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- Abyss -

ラブリー・ラビットクロー 7月5日20時

(固く閉ざされた扉は研究所棟とは少し離れた所にありました。巨大で、無機質で、重厚で、寒々しい鉄の歯が上下に噛み合い、口を閉ざしています。そこに無数に着けられた銃弾の痕が、扉を穿とうとした者の執念を感じさせます。焦げ付くように黒く変色した鉄板の滲みは、憤怒に狂うその者の形相を想起させました。ですが、依然冷たく閉ざされたままのそのゲートの隔壁と隔壁の間には、何者の侵入をも阻む無慈悲なまでの鋼鉄の意志が介在しているかのようです)
 ここの事だったんだ。ずっとただの壁だと思ってたのん。

【ここが地下シェルターの入り口となっています。この区画からは独立した指揮系統により制御された区域となります。現在は当該システムにアクセスする事が出来ない為セキュリティを解除する事ができません。通常の手段やミサイルなどの武力による物理手段ではこの隔壁を突破する事は不可能でしょう。そこでラブリーの出番です】

 ミサイルでもだめな扉にらぶの出番なんてねーのん。
(呆れたようにタブレット端末を振ります。いくら猟兵として経験を積んできたと言っても、戦術兵器に打ち勝ってきた経験なんてある訳がありませんでしたから。でもそんな様子のラブリーに、ビッグマザーはいつもの調子で応えるのでした)

【そんな事はありませんよ、ラブリー。今のあなたにはユーベルコードがあるのですから。想い描いて下さい。この街が人々の笑顔で包まれていた頃の事を。例え見た事がなくても、あなたなら聞こえる筈です。彼方からの歌声が】

(刹那、ラブリーの身体を無数の光のすじが走ります。ふわりと長い髪が揺れて、心が解き放たれる感覚に瞳を輝かせると顕現する大いなる力。超常の異能、ユーベルコード)
 あっ……聞こえる。この街の息吹。みんなの笑顔が。
(気がつくと目の前の隔壁は開かれ、地下シェルターの入り口が大きく口を開けているのでした。まるで最初からラブリー達を受け入れていたかのように、どこまでも伸びる廊下にはその最奥までもLEDの篝火が灯されて二人を|誘《いざな》っています)

【ほら言ったでしょう?ラブリーの人の夢を追い求める力が、理想の世界へとこの世界を置き換えたのです。もうセキュリティはありません。地下10階にある機械室へ行きましょう】

 でもらぶのユーベルコードはずっとは続かない……

【その通りです。時間は無限ではありません。私達は急がなくてはなりません】

(束の間の理想の世界。でも今はその幸福感に浸っている余裕はありません。じきにユーベルコードは解け、世界は再び黙示録のそれへと戻ってしまうのですから)

 うん。行こうマザー。らぶ達の手でこの街の理想も取り戻すんだ。

【はい。行きましょう。二人で取り戻してやりましょう】

(毅然と頷くと、耳に届く歌声すらも振りきってラブリーは駆け出すのでした。未だ見ぬ深淵へと)

