0
あかいベンチ

夢前・トウコ 2019年8月17日

公園の中でたったひとつ、ぴかぴかの新品。
人ふたりが腰かけられるほどの幅。肘置きなんて気の利いたものはない。
背後にはみどりの植え込みが広がっている。花は咲いていない。

※メタ無しRP
※どなたでも




0





汐崎・七竈 2019年8月17日
(独り。少し楽しそうな顔で、空を見上げる。)……淋しい、なぁ。(そう呟いて、はらりと涙を零す。)
0
夢前・トウコ 2019年8月22日
(コンビニの袋を下げて、少女が歩く。中身はパンケーキにチーズのクリームが挟まった、あまいあまい新商品の菓子パンだ。)(食べるのはいつもの公園。心を弾ませながらベンチに向かうと、ひとりきりの少女の姿が見えた。)(彼女がひとつ、呟く。頬に涙の筋ができる。おどろいた。彼女の意思が読めず、逡巡する。あいにく涙を拭けるハンカチは持ち歩いていない。ひとりにしてあげた方がいいのかもしれない。しかし、彼女の呟いた言葉。それを聞かなかったことにはできなかった。声を、かける。)……あの。どうした、の?
0
汐崎・七竈 2019年8月22日
(ピクリ、と肩が揺れる。ゆっくりと振り返ったその顔は、能面の様に無表情で、頬に伝わる涙の筋だけが彼女の内側を露見させていた。)……いえ、何も。少しだけ、心が折れかけただけですから。(声をかけてきた少女の持ち物を見て、)もしお邪魔なようでしたら、退きましょうか?(少し腰を浮かべる。)
0
夢前・トウコ 2019年8月24日
(何をも映さぬ瞳に、涙の筋。……心が折れかけたという彼女は頼りなさげで、なんだかひどく、心配になってしまった。)あ、ううん。そこにいてくれないかな。(コンビニ袋をがさがさ)これ、新商品なんだけれど、2つ入りなんだ。チーズクリームを2枚のパンケーキで挟んだ菓子パン。……僕、パンが好きなんだけれど、いつもひとりで食べてて。だからたまには、自分じゃない誰かと食べてみたくって。君がよければ、一緒にどう?
0
汐崎・七竈 2019年8月24日
(少し驚いたような、異なものを見るような、そんな表情で少女をみる。)貴女が望むのであれば、別に私は構いませんが……。(再び能面に戻る。しかし、そこには何か先とは違うものが張り付いている気がした。彼女自身は気づいていないが。)
0
夢前・トウコ 2019年8月26日
ふふ、よかった。それじゃ、お隣失礼するね。(隣に腰をかける。がさがさと音をたてながら、ばり、とパンの袋を開ける。取り出しやすいようにパーティーの時にするような開け方をするが、不慣れなせいか少しもたついてしまった。開いた口をあなたに差し出す。)……はい、1個どうぞ。
0
汐崎・七竈 2019年8月26日
(少し戸惑った後、)あ、有難う、御座います……。(ぺこりと頭を下げ、パンを一つ。)……。(まじまじと手に持ったパンを見つめる。能面の瞳に、一瞬ではあったが、ふっと光が差した。)
0
夢前・トウコ 2019年8月30日
(じっと彼女を見つめていたためか、一瞬萌した色に気付くことができた。安心し、パンを一口かじる。)……うん、ふわふわで甘くて、美味しい。
0
汐崎・七竈 2019年8月30日
(おずおずと、パンを一口かじる。)……美味しい、です。(微かに、目元が緩む。)
0
夢前・トウコ 2019年8月31日
ほんとう?よかった!僕もそう思うよ。ふわふわで甘くていろんな味があって、パンって幸せの味だと思うんだ。それを誰かと共有できて、うれしいよ。(あなたの緩んだ目元に気づき、自分も嬉しくなってしまった。)
0
汐崎・七竈 2019年8月31日
(嬉しそうな少女を前に、少しタジタジしてしまう。)う、嬉しい、ですか。それは、良かった、です。
0
夢前・トウコ 2019年9月3日
ふふ、僕たちふたり、さいわいを分け合えたかな。あ、そういえば名前を聞いていなかったね。僕は夢前トウコ。君は?
0
汐崎・七竈 2019年9月4日
え、えっと、私は、汐崎七竈、です。(不慣れな自己紹介だった。少し、頬を染める。)
0
夢前・トウコ 2019年9月6日
七竈、たしかそんな名前の木があったよね。きれいな名前だ。……その、さっき公園に入ってきたとき、きみの独り言を聞いてしまったんだ、「淋しい」って。ぼくは寂しがり屋だから、その言葉を他人事だとは思えなくて。ついお節介を焼いてしまったのだけど……嫌じゃなかった?
0
汐崎・七竈 2019年9月7日
「強くあれ」って、両親がつけてくれたんです。(目を細める。)……嫌ではないです。でも、少し情けないですね。……。(少し逡巡した後、)……あの、もう少し、は、話し相手になってもらっても、良いですか…?
0
夢前・トウコ 2019年9月12日
すてきなご両親なんだね。……情けなくなんかないよ。だれかに弱味を見せるというのは、自分のこころを保つためにきっと必要なことなんだ。 うん、もちろん。僕で良ければなんでも話して。
0
汐崎・七竈 2019年9月13日
有難う御座います。……優しいんですね、夢前さんは。人にこんなに優しくされたのは、久しぶりです。
0
夢前・トウコ 2019年9月14日
