《戦》雲鳥
シャスカ・リアン 2023年9月1日
空が泣く。天が鳴る。
満ちる暗雲に浮かぶ赤い輝石が、血の如く鈍い光を滲ませていた。
それは、何時か見た終焉に似た。
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これはサバイバルを颯爽と駆け抜ける終末破壊超人と猟兵達の一幕である。
終焉が満ちる世界の何処か。
懐かしい顔。久方ぶりの顔と――それから。
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ディフ・クライン 2023年9月11日
タル……って、いや本気で言ってる?冗談ではなく?
ディフ・クライン 2023年9月11日
えぇ……(困惑)
…………ヴァルダがいいって言ったらね。
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年9月11日
だめです!もう、おばさまったら!飲みすぎてはいけませんとあれほど!(懇々とお説教)
シャスカ・リアン 2023年9月11日
(シュン)
(素直にお説教を聞いている。聞いてはいるが、自分の金で残りの穴は埋めるのだ。揺るがない。肝臓の数値は正常である)
ディフ・クライン 2023年9月11日
ダメだって。なのでオレも前言を撤回はしないよ。
オレが奢るのは『最初の一瓶と料理』だけ。明日もあるんだし、程々にしておきなよ。
ラウム・オラージュ 2023年9月26日
(激戦の果てに、確かな勝利を掴んだ)
(勝鬨を上げる声が其処彼処から聞こえて、聞こえて――そのいずれもが、何処か遠くのもののように感じられた)
最後の方、俺も皆も、めちゃくちゃで……、よくはぐれなかったなって、思った。俺ら生きてるか?生きてるな?
(卓に突っ伏し満身創痍。だけども、この中では一番外傷としては軽傷であった)
ねえちゃんにはさ。結局まだ、会えてねんだけど。
でも……ランスブルグはもちろんだけど。エルフヘイムも、ぜんぶ。ぜんぶ、無事だよ。
手伝ってくれてあんがと。
ディフやみんなにとっちゃ他人事だってのにさ。
猟兵ってやつらのこと、やっとなんか分かってきたかもしんねえ。
……ああいや、ディフは他人事って括りじゃないんだったな。わりい。
そっちも間に合って良かったよ。
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年9月26日
気が遠くなるようで……けれど、過ぎてしまえばあっという間だったような気がします。
(べそをかいてばかりだった娘は、あかい目元をそのままに。若草色のおんなの手当てをしながら、ようやく詰めていた息を吐き出した)
『みてはならないもの』を。
『大人たちが隠したがったもの』を。
たくさん……たくさん、見て。立ち向かって……。……不思議な心地です。
もちろん、いちばんはこわいという気持ちが大きかったのですが……自分の体が、自分のものではないようでした。
……無事、ではないかもしれませんが。
それでも……生きて、みなで帰ってくることができて。本当に良かった。
シャスカ・リアン 2023年9月26日
痛いg げっほ!ごほ!がふ、
(声を上げようとした途端に損傷した臓腑が悲鳴を上げた)
(咄嗟に口元を覆った手を娘に差し出された手拭いで抑えた。ああ、こりゃあ久々に手ひどくやられたものだ)
がは、ごふ、……は、はは。
見せないようにしていた大人の立場からすれば、次の世代の子どもたちにまで要らん傷を与えてしまって、情けない限りではあるが。
全員五体満足に帰ってくることが出来て何よりだ。
みなに何かあったら私は多方面に顔を向けられなくなるところだった!
……うん。うん。無事だな、子どもたち。ほんとうに良かった。
シャスカ・リアン 2023年9月26日
改めて、おかえり。
救いたいものにも。救わなければならなかったものにも。
みなが懸命に手を伸ばしたからこそ届かせることが出来たのだと私は思うよ。
ヴァルダもディフも、私にばかり構わずとも良い。
随分眠りも浅かったろう?すこし休みなさい。
シャスカ・リアン 2023年9月26日
なによりだ。倒れられては祝杯があげられないからな!
奢りの件、忘れていないぞ!
