【RP】人の子
ヴィル・ロヒカルメ 2020年6月9日
静かなところがある。
潮騒しか聞こえない、とても静かな島がある。
打ち捨てられたコンクリートの廃墟だけが文明の残り香を漂わせるだけの、何もない島である。
そこに住む人はなく、滲み出るオブリビオンもなく、船さえ寄り付かない。
だが、今日は、
コンクリートの窪み、雨水でできた小さなプールに、ひとりの神とひとりの赤子がいた。
【World.】
グリードオーシャン
【Location.】
小さな小さな無人島。
【Notice.】
アダムルス・アダマンティン
スサノオ・アルマ
上記の二名のみが発言できるスレッド
1
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(ばしゃり。飛沫で遊んでいた赤子は動きを止める。頭の向きをすっかり巨漢へと固定し、目を丸くしていた。でかい、コイツはなんだと顔に貼り付けている)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
間違えた。
(再び懐へ手をやる。抜き出す。今度は肌着で、次はタオル)
ちょっとまってね。
(飴、二枚目のオムツ、ミント味の飴。そのうちにからんと澄んだ音が鳴る。コンクリートの床に黒曜石の刃が落ちていた)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
うん。
(アダムルスの手の上のオムツ、その上に短剣を乗せる)
あげる。
(オムツのことを言っているらしい)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
不要だ。
(スサノオの膝の上に落ちるように、オムツを放る)
“それ”は何だ。貴様の眷属には見えぬが。
(黒曜石の短剣の状態を確認しながら、赤子には一瞥もくれない)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
あさ、あさだよ。
(女は赤子の名を言う)
人間の赤子だよ。
(そして種族を付け加えた。何者かなど名前だけではわからないと気づいたのだ)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
……。
(黒の刃から顔を上げ、スサノオを見る。その顔は渋面していた)
最大限、好意的な解釈をしてやろう。生贄として捧げられたのか?
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(うーん、と女は記憶を探る。世界の名前を思い出そうとしていた。あぽ、あぽる、アポロンデルソル。少し違う気がするな)
……アポカリプスヘル。で、拾った。
(たぶんこれで合ってる気がする)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
(渋面に刻まれるしわがより深いものになる。まるで苦虫を噛み潰したかのような顔だった)
豊穣の神、地母神ならぬ貴様がなにゆえに赤子を育むというのだ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
面白そうでしょ。あさ、すぐ泣くんだよ。
(聞こえようによってはひどい発言であるが)
あと最近立つようになった。
(赤子の特徴を端的に表現してるにすぎない)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
興味本位で……
(言葉の後に間隙が生まれる。迷うような、鎮めるような間)
人の子の嬰児を手元に置くものではない。我らと彼奴らは存在からして別物ゆえに。
(粛々と、事実を教えるような口調)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
どうして別物だとだめなの?
(純粋な疑問をぶつける。この女にタブーはない。そして他者の迷いにも忖度しない)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
生きる世界が異なる。神には神の、人には人の生きる世界がある。同じ世界に在って生きる世界が異なれば、あらゆる事象に齟齬が生じる。
存在としての強度が、使う言葉が、背負う文化が、担う力が、そして過ぎる時間さえも。
(それは、結社と呼ばれる人間たちの組織を束ねる神としての言葉だった)
人と関わるなと言っているのではない。関わるのならば、それ相応の覚悟が求められる。
貴様のように興味本位で関われば、いたずらに摩擦を生むだけだ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
ヒーローズアースはもうとっくに人の世界なのに?
アダムルスは世界に線を引いて住み分けるほうが好きなの?
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
覚悟無くても、摩擦があっても、ぼくたちは死なないよ。
(神は永劫に不死不滅。女にとってはそれが全ての物事の前提だ。だから何が起きようと致命的なことにはならない。神の存在に何ら瑕疵を作ることはない)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
人間の組織を纏めてるきみにはどんな覚悟を持ってるの?
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
然り、かの世界はすでに人の世。それゆえに越えてはならぬ溝がある。ただそれだけだ。
そして、我々神と人の子らの間に横たわる溝は深く、大きい。
我らは不死なれど、不死であるがゆえにそれを解さずして人の子らと関わるべきではないのだ。
(寡黙な彼にしては、珍しくも訥々と言葉を紡ぐ)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(巨漢が立っている状況は、もう赤子にとって遊び続けられるような雰囲気ではないらしい。赤子は心の安全基地を求めて女へ近づく。濡れたままの袖で裾で、座っている女の足と服を掴み、よじ登ろうとした)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
人が死ぬのは当たり前のこと。神が死なないのは当たり前のこと。
人は赤子から変化して、神の姿はずっと一緒。どちらも当たり前のこと。
これくらいは知ってるよ。最近知った。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
でも、わざわざ覚悟がないと関われないのなら、なんでぼくたちは人間を同じ姿にして作ったの?
