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検証05:人間失格対探偵失格

鵜飼・章 2023年3月13日

前置きはいい。
僕は退屈と長話を好まない。単刀直入に言う。

きみ、一体誰。




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鵜飼・章 2023年3月13日
柊くん? すこし見ない間に髪の毛が長くなったね。
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柊・はとり 2023年3月13日
……違うよ。私は柊はとりだけど、柊はとりじゃない。
人の顔の見分けがつかないって本当なんだ。
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鵜飼・章 2023年3月13日
揶揄われているとは考えない? 素直なんだね。
それなら確かに、きみは僕の知っている柊くんではなさそうだ。
本当だよ。いつもは制服と眼鏡と……喋り方や雰囲気、声、色で見分けている。だから髪型を変えられると困るな。……顔も変わっているの?
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柊・はとり 2023年3月13日
(そうなんだ。えーっと……こういうの何て言うんだっけ……はとり君ならたぶん答えられるんだけどなぁ。なんていうか、思ったより大変そう)
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鵜飼・章 2023年3月13日
先程のきみの発言からするに、顔も変わっていると考えられる。
なら、きみは夏海箱音さんだ。違う?
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柊・はとり 2023年3月13日
え、ちょ、ちょっと待って、いきなりそこに着地するの!?
私まだ何も説明してないんだけど!
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鵜飼・章 2023年3月13日
おかしいだろう。柊くんの首から上にはきみの頭蓋骨が入っている、彼はそう言っていたよ。本来ならきみの顔をしていないと変なんだ。
そして今、柊くんに見えるけれど柊くんではないらしい人物が、わざわざ僕にコンタクトを取ろうとしている。
口調からして人格は女の子のようだし、ならば彼は実は二重人格で、今僕が会話している人物は夏海箱音であると考えるのは妥当な推論ではないかな。
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柊・はとり 2023年3月13日
…………。
そ、そう、です……(結構張り切って来たのに先手で説明されちゃった……)
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鵜飼・章 2023年3月13日
けれど、そうなると不可解な点が出てくるよね。『名探偵』の柊くんは、僕が見る限りきみの存在を認識できていないようだ。
いや……他にも彼の言動は違和感だらけだよ。原因はきみかな? それとも……(手にした剣に視線を泳がせた)
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柊・はとり 2023年3月13日
(か、会話のペースについていけない……っ!
 鵜飼章さん……なんでかよくわからないけど、いつもはとり君に嫌がらせをしている人……名探偵パワーで一発ばこーんってやっちゃいたい気持ちと、正直ちょっと面白そうって気持ちが半々! はとり君と違ってミステリー小説好きみたいだし!)
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柊・はとり 2023年3月13日
(う、うーん……でもこの感じ……もしかしてはとり君への嫌がらせ? も、本当に悪気があってやってるわけじゃないのかも……いや、今はそんなことより、もっと急いでやらなきゃいけない事があるんだ!)
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柊・はとり 2023年3月13日
章さん! コキュートスを一時的に封印して!
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柊・はとり 2023年3月13日
『!? 規約違反です 夏海 箱……』
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鵜飼・章 2023年3月13日
いいよ。はい封印した。
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柊・はとり 2023年3月13日
(章のユーべルコードの力が作用したようだ。コキュートスは輝きを失っている……)
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柊・はとり 2023年3月13日
さっすがー、章さん! 話が早くて助かっちゃうよ!
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鵜飼・章 2023年3月13日
もうこの程度、少々人間らしさを削ればどうという事はないからね。
こうならない道もあった筈なんだけど、僕はどうも、そちら側に行く望みをほぼ断たれたようだ。
話せないんだろう。|その子《﹅﹅﹅》が居ると。
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柊・はとり 2023年3月13日
……。え、えーっと……(何だろう。思ったよりも深刻な事情を抱えているのかな……でも、たぶんこの人、はとり君と相性が悪いだけだ! 私は話せる!)
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柊・はとり 2023年3月13日
私にはよくわかんないけど、元気出しなよ! 『ほぼ』って事は、まだ希望が残ってるんでしょ?
人類が滅亡しかけても案外平気だったし、章さんもたぶん大丈夫! なんかそういう「僕、もう全部諦めてるんで……」みたいな顔してるとカッコ悪いよ!
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鵜飼・章 2023年3月13日
かっこ悪くて大いに結構だよ。発言までかっこ良くしていたらモテすぎて困るだろう。
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柊・はとり 2023年3月13日
えっ、そうなんだ! そういうキャラって演技なの? すごいね! 章さん、探偵向いてるよ!!
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鵜飼・章 2023年3月13日
それは有難い評価だけれど、僕はデビュー作に「鵜飼章最後の事件」って書かれるタイプの探偵だよ、きっと。それか「死ぬ時はダイイングメッセージを残して死ぬ」って発言して、殺されて本当に残す。
……きみと夜通しミステリー談義をするのも悪くなさそうだ。けれど、そろそろ本題に戻ろう。用事があって来たんじゃないの。
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柊・はとり 2023年3月13日
そ、そうだった!
あのね……章さん。実は私、このままだと殺されるかもしれないの。
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鵜飼・章 2023年3月13日
もう死んでるのに死ぬ事ってあるんだ。
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柊・はとり 2023年3月13日
それ言っちゃう……?(はとり君はこういうエキセントリックな所が苦手なんだろうな……)
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鵜飼・章 2023年3月13日
それで? 僕は何をすればいい。
その子(コキュートスを示す)に聞かれたら困る話なんだろう。つまりきみが死んだら、犯人は恐らくその子だと考えても構わないね。