シャスカ・リアン 2023年9月26日
(飲むが……?って顔)
いやだって私バシュムの毒を全身に浴びたから……体内から浄化せねばならんだろう。消毒だ消毒!
ディフ・クライン 2023年9月26日
(若草の君の手当に使った薬を薬箱へと仕舞いながら、そっと息を吐いた)
(一度席に着いて目を閉じ、調律の為の式を組んで魔法陣を展開する。残り少ない魔力をどう配分するか。何を止めて何を動かすか。意識を失わずに動ける最低限の範囲を模索し、今日幾度目かの調整して――)
(やがて、一度深く深呼吸をして青年は魔法陣を解いた)
……ああ、大丈夫。みんなちゃんと生きてる。全員相当疲れているとは思うけれどね。
(眉を下げて笑みを浮かべる。声音にもあまり覇気はない。流石に隠しきれるものではないし、彼らに対しても隠すべきではないと判断したから)
(青年は、人前では至極珍しくも疲労の様子を隠してはいなかった)
よかった。皆も、街も、ちゃんと無事で。
……ふふ。猟兵だって|エンドブレイカー《あなた》たちとそう変わらないだろう。
他人事だとしても、この世界とはもう縁が結ばれた。危機を知れば放ってはおけないのさ。
ディフ・クライン 2023年9月26日
謝らなくていいよ、ラウム。
うん。なんとか間に合ってよかった。
ラウムも、ヴァルダを支えてくれてありがとうね。
(柔く目を細める。油断ならぬ戦場だった。種族そのものの宿敵とも言える存在との戦いは、送り出すにも相応の心配と、そして信頼があった)
(この短い期間で、彼らの人となりはなんとなくつかめたように思う。だからこその信頼だった)
ヴァルダも。やっと泣き止んでくれた。怖くても、頑張ったね。
(疲れたろうと、彼女にも椅子を勧めた。若草の君の言う通りだ。自分たちにもそろそろ休息は必要だから)
こらこら、シャスカ。あちこち酷いことになっているんだから、安静にするんだよ。
……まさかオレも『子どもたち』の中に入っているのかい?
(意外だったとばかり。いやだって、登録上は大して年齢が違わないものだから)
ディフ・クライン 2023年9月26日
これは飲むまで眠ることはなさそうだねぇ。
いいよ。条件は変わらず、好きなものをどうぞ頼んで。
でもシャスカは無茶しないこと。毒はもうないけれど、ダメージは残ってるんだから。飲みすぎて沁みたって薬を塗ってあげたりは出来なんだからね。
(なんて、おかしそうに柔く笑って、店員を呼んだ)
ラウム・オラージュ 2023年9月26日
(気怠げに伏していた上半身を起こす。疲弊しているのは全員同じだ。外と内、損傷に個々の差異こそあるけれど)
被害のないとこは無かったけど。
それでも……この世界にいるニンゲンってのは結構しぶといから。生きてさえいりゃ何度でもやり直せるよ。
少なくとも俺やシャスカはそうして立ち上がってきたたくさんのヒトを見てきたから。だから、大丈夫。
ヴァルダもさ。よその世界をたくさん見てきて、なんとなくわかったろ。
ほんで、ディフも……たぶん、そういうヒトを見てきたから、諦めずにいれたんだとおもう。
まー、俺が分かったようなクチきけるようなあれじゃねえかもだけど!
(ガラじゃねえやと乱暴に頭を掻いて)
ラウム・オラージュ 2023年9月26日
……俺はただ、置いてかれたり、置いてったりして。
泣いたり、後悔したりするヤツをもう見たくねえから。そんだけ!
(泣いている娘を背に庇ったまま戦うことだって出来た。でも、そうしなかった)
(それではきっと娘が自分自身を許せない。だから無理やり立たせただけ。もっと優しいやり方だって、きっとあったんだ)
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年9月26日
(恐怖で泣いていたのか、焦燥にかられるばかりでままならない自分自身を悔しく思っていたのか。多分、両方)
(頑張ったね、と。優しくかけられる言葉に、肩を軽く叩く女のぼろぼろの手に。兄なりの激励に、また込み上げてしまいそうになる涙をなんとか飲み込んで)
ヴァルダは至らぬところばかりでした。
でも……それでも。失うことなく。守り通せた自分を……すこしだけ、ほめてあげようと思うんです。
(自責の念に苛まれ、押しつぶされることを彼らは望んでいない)
(だから。自分に出来たことは、ほんの小さな積み重ねかもしれないけれど)
(それを認めたいと思うのだと。告げれば、みなは笑ってくださるかしら)
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年9月26日
……もう!おばさまは、絶対安静ですよ!