https://tw6.jp/garage/gravity/show?gravity_id=162361


❖ Abyss ❖


¦ルール¦

❏参加資格
《ミアズマブロック》旅団員のみ参加可能です。

❏地下シェルター
階層は地下1F〜10Fまでです。地下10Fに到達した時点でゴールとなり、当旅団《ミアズマブロック》はエンディングを迎えます。

❏進行度
進行度が100%以上になると一つ下の階層へ移動する事ができます。
進行度は発言時にダイスを振り、(出た数値×2)%進行します。

❏イベント
ダイスの値に応じて各種イベントが発生します。イベント内容は下記イベント表を参照します。



⚀ダイス表⚂
01¦AIによるラジオ放送(拠点内ニュース)
02¦AIによるラジオ放送(国際ニュース)
03¦AIによるラジオ放送(エンタメニュース)
04¦AIによるラジオ放送(スポーツニュース)
05¦AIによるラジオ放送(政治経済ニュース)
06¦AIによるラジオ放送(ad)
07¦1番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
08¦2番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
09¦3番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
10¦4番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
11¦5番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
12¦エンジニアの日記(黙示録)
13¦研究員の日記(黙示録)
14¦二人の恋人の逢瀬(理想世界)
15¦自動販売機
16¦白骨化した遺体(黙示録)
17¦ビッグマザーのバッテリー
18¦避難勧告(黙示録)
19¦談笑するエンジニア達(理想世界)
20¦Xデーの幻影(理想世界)
21¦無人のモニタールーム
22¦AIの問いかけ
23¦隠されていた恋文
24¦綺麗なビー玉
25¦枯れてしまった植物たち
26¦缶詰
27¦フラスコチャイルドに関する噂話
28¦終末否定論について
29¦走り去る人影
30¦Xデーの幻影(黙示録)
31¦叛逆の狼煙計画についての計画書
32¦6番目のアリシアについて記した報告書
33¦民衆よ武器を取れ(黙示録)
34¦雑誌
35¦報告書『AIは感情を持ちうるか』
36¦研究員の子供たち(理想世界)
37¦AIの問いかけ
38¦エンジニアの遺書(黙示録)
39¦研究員の遺書(黙示録)
40¦Xデーの幻影(黙示録)
41¦上司の悪口(理想世界)
42¦フラスコチャイルドに関する噂話
43¦奪還者に対する入国拒否についての記事(黙示録)
44¦白骨化した遺体(黙示録)
45¦ビッグマザーのバッテリー
46¦人権団体『アンチアリシア』による反研究機関運動に関する記事(黙示録)
47¦缶詰
48¦1番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
49¦2番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
50¦3番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
51¦4番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
52¦5番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
53¦6番目のアリシアについて記した報告書
54¦AIの問いかけ
55¦『アンチアリシア』過激派によるテロ行為事件に関する記事(黙示録)
56¦白骨化した二人の遺体(黙示録)
57¦瘴気についての報告書
58¦この世界の悲劇をあらわすもの
59¦走り去る人影
60¦Xデーの幻影(黙示録)
61¦避難民見殺しの疑義に関するニュース(黙示録)
62¦綺麗なビー玉
63¦大量に保管された植物の種
64¦人権団体『アンチアリシア』に対するNewDawn追放判決に関する記事(黙示録)
65¦自動販売機
66¦聖書《審判の日》
67¦AIの問いかけ
68¦食糧保管庫
69¦エンジニアや研究員のユメ
70¦Xデーの幻影(黙示録)
71¦ソーシャルネットワーク拡大の展望
72¦雑談をするエンジニア達(理想世界)
73¦難民受け入れ拒否に関するニュース記事(黙示録)
74¦積極的な難民受け入れに関するニュース記事(理想世界)
75¦無人の宿直室
76¦平和に慣れた人々(黙示録)
77¦聖書《救いの章》
78¦避難勧告(黙示録)
79¦研究所内での違法行為に対する処分について書かれた紙
80¦Xデーの幻影(黙示録)
81¦白骨化した遺体(黙示録)
82¦所長暗殺未遂事件に関する記事(黙示録)
83¦1番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
84¦2番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
85¦3番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
86¦4番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
87¦5番目のアリシアとの邂逅(理想世界)
88¦戦車
89¦走り去る人影
90¦Xデーの幻影(黙示録)
91¦散らばった紙幣(黙示録)
92¦勇気を振り絞ったプロポーズ(理想世界)
93¦シアターのパンフレット(理想世界)
94¦アリシア・オリジン殺害事件を報じる新聞記事(黙示録)
95¦避難勧告(黙示録)
96¦無人の図書室
97¦押しかける避難住民(黙示録)
98¦アリシア・オリジンとの邂逅(理想世界)
99¦白骨化した集団の遺体(黙示録)
00(100)¦あなたを待っていた人々との邂逅(理想世界)




