【個】[マリー、美羽]ぼくらの想いとその先と
マリーノフカ・キス 2022年9月16日
――好きな人がいるんだ。
間の抜けたことに、はっきりと自覚するのが随分遅れてしまったけれど。
告白はもう2年近く前、そんな、今思い出しても本当に間の抜けた、みっともない言葉だったと思う。
それから色んなことがあって。距離を取ろうとしたり、諦め悪くもがいたり、もう一度近付いて、人から見たら下らないだろう勝負を始めたりして。
そうして迎えた、夏の終わり。はたちを数える、その前の日。
神戸某所、夜景の見える展望台。
ぼくらはまた――、
3
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(|希望《・・》だ)
(――あと一歩踏み出せば、焦がれ続けたキミの|心《しんらい》が手に入る)
(そう思えば、どれだけの力だって湧いてくる。人だって、竜だって。宝を目の前にすれば、火もつこうと言うものだ)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
だから。
心行くまで、受け止めるさ――!
(|キミが欲しい《勝ちたい》。その|想い《エゴ》を刃に載せて、剣と剣を叩きつけるように、何度だって受け止める――!)
綾峰・美羽 2022年9月17日
ふふ、違いね。
こんなにも似た者同士なのに、違ってるところがあるだなんて。
(剣を振るう。この姿であれば、膂力も技術も魔力も、全てにおいて負ける要素なんてないはずなのに)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(なぜだろう。剣と剣を重ね、隙を産み、技術の限りを尽くして剣を振るっているのに)
(届かない、決定打にはなりえない)
(偶然だとしてもこれほど重なればさすがにおかしいと気づく、でも、だけれど)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(必ず勝つと、そう決めて、最後の一瞬まであきらめない。それが私であると彼も言ってくれたのだから)
(もっとも得意とする斬撃。|神霊剣《罪業を断つ》、フェイントを混ぜ、ガードを誘い、その刃を抜けるようにして再び太刀を振り下ろして)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――僕が悪い男で。キミが優しいひとだってことさ。
(続けざまに響く金属音。終わりのないダンスのように剣戟の火花が散る)
(――古の霊刀とはいえ、刀だ。騎士剣と力任せに打ち合うようにはできていない。衝撃を精一杯受け流しながらも、徐々に刀身が歪み、捌きの正確さが失われ、手首に痺れが蓄積されていくのが分かる。もう、いつ折れたっておかしくない)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(――或いは。日付が変わるまで耐え続けるのも、一つの手ではあるのかもしれない。その思考は、ずっとあった)
(受け止め続ける。それが困難であろうとも、ある意味では、楽な道だ)
(でも、――キミは、勝ってみせろと言ったのだから。諦めないキミが好きだと言った僕が、楽な方に走るわけにもいかないよね)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(逃れようがない刃の軌道に向けて、一歩を踏み出した)
(完全にかわそうとはしない。勢いを殺すように受け止めて、狙うのはカウンター)
(互いの剣筋に、唯一勝機があるとすれば、速さだけだ。姿を変え、完全に格上の相手に、安全策で勝てるとは思わない)
(閃くは正確極まる剣閃。その剣技を、一世代前の灼滅者は――)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(殲術執刀法、と呼んだ。急所と弱点を瞬時に見出し、正確な斬撃で切断・摘出する異形の剣技。それは、ダークネスの力に傾いた、人造灼滅者の得意とする技ではあったけれど)
(相打ちめいたこの一撃が、騎士らしいかは、もう考える余裕もないけれど)
(――|先の一撃《フォースブレイク》で罅を入れた、キミの鬼の部分だけを狙って断つために、これが己の最高の技だった)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(獲った。その核心は瞬時に訂正される)
(さらに、その体勢から一歩相手が踏み込んでくる。より狭い空間では、直撃こそ避けられないものの、クリティカルとはいいがたい)
(そうして、伸ばされた刃は)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
……やっぱりすごいなぁ。
(その剣技は、先ほどダメージを与えた部位へと届き)
(支えを無くした聖剣が、からんと地に堕ち音を立てる)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(――――――や、ば)
(元より、精神だけで立っているようなものだ。浅くない傷を自分から受けて、いよいよ本当に限界はすぐ前で。気力が萎える気はしないけれど、それでも本当は、もう自分が立っているのが不思議なほどで)
(それでも)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
…………好きな子の前、だから。必死に格好つけてるんだ。
(そう、心からの正直な言葉とともに、笑って)
(だらりと、刀を下げながらも。……気は済んだ? 済まないなら――まだ、幾らでも相手になるよ)
(そう、目で言うように。まっすぐに、見つめて)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(小さく首を振って、その場にしゃがむ)
ふふ、完敗。でも、うん、よくわかったよ。
……それに安心した。
だから、さ。
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――――――、
(からん、と。もうすっかり力の入らない手から、刀を落とし)
(それでも。その手を持ち上げ――指先を、そっと、重ねて)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
うん。
(優先順位の一番を、同じだけ)
(そんな我侭な絵空事を、信じてくれた、キミのために)
一生かけて。本当にし続けてみせるよ。……美羽。
(そんな、短かな、誓いの言葉と共に)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(それから。ぐい、と、引き寄せて――力の入らない体では、逆にもたれかかるようにも見えてしまう、みっともない姿勢だったかもしれないけど)
(思い切り、キミを抱き寄せた)
綾峰・美羽 2022年9月17日
……証明してくれたもの。
信じてる。心から。
(ゆっくりと重なった指先。視線を落として、小さく笑顔を浮かべれば)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
……わわっ!?
