インタビュー記録
ジャガーノート・ジャック 2019年3月21日
Date: 2016年12月2◼︎日
インタビュー対象:"ジャガーノート"
インタビュアー:エージェントSF
(以下、【】内がインタビュー対象、『』がインタビュアーの発言)
『……これからインタビューを始める。』
『なお、聴取をする上でのコミュニケーションはこのPCのワープロ上で行う。
君もその方がやりやすいだろう?ここまではいいかい?』
【――I Copy. 本機と君との間のコミュニケーションは現在接続中のパーソナルコンピュータより実行する。問題は皆無。】
『結構。……さて、いくつか質問をしよう。』
『…………君は、一体、何者なんだ。』
【回答。本機のシリーズネームは"ジャガーノート"。個体識別名は現時点で登録がない。
本機及び本シリーズ――兄弟機ともいえる存在達は、製造者に造られた電子生命体である。】
『……見ればわかるとも。どう見たって君は人の類じゃあない。』
『……それじゃあ、今言ったその、君の製造者。それは一体、何者なんだ。答えてくれ。』
【――可能な範囲で回答。製造者はUndefined Creature, 通称UDC、邪神とも呼ばれる存在。】
『……それは知ってる、今聞きたいのはそういう事じゃあないんだ。』
『その製造者の固有名や、目的、所在。そういう事なんだよ、聞きたいのは。』
『あまり僕を苛立たせないでくれ。これでも努めて文章が感情的にならない様にしてるんだ。』
【――努力する。製造者は通称"Dr."と呼ばれていた。他の呼称は不明。】
『"ドクター"。 記録しておく。……その"ドクター"の所在は?』
【不明。本機はその情報を有していない。】
『……君を製造した事に対する目的は?その"ドクター"とやらは何を狙ってる?』
【――回答。世界への侵攻を目的とし、その為の戦力の拡充を目指すものと推察。加えて――】
『加えて……他にも目的が?』
【肯定。】
【"製造者本人の悦楽の為"。】
『……………………は?』
【繰り返す。悦楽の為と推察する。】
【変則的な"儀式"の形式は強力な手駒となりうる個体を探すのみならず、
その独自の形式に翻弄される抽選者達を観察し愉しむ為であると認識。】
【むしろ、強力な手駒を産み出すだけならもっと単純で早急に産出できる形式も有った筈だ。
この事から儀式の実行により"Dr."が愉しむ事こそ本シリーズが作られたメインの理由であると推察する。】
『……愉しむ為。』
『あの三十人余りは。
君の製造者の悦楽の為に巻き添えを食らったと?』
【――――。肯定する。】
『………………………………そうか。』
『そうか。』
(10分中断)
『……ごめんよ、少し時間が空いた。』
『インタビューの続きをしよう。……ひとつ肝心な事を何個か聞き忘れてた。』
『まずは、分かり切ってる事の確認になる。現在、巻き込まれた三十余人のうち帰還者はたったの一名。……君も知っての通りだ。』
『……帰還はせずとも、未だ生存はしている個体も確認されている。これも、承知してるだろう。』
【肯定。どちらにおいても君の確認した通りだ。】
『OK。その上で聞こう。』
『……生存者が無事に生還できる目はあるか?』
【――回答。諦めた方がいい。
最早生存者たちは人としての定義を外れたものになっている。人に戻るのは不可能と推察する。】
『………………そうだろう。』
『そうだろうとも。解ってたさ。……次の質問だ。』
『君は愉しむ為、と言ったね。』
『君が創造者に敵対する存在となる事を含めて、"ドクター"の愉しみの内なのか?』
【肯定。】
【本機に投与された"パッチ"は製造者が気まぐれで制作したもの。
本シリーズが持つ人類に有害な作用をほぼ無効化し、"寄生"ではなく"共生"する様にプログラムを書き換える。】
『……なんでそんな事を?』
【――推測となるが】
【何も妨げなく進む"ゲーム"ほどつまらないものはない。
その思いの元、誰か一名が彼の計画の"妨害役"として"ゲーム"を盛り上げる事を期待したものと推察。】
『……舐めきってるな。
下手をするとゲームが台無しになるかもしれないだろうに。』
