テスト機暴走事件及びネバーランドへの襲撃の私的メモ
開条・セサミ 2021年5月13日
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――ようやく諸々のゴタゴタが片付いたので、備忘録がてらに事象を纏めておくとする。
1つは、先の海戦の裏で起きていた弊社の不始末……CGP-CC-03『ボーイ・ジャック』暴走の件。
こちらの『TEAMS-JAEGER(猟兵支援チーム)』に提供された検証用試作機(プロトタイプ)とは別に、正式量産型(プロダクトタイプ)――我々開条エンタープライズが本来提供する、『支援AIと操縦者の連携』を軸とした、キャバリアとしての運用テスト。
他社から引き取り、自らテストパイロットを志願したデザイナーズ・チャイルドと専用支援AIの組み合わせによって順調に進んでいたそのテストは、あのアホ共が無理やり担当を奪っていったことで大きく変化した。
どうもこちらに対抗心を抱いていたらしいあのアホ共は、ネバーランドの非常事態となったあの海戦に『ボーイ・ジャック』を実戦投入し、結果テストパイロットごとロストした上にその事実を隠蔽したのだ。
(無論だが、学園に所属する学生として戦線に参加し、戦果をあげたテストパイロット『ダスト』には敬意を表する。こちらにその情報が伝わったのはだいぶ後だが、彼によって助けられたという報告もあるからだ。)
問題は、その隠蔽された事実がオブリビオンマシンが絡む事件として公になったことと、そこに我らが盟友の『お転婆娘(アイ・ヴェルキス)』が関わったことだ。
アホ共はひとまず謹慎処分となったようだが、我が社の名誉顧問である『お転婆娘』の怒りを買ったのだ。後々ひどいことになるだろう。ざまぁみろ。
……それはともかく、本来の担当スタッフと移籍願を提出していた面々によるチームが再結成され、残された支援AI『グッドスタッフ』は別の方向性で動いていくことだろう。
『ボーイ・ジャック』自体は充分な検証結果が得られている為、本格的に我が社の新製品として量産化が行われるだろう。
また、『ジューク・ボックス』が新たな反応を示したことから、『グッドスタッフ』に関する何かしらのユーベルコードをセサミが獲得する可能性もある。こちらは要観察とする。
さて、上記の事件に関する後始末が片付かぬまま、我々は新たな危機に直面した。
それが、ネバーランドへの襲撃事件である。
先の海戦が無事に終わったことを、鎮魂を祈る、戦勝祭の最終日に起きた、たった一日の戦争。
もっとも、非戦闘員であった我々は事態発生と共に早々に避難させられた為、詳しい内容は把握していない。
ただ、学園の委員会所属学生を含む多くの学生が昏睡状態に陥ったことと、セサミを含む弊社の『ヴェルキス・C』……一般学生に提供された電子生命体達が電子防衛戦に参加したことの報告があがっている。(こちらについての詳細は割愛する。)
ここからは、担当総括としての私見を記す。
短期間で立て続けに大きな事件(イベント)があった為、セサミの所謂『感情』データに著しい負荷……ある種のストレスと思われる負荷が確認されている。
こちらはメンテナンスと共に経過観察を行っているが、セサミを『個人』として扱う場合、どのように影響するかが非常に楽しみである。
直近の新たな催しとしては、永世中立競技国家アテーナで行われる『キャバリンピック』がある。
ネバーランドも参加する可能性が高い以上、これがセサミにとってよい経験となることを願うばかりである。
一部スタッフが先日試験稼働させた疑似躯体(※)の本格運用も画策しているようだ。
セサミ自身からも周囲への面倒を避ける為の報告を行わないといけないという連絡があった為、よい機会だろう。
今後が、とても楽しみだ。
Dr.WD
・補足
(※)レプリカントと同様の仕様を持つ、汎用人型インターフェースのこと。他世界で言うならば、ミレナリィドールを人工的に再現し、電子生命体を搭載したものと捉えるのが近いかもしれない。
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