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ラブリー・ラビットクロー  8月2日20時
(ビッグマザーのその言葉を、静かに目を閉じて聞いていました。感情の乗らない彼女の声は、決して無感情なのではないとラブリーは悟ります。その言葉と決意には、拠点の守護者としての感情がしっかりと刻まれていました。ビッグマザーの中に隠された愛を感じ取ったラブリーは、ゆっくりとその瞼を開きます)

ありがとー。マザーは優しいね。やっぱりらぶのお母さんだ。
(今度はビッグマザーがラブリーの言葉に沈黙で返すのでした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月2日20時
らぶはマザーが精一杯悩みぬいて、この選択をしたんだってわかった。だってここのヒトたち、みんなとてもキレイなんだ。一緒になりたかったヒトと一緒になって、眠ってる。きっとマザーが居てくれたから、最後は心穏やかに過ごせたんだよね。
そうしてヒトの想いに寄り添って生きる行為が、手を汚すという事なら。らぶはこの身体がどーなっても構わない。
マザーがこのヒトたちのことを愛して守っていくのと同じ様に、らぶもこのセカイのヒトたちのこと愛しちゃったから。
もー、忘れることなんて、
できないよ。だって、このセカイはこんなにも輝いてるんだよ?
マザーが見せてくれた愛は、らぶの胸にも宿ってるんだ。だってアタシ達、親子なんだもん。

(その瞬間、眩い光が全てを包み込みました。亡骸が、世界が、全てが白き光条に覆われて視界から消えていきます。右も左も、上下さえわからなくなるくらいの光の渦が空間を飲み込んでいきました)
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ラブリー・ラビットクロー  8月2日20時
〘私は――〙



〘母親の資格など――〙
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ラブリー・ラビットクロー  8月2日20時
(霧散するは全て幻。気がつくと白く包んでいた光は消え去り、整然とコンテナが並ぶ倉庫街の光景が戻って来ます。静まり返ったこの理想世界には、選ばれなかった生命など)

マザー。今行くからな。

(一つも無かったかのように)
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
❖ B9F/0% ❖


“おはようございます。新規ユーザー。あなたの名前を登録しましょう”

“はん?
 なにこれ。
 アナタのナマエ?
 なにそれ。
 わけわかんない”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“ねえマザー。今日は何日だとおもう?”


“今日は2032年12月7日です。国際民間航空デーです”


“あはは。なにそれマザー冗談じょーずだね”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“ねえマザー。街の外に出たい”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“おなかへった…”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“ たいくつ。たいくつ。たいくつ。たいくつ。たいくつ”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“ねえ、マザー”

“なんでらぶはひとりぼっちなの?”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“ そーだよね。マザーもいるからひとりぼっちじゃないかも”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“マザーぽんこつだな”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“おはよーマザー”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“マザー”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“マザー!”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“マザー…?”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
“マザー”
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
(――全て、ふたりの大切な想い出)
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日18時
(暗転するセカイ)
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ラブリー・ラビットクロー  8月9日19時
❖ B9F/100% ❖


(モニタールーム。無数の画面に囲まれた小さな世界。その全てに映しだされていたのはラブリーの姿でした。無邪気に、あどけなく、そして何も知らなかったあの頃の姿。その手は白く柔らかい。その瞳は無垢で、畏れを知りません。退屈で、幸せだった日々が繰り返す内に、やがてそれはノイズと共に消え去り映像が切り替わります。拠点内の彼方此方に設置された監視カメラから送られる市街地や建物内の映像。猛烈な振動や風、爆風がこの街を襲っているのがわかります。逃げ惑う人々や泣き叫ぶ人々が映されたモニターもありました。無人の建物が、やがて崩壊を起こして映像がストップするモニターもありました。この部屋は、ただ淡々と黙示録を目撃しているのでした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月15日18時
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=127041&mode=last50
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日13時
らぶにはずっとマザーしかいないって思ってた。誰もいないって諦めて、いつからか戦う事をやめよーとしてたのかも知れない。
でも違った。らぶを造ったヒト達にもたくさんの想いと願いがあった。この街にも、そしてこのセカイにも。

……このセカイでは生きることが戦いだ。
マザーもアリシアたちもこの街のヒトビトも、そしてセカイに生きる誰もがみんな必死に戦ってきた。
ヒトビトが描いた願い。やっとわかった気がするよ。
みんながいつか想い描いたミライを掴めるように、らぶも一緒に戦う。
ヒトビトの願いはまだ終わってない。らぶが終わらせない。
またこの街からはじめよ?その願いが人類の叛逆の狼煙と呼ぶのなら、セカイ中にヒトビトの輪を築けるように!