もうアポカリプスヘルも復興に向けて動き出している。
僕にはその過剰な力を持つ破壊兵器が、柊くん……いや、きみたちに必要だとはどうしても思えない。破棄する手段なら幾らでもある。わざわざ僕に頼むまでもなく、ね。きみたちはどうしてその子を手放さないの?
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柊・はとり 2023年3月13日
……理由は3つある。
ひとつめは、私との契約のせい。「柊はとり」が復活したのはコキュートスの力だから、コキュートスを壊したら私達も壊れるかもしれない。
ふたつめは、コキュートスがはとり君を脅しているせい。自分を壊そうとしたら周りの人を全員殺すって。
みっつめは……これは私の勝手なんだけど……コキュートスを壊したら、はとり君と私が最後の事件を|本当の意味《﹅﹅﹅﹅﹅》で解決できることはなくなっちゃうから。
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柊・はとり 2023年3月13日
章さん……お願い、何も聞かずにこれだけ覚えておいて。
最後の事件……『◼️◼️◼️の◼️◼️』 の犯人は、◆◆◆なの!
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鵜飼・章 2023年3月13日
| 《 》
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鵜飼・章 2023年3月13日
……何、それ。
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鵜飼・章 2023年3月13日
(鵜飼章は――|ぼく《﹅﹅》は、この時、本当に珍しく。心から、心の底から、驚いていた。彼女の言っている事の|半分はわかる《﹅﹅﹅﹅﹅﹅》。もう半分は意味がわからない。いや、|そんなはずはない《﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅》。だから一瞬、反応が遅れた。しかし、目の前に居る愚直にも愚鈍な探偵未満の少女は、そんな事に気づくはずもないだろう)
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柊・はとり 2023年3月13日
私が殺されてしまっても、はとり君にこれを知らせなきゃいけないタイミングが必ず来る。あなたはそれが分かる人だと思う。あなたはたぶん、はとり君が思っているよりずっと、空気に敏感な人だから。
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鵜飼・章 2023年3月13日
きみには柊くん越しに僕が見えていたとしても、実際には今日会ったばかりなのに、過大評価しすぎじゃないかな? 僕は空気が読めないし、あえて読まない事もある。
気まぐれで今すぐネタバレしてしまうかもしれないよ。
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柊・はとり 2023年3月13日
ううん、私、自信あるよ。
だって章さんは面白いと思ったことしかやらないもん。
章さんがそれを言うのは、今言ったら最高に盛り上がる、そう思ったタイミングだ!
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鵜飼・章 2023年3月13日
ふうん。事件の完全解決には面白さが必要なの? それは……
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鵜飼・章 2023年3月13日
|面白そうだ《﹅﹅﹅﹅﹅》。
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柊・はとり 2023年3月13日
(コキュートスが明滅をはじめる。ドライアイスのような白い煙があがりだしている。既に冬は死にかけているというのに、辺り一帯が急に冷え込んでくる。氷獄。その名を与えられた呪いの剣は、人間らしさから遠く離れ始めた無貌の怪物をもってしても、抑え切る事はできない)
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柊・はとり 2023年3月13日
……限界だね。章さん! 
私にあなたの行動を縛る権利や力はないよ。でも、私にもしもの事があったら……お願いします。
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鵜飼・章 2023年3月13日
もしもの事がなかったら?
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柊・はとり 2023年3月13日
好きな密室トリックの話しよ! 約束だよ!
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鵜飼・章 2023年3月13日
(――そう、『柊はとり』なら口が裂けても言わないであろう、物騒で不謹慎な別れの言葉を口にして)

(『彼女』の気配は消失した。コキュートスが息を吹き返すのが、一歩だけ遅かった。今のやりとりの間に、どれほどの人間らしさが鵜飼章から消え去った事だろう。それについてはもはや取り立てて関心はないが)
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鵜飼・章 2023年3月13日
……。
柊くん。柊くん、どうしたの? 急にぼんやりして。
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柊・はとり 2023年3月13日
え?


……あ、あ、ああ……悪い鵜飼。それで……今の状況は。
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柊・はとり 2023年3月13日
(まただ……ここのところ頻度が多い。何故俺はここにいる? 何をしていた? 前後の記憶が全くない。だがわざわざ鵜飼と一緒に居るという事は、恐らく仕事の筈だ。見たところ逼迫した危機が迫っている様子はない。だから「今の状況は」という無難な言葉で誤魔化すしかなかった)
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鵜飼・章 2023年3月13日
仕事だよ。あそこの拠点に潜伏しているならず者を取り締まりに行くんでしょう。(一番近くに見えている拠点を適当に示す。レイダーやオブリビオンという断定は避けておいた。探せばそれらしい「ならず者」は幾らでもいるだろう)
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柊・はとり 2023年3月13日
んな事は分かってるわ。偵察は済んだのかっつってんだよ。遠くからコソコソ動くのはお前の方が得意だろうが。

(上手く誤魔化せた……と思う。だが何だ? 何だこの……異様な胸騒ぎと、凄まじい違和感は……!)
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鵜飼・章 2023年3月13日
(咄嗟に切り返してきたな)
ああ、うん、今やっているから少し待ってね。鴉くん達、なかなか手掛かりを掴めずにいるみたい……。
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鵜飼・章 2023年3月13日
(夏海箱音。彼女は僕を過大評価しすぎている。その印象に変化はない。僕は自他共に認める酷い奴であり、実際今にも約束を破り、その言ってはいけないらしい言葉を言ったらどうなるか、試してみたいという好奇心にかられている。第一、覚えていられるかどうか。でも……)
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鵜飼・章 2023年3月13日
(あの子がそれを面白いというのなら乗ってあげようか。このどうあがいても破滅しか呼ばないように思える、最悪の解決編に)
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鵜飼・章 2023年3月13日
【了】
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