(元より力はほとんど残っていない。そのまま引っ張られ、くっつくような姿勢で抱き寄せられて)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
―――――――、
(ぎゅう、と、強く、強く、まともに力が入っていれば痛かったかもしれないくらいに、もたれあうような姿勢で抱き締めて)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
……………………ヤバいな。
想いが通じたら……どうなるか、自分でも分からなくて。
ワンチャンケダモノになっちゃうかも、くらい思ってたんだけど。
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
……正直……、ちょっと、安心して泣きそうかも。
(首筋に、顔を埋めるようにして)
(小さな、小さな声で囁いて)
綾峰・美羽 2022年9月17日
――――。
(ぎゅっとその手に背を回して、離さないとばかりに抱きしめ返して)
……いいじゃない。泣いちゃったって。
成し遂げたんだもの、応えてくれたんだもの。そのくらいしたって、ばちは当たらないと思うの。
ね?
(背中を小さくさする様に、優しい手つきで)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
……だーめ。
泣いちゃいられないよ、かっこつけだから。
(ふふ、と、冗談めかして、笑いながら――抱きしめる腕はそのまま、顔を起こすように。間近で、キミの顔を見つめて)
それに――、
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――この後も。したいこと、いっぱいあるし。
なんせ、2年待ったんだから、さ。
綾峰・美羽 2022年9月17日
……そう、本当に負けず嫌い何だから。もう。
(じっと傍に近づいた顔見あげて)
(おかしそうに笑って見せる)
(そっとその頬へと手を伸ばして)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
そう、ね。二年間もお預けだったんだものね。
……優しく、お願いね。
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(――もし、窘められたら。ほら、まずは帰って祝杯を――なんてごまかしてみたり、細かな言葉遊びをしようと思っていた)
(でも、そんな細かなあれこれも)
(力に入らない足元も)
(そんな風に頷いてくれた、はにかんだ顔が近付いてくれば、全部、全部吹き飛んで)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――ごめん。
自信、ぜんぜんないかも。
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(囁きと共に)
(お互いに言い訳を重ねながら軽く触れさせてきたこれまでとは、違う)
(奪い、求めるような、深い口付けを――)
綾峰・美羽 2022年9月17日
…………もう、そういうこと言って。
優しくリードしてよね。
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(小さなささやきと共に深く口づけを重ねて――)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(―――――)
(この、キスだけについて言えば――やっぱり、ちょっとだけ。激しかったかもしれない)
(お互いに重ねてきた時間を埋めるように、想いを重ねるように)
(長い口吻の後、そっと、唇を離す。互いの間で、熱い吐息が漏れて)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(じ、と)
(熱を帯びた瞳が、それ以上離れようとせず、緑の瞳を覗き込んで)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(ほぅ、と熱を帯びた吐息は長く長く)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
……なぁに。
(こちらを覗く視線に、思わず小さく言葉を紡ぐ)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――このあと、さ。
家、来るでしょう?
祝杯を交わして、誕生日祝い、しないとね。
それから――――
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
…………いや、「それから」じゃなく、
「その前」にちゃんと治療しないとヤバいな…………
(目をそらせない現実)
(いや、死ぬような傷ではないけれども――)
綾峰・美羽 2022年9月17日
そうね、せっかく約束だったもの。
酒杯も幸い、あるわけだしね。たっぷり楽しんじゃいましょう。
(くすっと楽しげに笑えば)
(無効票)
綾峰・美羽 2022年9月17日
ふふ、治療はお任せ。これでも聖騎士なんだから。
……あぁ、でも、そうね。
せっかくの機会だし、こうなったわけだし――
(そっと両の方に手を乗せて)
(視線はまっすぐ、滴る紅)
(それでね)
綾峰・美羽 2022年9月17日
――――おいしそう。
(そっと顔を寄せて)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
うん、そこは頼りに――――って、へ?
(さすがに)
(ぱちくりと驚いた顔をするけれど。首筋に寄せられる唇は、避けることも怖がることもなく)
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(笑って。そっと、キミの後ろ頭に手を添えて、受け入れるように、髪を梳くように撫でる)
(滴る血は。傷が、これだけ人として戦ってきた戦いの結果であっても。本来、人間ではありえないほど濃い魔力の漂う、紛れもない竜の血で)
(舐めようと、――仮に新たに牙を立てようと。止めはしないよ?)
綾峰・美羽 2022年9月17日
(そっと頭を寄せられれば、そのまま滴る血へと舌を這わせて)
(味わうように零さぬように、そっとついたそれを一滴たりとも逃さぬように、全てのみ込んで)
(ほぅと熱い息を零す)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
…………、
おそまつさまです。
(ぞわぞわとする、舌の感触)
(首筋にかかる、熱い吐息に)
(さらりと、もう一度、髪を撫でて)
ね。
(無効票)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
お酒。本当に、たっぷり楽しむ余裕ある?
(なんて、口にした)
綾峰・美羽 2022年9月17日
……それはもう。全部楽しむ主義だもの、私。
御酒も、そのほかも、全部全部味わうつもりよ、今夜は。
(いいでしょ、なんて笑う)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
――オッケ。そういうことなら、たっぷり楽しみましょう、お姫様。
(そっとグリモアを開きながら、思わず、笑みを零す)
(関係が深く変わっても、やっぱり彼女は強敵で。そう簡単にリードは取れなさそうだけど)
(それでね)
マリーノフカ・キス 2022年9月17日
(勝負と変わらず、手加減抜きに、全身全霊で。そのリクエストに応えてみせよう、と、心に決めるのでした)