【――恐らくは、それでも構わないのだろう。】
『……何だって?』
【――"ゲーム"とは悦楽の為のもの。どちらが勝者となり敗者となっても、その過程にこそ悦楽が生ずる。
仮に敗者となったとしても、悦楽を楽しめるのであれば製造者としては何ら問題はない。】
【――故にこそ、この"パッチ"が作られ、本機もこうして存在しているのだと推察する。】
『……本当に愉しむ事しか考えてないんだな。……』
『それで、だ。』
『"ジャガーノート"。君は今後、僕たちに協力し、"ドクター"並びに他UDC達と敵対し戦闘をしていく。』
『それで、いいんだな。』
【肯定。――本機が出来うる限りの支援はする。】
【本機の存在理由は既にそう言ったものとして上書きされている。】
『兄弟達と殺し合うことになっても?』
【――肯定。元より本機にそれを忌避する感情はない。問題は皆無。】
【むしろ、殺し合いについては君達人類の方が不安要素が大きい。】
【知っての通り、本機達は】
『いい、全部言わなくても結構だとも。』
『元々邪神、UDCにはそう言った属性を持つ個体がいる。
データとしていくつもそう言う記録がある。』
『君達の兄弟機……"ジャガーノート "が"何を素体にして稼働するUDCか"に関わらず、敵性個体は全て排除するだけだ。』
【――Copy that.】
【であるならば、本機も本機に出来うる限りの支援をする事を約束しよう。】
『……念の為確認するが、君が裏切らない、という保証は?』
【証明できるものはない。が、誓ってそれはない。】
【製造者が本機に何かを仕掛け裏切らせる様な事も、彼の性質上まず無いと推察。】
【それでも不安ならば、背信行為を行った場合自壊を促すプログラムを本機にインストールしてくれてもいい。】
『……わかった。』
『信頼するとしよう。どうせ君の力は必要なんだ。
自壊プログラムがいるかどうかは、組織の上部が判断するだろう。』
『君にはこれからUDC組織の一員として、一緒に仕事をしていってもらう。』
『君から何か言いたい事は?特になければ、インタビューを終了する。』
【――3点ほど。】
『どうぞ?』
【――本機は詰まる所のUDC生物である。本機を戦闘に用いた場合、主に精神面へ悪影響を使用者へ齎す場合等が懸念される。】
【その点は理解した上で運用を行って欲しい。】
『……構わないさ。使う側もそのくらいは心得てるつもりだ。ノーリスクで使えるものだとは思ってはいないとも。』
『……とにかく、確かに聞き届けた。』
【――2点目。】
【本機達――今回事を起こした"ジャガーノート"は試験機とも言うべき存在。
今回の"儀式"で得たデータを元に、より侵攻及び手駒の製作に向いた実用機としてのの"ジャガーノート"がばら撒かれる可能性が高い。】
【本機達試験機と同じ対処法は通用せず、難儀する事も多々あるだろうと推察する。】
『……諫言ってところかい?覚えておくよ。……ちなみに、君と同じように気まぐれで"パッチ"が当てられる個体が出る可能性は?』
【不明。無いとは言えない。
が、それが居る事、及び味方となる事を期待をするべきでは無い。】
『……わかった。参考になる意見だ、ありがとう。記録しておく。』
『……それで、最後のもう一つは?』
【――――――名前を。】
『……名前?』
【肯定。名前が欲しい。本機の個体識別名。本機が、何であるかを示す名前を。】
【決めて貰えないだろうか。君に。】
『……僕?僕がか。』
『………………分かった。いいとも。そうだな。』
『それじゃ、……君の名前は、』
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2
ジャガーノート・ジャック 2019年4月30日
『……ナビゲーター。導き手。……君には、僕が僕の友達を探し出すまでの案内をしてほしい。』
ジャガーノート・ジャック 2019年4月30日
【この時より本機、製造ナンバー2006-1214の電脳支援亜生命体の名称を"NAVI"と定義する。】
ジャガーノート・ジャック 2019年4月30日
『……ここじゃエージェントSFなんて暫定的にイニシャルで呼ばれてるけど。そうだね。それなら』