こんなに傷だらけで、手だって……!
シャスカ・リアン 2023年9月26日
ああ、そうさな。猟兵も我々も根本は同じなのかもしれない。
そこに理不尽な終焉があれば、片っ端から叩き折らねば気が済まんものなのさ。
(言われて気付く。やれやれ、折角の爪も台無しだ)
(臓腑に穴が空こうが、肉を焼かれようが、女は大概元気であった。心が折れなければ、命があれば大体なんとかなる。それは女の持論であり、幼い自分から変わらぬ生きる指針そのものだった)
まあまあ、良いじゃないか!傷はいずれ癒えるし、爪もまた生えてくる。
頑張ったご褒美とやらが必要なのではないかね諸君?
ここは食事も美味いんだ、兎にも角にも英気を養わねばならん!
シャスカ・リアン 2023年9月26日
ん?もちろんだとも、ディフも私から見れば子どものようなものだよ。
言っていなかったかな、私にも息子と娘がいるんだ。
ちょうど息子がヴァルダと同じ年頃でね。誰に似たのか無鉄砲な子に育ってしまって……まあ、ディフほど育ちは良くないさ!
(何せ親がこれなのだ。大概、息子も豪快な男に成長してしまった)
シャスカ・リアン 2023年9月26日
(とは言いつつもそれはそれ。奢りは奢り。子どもたちと言えど成人した存在からの申し出を断る訳もない。ただ酒ほど美味いものはないのである!)
わはは!良いじゃないか、勝利の美酒を味あわねば私の戦は終わらんのだ!
私にはあの……ほら、あれだ。あそこの棚に飾ってあるウイスキーを頼むよ、20年もののいいのがあるんだ。
ほれ、子どもたちもたんと食事を頼むがいいさ。
食欲がなかろうと、まずは食べねば倒れてしまうからな!
ラウム・オラージュ 2023年9月27日
いいじゃん食おうぜ。飲み食いするのも雑になってたもんな、俺ら。
俺ジュースしか飲めねえけどな!
大丈夫だよ、シャスカは殺しても死なねえから。
いまヴァルダとディフのが俺らより死にそうな顔してるぞ。
戦いの間ずっと休まないでさ。俺らだけじゃなくて、いろんなとこで怪我したやつのこと診てただろ。
それに助けられたヤツは大勢いるだろうけど、そいつらは誰も……多分だけど!お前らが倒れたりするの嬉しくないと思うぜ。
ディフ・クライン 2023年9月27日
ふふ、頼もしいね。貴方達はそうやって、何度だって立ち上がってきたんだろう。
オレも猟兵としてそれなりに長く戦ってはきたが、どの世界でもひとはいずれ前を向いて立ち上がってきた。
ひとって多分そういうものなんだ。……ラウムの言う通りだと思うよ。
(頭を掻く様子に柔く目を細める。ガラじゃないと彼は言うが、そんなことはないのにと思う。彼だって多くを見て、経験して、立ち上がって此処に居るんだろうから)
(良き兄貴分だと解る。彼女と共に向かったのが彼で良かった。彼が立たせてくれたから今きっと、彼女の涙は止まっているのだ)
グリモア持ちになったことで、想うことや儘ならないこともたくさんあったとは思うけれど。
それでも誰も失わなかった。ちゃんと守れた。ヴァルダは精一杯を頑張ったんだ。たくさん、褒めてあげて。
(貴女自身のことを。貴女の頑張りを。青年も沢山褒めるからと、そっと背に手を当てて微笑んだ)
ディフ・クライン 2023年9月27日
参ったね。いい大人のつもりだったのに。
初耳だよ。そうか、貴女も既に母親か。
(誰に似たのか……なんて言葉には、思わず若草の君を見てしまった。夫である人を、青年は知らない。だから断言など出来ようはずはないのだが。なんとなく)
(育ちがよく見えているらしいことは僥倖だ。笑みだけを静かに返して、指差されるままに棚を見る)
棚の上にあるもの程いいお酒だってわかって頼んでるだろう、シャスカ。
いいよ。ならそれと、ラウムとヴァルダ用にジュースを。オレには水を。