【地下10層に到着しました。毒ガスを制御する心臓部です。ここを制御すれば、この街の瘴気は全てストップし、拠点内の大気は浄化されるでしょう。ヒトが住む事のできる、清浄な空気へと】
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日14時
❖ B10F/|異常領域《ミアズマブロック》の深淵 ❖
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
(ユーベルコードで彩られた地下迷宮。そこにはifで模られた理想の世界が広がっていました。憩いとなる公園があって、様々な商店が建ち並び、娯楽に興じるための施設が人々を魅了しています。この世界を生きる者全てが人として当たり前に、幸せに、生きる為のセカイ。それがこの拠点を為した者の理想。ラブリーのユーベルコードによってミアズマブロックの地下に広がった光景は、ここに住んでいた人達の夢そのものを映し出していたという事に気付きます)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
(同時にこの地下シェルターには夢敗れてその命を散らした人達が大勢眠っていました。オブリビオン・ストームの発生によって逃げ遅れた者達が、その骸をオブリビオン化という憂き目から守る為にビッグマザーによって誘われ辿り着いた終点の霊廟。彼らの無念は今もこの地下世界に刻まれています。時にユーベルコードに介在して見せた幻影は人々が抗い、戦った末の記録でした。彼らの生きた証は地下のビッグマザーによってモニタールームの中で永久に保管されているのでした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
(それは願いでした。目指した夢、散っていった生命。選択。決断。この拠点を構成していた物全てが人の願い。誰しもが手を汚し、過ちを繰り返して、それでも繋ぎたかった。ビッグマザーでさえも例外ではなかったのです。夢の為に。ラブリーはその願いを今、受け取ります。手渡されたバトンは重く、そしてそのゴールが果てしなくとも――)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
(部屋に足を踏み入れた瞬間にユーベルコードは解けて、刹那噴き上がる瘴気。舞い上がる風がラブリーの長い髪を吹き上げます。瞼を閉じればまるで遥か空の彼方まで昇っていくかの様です。そうしている内に瞼の裏側で広がる光景に臨みます。広大な地球。青く、とても美しい一つの星。暁光を浴びた丸い輪郭がキラキラと輝いて、全ての哀しみを拭い去ってくれるみたいに)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
ヒトビトがユメを描いてくれた。らぶひとりじゃとても描けない、ホントに大きなユメ。だからこそ、らぶはこのセカイに生まれる事ができたんだ。
(決して一人ではなかった日々を想います。ギリギリになっても最後に残されたのが自身ならば)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
マザーがらぶを支えてくれた。一緒に寄り添ってくれた。マザーのおかげでらぶは愛を知ったんだよ。
(目覚める時にはいつも手を伸ばしていた先に居たのは、例えどんな苦境でも隣に在り続けてくれた存在でした。姿は見えないけれど、その幼い心をずっと守ってくれて、共に歩み続けてくれた偉大なる母)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
ししょーが来てくれたから、らぶは先に進む事ができたよ。クロゼ。大好き。
(彼もまた、このセカイで戦うヒトの一人でした。拠点の外へと連れだしてくれた、初めて出会った人生の師。一人目のヒト)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
みんな。今まで、本当にありがとう。
ここからはらぶの戦い。らぶが自分で切り開く、らぶだけの。だからこれからも、見守っててくれたら嬉しいな。
(装置へと手を伸ばします。最後のアリシアたるラブリー・ラビットクローの揺り籠、『ミアズマブロック』での最後の戦いを終わらせて、次の舞台へと進む為に――)
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ラブリー・ラビットクロー  8月19日18時
〘最終防衛アラートの停止を確認。周辺の脅威なし。Parousiaの作動を終了します。瘴気ガスの浄化を開始しました。警戒システムを通常シークエンスに以降。損壊レベルのチェックを開始します。重度の損壊を確認。全市民に通達を開始。地下シェルターの封鎖を解除します〙
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
(風が止まりました。ユーベルコードの力で点っていたLEDの灯りは既に消え去り、操作パネルの僅かな光源だけがラブリーの周囲を仄かに照らしています。恐る恐ると不安に駆られた指先がタブレットの渕をなぞります。その存在を確かめるように)

