【Answers攻略戦】6ヶ国連合軍会議にて
ルイス・テニエル 2021年7月11日
「会議中失礼致します! レ・マルケが落とされました!」
伝令の兵士の言葉に、会議室に集う高官質の顔色が悪くなる。激しいAnswersの攻撃を受け、既にいくつもの町や村が侵略されている。
そして今回落とされたレ・マルケは戦略的に重要な大規模な港町であった。
「我々がこうして顔を突き合わせている間にも、攻撃は苛烈になっていくばかり」
「既に侵略された地域では、逃げ遅れた住人が奴隷として連れていかれたという話もある」
「だが……6カ国で包囲網をひいてなお、戦力的に劣ることは認めなくてはならないでしょうな」
悔し気な男の声に反論がないのは、既に短期間とはいえ自他の力量差をいやというほど味わってきたからだろう。
「今出来ることはといえば、長期戦に持ち込み昼夜問わず攻撃を仕掛けることで相手の疲弊を待つぐらい」
「まともにぶつかれば、こちらの戦力が大きく削がれることになる。そうしてこの包囲網が欠ければ我々の敗北はすぐにでも訪れることだろう」
既に打てる手は打ち尽くしている。国力の差でなんとか食い下がってはいるものの、ここから脱落者が出ていくのも時間の問題だろう。
「……我が国はもはやこれまでかもしれませんな」
覇気が完全に失せた表情で呟くのは、メロウブルーの将軍であった。優秀な将である彼の目から見て、もはや愛すべき祖国が生き残れる状況ではないことがありありとわかってしまう。悲壮感を漂わせた将軍の姿に、明日の自分の姿を投影し絶望が場を支配していく。
「メロウブルーが欠けてしまえば、Answersに対しての東部圧力が失くなってしまう。そうなれば――」
もはや軍議ではなく、ただ現状を確認するだけの場に堕していることに皆気づきながらも会議は続く。
そんな実入りのない会議の途中、また別の伝令兵が入室する。
「報告します。海域を横断する申請が届いているのですが」
「まさかこんな戦争真っただ中を通ろうとする愚か者が居るとはな……だが、わざわざそんなくだらん報告をあげなくてもよろしい」
「そうとも。普段であれば護衛船をつけて通行税を払って貰う所だが、今はそんな船を出す余裕もない」
馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりの高官達に睨まれ、伝令兵は恐怖に押しつぶされそうになりながら声を絞り出す。
「で、ですが……申請しているのはあの『ネバーランド』なのですが」
伝令兵の言葉に、高官達は一瞬息をのみ――そして顔を見合わせる。
「これは……天の配剤か」
「あの国の戦力は我々の戦力にも劣らぬもの。Answers相手であれど、決して劣るものではないかと」
「で、あれば――」
高官達の脳裏で皮算用が始まる。
ついぞ前に失くしてしまったはずの勝算が、目の前に自分から飛び込んできているのだ。
「うおっほん!」
包囲網の盟主たる、ウィステリアガーデンの王が勿体ぶったような咳払いで自身に注目を集める。
「どうだろうか。『ネバーランド』の海域横断の許可を出すのは。如何せん今の我々には護衛船を出す余力はないが、それの詫びに通行税はなしでいいだろう。Answersが横断する者を見逃すとは思えんが、それは『ネバーランド』とて理解しているだろう。何なら夜間は北部へ寄港してもらっても構わない」
分かりやすく要約すれば、対Answers戦に巻き込もうということだ。
「異議はありませんな」
「わざわざ危険な場所を通ろうというのですから、存分に役に立ってもらいましょう」
「夜間の寄港を許可しているだけ、感謝していただきたいですな」
久しぶりの吉報ともいえる知らせに沸き立つ会議室で、伝令兵だけが自国の命運を他者に丸投げしている高官達を見つめ、悲壮な表情を浮かべるのだった。
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ルイス・テニエル 2021年7月11日
【要約】
通りたかったらしっかり戦えよテメーら!
(俺達もう負けかけで死に体だけどな!)