そ、そうかな。僕は自分がしたいようにしているだけだよ。いきなりパンを渡されて受け取ってくれた君も、じゅうぶんに優しいと思うな。ところで、七竈は僕と同い年くらいだよね?学校とかには行ってるの?
0
汐崎・七竈 2019年9月15日
私が、優しい?……そんなことは、ないですよ。学校では、誰に対しても分け隔てなく冷たく接していますし…。それに、両親にも、…嘘を、ついていますし。(少し、表情が陰る。)
0
夢前・トウコ 2019年9月16日
確かに出会ったときは、クールな猫のような女の子だと思ったよ。学校ではあんな感じなのかな。……嘘、か。(七竈に出会ったときのことを思い出す。彼女は淋しいと涙を流していたのに、はじめ何でもない風を装っていた。それは周りに心配をかけまいとする、他者への配慮ではないだろうか。だとしたら、)――もしかして君は、ご両親に気を遣って、嘘をついていたりするの?
0
汐崎・七竈 2019年9月16日
(さらに表情が陰る。)……そう、です。私のこの嘘がバレてしまったら、きっと両親は心配します。……でも、それ以上に、怖くて。私を生かしてくれた、名前をつけてくれた両親に、親不孝な真似をしてしまうんじゃないかって……思って……。(声が震えている。)
0
夢前・トウコ 2019年9月21日
(震える声から、家族への真摯な想いが伝わってくる。)ほんとうに、ご両親を大切にしているんだね。君のそのやさしい想いがあれば、きっと親不孝だなんて思ったりしないよ。もしその嘘をひとりで背負うのが辛いのならば、僕に預けてくれて構わない。君の力に、なれないかな。
0
汐崎・七竈 2019年9月21日
(今にも泣き出しそうな声で、)……有難う、御座います。……こんな、嘘つきな私に、優しくっ…、してくれて……。
…少し、長く、なります…。…お話、聴いて、頂けますか……?(瞳をまっすぐに見つめる。不安そうな顔。)
0
夢前・トウコ 2019年9月22日
だれにでも、嘘をつかないとどうにも立ち行かなくなるときがきっとあるよ。(僕にも、ある。悪意にまみれた僕が、やさしい少女の、ふりをしている。けれど最初の七竈の呟きを聞いたとき、彼女の涙が止まればいいと願ったことを、嘘とは思いたくなかった。)(まっすぐにこちらを見る、彼女の瞳。応えるようにじっと目を合わせる。)聞くよ。大丈夫、ゆっくり話してね。
0
汐崎・七竈 2019年9月23日
(こくり、と頷く。三つほど深呼吸をしたのち、)……私は、生まれた時、不完全な体でした。……両親がそれを、ミレナリィドールのパーツで補ってくれたんです。(右手を空にかざす。人形が無機質に光を反射する。)そのおかげで、私はこうやって生きています。両親にはとても感謝していますし、私の体、パーツも誇りに思っています。
0
夢前・トウコ 2019年9月25日
なるほど……(うなずいた。彼女が両親を大事にしていることも、両親が彼女を大事にしていることも、この話だけで十分に理解できた。)そうだったんだね。(彼女の言葉を遮らないよう、相槌は最小限に。続きを目で促す。)
0
汐崎・七竈 2019年9月25日
……でも、私がどれだけこの体を誇りに思っても、大切にしていても、他の人から見たら、…ただの異物だったんでしょうね。
私は、この体が原因で虐げられるようになりました。……私はそれが悲しかった。悲しくて、悔しかったんです。両親が与えてくれた、かけがえの無いものを、踏みにじられて、嘲笑われて。(悲しそうに、遠くを見る。)
0
夢前・トウコ 2019年9月28日
それは――許せないな。(想像よりも、低くて冷たい声が出た。七竈とご両親のやさしい思いを踏みにじる人間がいる。許せない。ゆるせないのに、僕の中にはそれに類似した悪意が存在している。やるせなくて、彼女と同じように遠くを見る。)……その悪いやつらがなんと言おうと、僕は君の味方だからね。
0
汐崎・七竈 2019年10月4日
……夢前さん。有難う御座います。そう言ってもらえるだけで、少し、心が軽くなります。(瞳を閉じる。)……私は、自分が恐ろしかったんです。何度も何度も屈辱を味わう。その度に私は、私の心はくすんで行きました。…それに気が付いたとき、私は心底恐ろしかった。私はこんな人間だったのかと。この胸の内を満たしているのは、この体に込められた願いや想いと、相反する感情です。…どうしたらいいのか、私には解らないんです。ただただ感情を押し殺して、それを避けることしかできないんです。(胸にそっと手をかざす。)
0
夢前・トウコ 2019年10月7日
目を瞑りたくなるようなまっくろな感情……それを押し殺して、避けて、いままで生きてきたんだね。(あなたに目を合わせ)でもだいじょうぶ。君のその苦しみは正当なものだ。押し殺す必要はない。両親の願いや自分の想いを大切にしているからこそ生まれるくすんだ心を、否定することはないんだ。……実は僕にも、覚えがある。自分の意思とは関係なく沸々と湧き出てくる澱んだ心。僕はそんな感情が湧き出てくることに疑問を持たず、もう諦めてしまっている。だからこうして思い悩んでいる七竈はとても――純粋で、美しいと思うよ。
0