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【メガコーポ】狼の巣穴

サイモン・マーチバンク　2022年6月1日

「ねえねえ知ってる？　『狼』の動画って実はヤバいんだって」

動画の編集やネット配信のサポート等の映像関連の仕事を行っている企業。
若者向けの編集技術に定評があり、人気を上げたいストリーマーが依頼をすることもしばしば。
実際ここに依頼をするようになってから評判が上がったものも多い。
ロゴやマスコットとして可愛らしいオオカミのキャラクターを作っており、それも可愛らしくて人気なのだとか。

けれどこの企業を注目しているのは、ただ面白い動画を求めている者だけではない。
「この企業が関わった動画の中には特別なものがあり、それを発見できると良いことがある」
「ここの専属配信者になれると羽振りの良い仕事が貰えるようになる」
『狼の巣穴』の動画には不可思議な、都市伝説めいた噂も多いのだ。


それもそのはず。
この企業の本業はスナッフフィルムの製作なのだから。
噂もコントロールしつつ流し、狼は飢えた人々を待っている。


『狼の巣穴』を経由して作られた動画には、特殊な技術が施されているものも多い。
大体はサブリミナルといった催眠術の類だが、それは視聴者の衝動を掻き立てるものが殆どだ。
「もっと刺激的な動画が見たい」
「過激な動画が作りたい」
「何か大きなことがしたい」
そのような衝動が湧き上がった者を見つけ、狼達は声をかける。
「うちにくればもっと刺激的なことが出来ますよ」と。

洗脳された人々は刺激を求め、スナッフフィルムのような非人道的なものにも躊躇しなくなる。
ある者は嬉々として殺人現場でカメラを回した。
ある者は破産するのもお構いなしに残酷な映像を買い漁った。
ある者は友人達を勧誘し、共にフィルムを作るようになった。
そんな彼らを見て、狼達はほくそ笑むのだ。

映像の内容は顧客のニーズに合わせつつも、自分達の利益になるものを目指している。
例えば狼のことを疑うものや、誰かにとって邪魔なものを消せれば都合がいい。
撮影対象として向いている相手を賞金首のように指定すれば、スタッフ達は喜んで「撮影」に向かうだろう。
そのため暗殺のような依頼もしばしば舞い込むとか。


退廃的な世界だからこそ、刺激を求める者は多い。
けれど彼らは気付いていない。既に自分達が、逃げられない危険地帯にいることに。




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