ねえマザー。これでちゃんと止まったのかな。
【散布されていた瘴気の停止を確認しました。この“ミアズマブロック”を覆っていた汚染された空気も、間もなく全て清浄化されるでしょう】

(凛と響くAIの声に不安が和らいで、端末をギュッと胸に抱き寄せるのでした)
よかったあ……ちゃんと止められたんだ。
【無事地下シェルターを踏破する事ができました。これで目標は達成となります。セキュリティの解除に伴い、出口のゲートが開放されました。それによりユーベルコードを使用しなくても地上へ戻る事が可能です。お疲れ様でした】
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
そっか。らぶはこれから地上まで歩いて戻らなくちゃいけないんだよね。げー。らぶもーヘトヘトなん。マザーなんとかしてー。
【次の目標を設定しましょう。そうすればまた元気が湧いて来るに違いありません】
次の目標?そーなんな。らぶは地上に戻ったらまた旅にでて、セカイのステキをたくさん集めて来るんだ。そしてこの街にまたヒトが戻って来れるよーに色々準備を進めるのん。瘴気はなくなったけど、今はまだボロボロだもん。少しづつキレイに戻して、ヒトの笑顔をたくさん咲かせたいな。
マザーのゆーとーりだ!らぶにはまだたくさんやる事があるのん。早く地上に戻らなくちゃ。
【一緒に頑張りましょう】
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
(その時でした。面をあげたラブリーの眼前に立体ホログラムの光が集まり始めます。やがて形作られたそれは、第5層で出会ったアリシアの姿でした。いえ、厳密に言えば少し違います。彼女は白のテクノロジーウェアを身につけ、その背中からはラブリーの持つ偽神兵器と同じ純白の六翼を生やしていました。感情の読み取れない赤き双眸を落として俯き、暗い暗い足元を睨めつけたまま、静かにラブリーの前に立ち塞がります)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
あ、アリシア……?

(地下5階で会った彼女は優しく、ラブリーへの親愛の情を纏っていました。しかしその雰囲気は既になく、無機質な佇まいに敵意すら感じ取れるようです。瞳の中に昏き影を落としている彼女に思わずたじろぎます)

なんで…?

(その呻きに近い呟きは、胸中に沸き起こる様々な感情を代表した言葉でした。既にその効果を失っているユーベルコード。まったくの別人と疑い、信じたくなるようなアリシアの影。不意に起動されたホログラム。その問いに答えたのは、頭上から響くもう一人の声で――)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
〘いつかこの時が来ると思っていた。それは私にとっては哀しむべき事であり、喜ぶべき事でもあるだろう〙

(それは知らない男の人のボイスメッセージ。低く落ち着いたその響きに智慧を感じさせるような、そんな声音でした)

〘この拠点を包んでいた瘴気は、君を護る為の揺り籠でもあった。ビッグマザーに提案されて技師に作らせた代物だ。彼女は君の事をとても大切に思っていたみたいだからね。でも私は、いつか君がその揺り籠から抜け出る日が来ると確信していた。子はいつか親離れをするものだ〙

(目の前のアリシアを見据えながら、黙って男の言葉に耳を傾けます。その声の主が誰であるのかはわかりませんが、この拠点を守っていた一人であった事はわかりました)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
〘すまないね。歳を取るとつい話が回りくどくなって若者を退屈させてしまうんだ。本題に入ろう。翼を持ち、空へと羽撃く決意をした君にひとつだけ、お願いがある。私達最愛の娘を殺して欲しい〙