食べ物は……おすすめを見繕ってもらおうか。
(あまり腹に重くないものをと言い添えて、店員にオーダーを出す。足りないものがあれば追加をすればいいからと、皆に向き直った)
ディフ・クライン 2023年9月27日
仕事柄と……性分だろうね。オレたちは。手段があるのだから、診てやりたくて。
せめてヴァルダはもう少し休ませてやりたかったんだが……肉体的にもだが精神的にも疲れたろう。帰ったらゆっくり休もうね。
(かく言う青年とて、休みなく動く為に抗睡眠薬を飲もうとして止められている)
(青年も貴女も人の為にこそ動く性分だ。こういう時、無茶を押し通してしまうのは多分あんまり褒められたことではないんだろうが)
(それでも、出来る限り悔いなく頑張れたから。今は大目に見てもらって、帰ったら休暇としよう)
シャスカ・リアン 2023年10月5日
大人と子どもの境目は曖昧なものだからなあ。
あはは!少なくとも私から見たら、ディフは『次の世代』だよ。
(青年の心境の機微までは深入りしない。憶測を立てることは容易いが、無理に暴くのは趣味ではないからだ)
(丁度よく注文に話が逸れたなら、女は素直にそれに従った)
勿論だとも、奢りならうまいものを飲み食いしたいと思うが人のサガと云うもの!
そうして勝利の美酒を味わった後の眠りはいいものだぞ、泥のように眠って、昼過ぎに目を覚まして。
とにかく自堕落に過ごすことをお勧めするよ。それこそが勝者に許された休息のあるべき形……と、私は思うわけだ!
(お通しにと出された乾燥した無花果を口に放る。うん、味覚は死んでいない!)
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年10月5日
はい。……兄さまやおばさまのように頼もしくはないかもしれませんが……。
ヴァルダも、永遠の森を発ってから沢山のものを見て……ひとを、世界を見てきたつもりです。
だから、……だから。きっと、皆大丈夫なのだろうと、いまは信じることができます。
(それでも手助けが必要な土地には、自分たちが赴いて手を差し伸べればいいのだと)
(娘も長い旅路の中で学んだ。全てを背負わずとも、人々は前を向いて歩いていけるのだと。わたしは、もう知っているから)
ふふ。……そう、そうですね。
ヴァルダにできる精一杯をしたつもり、です。
それを……しっかり、ほめてあげなくてはなりませんね。
(水を、と。自分の注文は控える様子に案じる視線を向けて)
(ふと思い立てば、提げていたポーチの中を探り)
ディフさん、これを。
(それはちいさな種子だ。乾燥させたそれは、硬い種皮に覆われている)
シャスカ・リアン 2023年10月5日
うむ!迎え酒の日もあるが、流石に今回は大怪我だからな。酒は今夜だけにしておくよ。
(それでも飲むには飲むらしい。飲まねば終われないのだ。仕方ない)
おや、それは。
ヴァルダ、貸してごらん。私が殻を粉砕してくれよう!
(女は娘が青年に差し出すそれが何であるかを理解しているらしい。今の彼にその硬い殻を砕くのは少々苦労するだろうからと。受け取った種を、)
ふん!
(ごりゅめしょ)
(その場にあった調味料の瓶底を押し付けた)
(鉄製のそれが、若干凹んだ)
(女はそれを他の調味料の瓶の裏に何事もなかったかのように隠した。大胆な隠蔽だった)
ほれ、割れた。
(どうぞと。これまた何事もなかったかのように種子の中身を青年へ差し出し)
ラウム・オラージュ 2023年10月5日
んはは!そーだろ、みんな俺達が思ってるより根性あるんだぜ。
だからさ、……大丈夫なんだよ。
(失われたものは限りなく少なく済んだ)
(それは紛れも無い猟兵達の功績なのだ。それを誇ってほしいのだと、少年は照れ隠しに目を逸らしながら語った)
よっしゃ、飯だ飯!
