った金の双眸が微かな瞠目を晒す。君から告げられた願い。否、此れは――) 交換条件だね。 良いとも。ならば其の域へと至ろう。(無くしもの、神のモノ。夫々が合致したのならば成程、と言葉を零した) 神界にとっては招かれざる客だろうね。……ああ、聢と心得ておくよ。――謹んでお受けしよう、迷いの神様。(左の環指に嵌った黒が昏く耀く。能面に笑みを刷く代わりに双眸を細めた。間も無く道が拓く。赤黒い空間を染める様な其れが、目を焼く程に入れ込むだろう)
ロキ・バロックヒート 2021年2月8日
(君以外の気配は感じるものの、昏い霧の中にすべてが隠れている。できることと云えば、こえに耳を傾けるぐらいだから。一言一句聞き洩らさず、顔を緩く上げた)……びっくりした。笑うつもりはないけど、君からそんな言葉が聞けるなんてさ。(ふふ、と零して。あぁ笑っちゃった。なんて可笑しげにする)(掴む君の手をそっと、もうひとつの手でも取った。こうして握ってみても、君に熱は宿らないのだろうけど)じゃあ、手を離さないでいて。この足がうっかり奈落に踏み外さぬよう――落っことしたものを、拾えるまで。
ロキ・バロックヒート 2021年2月8日
(誰にも聞かれたくないような、囁くような切実さで告げたかと思えば、)良かった。 あはは、私がゆるしたんだもの。構わないよ。(そちら(神界)がどうなろうが関係ないと言いたげな、傲慢な言い草で)ありがとう。よろしくね、かくり。(導く者に甘ったるい呼称は付けない。――くらやみに『 』が差し込む。思わず眼を閉じた)
揺・かくり 2021年2月19日
(可笑しげに揺すれる音色を聞き届け、能面の様な貌には微かな笑みが刷かれた。拙劣ながら君の手を掴んだ儘の指先と、袖口から覗いた甲へと重なるもの。此の身には熱が宿らずとも、君からの温度は届いて居る) (此の唇は是も否も語らない。語らぬ代わりに――君の手を、引き続けるだろう)
揺・かくり 2021年2月19日
(神(きみ)の許しを賜ったのならば――いざ、其の域へと至ろう。一先ずは堺目を脱する必要が有る、が) ――征こう、ロキ。 (死霊たちが切り裂いた道を背後とし、今一度 君の姿を見据える。明るみの増した世界の中で、漸く君と云う輪郭を捉えた。鎖された目蓋の向こうには、如何なる彩が嵌るのか。其れを知り得るか否か。辿る結末は、二人の歩み次第なのだろう)
揺・かくり 2021年2月19日
(――『光』に呑み込まれた堺目。崩壊が到達した世界の内には、既に二つの姿は在らず。君の手を引いた儘、游ぎ着く先は――)