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キャバリア格納庫

イリア・ナイン 2021年7月17日

直立したまま朽ちている、鋼の巨人たち。
まともに起動するものは存在せず、もはや出撃の時は永遠に訪れない。
─ただ1機を除いては。

格納庫最奥に佇む、クロムキャバリア。
覆いのシートの隙間からは、純白の装甲が覗いている。
ケーブル類も接続されており、ロールアウト直後の様だ。




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イリア・ナイン 2021年7月19日
(吹き抜ける風の音だけが木霊する格納庫に、新たな音が─カツンカツンという靴音が響いて来る。
音の主は、白い衣装を纏った少女。
荒廃した地に不釣り合いな程、どこか心細げな様子で)
……あれ、かな?
私の為の機体があるって、データログに遺されてたけど……。
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イリア・ナイン 2021年7月21日
…。
9人の、波の乙女達。
私の機体、ヒミングレーヴァ。
(機体名に込められた意味はわからないが、託された願いは理解した。
データの調査が進めば、様々な謎も自ずと明らかになる筈だ。
故に、今は)
たくさんの戦火を、私達で消し止めていかなきゃね…!
(覆いのシートを、一息に引き剥がす。
その下から現れたのは─)
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イリア・ナイン 2021年7月21日
(純白の装甲が眩しい、細身のクロムキャバリア。
静かに起動の時を待つその機体の各所には、蒼いワンポイントカラーが入っている)
私の服の色に、似てる…やっぱり、間違って与えられた機体じゃないんだね。
(得意とする武装が装備されていなくとも、一応はレプリカントの端くれ。
揺らぎがちではあるが、その自負はある。
機体の足元にある端末、そのスキャナー部分に迷い無く掌を翳す。
スキャン完了と同時、機体の双眼が蒼く光り。
繋がれていたケーブル類が、自動的にパージされていく)
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イリア・ナイン 2021年7月21日
(機体横に設置されている、鉄の階段を駆け上がり。
辿り着いた先では、コクピットハッチが既に解放されていた。
搭乗者を迎え入れるかの如く、内部のモニターやパネルが次々に点灯していき)
もしかして、この施設一帯の電源が落ちていたのは…残存電力を、全部この機体の維持に回していたから…?
(何時目覚めるかもわからない操縦者の為に、そんな仕掛けを遺していくとは…)
ううん…それだけ、期待されて、託されていたから…だよね!
(大きく頷き。
操縦席へと滑り込んだ)
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イリア・ナイン 2021年7月21日
(正面モニターに表示されたのは、「Himinglæva」という機体名。
そしてすぐに、モニターには外部の─格納庫の光景が映し出された。
ハッチも閉鎖され、コクピット内の光量も絞られる。
そっと、操縦桿に手を乗せて)
……っ!
(脊椎辺りに何かを捩じ込まれる様な感覚と共に、莫大な量のデータが、脳内へと直接流れ込んで来る。
機体の各種データは勿論、外気温や湿度といった環境データまでもが、情報の洪水と化して脳を襲う)
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イリア・ナイン 2021年7月21日
ぅっ、
(一瞬目の前が白くなり、膝へポタポタと何かが落ちた。
目が眩んでいても眩しい赤。
どうやら、脳への高負荷で鼻血が出たらしい。
だが)
…ふふっ。
私の血、ちゃんと赤いんだね。
良かった…!
(手の甲で鼻血を拭い微笑むその表情は、どこか晴れ晴れしたもので。
スラスターペダルと連動して、背部のウィングバインダーが滑らかに展開される。
一息に踏み込んで)
ヒミングレーヴァ、発進します!
(答える管制の声はもはや無くとも、彼らの遺したものが答えそのものなのだから。
蒼い炎を靡かせ、機体は戦火の大地へと飛び立つのだった)
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イリア・ナイン 2021年7月28日
(砂漠での一時を終え、駐機スペースとへと問題無く帰還した。
トン、と機体から格納庫へ降り立つと)
うーん…突発的な戦闘があったけど、特に問題も無かったし。
私の適正外の武器ではあるけど、何とか使いこなせそうかな…。
(散弾銃の直撃を受けたが、やはり装甲が多少傷ついている程度だった。
その痕を見つめながら)
相手の武器がジャンクすれすれだったから、無事だったけど…装甲がかなり薄いから、相手が手練れだと負けてたかも…。
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イリア・ナイン 2021年7月30日
他に、何か武器を…
(積めれば良いのだが。
軽量の機体に無理して武器を積めば、それが命取りになる可能性もある。
ならば)
うぅん、戦闘プログラムを少し弄るか…剣そのものを弄るかしてみようかな。
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イリア・ナイン 2021年7月31日
でも…この機動力で接近して、私自身の能力で相手の電装系を掌握してしまえば、特に問題も無さそう?
(結局、どうすれば良いのやら。
困ったなぁとぼやきながら、その辺の資材に腰掛けて)
暫くは、様子見や戦法の模索の為に、戦闘を繰り返すしかない…か。
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イリア・ナイン 2021年7月31日
どこかに装備の保管庫があるって、データには残ってたけど。
この状態じゃ、あんまり期待出来ないかなぁ…。
(自機の隣にずらりと並ぶ、姉妹機“だったもの”を眺めて)
もし機体の再生産に必要な資材とかが揃っても、個々に合わせた改造がされてるし、結局乗りこなせる人がいないって事になる…よね。
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イリア・ナイン 2021年7月31日
(機体を見上げて)
んー、でも…幾ら機体や装備を強化しても、操縦者が三流だったら…。
(宝の持ち腐れ、である。
折角目覚めたのに、自身の鍛錬不足で斃れるのも納得し難い)
…訓練、やってみようかな。
(そう呟いて立ち上がると、格納庫を後にしたのだった)
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イリア・ナイン 2021年9月18日
うーん。
(機体から抽出した戦闘データの分析を眺めて、小さく唸る。
高速機動に特化しているお陰か被弾は殆ど無いが、関節部分の摩耗が激しい。
加えてワンオフのカスタム機である事から、予備部品も殆ど存在しない)
うーーん…どうしよう、乗り潰しちゃう様な結果は避けないといけないし…。
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イリア・ナイン 2021年9月19日
職人さんがいれば助かるんだけど、そう簡単に見つからないだろうし…。
製造プラントをどうにかして稼働出来れば、或いは…?
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イリア・ナイン 2021年9月20日
うぅん、でもそんな専門知識も無いし…。
(タブレット型端末に映る機体データと、このプラント群の稼働率のデータを見比べて、大きく溜息を漏らす。
依頼ついでに別世界に持ち込んで、そこの技術で補うというのも考えたが)
…コミュニケーション能力に乏しい私だと、難しそうだし…。
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