(女の蛮行を見た少年は一瞬引き攣った顔を見せ――見なかった事にした)
(この女のやることなすこと全てにツッコミを入れていたら体が幾つあっても足りない。そういうものなのだ)
ディフも食えそうならすこし腹に入れとけよ。
無理そうならそれだけでも飲んどけ、魔力切れには効くぞ。
(女が粉砕した種子の中身を指しながら果物を頬張った)
(ものを食う気力があればどうとでもなる。女の自論はあながち間違っていない。……と、最近それが分かるようになってきた)
ディフ・クライン 2023年10月5日
次の世代、か。……そうだね、そうかもしれないね。
(目を閉じて、微か笑った。託されて、今、ここにいるのならば。確かにそれは『次』と言えるだろうなと思えたから)
ふふ。いいよ、好きに頼むといい。シャスカはこの酒場にはよく通うんだろう。
貴女のおすすめも、好きに頼んだらいいさ。ラウムやヴァルダも喜ぶと思うし。
(届いた水のグラスを手にして。勝利のあとの休息の仕方を聞いて笑みを浮かべながら、そっと息を吐く)
(この分なら、このまま静かにしていれば工房に帰るまでは持つか。そうしたら、着替えて……シャワーを浴びる猶予はあるだろうか)
(静かに思考だけを巡らせていれば、名を呼ばれて貴女を見る)
……ヴァルダ、これは?
(差し出された種子に緩慢に首を傾げる。見覚えがある気がしたが、今の状態では思い浮かばなくて)
ディフ・クライン 2023年10月5日
えぇ……大丈夫なのかい、それ……。
(若草の君の手に渡ったかと思えば、テーブルの上になった調味料の瓶の底が犠牲になった)
(何事もなかったように戻される瓶。気にしていない若草の君と差し出される種子)
(流石に青年は困惑した)
(傍らの少年も似た表情を浮かべ――ああ、一瞬で目線を逸らした)
ああ、気持ちだけありがたく。消化器官にまわせる魔力がほとんどなくてね。
食事はもう少し回復してから……、……。
(魔力切れに効くという種子。差し出されたままのそれをおずおずと受け取って、三人を見た)
(よく判断しきれないが、どうやらこれが今の青年にとっては必要なものらしいということはどうにか理解した)
ディフ・クライン 2023年10月5日
じゃあ、これだけ。ありがとう、ヴァルダ。シャスカも。
(水と共に、それを飲み込んだ)
(喉から滑り落ちるそれが、ゆっくりと体内で溶けて――その種子が、マナの塊であると理解した)
(溶けて溢れて、ゆっくりと染み渡る。知らず深呼吸を幾度か繰り返えせば、不足して重かった身体に少し軽さが戻ってくる)
……ああ。助かるな、これは。
(工房まではギリギリかと思っていたが。この分なら、もう少しちゃんと動けそうだ)
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年11月4日
世界樹の種です。
これは妖精騎士に伝わる秘薬のひとつで……前に、母さまがヴァルダに持たせてくれたものなんです。
おうちに帰ったら、もっときちんとした処置をしますが。身体はすこし楽になるのでは、と。……ふふ、よかった。
(これは通常は市場に出回らない。妖精と心を交わし、世界樹に身を委ねることの出来る練度の高い妖精騎士だけが手にする事が出来るもの。森を出る時、母が娘に託してくれたもののひとつなのだと添えて)
(鈍い音を立てて粉砕される種皮を見て、女の相変わらずの豪快さに目を丸くしながら)
……おばさま、ちゃんとお店の方に言わないとだめですよ!
シャスカ・リアン 2023年11月4日
そうさ、未来を担う次の世代の若人よ。
子どもたち。あなたたちは私の希望そのものだ。
……うそうそ!なに、あとでちゃんと弁償するさ。
ここで叩き割られた食器類はだいたい酒代に上乗せだからな!