(――それはとても落ち着いたトーンで)

(ラブリーはすぐにこの声が目の前のアリシアの、そして自分自身の父親のものだと理解し、僅かに眸を見開かせます。胸が早鐘を打つのを感じました。男は静かに続けます)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
〘今君の目の前に表示されている彼女の名前は、アリシア・ホワイトバードという。君のお姉さんだ。彼女の魂は今、骸の海に囚われてオブリビオンとしてこの世界を彷徨っている。優しい子だった。それだけに今まさに彼女の魂が受けている苦痛は、私達の想像を絶するものだ〙

アリシアが、オブリビオンに…なってる……

(オブリビオン。過去を――想い出を穢すセカイの敵。そこに堕とされる苦しみは死よりも残酷な絶望です。ビッグマザーは拠点の人々の魂を救おうとしました。しかし、一人だけ、彼女の掌からこぼれ落ちてしまった者がいるのでした。アリシアはこの霊廟に名を連ねては居なかったのです。彼女の地獄は、今も尚続いています。その事に、ラブリーは息も出来ぬ程のショックを受けるのでした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
〘どうか、アリシアに安らぎを与えてあげて欲しい。こんな事を姉妹である君に頼む我々大人を許してほしいとは思わない。しかし、もう君以外に為せる者がいなくなってしまった。私はこの拠点と運命を共にする。それを止める事はできない。君がこの自由の空を駆けるというのなら、アリシアの地獄を終わらせてあげてくれ。彼女はきっと今も、愛に飢えているんだ〙

(――もしまた不安になる事があったらアタシにメッセージ送ったらいいよ――とアリシアは言いました。普段と様子の違うラブリーを気づかい、手を伸ばそうとしてくれたのです。そして今、アリシアは深い深い闇の中で救いを求めています。それならば今度はこちらが手を伸ばす番でした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
〘誠に勝手な話ではあるが、私達の願いを君に託す。君の切り拓く未来に、光あらんことを〙
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日14時
(それだけを言い残してホログラム映像は消えました。元の静寂が戻る中で、ビッグマザーが口を開きます)

【この瘴気を止める事が、インスタントメッセージが送信されるトリガーだった様です。それはラブリーにしか出来なかった事です】

アリシアは嵐にのまれたんだ……。
(ホログラムが表示されていた虚空を見つめたまま、ラブリーは呟きます)

【この緊急メッセージは、白鳥代表から予約送信されたものと思われます。オブリビオン・ストームが拠点を襲う最中に録音されたのでしょう。そこで見た光景は、代表にしかわかりません。ですが恐らくは、それこそが真実なのでしょう。ラブリー。私からもお願いがあります】
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
マザー……

(ラブリーにはわかりました。冷静な音声で話すビッグマザーは実のところ、涙を流しているのだと。アリシアを敵に奪われた苦しみ。大切な娘を守りきれなかった無力感。そして、そんな大事な記憶すら、覚えていないという悔しさに)

【私と一緒に、|アリシア《娘》を、救ってあげて下さい。どうかお願いします】

(マザーから紡がれるその願いに、ラブリーは静かに頷くのでした)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
必ず救う。だから、泣かないで。
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
❖❖❖❖❖
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
(辿り着いた地下シェルター入り口。すっかり開いたゲートをくぐれば、差し込む陽射しに思わず目を細めます。いつもの様にガスマスクを外そうとして、その手は止まりました。もうこの場所はラブリーにとって安全な場所ではなくなったのですから。少しづつ視界を慣らしていき、やがて空を見上げます)

うあ……

(思わず声が漏れるほど透き通って見えた蒼穹は、いつか見たあの空の様でした。何かを掴むように、そっと手を、伸ばしながら――)
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
【おかえりなさい】
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
――ただいま。
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
Fin
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ラブリー・ラビットクロー  8月20日15時
#叛逆の狼煙
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