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
なんで同じ世界に住まわせたんだろうね。
(女の声に批難の色はない。自分のなかになにか意見があって、それをぶつけようとしているわけでもない。ただ疑問と、納得していないという事実だけがある)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
……人の死を、目の当たりにしたことはあるか。
(スサノオを見下ろしながら、廃神は問う)
目にかけていた人の子の死に様を見たことはあるか。病で、事故で、戦で――時の流れに耐え切れず死んだ、親しき人の子を見たことはあるか。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(赤子は女の服を掴み、足で立ち、そのまま体を登る。膝まで登る。自身の袖で女の服が濡れるなどお構いなしであったし、女も気にするような性格ではなかった)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
俺の場合は、概ねが戦の中で死んで行く者たちばかりだった。
(結社を束ねる者として、何人もの戦死者を見送って来た)
理屈の上ではどうとでも言えよう。だが、それを眼前にして同じことを言うのは困難なことだ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
ぼくはたぶんないかな。
(あったとしても記憶に残っていない。記憶に残ってない以上は親しい相手でなかったということだろう。やはり、見たことはないということだ)
あさはね、あと数日で死ぬよ。
(なんでもない調子で女は言う。膝の上の赤子が落ちないよう両脇を抱えた。やがてくる日が初めての『親しい人の死』を体験させることになるか、女にもまだわからない)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
きみはそう言うけど、まだ組織を解体していないよね。
親しい人間の死を経験しているのに、戦いを止めるつもりはないんでしょ。これからも経験していくつもりでいる。
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
時間は時の神の、死せる者らは冥府の神のものであるべきだ。それを犯すオブリビオンを捨て置くことはできぬ。
それが我が兄との誓いであるがゆえに。
(応えるように、ソールの大槌から噴き出す地獄の炎が燃え盛る)
心せよ、太陽と正義の神。時は短く、また疾く過ぎる。
人の子は脆い。それが嬰児であれば尚更に。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
アダムルス。同じだよ。ぼくときみは同じだよ。
死ぬとわかっていてもやめる気はない。覚悟の有無は違うかもしれないけれど、それはぼくにとって大きな違いじゃないんだ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
あさはあと数日で死ぬ。ぼくはそれをわかっていて育ててる。この事実しかないんだよ。他は重要じゃないんだ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
きみのその覚悟は、きっと死にゆく人間に対しての礼儀なんじゃないかな。違った?
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
……さて、な。貴様の言う通り、死せる者らに送る礼儀か、あるいは悲哀に呑まれぬようにするための護りか。
あるいは、我ら不死なる者らがいつかは通る道なのやもしれぬ。
いずれであるか、いずれでもないかは、知恵の神ならざる俺では到底理解できぬことだ。
(人の子はいともたやすく壊れてしまう。それを知って、覚悟として胸に置いた理由は一体何だったか。そんなことはもう、戦っている内に忘れてしまった)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
人間はなんで死ぬんだろうね。最初はそんなものなかったのにね。
(ヒーローズアースの神代、そこにあったのは不死の獣と不死の神だけ。あの世界に死が誕生した理由はなんだったのだろう)
神はどうして不死なんだろうね。
(わざわざ人の視座に立って神を測るなど、らしくないなと自分で思ってしまった)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
俺もかつて、同じことを知恵の神に問うた。
(かつて、まだ鍛冶の神として在った遥けき過去。目にかけていた鍛冶の盛んな集落が滅びてしまった時のことだ)
神はこの世の理を担う。俺が鍛冶を担い、炉の火を我が権能としていたように。貴様が太陽と正義の権能を有するように。
だが、人の子らにこの世の権能は無い。ゆえに彼らは次へと繋ぐのだ、と。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(権能の有無が人と神を別けるのだろうか。ならば神は等しく不死の権能を持つのだろうか。そして繋ぐ権能を持たないのだろうか)
(いや)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(次へと繋ぐなど、アダムルスがいまやっているではないか。彼の組織で、その戦いのなかで)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
彼らは、じゃないよ。きみもでしょ。
少し考えてみたけれどね、やっぱり人間には『死ぬ権能』があるだけなんじゃないかな。
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
(一瞬だけ、男は目を見張った)
……貴様はいつも雲を掴ませるようでありながら、時たま鋭いことを言う。
だが、俺はあくまで繋ぐ手伝いをしているに過ぎん。実際に繋いでいるのは、人の子らだ。
(黒曜石の短剣を太陽にかざす。黒々とした刃が、鈍く陽光を反射した)
返そう。またこいつの様子を見に来る。なくすなよ。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(女はあまり違いを理解できない様子で瞬いた)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
うん、ありがとうね。
(女は赤子を膝に乗せたままそれを受け取る。さっそく赤子が手を伸ばすが、怪我をしないようそっと手で押さえながら懐の一番奥へねじ込むのだった)
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
少しはそいつを使ってやることだ。道具というものは、使われることをこそ望むがゆえに。
(大男が踵を返すと、マントがはためく)
……忠告を一つ、しておこう。
アダムルス・アダマンティン 2020年6月9日
我々の戦うオブリビオンとは過去の中で死せる者らだ。
そして一説によれば、存在とは忘れ去られることで真なる死を迎えると言う。
俺のように忘れ去られることが無いように。そして、その嬰児を忘れ去ることのないように、努めることだ。
(それだけを言い残して、彼は瓦礫の向こうへと去ってしまった)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
あさ、あさ。ぼくはきみを忘れないよ。
だけどきみは、きっとぼくを忘れてね。
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(赤子は目の前で交わされた神々の話をなにひとつ理解できていない。その後向けられた言葉もよくわからない)
スサノオ・アルマ 2020年6月9日
(ただ頬を突かれる感触がくすぐったくて、笑い出した)