(どれも安物な理由は飲んだくれ同士がよく破壊するから、らしい)
(あんまりにも破壊される率が高いので最近は木製の食器が増えたとかなんとか)
良かろう!では私のおすすめを見繕うかな。
おおい、店主!
(五種のハーブサラダに暴れコカトリスの串焼き、みっつの夜の間に煮込まれた水牛のテールスープ、削り岩塩とバターのバゲットに、炙りチーズをたっぷり添えて。季節の果物をちいさなそれぞれの相棒たちにと頼めば、直ぐに卓は彩り溢れる様相へと姿を変えていくだろう)
さあさ、食べよう食べよう!
今日は夜通し飲もうとは言わんぞ、ほどほどに満腹になったら各々宿に戻るように!
……私は飲み続けているかもしれんが!
ラウム・オラージュ 2023年11月4日
いやお前希望与える側だろ!ちったあ英雄サマらしくしろってんだ!
……ま、そう言われるのは悪い気しねぇけどさ。
ラウム・オラージュ 2023年11月4日
ああ、ディフはそっか。飯だけで体力回復させる体質じゃねぇのな。
俺やシャスカは小世界のほかにもいろんな世界をもう巡ってるから、ニンゲンやエルフ以外もちょいちょい見かけてるけど。
異種族の中で同属でも体質がそれぞれ違ったりするからなあ、教えてくれてさんきゅな。
ヴァルダのそれ効くだろー、ほんとにたまにしか手に入らないんだぜ!
魔術師の間じゃものすげぇ価値があるものなんだ。
おまけに不味くない。クスリって捉えたらこんだけいいもんないぜ。
(続々机の上に並び出す食事に、イタダキマス、と両手を重ねて頬張り始めながら)
ラウム・オラージュ 2023年11月4日
んでもさあ。戦いは終わって、俺たちの共闘も一区切りついたワケだけど。
困ったことがあったら何時でも呼べよ。
ヴァルダのスキな相手なら俺にとってもまあー……そーだな、弟分だとちょい違和感あんな……。
……。
……ダチ!ダチの頼みならそこそこ聞いてやんねぇこともねえから!
ディフ・クライン 2023年11月11日
(飲み込んだ種子がゆっくりとマナに変わって、枯渇した体内を巡る。満たすまではいかなくとも、工房に戻るまでの残量を気にする必要はなくなったのが有難い)
(数度の深呼吸をしてマナを落ち着かせてから、青年は穏やかに笑った)
世界樹の種。これがそうなのか。
それは……本当に大切なものなんだろう。大事に取っておいていても……。
(よかったのに、と言おうとして、そこで口を噤んだ。そうではない。ちゃんとわかって、それでも貴女は自分にこれをくれたのだ)
(ならば言うべきはそんな言葉ではなくて)
……大事なものを使ってくれてありがとうね、ヴァルダ。おかげで楽になったよ。
(今はこれで十分すぎる程だ。帰ったら魔法や魔力の調整や、使い果たした魔力の回復など、やることは幾つかあるが。それはゆっくり、ゆっくり休んで回復させていけばいい。幸い主治医も頼もしく笑っているから)
(貴女も自分も、これから充分に休息を取って回復に努めよう)
ディフ・クライン 2023年11月11日
次代、か。
ふふ。なんだかくすぐったい響きだ。
(若草の君の注文で並ぶ料理は、どれもは美味しそうだった。平時であれば、青年も酒と共にゆっくりと楽しんだが。今はそれが出来ぬのが少し勿体ないと思うくらいだ)
シャスカがこの店を気に入っている理由がなんとなくわかった気がしたよ。
冒険者にとっては気兼ねなくて、料理が美味しそうで、いい店だね。
(果物を皿に取り分けて雪姫に手渡しながら、柔らかに目を細める。飛びついた姫が、切り分けられたりんごを上手に前足で挟んで食み始めた)
シャスカも程々にするんだよ。ヴァルダが心配するしさ。
それじゃあオレも、サラダだけ貰おうかな。
(魔法陣を展開して魔法と魔力を調節して。少しだけならば食事を取る余裕が生まれたから、小皿にサラダを取り分けた)
