【Answers攻略戦】近づく戦端
ルイス・テニエル 2021年7月11日
「ネバーランドが近づいてきているか」
執務室の椅子に腰掛けながら、Answers元首クロウ・クルワッハは静かに呟く。
眼下見下ろす先には、恭しく膝をつき首を垂れるイヴァン・マクレガーの姿があった。
「およそ2週間ほどもすれば、我らの海域へと到達するでしょう。もっとも戦中の海域を抜けるには更に1週間はかかるでしょうが」
「そうか。……ところで、その恰好はなんとかなりませんか。『先生』」
王としての顔を消し、自らに跪いている恩師に苦笑を向ける。
「こればかりは何度言われようとも変えるつもりはありませんよ。貴方がかつての教え子であるとしても、今は我々を導く王なのですから」
「まったく、頑固なのは変わらないのだから」
親しみを込めた声を投げかけながら、頬杖をつく。
学術院では今のクロウのように『先生』が座り、それに対しクロウが話しかける構図で討論をかわしたものであった。逆転した自分達の立場を思いながら、クロウはまた王としての顔を浮かべる。
「6ヶ国はどうしている?」
「ネバーランドを利用する方向で動いているようです。本格的な協働となるとこちらの戦力では厳しいかもしれませんが」
「まず足並みが揃わないだろうな」
6ヶ国が足を引っ張るだろうというのが、2人の共通の認識であった。
総合の戦力としては侮れないものがあるが、国同士が利害をこえて動くことなど出来るはずもない。
出来るはずもないからこそ、今までの戦いを圧倒し続けてこれたのだ。
「やつらが到着したならそちらに戦力を集中したい。院長達に今のうちに戦力を削れるだけ削るよう伝達しろ」
「わかりました。……では、私自身の出撃も?」
「ああ、許可する。派手に暴れてくるがいい」
「暴れるだなんてとんでもない。私は『導く』だけです」
豊かに蓄えた顎ひげを撫でながら優し気に微笑んでいるこの老人が、ひとたび戦場に出ればどれだけの災禍を生み出すことかを信じられぬものも多い。
「頼もしいな」
敵に回したくないという意味も込めて、クロウはしみじみと口にする。
イヴァンが部屋を去っていくと、クロウは静かに地図を広げる。
クロウが元首となってから、Answersはその領土を随分と広げることが出来た。
それは自らの優秀さを証明する結果であったし、アンサーヒューマンこそが君臨すべき種族であることの証左でもあるとクロウに確信させた。
だからこそ、雑多に混ざり現実を見ようとしないネバーランドが忌々しくてしょうがないのだ。
「さあ、雌雄を決しようじゃないか。どちらが世界に必要とされているのか、それがはっきりとするだろう」
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