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管理棟

イリア・ナイン 2021年7月17日

軍用機やキャバリアの離着陸を管理していたと思われる、管制塔を中心とする区画。
どの計器類も埃に埋もれ、割れた窓硝子から吹き込む風に蜘蛛の巣が揺れている。




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イリア・ナイン 2021年7月19日
(ぽちぽちとパネルを操作してみる。
が、当然反応は無く)
…動かない、よね。
もう、動力も来てないみたいだし…。
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イリア・ナイン 2021年7月19日
うーん…地下には電気が通ってたから、どこかで動力は生きてると思うんだけど…。
(暫く、室内を探索する。
見た事も無い機械ばかりで、当然操作方法もわからない。
だが)
……あ、これが…?
(壁に、埋め込まれたハンドルがあった。
それを覆う硝子の蓋には、「非常電源」と掠れた字で書かれている)
良いのかな、大丈夫かな…?
(暫く迷っていたが。
意を決して、落ちていた瓦礫で硝子蓋を割り、中のハンドルを引き下ろした)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(ブウゥゥン…と低く空気が震える。
それと同時に、長い眠りについていた計器類の幾つかが目を覚ました。
錆一色だった光景に、薄汚れているが赤や緑のランプが眩しく見える)
う、動いた…やった…!
(控えめではあるが、ぐっと拳を握り締めて。
手近な端末に近付き、キーを叩いてみると)
…管理者権限、パスワード…。
うーん、……えーっと…。
(当然そんな物は知らない、早速お手上げだ。
だが。
何故か、脳裏にぼんやりと英数字の羅列が浮かび上がって来て)
………?
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(自身でも良くわからぬまま、指先が動くに任せて入力する。
エンター。
軽くブザーが鳴り)
あ、ここは小文字…。
(修正し、入力。
先程とは異なるブザーが鳴る。
あっさりと、最初のセキュリティは解除された)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(何やら色々表示されているが、良くわからないのでとりあえず読み飛ばしていく。
暫くすると、またセキュリティロックの画面が表示されて)
うーん、今度は…
(浮かんだ数字を口に出しながら、入力。
思いっきり打ち間違ったが、気付かずにエンターを押して)
あ、あれ……?
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(慌てたせいで、入力画面を閉じてしまった)
うぅ、そんな……。
(上手くいくと思ったのにと嘆きながら、再度やり直し)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(どうにか、2番目のセキュリティも解除出来た。
ほっと息を吐くと)
折角だし、ちょっと読んでみようかな…?
(閲覧可能となったファイルや報告書を呼び出すと、目を通し始めた)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
うーん……。
(本来見たかったのは、自身の出自に関わる物。
だが、閲覧出来たのは、このプラントの生産物記録や、占有していた部隊の戦闘記録といったものばかりだった)
やっぱり、こっちじゃなくて、地下の方じゃないと見れないのかな…?
(読み進めている内に、またセキュリティにぶち当たった。
漠然と浮かんだ文字を、ぽちぽちと入力して)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
…あ。
文字、飛ばしちゃった。
(再度、入力する)
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イリア・ナイン 2021年7月19日
(ブザーが無情に響く。
パス自体は合っていたが、どうやら別にカードキーも必要らしい)
えぇ…そんな小さな物、こんな広い一帯から見つけられないよぉ……。
(折角ここまで解除出来たのにと嘆きながら、泣く泣く画面を閉じる。
暗くなった画面を暫く見つめていたが)
…そう言えば。
実験体に関する記録が云々って文章、あったなあ。
閲覧は出来なかったけど、別の場所なら…?
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イリア・ナイン 2021年7月19日
非常用じゃなくて、きちんと電源を回復出来るかもしれないし…ちょっと、探しに行ってみようかな。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
うーん、今日も暑いなあ…。
(暫くぶりにやって来たが、相変わらずの荒廃っぷりである。
まあ、機能していたとしても、守りや攻撃の要である軍用機やキャバリアが存在しないのだが…)
そろそろ、引き出せるデータは引き出して整理しておきたい…けど。
(未だに、電源の回復は叶っていない。
まだまだ先は長そうだ)
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イリア・ナイン 2021年8月6日
(朽ちた椅子に腰掛け、割れた窓の向こうに広がる青空を眺める。
何時頃から、こんな光景が広がっていたのだろう。
自身が作られた頃は、きっと違った光景だっただろうに)
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イリア・ナイン 2021年8月6日
(目に付いた引き出しを開けてみる。
錆びているせいか、中々開かなかったが)
…あ、
(家族写真だろうか。
夫婦と子供の3人が収まった写真立てが出て来た)
今、この人はどうしてるんだろう。
無事に、どこかへ行けたのかな…。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
(こんな世情である。
この家族や、他の職員とその家族達の無事を願う事しか出来ない)
……家族、かぁ。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
他の子達は、姉妹…じゃなくて、全員私のお姉ちゃんになるのかな?
もし全員、稼働してたら…どんな感じで、過ごせてたんだろう。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
(じゃあ、親は誰が?
製造主達の誰かになるのか、全員なのか?
いや…そもそも、親子の関係になんてなれるのだろうか。
向こうからすれば、自分達は単なる研究の産物でしか無いかもしれないのに。
事実もわからないのに、勝手に希望的観測を抱くのも虚しいだけだ)
…はぁ。
駄目だなあ、やっぱり悪い方向にばっかり考えちゃう。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
(自身の調整室で耳にした、“波の乙女”達に遺された音声データの言葉が蘇る)
たとえ親子の情は無くても…想いを託されたのは、事実だから。
だから、今は…それだけで十分、だよね。
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イリア・ナイン 2021年8月6日
…うん、元気が出て来た!
(写真立てを、元あった場所に丁寧にしまうと。
軽やかに立ち上がり、視線を向けたのは窓枠の向こう。
青い空に、点々と浮かぶ物体が見えて)
早速、想いを果たしに行かなきゃね。
(いつでもどこでもキャバリアで戦えるとは限らない、生身での戦闘が避けられない事もある。
丁度良い練習になると強がりながら、部屋を後にするのだった)
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