(そうして、貴女は?とトングを持ったまま傍らの貴女に目配せをする。要るならば取り分けるよと言いたげに)
ディフ・クライン 2023年11月11日
ああ、そうなんだ。伝えそびれていたね。
オレは魔力で動く魔導人形だから。基本的には大気中に混じるマナを呼吸で取り込むか、食事したものを分解して魔力に変換しているんだ。
ただ食事を分解するとなると、そちらの魔法や機構に魔力を割いたりする必要があるから、多少回復してからでないといけないのが難点というところかな。
うん。こんなに貴重なものを貰って、とても有難いよ。
(食べっぷりのいい彼に頷いて、自身を明かした。ドールは個体差が大きくはあるが、少なくとも自分はそうなのだと)
(続いた言葉に耳を傾ければ、なんだか少し照れ臭くなった)
そうだね。オレもラウムと友になれる方が嬉しい。
じゃあ必要な時は頼りにいくよ。そして同じように、貴方に助けが必要な時。オレのことも良かったら頼る候補にいれておいて。きっと力になるから。
(新たな友が増えたことを嬉しそうにして、青年はしっかりと頷いてみせた)
ヴァルダ・イシルドゥア 2023年12月18日
いいんです。ほんとうに大切なものだからこそ、いま使っていただきたくて。
……よかった。ディフさんが倒れてしまったら、ヴァルダはきっと声を上げて泣いてしまいます。
(いたずらに微笑んで見せるけれど、それは紛れも無い本心だ)
(あなたはわたしを守るばかりで自分を顧みないところがあるから――自分自身が『そう』だから、わかってしまう。いまのあなたが、やっとの思いで意識を保っていることを)
(どうか労わらせてほしいのだと。机の下でそっと手を重ね)
しばらくはゆっくり過ごしましょうね。
読みかけの本の続きを読んだり……お庭のお手入れもしてあげなくては。
ね、おばさま。兄さまも、今度遊びにいらしてください。
ヴァルダの過ごしてきた日々を、……いまがしあわせなのだと、胸を張って伝えられるようになりましたから。
ラウム・オラージュ 2023年12月18日
へえ!じゃあ身体を動かすためのちからは魔力が主体なんだ。
カラダの中で食い物を分解するってのは俺らと変わんねえんだなー。
この世界にはメイガスっていう中にヒトが乗る動力甲冑……えーと、他所の言い方だとなんつうんだったかな。ロボット?そんな感じのものがあるよ。
あれも魔力を増幅させるもんらしいから、俺らが知らねえだけでディフと似た種族のヤツが居たりするかもしんねえな。
(興味があれば行ってみるといいよ、なんて大皿の食事を頬張りながら)
んはは!あんがと。
前は誰かを頼るなんてダセぇって思ったけどさ、今はー……ま、そんなでもないから。
なんか困った時は呼ぶよ。ダチは助け合うモンだからな!
ほんでさ、いつか。
……そんな遠くないさきのはなし。
俺のねえちゃんも紹介するよ。ねえちゃんもきっと、猟兵のみんなに礼がしたいって思ってるだろうし。
シャスカ・リアン 2023年12月18日
わはは!いいじゃないか、本当のことなんだから。
私は良くここで飲んでいるから、ディフも食べられるくらい元気になったらまたおいで。
その時は私が奢るから、とびきりいい酒を飲むが良いさ!
(奢られるときも奢るときも豪快に。それが女の信条だった)
(長い人生の間、食べられるときに好きなだけ飲んで食わねば。日々は移ろい、変わりゆくものだからこそのこと)
ああ。大丈夫、己の限界は知っているつもりだよ。
子どもたちに心配ばかりかけるわけにもいかんからな!
(今はただ、この地に返り咲いた棘を退けることが出来た余韻に浸っていたい)
(けれど、おんなにも帰るべき場所がある。帰りを待つ我が子が居るから)
(この食事を平らげたら、日常へと帰ろう)
それでは、改めて。今日という勝利に、
(――乾杯!)